※本ページの内容は、2017年3月29日にPwC UKが発表したプレスリリースの抄訳です。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
「第50条の発動は英国の重要な瞬間を表しています。不安定な数カ月が過ぎ、英国はEUからの正式な離脱手続きを開始し始めました。」
「貿易、移民政策、関税に関する交渉を進めていくための挑戦には多くの議論や討論が必要です。EUとの継続的な関係構築を優先的に進め、これからも健全な関係を築くために努力しなければなりません。しかし、多くの人にとっては、『ビジネスのためのビジネス』が実現でき、ブレグジットの影響を、英国の新しい未来を作るためにどのように有効活用できるかに焦点を当てることが重要です。」
「政府はすでに『世界の英国』になるという大きな目標を掲げており、英国の多くの業界やサービスは世界をリードしているため、今こそが実現する機会であるとしています。われわれはこのチャンスを認識しており、変化を受け入れることは、経済的にも社会的にも英国の今後の成功に不可欠です。」
「離脱交渉は開始されたものの、今後の移民法に関する詳細はまだないため、英国在住のEU加盟国者は現在の法的な地位が不確実な状況です。」
「PwCでは、法律知識を持った移民チームが作成したガイダンスや人々の懸念に対処するためのサポート情報など、人々のためのサポートとアドバイスの提供を開始しています。」
「英国がEUから離脱する決断は私たちが住む環境を変えることは間違いありませんが、最終目的は変わっておらず、立ち位置も未だ同じです。人々の多様性は、さまざまな背景、起源、文化から得られた豊富な経験を持つことを意味します。これらの経験やスキル、専門知識、知識と組み合わせることで、われわれはクライアントに強力なサービスを提供することができ、主要なプロフェッショナルサービス企業のリード的存在であり続けることができるのです。」
「EUの国民投票プロセスにより、以下のようなギャップが明らかになりました。『若年層と老齢層』『都市部と地方部』『富裕層と貧困層』‐EUとの関係だけでなく、われわれのコミュニティやお互いの関係についても、アイデンティティについて考え直す機会となりました。」
「ブレグジットが始まったことで、われわれはそれらの人々の間のギャップを埋めるために協力しなければなりません。政府の産業戦略は、産業間および地域間のビジネス成長を支援する計画を立て始めています。」
「英国が経済的成功を収めるためには、全ての地域をフルに活用する必要があり、英国の地域間での生産性を向上させることに全力を注いでいます。」
「英国の金融サービス業界は、英国だけでなくヨーロッパやその他の地域にとっても非常に重要であり、2016年3月31日までに、英国の税収に714億ポンドの貢献がありました。第50条が発動された今、英国の金融業界は欧州連合(EU)加盟国ではない状態に適応しなければなりません。これからは、国内や国外市場やその顧客と再びアクセスできるような関係を作ることが非常に重要です。」
「新しい制度への完全移行は、既存の規制や新たな規制が作られるため2年以上かかると言われています。この移行の規模やペースは過去に前例がないものです。ある企業は完全移行に3年から5年はかかるとも予測しています。」
「金融サービス会社は、既存の契約の法的および規制上の妥当性が『既得権者除外条項』により大きく変化することを最も懸念しています。加えて、顧客を新しい契約に移す処理をするために必要な時間とリソースについて手配する時間が限られています。」
「規制当局によるライセンス申請など、本プロセスにはいくつかの問題が存在する可能性があります。銀行のリングフェンス規制やMiFID 2、商業的な圧力の継続などの世界的な不確実性が広がっています。従って、政府と規制当局は、現在の市場状態に対しての継続性を提供し、英国とEUの27カ国の市場の安定を維持する適切な移行計画に協力し合う必要があります。」
「資産運用分野は強く、革新的で回復力があります。これらのグローバル企業の多様性と英国への貢献は、この分野の継続的な成功に極めて重要なものです。」
