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2015年に開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)におけるパリ協定※1の採択以降、各締約国は温室効果ガス(GHG)削減に向けた目標を設定し、地球温暖化や気候変動は国際的な課題としてより一層の注目を集めるようになりました。本レポートでは、気候テックを「エネルギー」「モビリティ・輸送」「気候変動管理と報告」「金融サービス」「温室効果ガスの回収・除去・貯留」「食品・農業・土地利用」「工業・製造業・資源管理」「建築環境」の8分野※2に分類し(図表1)、PwCコンサルティング合同会社独自の分析ツール「Intelligent Business Analytics(IBA)」を用いて、各分野のグローバル技術トレンドや国・地域別の動向、プレイヤー観点の分析を行いました。少子高齢化と人口減少によって日本の経済規模の縮小や国際競争力の低下が懸念される中で、日本が競争力を維持・強化するためには、スタートアップや大学・研究機関の競争力を総合的に高め、それぞれが連携する必要があると考えられます。また、気候テックに関連する産業立地について、政府の役割を主導から支援へと変える方向性が議論される中で、各プレイヤーおよび自治体が客観的な現状分析に基づき戦略的に競争力強化に取り組むことが、より重要になるのではないでしょうか。
図表1:気候テックの技術分類
出所:PwC「2021年版気候テックの現状 脱炭素ブレイクスルーの拡大に向けて」※2
「エネルギー」分野には、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー、原子力発電や核融合発電、水素など、ゼロカーボンやカーボンオフセットに寄与する先進エネルギーに関する技術の他、その他燃料合成技術などが含まれます(図表2)。エネルギーを「つくる」段階では、発電・製造の設備、装置や部品といった設計・製造・開発に加え、これらの管理・制御技術などが含まれます。エネルギーを「送る」~「使う」段階では、送配電と制御技術の他、水素の貯蔵・輸送に関する技術、電気または多様なエネルギーを管理・制御する技術、充電ステーションや水素ステーションといったインフラ、エネルギー再利用技術などが含まれます。このように、GHG低減やエネルギーロス低減に貢献する幅広いエネルギー関連技術から構成される領域です。
図表2:「エネルギー」分野に関する技術の概観
出所:PwC作成
図表3は、IBAによって現在の技術トレンドを分析したもので、縦軸が技術クラスターの市場期待値(マイノリティ出資額)、横軸が技術スコア(技術の成熟度)、円の大きさが特許出願規模を表しています。このチャートは、技術スコアと市場期待値によって4つの領域に分けることができます。領域1は技術シーズの探索を行う領域、領域2は今後技術開発が進む可能性が高い領域、領域3は技術開発が進み投資も進められていて市場形成の中心となっているトレンド領域、領域4は技術開発が長く続けられており技術的に成熟しつつある領域と定義しています。クラスター名の冒頭の数字は、便宜上のクラスター番号を示します。
「太陽光発電(先進半導体太陽電池と周辺回路・部品)」「再生可能エネルギーのエネルギー管理システム」は技術スコア、市場期待値ともに高く、市場形成の中心となっている技術領域であることが分かります。領域2には、「先進エネルギー技術によるエネルギー生産」の技術クラスターが位置しており、技術開発の余地がまだありつつも大きな投資を集めており、今後さらに技術開発が進む可能性が高いと言えるでしょう。領域4には、「太陽光発電(部品、インバーター、監視技術)が位置しており、技術開発が長く続けられてきた結果、技術的に成熟していると考えられます。領域1には、風力発電や数多くの原子炉関連の技術クラスターなど、技術スコアも市場期待値もまだ十分ではないものの次世代のトレンドになりうる技術クラスターが含まれます。
図表3:「エネルギー」分野に関する各技術の市場期待値、技術スコア、特許出願数
※2014年-2024年のデータを対象に分析
出所:PwC作成
市場期待値が高いクラスター「先進エネルギー技術によるエネルギー生産」に含まれる特許について、国際特許分類(IPC)に基づき、エネルギー種類別の特許数の割合を示したものが図表4です。太陽光発電や風力発電に関連する特許の割合が高いことが分かります。再生可能エネルギーとしては他に太陽光集熱や潮力・波力発電に関する特許割合が比較的高く、電池や核融合、水素に関連する特許も含まれます。
図表4:「先進エネルギー技術によるエネルギー生産」に含まれるエネルギー種類別の特許数割合
※小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%とはなりません。
出所:PwC作成
同クラスターに含まれる重要特許(同一IPC分類における被引用回数の上位5%を占める特許)※3について、IPCに基づくエネルギー種別ごとに出願先国・地域を分析したものが図表5です。ここでは、影響度の高い特許に着目するために、重要特許を用いて分析しています。エネルギー種別によって出願先国・地域に特色があり、出願先国・地域の自然的要因や政策などに関連していると考えられます。
太陽光集熱関連特許は中国への出願が80%以上を占めており、日照量が多く広大な土地を生かしていること、政府が積極的に利用を促進してきたことが関係しているものとみられます。潮力・波力発電についても、中国への出願が80%以上を占めており、企業や大学が技術開発を推進していることがその背景にあると考えられます。
