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ヘルスケア産業における世界のM&A動向:2021年上半期アップデート

ヘルスケア産業におけるM&A活動は依然として活況であり、引き続き新規投資家の関心を集めています。

2021年上半期、一部の地域で新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが落ち着き始めた中でも、医薬・ライフサイエンス(PLS)およびヘルスケアサービス(HCS)は高い水準で投資家の関心を集め続けています。先進国では経済に対する楽観的な見方が広がっているものの、当該セクターは構造的に安定しており、また景気サイクル全体にわたって非常に良好な見通しが証明されていることから、多くの投資家は歴史的に見ても当該セクターが魅力的であると見立てています。M&Aのディールやバリュエーションは高水準で推移しており、このトレンドは今後1年から1年半は続くと予想されます。

パンデミックにより、私たちの生活の多くの側面でデジタル化が進展していますが、ヘルスケアも例外ではありません。現在進んでいるデジタル技術の採用は、患者ケアの提供から診療管理、高度な精密治療の開発まで、あらゆるものに影響を与えています。PLSでは、大規模な製薬会社が消費者志向のビジネスから離れ、イノベーション主導の価値創造に再び焦点を当てるようになっています。HCSでは、事業モデル全体が消費者主導の健康・ウェルビーイングサービスの提供に一層重点を置くようシフトしています。

このセクターでは高いバリュエーションに加えて、米国の特別買収目的会社(SPAC)や官民ディールなど、複雑な取引構造を伴うディールが数多く見られます。PwCが2021年1月のレポートで予想したとおり、パンデミックの長期的な影響は、ヘルスケア業界のビジネスごとに異なります。パンデミックの影響を軽減するためにバランスシートに多額の余剰資金を抱える企業は、今後数年間、M&A市場に大きな影響を与える可能性が高いでしょう。

「パンデミックは、個人の健康やウェルビーイングにおける脆弱性を浮き彫りにしました。資金力のあるテクノロジー企業が主導する案件や、大手食品会社が関与するディールが増えることが予想されます」

Tobis KlimpePwCドイツ、パートナー、グローバルヘルス業界ディールズリーダー

M&Aが活発な分野

今後半年から1年の間にM&A活動のホットスポットとなる分野は、以下であると予想します。

医薬・ライフサイエンス

  • 伝統的な大手製薬会社はM&Aに必要十分な手元資金を有しており、細胞・遺伝子治療や次世代治療といった科学の最先端に位置するバイオテクノロジー企業の買収に対して、引き続き関心を抱くと見られます。一部のバイオテクノロジー企業のバリュエーションが急上昇していることから、大手製薬会社は、ディールのストラクチャリングや提携に関してより創造的なアプローチを模索しています。
  • 医薬品製造開発受託(CDMO)は、mRNA技術や細胞・遺伝子治療など、差別化されたオファリングや専門的な能力によって、より高いバリュエーションを獲得することができます。
  • ワクチン以外では、迅速かつより洗練されたポイント・オブ・ケア診断(臨床現場での診断)が、パンデミックの管理で中心的な役割を担います。ディスラプターから革新的な技術が出現すると、投資やM&Aへの関心がさらに高まるでしょう。
  • 多くの国ではパンデミックへの注目が続く可能性が高く、全般的な健康とウェルビーイングを改善することができる消費者向け健康製品(例:ビタミン、ミネラル、サプリメント)の市場は成長を続け、投資家にとってますます魅力的なものになると予想されます。

ヘルスケアサービス

  • 専門的なケアや高齢者ケアは、引き続き投資家の関心を集めています。デジタルソリューションの導入および自動化は、今後もケアの過程全体で価値創造の機会を提供します。
  • プライベートエクイティ(PE)グループや戦略的プレーヤーが各地域での成長基盤構築や新たな市場への参入を続ける中、依然として高い水準でクロスボーダーディールが実行されるでしょう。
  • ヘルスケアシステムがコロナ禍で延期された数多くの手術を継続して行っていく中、待機手術に重点を置いている医療機器メーカーや民間のヘルスケアプロバイダーは買収対象として魅力を増すと考えられます。美容手術や、レーザー眼科手術などの自由診療手術を重視するビジネスでは、各国がパンデミックを抜け出すにつれて、消費者の繰延需要や家庭貯蓄の高まりに応じた需要の増大が見られるでしょう。

M&A活動の主なテーマ

業界固有のドライバー

PLS産業には、「治療法の革新」と「顧客体験とエコシステムの改善」という2つの主なドライバーがあります。細胞および遺伝子治療、mRNAおよびデジタル分析能力における最近の科学的および技術的発展により、業界の主要プレーヤーは主に治療法の革新に対して再び焦点を当てるようになっています。

言い換えれば、大手の戦略的プレーヤーは、非コア事業を縮小し、その代わりに専門的なプラットフォームを構築することに注力し、製薬コングロマリットから脱却していくということです。その結果、消費者向けのビジネス(市販品など)の売却や、スペシャリティファーマ開発会社、受託開発・製造会社、受託研究会社の買収などのディール活動の加速が見込まれます。また、急速に成長している日用消費財(FMCG)企業のような非PLS企業は、消費者への直接販売とデジタルマーケティングの専門知識をもって、こうした非コア事業部門から成長と価値を引き出すのに有利な立場にあると予想しています。

