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2021年上半期は引き続きコロナ禍にあったものの、M&Aのディール金額は2020年第4四半期からの好調な流れを受けて大幅に回復しました。小売、消費財、ホスピタリティ&レジャー業界ではすでに長期的かつ抜本的な変革が進行しており、極めて潤沢な資本や低金利、政府の景気浮揚策が相まってM&Aが加速しています。2021年初めのディール金額は、パンデミックが始まった2020年当初の水準から3倍増となっただけではなく、パンデミック前の2019年四半期の水準を超えました。
過去12カ月間は、機能獲得型のM&Aが増加しました。企業は消費者の嗜好の変化に対応するために重要な能力を獲得しようとしており、その方法は企業買収、パートナーシップや戦略的アライアンスといったM&Aの代替ソリューション、または少数持分の取得などさまざまです。2021年のディール案件の多くは、機動力の維持とデレバレッジ(負債圧縮)を目的としてポートフォリオを最適化しようとする企業の意図や、消費者と投資家の間でのがESGに対する意識を高まりが反映されました。さらにこの12カ月間、世界の資本市場はV字軌道を描き、従来型のIPOと特別買収目的会社(SPAC)の合併を含む株式公開は記録的高水準に達しました。SPAC合併は米国で特に人気を博している他、アジア太平洋地域と欧州でも一定の人気を得ています。
しかし、コロナ危機の影響が本格化するのはまだこれからです。小売、ホスピタリティ&レジャー業界の一部では、政府の支援・救援策で一息ついていますが、大半はパンデミックにより大きな影響をうけています。これを機に自社のビジネスモデルを再構築し、以前よりすでに実施しているトランスフォーメーションを加速させられる企業は将来、より強力に復活するでしょう。政府の救済措置が終了する2021年下半期には、リストラクチャリング型のM&A案件がさらに増えるとPwCはみています。
「2021年上半期は、能力獲得型M&Aの増加からM&A代替ソリューション、ポートフォリオの最適化や株式公開の急増など、いくつかのテーマが継続しました。私たちは、これらのトレンドは2021年年内も続くとみています」
小売、消費財、ホスピタリティ&レジャー業界のM&A案件は、2020年下半期から2021年上半期にかけて、アジア太平洋、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、米州の全ての地域市場で回復し、M&Aは経済回復の重要なけん引役となりました。これら3つの全地域において、2021年上半期にM&Aのディール件数、ディール金額がともに前年同期から回復し、パンデミック前の水準に戻りました。ディール金額は、SPAC合併人気化による増加分を差し引いた後でも増加しており、従来のプレーヤーが引き続き消費セクターのM&Aの過半数を主導していることがうかがえます。
「PwCはM&Aがけん引する資本主導型回復を想定していましたが、膨大なディール件数と米国におけるインオーガニックグロースへのニーズが引き続き売り手市場を活性化させています。米国の投資家はディールの潜在的価値を重視しつつ、規律ある投資を行っています」
「アジアの消費財および小売業界のM&Aは依然好調です。新しいイノベーションや参入企業が資本市場と投資家双方の注目を集めており、そのトレンドを主導しているのがオンラインブランドや新しい小売、食品・飲料会社となっています。このトレンドは2021年に加速すると私たちはみています」
「投資家主導の案件が増えるとともに、企業も自社のM&Aチームの人員を増やしています。パンデミックを乗り越えて強力なバランスシートを手に入れた企業は、成長を促進し、加速する消費者のトレンドを取り込む機会ととらえるはずです」
小売、消費財、ホスピタリティ&レジャーの業界では、2021年上半期にM&Aが活発になった分野がいくつかありました。その多くは下半期も活発に推移するとPwCは予想しています。
ポートフォリオの再定義は、2020年のトレンドを踏襲し、2021年上半期もM&Aをけん引する主な要因となりました。大手の小売、FMCG、コングロマリットは回復を示しており、将来を見据えた価値創造戦略に注力しています。これらの企業は、成長が見込めるカテゴリーやチャネル、市場での買収、または、ノンコア事業の売却と非戦略的市場からの撤退計画を組み合わせて、価値を創造するためにM&Aディールを継続しています。
