PwC Japanグループでキャリアを積んだ後、新たな道を切り拓いて活躍している卒業生がたくさんいます。どのようなスキルや経験が、その後の仕事に生かされているのでしょうか。PwC時代に会計監査や事業再生を経験した岩本一将氏は、事業会社への転職を経て、株式会社串カツ田中ホールディングスに入社。同社の成長を支えるため、執行役員として管理部門全般の強化を担っています。本対談ではPwCで得た経験やアルムナイネットワークとのつながり、現在の職場での展望など幅広く語ってもらいました。
(左から)岩本 一将氏、山口 雄司
話し手
株式会社串カツ田中ホールディングス
執行役員 管理部長
岩本 一将 氏
聞き手
PwCアドバイザリー合同会社
パートナー
山口 雄司
※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時のものです。
山口:
岩本さんは2006年に当時のあらた監査法人に入社し、約10年間にわたり金融監査を担当されました。その後、OEP(Open Entry Program)制度により2017年からPwCアドバイザリー合同会社に転籍、事業再生の案件に従事しています。そして2022年にPwCアドバイザリー合同会社を退職。事業会社への転職を経て、株式会社串カツ田中ホールディングスに入社されました。現職ではどのような業務を担っていらっしゃるのでしょうか。
岩本:
執行役員として、管理部門全般を担っています。入社前は財務をメインとするCFOポジションを予定していましたが、バックオフィス部門全体の強化のため経理、労務、総務、法務なども担当しています。監査法人対応を含めた会計分野の他、労働基準監督署の対応などの幅広い業務を担っています。
山口:
岩本さんは監査法人在籍時には金融、PwCアドバイザリー時代には製造業系をメインで担当されていたと記憶しています。外食業界は新たなチャレンジだったと思いますが、転職の経緯について教えていただけますか。
岩本:
PwCアドバイザリーでは事業再生案件など、比較的経営に近いポジションで仕事をさせていただきました。付きっきりで対応し、クライアント側のメンバーの一員として動いていたという感覚です。非常に学びが多かったため、このままPwCで仕事を続けていきたいという気持ちもありました。
ただ、ある時点を境に、経営の側により一層関わっていきたいという気持ちが強くなりました。アドバイザーはあくまで第三者の立場です。細かい実務まではなかなか立ち入れないため、企業をより深く知りたいと思うようになったのです。とはいえ、いきなり大手企業に入ると、ご意見番的な立ち位置を求められるようにも思いました。そのためベンチャー企業に転職したのです。
そのベンチャー企業ではCFOという立場で、内部統制など社内の管理体制を整える役割を担いました。非常に高い目標を掲げた企業でしたが、その達成には想定以上に時間がかかりそうだと感じました。そこで周囲に相談し、複数社からオファーをいただいたのですが、その一つが串カツ田中ホールディングスだったのです。
山口:
複数社からオファーをいただいていたということですが、最後に串カツ田中ホールディングスに決めた理由は何だったのでしょうか。
岩本:
かねてから外食業界に対して興味があったということもありますが、規模的に成長企業である点に魅力を感じました。また私のスキル・経験が生かせる領域と、新たなチャレンジとなる領域のバランスもちょうどよいと考えました。
串カツ田中ホールディングスの店舗運営を行う営業メンバーは、お客さんをおもてなしすることに全力です。入社前に参加した社内イベントでも、こだわりや「やりきる力」を感じました。今思い返せば、その勢いに魅せられたのだと思います。
株式会社串カツ田中ホールディングス 執行役員 管理部長 岩本 一将 氏
山口:
さて、PwCとのつながりは監査法人からのスタートでしたが、入社を決めた経緯について教えてください。
岩本:
