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PwC税理士法人 パートナー デジタル課税対応支援、税務ガバナンス構築支援
経営層の意思決定を高度化する税務機能の構築を支援
グローバルレベルでの税制改革や地政学リスクの高まりを背景に、企業経営における税務の位置付けも変わりつつあります。「適切に申告・納税していればよい」という認識で語られることも多かった税務ですが、経営の意思決定の質を左右する戦略テーマとして捉えるべきです。BEPS2.0 でのグローバル・ミニマム課税(Pillar2)への対応に加え、海外税務についても、国内税務と同じレベルで管理しなければならない局面が増え、「どのような体制でグローバル税務を管理するべきか」「本社として海外子会社をどのように統制していくべきか」といったテーマへの経営層の関心は、以前より高まっています。
また、経営層の意識変化を後押ししているのが、外部環境変化のスピードと複雑性の増大です。海外企業との競争が前提となる中で、「競合他社はどのような税務戦略を取っているのか」「税負担の構造差が、中長期の競争優位性にどう影響するのか」といった議論が、取締役会などでも行われる傾向にあります。さらに、関税政策の急変や国際情勢の流動化により、税務部門には事業環境の変化をリアルタイムに把握し、経営判断に必要な情報を先回りして提供する「前方展望型」の機能が求められるようになっています。
今や、「何も対策を講じないことが、税務リスクとなり得る時代」と言えるのではないでしょうか。単なる税務上の誤りやコンプライアンス違反だけが税務リスクではありません。税コスト構造の違いにより年間数百億円規模のキャッシュフロー差が生じる、というケースも起こり得ます。これは10年単位で見れば、研究開発投資や成長投資に充てられる資金が数千億円単位で変わってくる可能性があるということです。しかしこうした問題の本質は数字そのものだけではなく、差が生じることに気づかない、あるいは気づいても経営判断に反映できない「意思決定プロセスの不在」にあると考えます。税務機能の高度化や体制整備を進めない場合、不要な税コストを負担し続けるだけでなく、判断に必要な情報が経営層に届かないまま、戦略的な機会を逸するリスクも懸念されます。
経営層は今後、税務を単なる申告・コンプライアンス機能としてではなく、意思決定を支える情報基盤として捉えていく必要があります。企業の税務部門において、「どの地域で投資誘致が進み、税制優遇が強化されるのか」「どの国で事業展開することが、自社にとって最もメリットが大きいのか」といった情報を先回りして分析し、経営へ提言することも期待されると考えます。例えば、地政学リスクやサプライチェーン再編による外部環境変化の中、関税政策や国際情勢の変化が自社の税負担や事業収益にどのような影響を与えるのか――そうした情報についても迅速に収集・分析し、経営の判断材料として届ける機能が必要となります。すなわち税務部門には、「経営インテリジェンス」のような役割も必要とされるのではないでしょうか。
とはいえ多くの税務部門では、税制改正対応や申告業務、各国当局へのレポーティング対応に追われがちであるのが現状です。本来、FP&A(Financial Planning & Analysis)のような経営管理機能の中に税務を組み込み、将来を見据えた分析やシナリオ検討にも時間を割いていくことが理想ですが、そこまで十分に手が回らない企業も少なくありません。税の透明性に対する社会的要請も高まる中、政府、投資家、地域社会、消費者など多様なステークホルダーがそれぞれ異なる期待を企業へ寄せているので、「自社としてどのような納税方針を持つのか」を、まずマネジメント自身が説明できることが重要になっていくのではないでしょうか。
どの税制メリットを活用し、どの施策は採用しないのか――その判断には、企業としての価値観や行動規範が問われます。テクノロジーで税務インパクトを分析し、可視化された選択肢を基に、どのような意思決定を行うのかは、経営層の領域です。グローバルビジネスのスピードが加速化、複雑化し、経営環境の不確実性が増す中で、経営判断の精度と対応力の向上に税務情報をいかに生かしていくのか。今、経営層には、そうした視点から税務と向き合う姿勢が求められているのではないかと考えます。