例えば2021年3月、Nestléは、Metropoulos & Co.とパートナーシップを組むOne Rock Capital Partnersに北米地域の飲用水関連事業を売却すると発表しました。同社は、国際的な高級グローバルブランドへの集中を含む、グローバルウォーター事業の変革を継続しており、これはその取り組みの一環でした。同様に、Philipsは医療技術事業に集中するため、国内の電機事業を世界的な投資会社Hillhouse Capitalに売却すると発表しました。また、Kraft Heinzは、2020年末にナチュラルチーズ事業をLactalisに売却したのに続き、2021年2月にはPlantersを含むナッツ事業をHormel Foodsに売却することで合意したと発表しました。これは負債の圧縮と機動的ポートフォリオマネジメントを継続することで、成長を引き出すためです。同様の理由からReckittは、中国における幼児向けおよび子供向けニュートリション事業の戦略的見直しを実施した後、2021年6月に同事業をプライベートエクイティ(PE)ファームのPrimavera Capital Groupに売却するための正式契約を結びました。
英国では、大手のPEファームによる食料品業界への関心が高まっています。大手PEファームは大規模な不動産ポートフォリオを有しており、食料品業界が過小評価されている、あるいは魅力的であると判断しているためです。2021年2月にThe Issa brothersとPEファームのTDR CapitalがAsdaの株式を過半数取得したほか、最近ではWm Morrisonが、英国のスーパーマーケットチェーンの非公開化を争う米国のPEファンドからの関心の対象となっています。
ポートフォリオの見直しやカーブアウトに加え、企業が長期的な競争優位性を得るために戦略的なオプションを検討していることから、企業価値の維持・回復(value preservation)戦略を契機とする企業のM&Aも増えています。資金力のある企業や資本に余裕のあるPEファームは今後、そうしたチャンスに乗じてM&Aディールを行うとみられます。
この18カ月の間に、デジタル化や消費者への直接販売、店内体験とテクノロジーのコンバージェンス、非接触型の配達/決済オプション、ESG、ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(共生)(D&J)への配慮などのマクロトレンドが深化、加速しました。これらの業界の多くは、新規参入企業(ルール破り」が伝統的なビジネスモデルを破壊するための機能やビジネスモデルを示すものです。つまり、イノベーションとビジネスモデルの破壊することで成長する能力をあらかじめ保有している企業がある一方、「新規参入企業(ルール破り)」の企業を買収して、そうした機能を取り込みたい企業もあります。
例えば、Nestléは消費者への直接販売チャネルの強化を続けています。同社は2021年4月、米国を本拠地とするビタミンとサプリメント専業大手、The Bountiful Companyの買収を発表しました。同月、Unileverは、顧客基盤向けの強固なデジタルプラットフォームをもつ米国拠点の健康・ウェルネスブランド、Onnitの買収計画を発表しました。また、2021年4月には、東南アジアを拠点とする配車・食品宅配会社のGrabが、SPACのAltimeter Growth Corpを通じて株式を公開するという計画を発表し、当時、世界最大のSPAC合併となりました。最近では2021年5月、投資会社のKKRが、ニュージーランドを本拠地とする、持続可能な原材料を使用したハイミートペットフード企業Natural Pet Food Groupの買収を発表しました。eコマースの急成長、健康とウェルネスへの関心の高まり、意識の高い消費者、共同消費の継続的拡大が、こうした企業を魅力的な投資対象にしました。
破壊的創造をもたらす企業は、法人企業やPEファーム、SPACの魅力的な買収対象となっており、PwCでは、そうしたディールは2021年後半から2022年にかけて、このセクターのM&A案件の相当部分を占めると予想しています。