「第50条の発動によって、資産運用管理者は長期にわたる確実性のある状況と、それに向けたタイムラインを得ることができました。企業は今、挑戦に立ち向かい、これからも顧客へ情熱とスキルを持ち英国のグローバルな資産管理業界を維持しなければなりません。」
「絶望的な時はすでに過ぎています‐企業は今、さまざまな離脱シナリオのための計画を固め、顧客を最優先に考えなければいけません。今後2年間に実施される予定のMiFID IIのようなEU法を遵守するための準備を引き続き進めることが重要です。」
「われわれは、EUとの交渉によってのあらゆる結果を含め、資産管理業界の強く、永続的な立場を維持するために、顧客と協力し続けます。」
「第50条の発動は、英国の保険市場と、英国、欧州、そして今後の全ての保険会社にとって重要な瞬間でした。ロンドンは保険の世界的な中心となる拠点であり、今後数カ月にわたる交渉は保険業界に非常に関係するものです。多くの保険会社は国民投票の後の時間を使って計画を立てており、今後の数カ月で実現していく予定です。」
「EUとの交渉で健全かつ活発な英国の保険市場を確実に維持するために、保険会社が政府、規制当局、貿易機関と定期的にコミュニケーションし続けることはとても重要です。」
「英国は世界的な保険市場のハブであり、EU離脱による変更が起こっても、その地位が維持されると確信しています。」
「英国の保険業界は非常に堅調で、過去数年間に大量の規制改革を経ています。ソルベンシーIIと保険販売業務指令(IDD)は、業界が今後の数カ月でクリアにすべき2つの主要分野です。既存またはすでに予定されている規制に変更が入るようであれば、業界として、英国が同等程度の何らかの形の保証を得るために、政府が可能な限り努力し、EU加盟国の参加を含む保険の世界的ハブとして維持されることを期待します。」
「われわれの不動産動向調査では、英国のEU離脱の未来動向への信頼感が明らかになりました。幅広い地理的な投資をしている世界の投資家は、英国の中長期的な見通しに対して、相対的に楽観視しています。」
「第50条の発動は、全ての業界の企業が、所有している資産にEU離脱がどのように影響するかを考える機会となるでしょう。不動産業界は、ブレグジットを世界的な政治的・社会的変化とともに活用して、英国不動産市場で必要とされているイノベーションの促進剤とすべきです。」
「われわれは地政学的な観点から不確実な時代を過ごしています。しかし、不確実な背景に対して、特に世界中の投資家からの不動産市場に対する信頼は、著しいものがあります。国境を越える資本の移動は、2017年を通して続いていくと確実に予想されます。」
「国民投票の余波において、不動産業界は英国市場に集中しすぎており、ブレグジットがヨーロッパの不動産市場全体に及ぼす影響はあまり考慮されていませんでした。企業は今後数カ月の全体的な交渉を視野に入れ、より広範囲なビジネス戦略にブレグジット計画を確実に含めるべきです。」
「第50条の発動は、EU国民投票の結果のような衝撃はなく、3月に十分起こり得ると予想されており、政府によって広く知らされていたので、それほどの驚きではありません。」
「英国と欧州の新たな関係が正式に合意されるまで、さらに2年間は不安定な日々が続く可能性が高いでしょう。この期間、金融不安の影響でポンド価値に影響を及ぼし、ビジネスと財務の信頼感の低下が見られるでしょう。英国と欧州の関係が未だ定かではないため、今後数年の間は膨大な投資を控えている企業もありますが、これらの要因は、第50条の交渉が進んでいる間に、英国の経済成長に多大なるダメージを与える可能性が非常に高いと言えます。」
「結果として、今年の英国の経済成長率は1.6%、2018年には1.4%に低下すると予想しており、これは2011年のユーロ危機以来の最も低い成長率です。長期的な視点から見れば他のEU諸国との交渉、EU市場へのオープンなアクセスを維持することが今後の成功に繋がるはずです。」