会計士試験に合格後、四大監査法人の面接を全て受けることにしました。振り返れば、当時の日本におけるPwCは過渡期であり、新しいスタートを切ったタイミング。他法人より規模こそ小さかったものの、世の中を変えていこうというマインドが社内に満ちていて、堅い監査法人のイメージを覆せるという期待がありました。PwCはグローバルネットワークという観点でも魅力的で、新しい組織や変化を一緒につくっていきたいという思いから、入社を決心しました。
山口:
岩本さんの入社は、あらた監査法人が設立されて一期目のことでしたね。当時は金融業界の監査を担当していましたが、振り返ってみていかがですか。またPwCアドバイザリーに転籍された時はどのような思いでしたか。
岩本:
監査法人時代の金融業界の監査はとても刺激的でした。当時は今ほど証券市場が盛り上がっておらず、資産運用に対するマインドも社会的にそれほど高くありませんでした。そのような時期に最先端のアセットマネジメント監査に関われたことで、証券市場に対する理解を深めることができたと考えています。
ただし、アセットマネジメント監査はモノがない仕事。そのため企業のことが見えにくいとも感じていました。それこそ書物で読むようなイメージしか湧かなかったのです。そのまま監査を続けていれば専門家にはなれたのかもしれませんが、当時は自分の幅を広げたいと考えていました。
事業会社へ転職することも考えましたが、周囲のアドバイスを聞くうちに、全く知らない状況で飛び込むのは難しいと感じるようになりました。きっと、採用する側とされる側の期待値のギャップがすごいだろうなと。そこでアドバイザリー業務で第三者として事業会社に関与することから始めようと考えたのが転籍のきっかけです。ただ、既に監査に10年間従事していたので、アドバイザリー業務をもう10年手掛けることを想像することは難しかった。そこでいち早く学べる部署に行こうと思い、当時一番大変だとされていたBRS(事業再生)部門に無知のまま飛び込むことにしました。
山口:
在籍時にはさまざまな案件に関わられたと思いますが、印象的だった案件はありますか。
岩本:
最も印象的だったのはアドバイザリーに転籍した後の初案件です。12月25日に転籍が決まったのですが、翌日から大阪に来てほしいという要請がありました。クライアントの拠点に出向き、知らない言葉が多く飛び交う中、可能な限りキャッチアップしようと努めたことを今でも覚えています。その後、1年間にわたり全面的に関与し、事業再生の一連の流れを知識として習得することができました。本当に大変でしたが、自分としては成長を実感できた1年間であり、とても鍛えられたと思います。
山口:
岩本さんは困難な状況下でも粘り強くサポートしていくことで、リレーションを構築し、クライアントに対して価値を提供していく方という印象がとても強いです。あたかも社員のように、クライアントのプロジェクトチームの一員になって業務に従事していましたよね。監査とアドバイザリーでは全く違う業務を経験されたと思いますが、総じてPwC時代をどう振り返っていますか。
岩本:
PwCアドバイザリーに転籍してからも、事業再生の中で数字が絡む仕事は全部任されていました。監査法人での経験を通じて、整合性の確認や理論的な妥当性を熟考する目線が自然と育まれていたのだと思います。クライアントの経理担当者と会話したり、改善提案をする際にも監査の経験が生きました。
一方で、アドバイザリー時代には監査法人とは異なるスキルや能力を磨くことができました。監査には期限がありますが、アドバイザリーはやり切らないと報酬を受け取れません。自分の中でタスクを消化しながらやり切るスタンスや、限られた時間の中で最大限の価値を提供する方法論を習得する必要がありました。クライアントとの対話では、場面ごとのベストアプローチや専門家とのシナジーなどを常に考える習慣が身に付き、解や道筋を「生み出す能力」がとても鍛えられたと思います。
山口:
PwCでキャリアを形成する価値についてはどう考えますか。
岩本:
自分自身が、というよりも周囲を見ていて思うのは、PwCで学んだ人の物事の考え方や資料のクオリティが非常に高度だということです。プロフェッショナルとしてのスキルが自然と身に付いていて、他社の人材と比較して差別化されていると感じます。