税務機能の高度化を考える上で、特にグローバルに事業展開する企業においては、各国・地域に分散する税務情報を統合的に俯瞰し、迅速に経営判断へつなげる情報ハブとしての体制は重要です。各拠点が個別に最適化された運営を行っている状態では、グループ全体としての税務ポジションが見えず、経営層が適切な判断を下すための情報が揃いません。これまで地域ごとに税務運営を委ねてきた日本企業も、今後はグローバル全体を見据えながら、情報がどのように経営判断へ届くのかという「情報フロー」の観点から、体制や人材配置を設計し直す必要があります。
こうした体制を構築していく上では、社内人材の育成・内製化と外部委託の活用を、どのように組み合わせるかといった点が重要になります。企業としては、外部委託を「コスト」と捉えがちですが、「定型業務に人材を張り付け続けることで、経営判断に資する分析や提言にリソースを振り向けられなくなる」という「機会コスト」の視点を持つ必要もあるのではないでしょうか。今後さらに人材不足が進む中で、「その業務を本当に社内の人材が担うべきなのか」「経営への情報提供や戦略的な分析にシフトした方が、企業全体にとってプラスではないか」といった視点で、人材配置を見直していくことも肝要です。
テクノロジー活用についても、単なる効率化だけでは捉えず、税務部門が経営に対して「問いの質」をどこまで高めることができるか、という点に注目すべきと考えます。業務の自動化やAIの活用は、処理速度を上げるだけでなく、税務部門からの戦略的な論点――例えば地政学的変化による不確実な環境下での最適な事業配置や、制度改正の先にある中長期の税務シナリオなど――にも向き合う余地を生み出すと考えます。内製化か外部委託かを二項対立で考えるのではなく、「自社の人材が、最も経営判断の質の向上に貢献できる役割は何か」という視点から、適切なバランスを設計していくことが経営に求められていくのではないでしょうか。
税務担当者の現場でのテクノロジー活用はより一層進んでいくと思われますが、AIや自動化プロセスへの「過信」には十分な注意が必要と考えています。今後、税務担当者には、テクノロジー活用によるアウトプットを客観的かつ批判的に検証する「クリティカルシンキング」が必要となります。テクノロジーに何を任せるかという業務設計の課題に加え、出力結果をどのような視座で評価し、経営判断にどう結びつけるかという、人の「判断の質」が問われています。税務知識だけではなく、事業環境、地政学、テクノロジー、関連リスクを横断的に捉え、経営の意思決定に対して全体最適の視点で提言できる「総合力」――それこそが、今後の税務プロフェッショナルに求められる中核的な能力だと考え、私たち自身も進化し続けていきます。
私たちPwCネットワークでは、税務領域だけではなく、法務・コンサルティング・リスク・テクノロジーなど各分野における国内外の専門家が連携しながらお客さまの経営課題に向き合っています。人材とテクノロジーをどのように組み合わせ、税務機能を「経営インテリジェンス」へ進化させていくのか――私たちはその変革を、ネットワークを駆使して総合的に支援していきたいと考えています。
◆略歴
2003年入社。2010年10月~2013年9月にかけて、PwCオランダ法人アムステルダム事務所に出向。現地進出している日系企業に対する、オランダおよび日本税務アドバイス、欧州企業による日本投資に関する税務アドバイスを提供。帰国後、M&Aや事業再生事案に関与した後、インターナショナルタックスグループのリーダーとして、クロスボーダーストラクチャリング、M&A、買収後のポストディールリストラクチャリングに関する税務や、税務機能のデジタル化、国際税務部門の立ち上げ支援、税務ポリシーの策定、リスク管理における税務アドバイス、税務業務のトランスフォーメーションなど、多岐にわたる業務に従事。現場での実践経験を基盤に、近年は税務機能を「経営インテリジェンス」へ変革するための構想策定から実行支援まで、一貫した伴走型アドバイザリーに注力している。
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