「欧州連合(EU27カ国)の議長は、EU議会の交渉義務に同意しているため、この数週間で結果が明らかになるだろうという見通しを示しました。」
「現実的に全てが可能だが、特に政治とタイミングによって大きく結末が変わるでしょう。両当事者が分離条項と順序付けに柔軟性を示し、EUが包括的な自由貿易協定が長期目標であることに同意すれば離脱プロセスは速まるでしょう。首相は、通知書を使って、将来の協力と貿易の見通しをEUに伝えることで今後の関係を構築する予定です。しかし、スムーズな移行は誰にとっても重要なことであり、どのような取引でも、過渡的なものであっても、結末は最後まで分かりません。」
「これから行わなければいけない最も重要なことは、早い時点で税関の協力や基準の認定などを終わらせ、貿易を促進できる実用的な措置を探らなければいけません。」
「また、英国は生産性と競争力を強化するための産業戦略の実施や、ターゲットを絞った輸出促進の支援を強く促進しなければいけません。米国、中国、インドなど、世界最大かつ最速の成長を遂げた経済との新たな貿易協定を打ち立てるには輸出主導の成長が鍵となるでしょう。」
「ビジネスにとって、今の時点はなるべくリスクを軽減し、新しい機会を活用する準備をする時です。」
「移民法案は、全ての法案の中で最初に可決される可能性が高いです。成長に影響を及ぼす政策があれば、企業はその影響に順応できる体制を維持しなければいけません。」
「第50条の発動は、英国と英国に暮らしている欧州加盟国者の移民地位の解決に繋がることを願っています。企業が効果的に将来の計画を立てることができる協議事項の1つ目となるでしょう。」
「企業は、以下の3つのことを実行に移さなければいけません。移民が既存の労働力に及ぼす影響の理解、それらのビジネスが公開された産業戦略とどのように機能を果たすかの完全な理解、第三国協定に関する討議への参加です。」
「私たちの調査では、多くの分野での主要なスキルのギャップが存在することが明らかになりました。今は、企業が将来のビジネス成長を確実にするために現在の問題点などを指摘し、交渉担当者に伝える時間です。」
「M&A取引などのディールに関する活動のハブとして、英国の将来は明るいという見方は変わりません。英国そしてロンドンは資本市場、法制度、国内の専門的人材のいずれも充実しているため、たとえEUを離脱しても、生活環境と労働環境は引き続き欧州で(独走態勢かどうかは分からないが)トップレベルです。」
「ディール市場は2016年の中盤、ブレグジット投票の影響を見極めるために一時的に低迷しましたが、年後半は力強く回復し、このまま2017年も好調が続くと見られます。ディールメーカーはすでにEU条約第50条をマインドに織り込み済みで、今後大きな影響が顕在化してくることはないと考えています。」
「EU条約第50条の発動は、税制改革を実施する具体的なきっかけになります。税制は優先順位の低い課題だと受け止められることもあるようですが、英国ではEUの税制が数多く施行されています。自営業者に課税する予算が強い反発を受けることからも分かるように、税制の変更には多くの困難が伴います。今すぐに協議を始めなければ、後々非常に複雑な事態を招く恐れがあります。」
「将来に適した税制を整備する機会が現実のものになっています。EUを離れれば優遇税制の自由度が高まるので、税制を活用して産業戦略を推進することが可能です。特定の産業、地域、集団を支援するために、税制を活用するチャンスです。」
「これが現実にどんな意味を持つのか、すなわち税制の全体像や国民の目に見える変化について、必要な協議をすべき段階に入っています。」
「英国のライフサイエンス産業は活況で、税収およびGDP全体に大きく貢献している他、高度スキル人材の雇用も提供しています。さらに命を守り、生活改善をもたらす医療技術も提供しています。」
「EU離脱によっていくつかの課題が生じることは避けられませんが、一方で英国の医薬・ライフサイエンス分野をさらに活性化し、世界のリーダーである現在のポジションを維持、もしくはいっそう向上させるチャンスを捉える機会が現実のものになっています。」