小売、消費財、レジャー企業は、時代遅れや、経営不振や買収対象の候補になることを避けるために、ビジネスモデルに経営上、財務上のレジリエンスを持たせる必要に迫られています。従来のビジネスモデルが脅かされるなか、企業価値の維持と創造的戦略のためのM&Aに常に目を向けています。多くの企業は、サプライチェーンの多様化、垂直統合、デジタルトランスフォーメーション、流動性の確保などを目的としてM&Aを検討しています。また、レジリエンスを高めるために事業再編(リストラクチャリング)を計画している企業もあります。
消費者はオンラインショッピングと実店舗でのショッピングの融合が続いており、eコマースや実店舗を展開する企業は、市場シェアの拡大、消費者データのアクセス、新たなチャネルの獲得のために、M&Aの活用が多くなっています。例えば、中国のAlibabaはハイパーマーケットおよびスーパーマーケットを運営するSun Art Retailの株式を取得し、オンラインと実店舗が統合されたしたショッピング体験を提供することにより、デジタル領域での存在感を高め、より多くの顧客にアクセスできると期待しています。日本では、同様の理由から、KKRとeコマース小売の楽天が共同で、日本のスーパーマーケットチェーン、西友の株式の過半数を共同で取得しました。
各社はこの12カ月間、M&Aに加え、新たな市場やチャネルへの参入、デジタル能力の向上を目的とした、パートナーシップの締結も行ってきました。例えば、英国のMarks & Spencerは自社の魅力を高め、オンラインでの成長を加速させるため、サードパーティーのブランドを自社のウェブサイトと実店舗の両方で販売することに合意しました。2021年6月には、Carrefour Groupは新しいデータとリテールメディア戦略の一環としてLinksプラットフォームを発表しました。このプラットフォームは、デジタルマーケティング企業3社との共同開発によるもので、実店舗とオンラインの両方でよりパーソナライズされた体験を提供し、今まで以上に顧客の期待に応えることを目指して設計されています。
さらに、ここ数カ月は、オンデマンドの食料品配達でのパートナーシップが増加しています。例えば、英国のスーパーマーケットMorrisonsはオンライン販売の拡大と配達時間短縮のため、Amazonと食料品のデリバリーサービスで提携し、Tesco社は1時間以内に配達するWhooshという新しいサービスを試験導入しています。
私たちは、従来型の買収合併でも、戦略的アライアンスとパートナーシップ契約を通じた代替手段でも、これらのトレンドが続くと予想しています。
COVID-19のパンデミックは、デジタル化、イノベーション、消費者への直接販売、ESGへの配慮を加速させ、小売、消費財、レジャー企業が直面する大規模な破壊への転換をもたらしました。M&Aは、各社が企業価値を維持または回復、そして創造に向けて機動性を維持し、レジリエンスを組み込むのに役立つ不可欠な要素であると考えられています。
パンデミックが実店舗型の小売企業とホスピタリティ&レジャー企業に与えた直接的な影響は、経済が回復し、政府による救済措置が終了する2021年にかけて解消されていくでしょう。それにより統合や不良資産の売却が進み、ビジネスモデルが古く問題を抱えている企業の破綻件数が増えると予想されます。
2021年にかけては、上述の3つのテーマに基づいたM&Aがけん引し、コラボレーションやパートナーシップの促進、IPOやSPACの合併、リストラを目的としたM&A案件が増加すると考えられています。
データについて
M&A動向に関するPwCの見解は、業界で認知されている情報源から得られたデータに基づいています。特に本稿で取り上げたディール金額とディール件数は、Refinitivが2021年6月30日時点のデータに基づきた公式に発表された取引にに基づいています。さらに補足情報として、DealogicとPwCの独自調査からの情報も加えています。本稿は、Dealogicによる使用許諾に基づいて提供されたデータに由来するデータを含んでいます。Dealogicは、被使用許諾データのすべての権利を留保しています。PwCが定めるの業界とのマッピングと一致させるため、原情報に一定の調整を加えています。また、PwCではメガディールの定義を、ディール金額が50億米ドルを超えるディールとしています。
※本コンテンツは、PwC米国が2021年7月に公開した「Global M&A Trends in Consumer Markets: 2021 Mid-year Update」を翻訳したものです。
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