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保険会社の多くがCOVID-19により、新しい働き方や交流の仕方など、業務や事業戦略の見直しを余儀なくされた。企業が歴史的な低金利への対応策として売却を行い、潤沢な資本を持つ買い手が新たなディール機会を模索するようになるにつれ、M&A活動は今後回復すると予想される。それでも、多くのディールメーカーがバランスシートや景気後退への対応に注力すると考えられ、M&Aは依然として弱含む可能性がある。
「COVID-19の流行拡大により、今年上半期の取引は減少した。7月を含め最近発表されたディールを見ると、M&Aが増加に転じつつある兆しが現れているかもしれない」
今後数カ月の取引に影響を及ぼすと考えられる要因は次のとおり。
歴史的な低金利:米連邦準備制度理事会(FRB)は景気回復を促進するため、長期にわたり金利を低位にとどめる可能性がある。低金利により保険業界全体、特に長期資産を保有する生命保険会社や年金保険のイールドが押し下げられるだろう。企業は株主価値を維持するため、おそらくM&Aを含む代替戦略を模索することになる。一部の保険会社では、もはや戦略の中核ではなくなった資本負担が大きいロングテールの事業ブロックの売却を検討するかもしれない。
潤沢な資金:過去最高水準にあるプライベート・エクイティや企業の買い手の余剰資金が、2020年下半期、M&A活動の回復を後押しする可能性が高い。低金利環境により保険市場への新規参入を模索する新たな投資家や資本の流入が期待される。
保険料率の上昇:損害保険、再保険、専門保険の保険料率引き上げへの期待が投資を加速させ、M&Aを促進する可能性がある。
InsurTech:COVID-19により、保険会社、ブローカー、代理人と保険契約者の交流の仕方が変化し、デジタルソリューションのニーズが加速した。保険会社の中には、社内の能力の再評価をした上で、InsurTech企業との取引を通じ、サービスや商品のギャップを埋めようとする会社も出てくるだろう。
規制/訴訟によるリスク:保険会社は、米国内外の規制・訴訟の展開、特に事業を中断した企業に対する補償の動向を注視すべきである。第2四半期、フランスの裁判所はAXAに対し政府が決定したロックダウンに起因するレストランの損失を補償すべきとの判決を出した。米国の保険会社への影響は不明だが、リスクは大きい。事業中断保険は、米国に拠点を置く多くの保険会社の主要な収入源となっている。
COVID-19の影響の全体像が明らかになるにつれ、破綻した企業の買収機会が浮上する可能性がある。説得力のある価格で売りに出されている資産にプライベート・エクイティや企業の買い手の注目が集まるだろう。
好調なスタート:第3四半期、M&Aは好調な滑り出しを見せている。すでにAllstate Corp.がNational General Holdings Corp.を40億米ドルの現金で買収する計画を明らかにしている他、KKR&Co.がGlobal Atlantic Financial Group, Ltd.の44億米ドルでの買収計画を発表している。
本レポートにおけるM&A取引の定義は、ターゲットが米国またはバミューダを本拠とする保険会社であり、かつ買収者が米国またはバミューダを本拠とする保険会社である合併・買収としています。また、米国でのプレゼンスが大きいケイマン諸島と英国を本拠とする企業の重要な取引も取り上げています。大型案件の定義は、取引金額が10億米ドル以上の取引です。事業売却の定義は、米国を拠点とする売り手による(会社全体の売却ではなく)会社の一部売却です。当社の見解は、業界で認知された情報源から提供されたデータに基づいています。本レポートで使用した金額および件数は、2020年6月30日現在でCapital IQにより提供された、取引額公表済みの取引の発表日に基づいており、これに当社の追加的調査を加え、補完したものです。
過去の期間に関係する情報は、過去に完了しているもののデータセットに反映されていなかった取引についてCapital IQが収集した新データに基づき、定期的に更新しています。取引情報はCapital IQを出典とし、買い手またはターゲットが保険業界のサブセクターに該当する取引が含まれています。保険業界のサブセクターには、生命・医療保険、損害保険、保険ブローカー、インシュアテック、その他(タイトル保険、金融保証、マルチライン保険など)が該当します。データ情報源では金融サービスに分類されていても、当社ではテクノロジーやその他のセクターに分類する(またはその逆の)取引があるため、情報に一定の調整を加えています。
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