核融合については、米国出願が約60%を占めています。米国では、エネルギー省(DOE)が「DOE核融合エネルギー戦略2024」※4を発表しました。「核融合イノベーション研究エンジン協力」などで民間への投資を強化する方針を示すとともに、AI市場の拡大に伴い見込まれる膨大な電力需要を賄ううえでも核融合を必要不可欠な技術と位置付け、政策として推進しています。なお、ITER(国際熱核融合実験炉)※5に積極的に参加している欧州への出願が約10%を占めています。欧州連合関連機関(EUROfusion)が策定した「核融合エネルギー実現に向けた欧州研究ロードマップ」※6においても核融合発電所の必要性が述べられています。「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」※7を政府政策とし産業化のビジョンに掲げる日本も、出願先として5%を占めます。
水素関連特許は、中国出願が60%以上を占めています。中国は「水素エネルギー産業発展の中長期計画」※8を公表して水素インフラの建設を推進している他、第14次5カ年計画期間には交通・エネルギー貯蔵・発電・工業の分野で産業イノベーション応用モデルプロジェクトに取り組んでいます※9。次世代クリーン水素技術の研究開発、実証、利活用を推進するため6,000万ドル以上を投資するとした米国への出願が、約20%と続きます※10。グリーンディール産業計画※11や欧州脱炭素化政策パッケージ(Fit for 55)※12などの中で水素を重要要素と位置付ける欧州、世界に先駆け水素基本戦略※13を策定した日本については、出願割合としては10%未満にとどまります。
図表5:「先進エネルギー技術によるエネルギー生産」に含まれる重要特許のエネルギー種別ごと出願先国・地域
出所:PwC作成
ここではエネルギー分野にフォーカスして分析結果を紹介していますが、詳細版レポートにおいては、気候テック8分野に関する分析について述べています。
続いて、プレイヤー(大学・研究機関、スタートアップ、スタートアップを除く企業〈以下、企業〉)の観点から分析を行い、日本の特徴と取り組むべき方向性について考察します。「エネルギー」分野のうち、IBA分析結果より市場期待値が上位の技術クラスター「先進エネルギー技術によるエネルギー生産」および「太陽光発電(先進半導体太陽電池と周辺回路・部品)」について、国・地域別の技術スコア平均値をプレイヤーの種類ごとに示したものが図表6です。技術クラスターごとに、国・地域別に大学・研究機関、スタートアップ、企業それぞれについて技術スコア上位30プレイヤーを抽出し、それぞれ技術スコアを平均化しています。
いずれの技術クラスターにおいても、日本は他の国・地域と比較して、企業のスコア平均値に対するスタートアップのスコア平均値が小さいことが見て取れます。「先進エネルギー技術によるエネルギー生産」については、日本の企業スコア平均値に対して、大学・研究機関およびスタートアップのスコア平均値はマイナスの値となっています。米国の企業スコア平均値は日本と比較して低い値ですが、スタートアップのスコア平均値がこれを上回っている点を踏まえると、相対的な差は顕著です。「太陽光発電(先進半導体太陽電池と周辺回路・部品)」においては、いずれの国・地域についても企業スコア平均値が最大である点は共通していますが、それに対するスタートアップのスコア平均値は、日本では顕著に小さいと言えます。大学・研究機関のスコア平均値も、米国や欧州に比較して相対的に小さいことが分かります。
図表6:国・地域別の技術スコア平均値のプレイヤー種類間比較
出所:PwC作成
これらの結果から、少なくとも市場期待値が高いこれらの技術に関して、日本では大企業が技術開発をけん引しており、大学・研究機関およびスタートアップの相対的な技術力が育っていないと推測されます。少子高齢化と人口減少によって日本の経済規模の縮小や国際競争力の低下が懸念される中、企業、大学・研究機関、スタートアップの競争力を総合的に高め、それぞれが連携することによって、効率的に国際競争力を向上させていく必要があると考えられます。
関連する施策として、文部科学省は2023年度より、「革新的GX技術創出事業(GteX)」および「先端的カーボンニュートラル技術開発(ALCA-Next)」といった基礎研究や人材育成および産学連携を支援する事業を開始しています※14。また、日本における気候テック分野のスタートアップが諸外国と比較して少ないことへの懸念やスタートアップ振興の重要性については、産業立地政策の観点からも議論されています※15。日本では高度成長期以降、政府主導で産業構造・立地に係る政策を推進してきましたが、不確実性が高まる状況を踏まえ、競争力強化を目指す企業を主体とし、それらを政府が支援する方針が議論されています※16。こういった中で産業立地においては、インフラとの整合性や、スタートアップやベンチャー企業などの参入を含む計画の競争力・成長性、自治体などによるコミットメントが重視されると見込まれます※16。このような背景を踏まえ、データに基づき客観性ある技術動向や競争力の分析も活用しながら、企業やスタートアップ、大学・研究機関、自治体が一体となって戦略的にビジョンを策定し、気候テックやGX技術の開発と産業立地による競争力強化に取り組んでいく必要があるのではないでしょうか。
「Intelligent Business Analytics(IBA)」は、特定技術領域のグローバル特許データと企業の財務・投資情報をAIにより分析する新たな戦略分析ツールです。特許技術の質的分析と企業投資の定量分析が可能であり、技術トレンドや企業の技術ポートフォリオを市場視点で俯瞰するなど、さまざまな機能を備えています。IBAコンサルティングサービスは、マクロトレンドや各企業の技術戦略を理解し、企業の戦略検討に新たな洞察を提供します。
IBAは、特許、財務、投資に係るデータを活用しています。ビジネスデータと技術データの組み合わせにより、新規事業開発、研究開発戦略立案、アライアンスパートナーあるいはM&A候補先の探索、技術デューデリジェンスなど、さまざまなユースケースに適合します。また、個社の技術ポートフォリオを可視化するとともに、企業の財務データや特許データのドリルダウンを実施できる点も他社との差別化要素となっています。これにより、トレンド把握によるアイデア発想と仮説検証の両方が可能となり、より具体的で強固な新規事業開発や研究開発戦略立案を実現できます。