「PwCは英国製薬工業協会向けに、英国のライフサイエンス産業の経済効果に関するレポートを作成しました。ご覧になりたい方は以下のリンクからアクセスしてください。」
PwC analysis highlights economic footprint of UK Life Sciences
「エネルギー分野の投資は、その規模と期間から、今日の意思決定が実を結ぶのは数年後、時には数十年後になります。従ってこの分野では、一貫性のある規制と政策で投資を下支えすることが不可欠です。そのため優先して取り組むべきことは、エネルギー分野におけるEU離脱後の主要な政策や規制のあり方に関し、あらゆる機会を捉えてできる限り早期に関与することです。」
「英国のエネルギーおよび公益事業分野は他の多くの業界と同様、欧州市場へのアクセスをできるだけ多く確保できる形で離脱交渉が決着することを望んでいます。望まれるアクセスには、欧州のエネルギー取引市場、投資資金の調達源、モノと労働力の市場へのアクセスが含まれます。」
「英国の送電・送ガス網は欧州大陸と国際連系線で物理的に繋がっており、英国のエネルギー市場はそれに支えられています。他のEU加盟国27カ国との間で行われる調整において、この国際連系線の状況は重要な注目点になると思われます。ブレグジットが国際連系線の運用に悪影響を及ぼすことになれば、エネルギーの安定供給や適正価格維持がリスクにさらされることになりかねません。」
「エネルギーについては適正価格維持、安定供給、脱炭素という課題を同時に抱える三すくみ状態が続いていますが、これに適切に対処したいならば、英国政府は、EUのエネルギー市場に存在する数多くの規制にどう対応するのがベストなのかを検討しなくてはなりません。」
「テクノロジーはすでに私たちの経済の将来に変革とリバランスをもたらそうとしています。EU離脱後の成功のために、政府はテクノロジーを優先課題として取り組むべきです。そして英国全土にテクノロジーの集積と活発なイノベーションを促す適切な環境を作る必要があります。」
「英国には新しいテクノロジーの開発と利用を主導する理想的な基盤がすでにあり、機械学習などの分野では世界をリードしています。政府もテクノロジーを重視し、デジタル戦略やEU離脱後を見据えた投資などを実施していることは、明るい材料です。」
「今、力を入れるべきことは、柔軟な規制環境の構築、魅力的な移民制度の策定、全ての人を対象とした生涯スキル教育の提供、新テクノロジーの研究への投資です。EU離脱後の環境整備に向け、これらに注力することの重要性はこれまでになく高まっています。」
「テクノロジーの変化のペースは速いため、政府が、十分な柔軟性を備えた適切な枠組みを構築することが不可欠です。そうした枠組みが、テクノロジー投資とイノベーションをリードする地でありたいという英国のビジョンを、今も、将来も支えることになります。」
「企業も政府機関も同様ですが、ブレグジットから想定される影響を迅速に評価できる俊敏性を身に付ける必要があります。言い換えれば、将来の優先課題と機会を鋭く見極めると同時に、コストの管理と抑制にも十分な労力を割かなければならないということです。」
「不確実な時代をリードしていくためには、自らがコントロールできる問題に注力することが必要です。効率化を実現できる分野を特定し、今後の変化に対するコストの感応度を分析し、労働力計画を策定し、重要な取引先やサプライチェーンとの連携を検討することは、自社のコントロールの範囲内で可能です。例えば、サプライヤーとの取り決めを変更する必要があるでしょうか?あるいは既存の顧客ベースや収益源が制約を受けたり脅威にさらされたりしないでしょうか?」
「収益性の高い成長に向けて真っ先にスタートを切り、ブレグジット後のビジネスをリードするのは、自社の戦略に従いつつ、自らコントロール可能な対応策を迅速に実践できるよう、入念な計画を策定し、展開することができる企業なのです。」
以上
EU条約第50条発動に関するPwCのコメントに関する
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