監査業務変革への取り組み2018年版

監査にAI(人工知能)技術を応用するにあたり、監査業務の変革という観点から重要となる要素は、機械学習、自然言語処理、監査プロセスの自動処理です。これらの技術は、多くの作業を自動化し、意思決定を支援することで監査のあらゆる分野で大幅な業務改善に役立つことが期待されています。ただし、AIは課題を解決するためのツールであり、課題を定義することはできません。よって、このような技術を適用するためには、監査の課題を特定することが重要です。

本稿では、現代の監査が抱える課題を明確にし、AIを監査に適用した場合の具体例を検討した上で、監査人および被監査会社へ与える影響、将来の監査人の役割について考察しています。

先進テクノロジーの活用で目指す
より高品質な監査の在り方

テクノロジーの利用と多様なリソースを組み合わせることで、監査の業務プロセスを変革し監査品質の向上と効率化を促進します。

また、業務のデジタル化を通じて蓄積したデータを活用し、インサイトを提供します。

将来のデジタル化や働き方改革に対応した監査業務の変革を行うことで、より高品質かつ効率的な監査を提供

現在のテクノロジーの活用

監査品質を支えるこれらのテクノロジーを利用することで、監査業務を効果的かつ効率的に実施しております。

Aura

PwCの監査アプローチが組み込まれたPwC全世界共通の電子監査調書システム

「Aura」は、2008年から導入された監査業務に関するグローバルな電子監査調書システムであり、PwCが全世界で実施する全ての監査業務に使用されています。

「Aura」に実装された複数拠点の監査をサポートするワークシェア機能と品質チェック機能を利用することにより、複数のロケーションにまたがる監査においても監査手続の重複や実施漏れを防止し、高品質かつ効率的な監査を実現しています。

特長

  • 体系的なリスクアプローチ
    被監査会社ごとに評価したリスクとその対応手続を視覚化
  • 監査品質のチェック機能
    各エリアにおいて適切な品質水準となるように自動判定
  • ワークフロー管理およびリアルタイムのモニタリング
    「Aura」と連携したアプリケーションの利用により、リアルタイムかつ視覚的に業務の品質や進捗状況のモニタリングが可能

Connect

被監査会社との監査関連資料共有システム

「Connect」とは、監査のあらゆる段階において、迅速、効率的かつ安全に被監査会社と情報共有を行うためのツールです。

特長

  • タイムリーなステータス管理
    • 被監査会社と監査チームの双方にて、タイムリーなモニタリングが可能
  • 安全かつ安心なデータ共有
    • 誤送信による情報漏えいのリスクを防止
    • セキュリティが確保されたウェブ環境を提供

Halo

膨大なデータ分析の迅速化や結果の視覚化を可能とするデータ利用監査ツール

PwCではデータ利用監査ツールとして「Halo」を開発しています。その一つである「Halo for Journal」は、コンピュータ利用監査技法(CAAT)による仕訳データの分析をより効果的かつ効率的に、そしてより視覚的に実施する新しいツールです。

特長

  • すべてのトランザクションが検索、検証、分析可能

PCS

確認状プロセスを電子化した取引残高確認システム

「PCS」は、確認状を徹底的に安全に作成、送付、回答、管理するためのウェブ・システムです。フレキシブル・テクノロジーの搭載により、売掛金やデリバティブ、ローン、在庫などあらゆる種類の確認状に対応できます。この画期的な確認手続の導入により、クライアント、監査人および確認先など全ての関係者にとって時間と労力の削減が可能です。

特長

  • 回答の迅速化・ペーパーレス化

Data Analytics

データ解析ツールを駆使し、監査の高リスク領域への深度ある分析の実施

監査リスクに関連する議論には、監査経験豊富な会計士や会計および監査以外の専門的な知識を持つ専門家など、さまざまなメンバーが関与しますが、その議論の過程や結果を被監査会社が理解することは容易ではありません。当法人では、データ解析ツールを駆使し、定量化と可視化を実現することで、監査における高リスク領域の説明能力を高めています。また、データ解析結果を被監査会社と共有することで、密度の高い議論を行っています。データ解析結果を活用しながら、各分野の専門家が関与した議論の過程を含め、被監査会社により多くのインサイトを提供しています。

監査業務変革への取り組み

新たなテクノロジーや研究開発、多様な人材を活用することで、監査業務の変革を推進します。

テクニカル・コンピテンシー・センター(TCC)の活用

公認会計士などの資格を有していない監査補助者を「オーディットアシスタント(AA)」として監査チームに配属し、分析表の作成や監査調書の作成などの監査補助業務を担当しています。

2017年10月にTCCの前身となるオーディット・アシスタント・オフィスを設置し、さまざまな監査チームから要望された業務を、各監査現場ではなくPwCあらたのオフィスにて実施する体制を整備しました。これをさらに拡大させ、AAが実施する監査補助業務のうち、監査現場で実施する必要のない業務を標準化し、集中的に実施するTCCを整備することで、監査品質を維持しながらさらなる効率化が可能になります。

RPA

RPAの取り組み

Robotic Process Automation(RPA)の導入により、従来は会計士が担っていた監査手続の準備のためのデータ加工や、データの見える化、単純突合作業などを会計士の手から移管し、価値ある業務にフォーカスさせることができます。

RPAと自動化を導入する上で重要なことは、業務の標準化とデータフォーマットの標準化を同時に進めることです。被監査会社ごとにデータフォーマットが異なることから、監査チームごとに監査調書のファイル形式や作業手順が異なることが多くありました。業務を標準化することで、データクレンジングにおける、RPAなどの活用の他、TCCも活用が容易となります。また、標準化されたデータを利用することでRPAを共通利用できるようになり、効率化の効果を最大化することができます。

さらには、公認会計士等の資格を有していないものの、テクノロジーのスキルを所持する監査補助者をテクニカル・スペシャリストとして採用しています。すでに個々の業務ではテクニカル・スペシャリストを活用したRPAの導入を進めています。

AI(人工知能)

AIの利用により「監査業務の効率化および高付加価値化」を実践

AIを利用した監査の研究開発

2016年10月に設立したAI監査研究所では、監査法人の知見とAI技術を融合し、さまざまな側面からの開発を行い、「監査業務の効率化および高付加価値化」を実践しています。

2018年4月に試験運用を開始した「AI会計仕訳検証システム」をはじめ、監査計画から実施、完了の各工程においてAIの導入を検討し、研究開発を進めていきます。

AIを活用した会計仕訳検証システム

AI会計仕訳検証システムは、PwCのデータ利用監査ツール「Halo for Journal」の仕訳データ全件を対象に、機械学習によって一定の法則性を読み取り、個々の仕訳がそれに合致するかを評価することによって、異常な仕訳を抽出します。監査チームは、AI会計仕訳検証システムを利用することにより、膨大なデータを網羅的かつ効率的に分析し、誤謬や不正の可能性を重点的に調べるだけでなく、人間が想定しなかったリスクや課題も浮かび上がらせることを目指します。今後は、本システムに「Halo for Journal」のより多くのデータを学習させることで異常検知の精度向上を図ります。監査業務への本格導入や、仕訳データの検証以外の分野へのAI活用も検討を進めます。

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