※本コンテンツは、PwC Japan Group『Global Climate Tech Trends: Current Status and Future Outlook for Japan』を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。
※1 「The Paris Agreement.」United Nations Climate Change
https://unfccc.int/process-and-meetings/the-paris-agreement
※2 「2021年版気候テックの現状 脱炭素ブレイクスルーの拡大に向けて」PwC
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/2022/assets/pdf/state-of-climate-tech.pdf
※3 「重要特許が企業の財務データに及ぼす影響の一考察」杉光・立元 他 2023
http://fdn-ip.or.jp/files/ipjournal/vol24/IPJ24_26_38.pdf
※4 「Fusion Energy Strategy 2024」U.S. DEPARTMENT of ENERGY
https://www.energy.gov/sites/default/files/2024-06/fusion-energy-strategy-2024.pdf
※5 ITER ITER Organization
https://www.iter.org/
※6 「THE ROAD TO FUION ENERGY」 EUROfusion
https://euro-fusion.org/eurofusion/roadmap/
※7 「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」2024年8月 内閣府
https://www8.cao.go.jp/cstp/fusion/7kai/siryo2.pdf
※8 「水素エネルギー産業発展の中長期計画(2021~2035 年)」2022年3月 中国 国家発展改革委員会・国家能源局
https://www.ndrc.gov.cn/xxgk/zcfb/ghwb/202203/t20220323_1320038_ext.html
※9 「中国における水素に関する動向」2023年4月 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 北京事務所
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/suiso_nenryo/pdf/031_06_00.pdf
※10 「Selections for Hydrogen and Fuel Cell Technologies Office Funding Opportunity Announcement to Advance the National Hydrogen Strategy」U.S. DEPARTMENT of ENERGY
https://www.energy.gov/eere/fuelcells/selections-hydrogen-and-fuel-cell-technologies-office-funding-opportunity-0
※11 「The Green Deal Industrial Plan Putting Europe's net-zero industry in the lead」European Commission
https://commission.europa.eu/topics/competitiveness/green-deal-industrial-plan_en
※12 「Fit for 55: Delivering on the proposals」European Commission
https://commission.europa.eu/topics/climate-action/delivering-european-green-deal/fit-55-delivering-proposals_en
※13 「水素基本戦略」2023年6月6日 再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/suiso_seisaku/pdf/20230606_2.pdf
※14 「GX実現に向けて アカデミアに求められる研究開発の 方向性について(議論の中間まとめ)」2024年10月 革新的GX技術開発小委員会
https://www.mext.go.jp/content/20241031-mxt_kankyou-000038563-1.pdf
※15 「GX産業構造実現のためのGX産業立地政策について -第4回 GX産業構造実現のためのGX産業立地ワーキンググループ事務局資料-」令和7年8月5日 内閣官房GX実行推進室
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/sangyoritchi_wg/dai4/shiryo.pdf
※16 「エネルギー・GX産業立地政策の論点」令和6年10月3日 内閣官房GX実行推進室
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/senmonka_wg/dai8/siryou2.pdf
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