業界固有の ドライバー

ビジネスモデルのディスラプション

デジタル分析技術、スマート・ヘルス・デバイス、医療業務管理ソフトウェア、消費者中心のデリバリーモデル(顧客へ直接提供するデジタルセラピューティクスのオファリング開発を含む)があいまってPLSとHCSのビジネスモデルのデジタル化およびデジタライゼーションが進行していることから、既存プレーヤーのビジネスモデルに対する見方が変わり、クロスセクターのディールが促進されています。企業が製品およびサービスのポートフォリオの最適化に注力することで、業界のディールフローが加速しています。

PLSおよびHCS領域のプレーヤーは、それぞれのビジネスモデルを最新化するためにデジタルソリューションを活用し、支払者、プロバイダー、消費者との関わり方を合理化および改善しています。その結果、PLSやHCS企業はますますテック企業の買収や提携を行うようになっています。

ビジネスモデルの ディスラプション

地政学的発展

世界の多くの国が、パンデミックの発生に伴って社会的不平等やヘルスケア政策についての議論を熱心に行い、国家の政治的不確実性(日本、フランス、ドイツの選挙を含む)に対応しています。一方、中国は新しい地域の自由貿易協定である地域的な包括的経済連携(RCEP)を批准したほか、2021年から2025年の経済計画を発表し、地域のPLS業界の最大手へのさらなる投資(例として、BioNTechがワクチンでまず提携したのは上海を拠点とする多国籍コングロマリットのFosun)を推奨しています。今後半年から1年の間、特にバイオテクノロジー分野において、中国のさらなるクロスボーダーM&A活動が見られると予想されます。

地政学的 発展

ヘルスケア産業のM&Aの展望

ヘルスケアのコンシューマライゼーション

多くの国でパンデミックが長引く中、ビタミン、ミネラル、サプリメントなど、全般的な健康とウェルビーイングを改善できる消費者向け健康商品の市場は成長を続けるでしょう。FMCG企業のような新規参入企業は、消費者へのダイレクトマーケティングやデジタルマーケティングの専門知識を武器に、この分野のマーケティング戦略を刷新することで、消費者向けヘルスケアブランドの成長に弾みをつける可能性があります。

ビジネスモデルのディスラプション

ヘルスケアのバリューチェーン全体で、既存のプレーヤーと新規参入者が同様にエコシステムの強さを競うため、クロスセクターのディールは引き続き成長すると予想されます。企業は機敏性を維持し、ビジネスモデルを再構築してコーポレートポートフォリオの最適化に挑戦する必要があります。ますます複雑化するパートナーシップや代替的なコラボレーションモデルから価値を特定、交渉、実現する能力が、重要な競争上の優位性になります。

規制の不確実性と地政学的緊張

中国と一部の国々との間の地政学的関係は、引き続きある程度の不確実性を生み出しており、クロスボーダーM&Aを減衰させる可能性があります。しかし、それ以外の場所で通常の選挙やパンデミックへの対応として政治体制の変化が起こり得るという不確実性もあり、これにより今後6カ月間にわたってM&A活動が増加することも考えられます。特定の地域からの撤退を検討している企業は、政府が税制、規制、財政上不利な変更を行うことを見越して、撤退計画を加速する可能性もあるでしょう。

ヘルスケアサービスの統合とデジタル化

ヘルスケアのディール全体で、プライベートクリニックと専門ケアプロバイダーの継続的な統合が見られますが、両者はそれぞれの市場に分断されたままです。事業者は、デジタル化を推進し、デジタル化された診療管理とデジタルソリューションの採用を加速して、患者をケアジャーニーの中心に置き、さらなる価値を引き出す必要があります。

危機後、ワクチン後:勝者と敗者

以前のレポートでは、膨大な収益を生み出す新型コロナワクチンによる、業界へのキャッシュ流入を予想していました。これは、PLS業界全体にわたる市場支配力のバランスを破壊する強力な触媒となる可能性があります。M&Aは、成功しているワクチン開発事業者の間で、今後数年間、資本配分上の優先事項となるでしょう。ワクチン以外には、急速に高度化が進んでいるポイント・オブ・ケア診断が、今後パンデミックを管理する上で中心的な役割を果たすでしょう。

データについて

M&A動向に関する当社の見解は、業界が認める情報源から得られたデータに基づいています。特に本稿で取り上げたディール金額とディール件数は、Refinitivが2021年6月30日時点で提供し、2021年7月5日時点でアクセスした公式発表に基づいており、噂や取り下げられたディールを除外しています。さらに補足情報として、Dealogicと当社の独自調査からの情報も加えています。本稿は、Dealogicによる使用許諾に基づいて提供されたデータから導出したデータを含んでいます。かかる被使用許諾データの全ての権利はDealogicが留保しています。PwCの産業マッピングと一致させるため、原情報に特定の調整を加えています。当社ではメガディールの定義を、ディール金額が50億米ドルを超えるディールとしています。

※本コンテンツは、PwCグローバルが2021年7月に公開した「Global M&A Trends in Health Industries: 2021 Mid-year Update」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

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