事業会社においても自ら問いを立てて解を出すことができる人材が必要です。経験したことのない多様な領域をカバーする場合は特に、自身で情報を収集して意思決定に反映していく力が求められます。PwCではその基本的なスキルを身に付けることができると思います。
PwCアドバイザリー合同会社 パートナー 山口 雄司
山口:
今でもPwC時代のメンバーとのつながりはありますか。
岩本:
監査法人やアドバイザリー時代に仲が良かったメンバーとは、引き続き連絡を取り合っています。飲みに行くこともありますし、情報交換も頻繁に行っています。PwCのファームから事業会社に転じた、私と同じような境遇の方と会って話をすることもあります。
私はPwCを卒業後、アルムナイや現役の人たちとまたいつか一緒に仕事ができたらと常に思ってきました。今でもその思いは変わりません。皆さん多方面で活躍していますし、これからもコミュニケーションを取り続けながら、いつか仕事につながればうれしいですね。
また、アルムナイネットワークではCFOのポジションで活躍されているPwC卒業生とも交流できたらと思います。
山口:
岩本さんが串カツ田中ホールディングスに転職されて約8カ月ですが、事業が成長を続ける中、岩本さんご自身はどのような展望をお持ちですか。
岩本:
PwCアドバイザリーへの転籍時もそうでしたが、新たな環境に移るとおよそ3カ月経てば、自分の中で業務の整理ができます。今回は業務の幅が広いこともあり、整理に半年ほど時間を要しました。まだまだフォローし切れていない業務もたくさんある状態です。まずはそれらの業務を整理することで、成長企業を支える土台をしっかり築いていきたいです。
個人としての中長期的な展望は、マーケティングに財務管理の視点を取り入れて営業に積極的に参画していくことです。
山口:
CFOが担当するのは主に守りの領域ですが、さらなる成長や変革のためには戦略的な資金調達など攻めの役割も求められるかと思います。成長の土台をしっかりと用意しつつも、よりアクティブに事業の拡大に貢献する。そんな岩本さんの展望にとても刺激を受けます。最後にPwCに対する期待について伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
岩本:
串カツ田中ホールディングスが今後も継続的に成長していくのであれば、M&A案件なども複数発生する可能性があると思います。その時にはぜひ力をお借りしたいですね。また管理職の採用では、候補者の経験やスキルが本当に当社にマッチしているのか、把握が難しいという課題があります。アルムナイネットワークでは人材に関する良い出会いや情報交換も期待しています。
山口:
PwC Japanグループには多様な専門家が在籍しており、さまざまな経営課題の解決を第三者視点でサポートできるはずです。皆さんのお困りごとに対して、私たちがサポートできる関係性を構築できれば幸いです。本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。
(左から)岩本 一将氏、山口 雄司
岩本 一将
株式会社串カツ田中ホールディングス 執行役員 管理部長
2006年、 あらた監査法人(当時)に入社後、金融部にて会計監査業務に従事後、PwCアドバイザリーに転籍し、財務デューデリジェンス、事業計画作成をはじめとして幅広く事業再生支援を実施。2022年に訪問看護・障がい者支援事業を行うベンチャー企業にて経理部長として入社後、執行役員管理本部長として、IPOに向けての準備を実施。
2024年に串カツ田中ホールディングスに執行役員管理部長として入社。入社後、管理部門の体制構築、IR対応、子会社の設立、M&A及びPMI業務に従事。
山口 雄司
PwCアドバイザリー合同会社 パートナー
2006年あらた監査法人(当時)に入所し、上場会社の法定監査、米国上場子会社の米国基準監査、PwCネットワークの海外拠点へのレポーティング業務などに従事。2011年から約2年間PwC米国に赴任し、SEC上場クライアントのグループ監査人として、各国の子会社監査チームの管理も経験。2015年にPwCアドバイザリー合同会社に転籍し、PMIやカーブアウト、グループ再編プロジェクトを数多く支援。