業界のエコシステムを構築する:敵か味方か?

単体の組織は、企業全体の活動をより効果的に管理することによって利益を得ることができますが、ブロックチェーンの価値は、業界全体といった、より多くの関係者が参加することで何倍にも増加します。ブロックチェーンは、新しい産業のエコシステムの創造を必要とし、参加者はその中で協力し合わなければなりません。

ブロックチェーンにおける最大の課題は、ビジネスモデルを定義する一連の基準を一括で合意するために、利害関係者のグループを取りまとめることです。参加者は、参加規則やコストとベネフィットを公平に分かち合うことを保証する方法、共有アーキテクチャに対処するためにどのようなリスクとコントロールのフレームワークが利用できるのか、ブロックチェーンが設計されたとおりに機能することを保証するための継続的な監査と検証を含む、どのようなガバナンスの仕組みが整備されているかを決定しなければなりません。

重要ポイント

協力的な少人数にフォーカスする

業界全体で重要な問題について協力する伝統を持つ、小さなエコシステムから始めます。拡大する用意のある少数の利害関係者から始めてブロックチェーンを構築することも可能です。

ネットワークを広げる

ブロックチェーンコンソーシアムは、最新のテクノロジーに密着し続けるための有益なリソースです。業界独自の有効活用を模索しているコミュニティーを見つけるべく、既存の業界団体や同業組合に頼ることもできます。

バリューチェーンでの取り組み

競合分析を実施します。競合他社や新規参入者はすでにブロックチェーンを利用しようとしているでしょうか?パートナーシップの可能性はあるでしょうか?事業継続のためにブロックチェーンソリューションに参加しなければならないでしょうか?

解決の鍵は、競争相手の参加と信頼――暗号化とアクセス制御によって競合上の“機密”情報を漏えいさせないという信頼です。

数には力がある

現在議論されている航空宇宙産業のユースケースでは、航空機部品の性能を守るためのブロックチェーンを構築するために、機体製造者、航空機メーカー、整備、修理、オーバーホールのサービスプロバイダー、航空会社の全てが参加しました。それぞれが航空機の安全性と航空機の運航可用性の両方を最大化することに既得権益を有しています。具体的には、ブロックチェーンソリューションは航空機の寿命に関するデータ(航空機の運航実績および飛行中の航空機の構成(飛行機の全ての部品の運航実績の合計))や航空機を保守する要員の証明書を提供します。

この解決策の究極的な価値は、航空機の30年間にわたる寿命の間、さまざまな業界の参加者のデータを維持する能力です。ブロックチェーンの固有の特性によって、暗号化されたアクセスがある参加者が自らの利益のために競合他社のデータを活用することを妨げつつ、共有された台帳に競合各社のデータを共存させることができます。解決の鍵は、(データを提供するという形での)競合他社の参加と信頼――暗号化とアクセス制御によって競合上の“機密”情報を漏えいさせないという信頼です。

もう1つの例として、企業が重大な問題を抱える中で団結した事例として、食品の安全性が挙げられます。再瓶詰めされたビールから合成米まで、多くの不祥事が原因で、中国の消費者の間で食品に対する不信感が広がりました。これを受けて、大手Eコマース企業、国際的な栄養食品ブランド、物流会社などの業界リーダーが集まり、この問題に取り組みました。食品のサプライチェーンにおける信頼を構築するために、テクノロジーをどのように利用できるのでしょうか?これらの企業は、ブロックチェーン技術を用いて、偽造品や不正な食品を最小化するためのトレーサビリティの強化を可能にしています。

相互運用性と拡張性

エコシステムを作り出すにあたっては、技術的な課題があります。回答者の28%が、ブロックチェーンを成功させるための重要な要素として相互運用性を挙げています。異なる参加者がデータとトランザクションをブロックチェーンに入力する場合、そのデータは標準化されていなければならず、そのガバナンスは信頼性の高いものでなければなりません。例えば、標準的な命名規則とシステム全体のデータモデルは、全ての関係者によって支持されるよう開発される必要があります。

それ以上に、ブロックチェーンプロジェクトの成功に必要なものとして“拡張性”を挙げた回答者は40%に達しました。例えば、サプライチェーンの追跡調査に関して言えば、拡張性は一企業が解決できる問題ではなく、企業の集団が集合的な能力と力を結集して対処できる問題です。重要な拡張性の懸案事項は、テクノロジー自体にも関係しています。これは注視すべき重要な領域であり、また急速に進化し続けている領域です。例えば、より拡張性のあるブロックチェーンのインフラを開発または活用するスタートアップ企業によって、かなりの数のICOが実施されています。

図8:ブロックチェーンを構築するには何が必要か
図9:ブロックチェーンのリーダーとコンソーシアム契約

正しい運用モデルは何か?

重要な決定を下すための方法として、異なる所有者/運営者モデルがいくつかあります。スポンサー主導のモデルでは、1つの企業がブロックチェーンの「所有者」です。この企業は、費用、便益、構築の考慮事項を決定し、ネットワークの他の参加者に役務などの提供を請求します。所有者はまた、共有されたエコシステム参加者が遵守しなければならない基準を決定し、他の市場参加者にソフトウェアのライセンスを供与することができます。このモデルは、効果的に「市場をつくる」ことのできる非常に大きなプレーヤーにとって最も有効です。

他の企業は、費用、便益、構築および基準の責任を他の企業と分担し、共同所有者/共同運営者となることがより実用的であると判断するかもしれません。そして、これを実現する非常に効果的な方法の1つは、ブロックチェーンのインフラを担う市場公益事業体に影響を与える業界コンソーシアムや公益事業体の創設メンバーになることです。本調査において、すでに運用を開始しているアプリケーションを持っていると回答した15%の回答者のうち、驚くべきことにその88%がリーダーかコンソーシアムの活動的なメンバーでした。

例えば、製薬業界では、2023年までに完全な相互運用性を義務づける米国ドラッグ・サプライチェーン安全法の要求事項を基に、メディレジャープロジェクトが実施されています。食品については、食品安全アライアンスのブロックチェーンがあります。また貨物業界では、基準と教育に焦点を当てた輸送アライアンスのブロックチェーンが存在します。

ブロックチェーンエコシステムの成長

コンソーシアムでリーダーシップを発揮する企業は、主要な資金調達手段を有し、知的所有権を含む考慮事項をコントロールしています。また、参加者間で費用と便益を共有するシェアードサービス開発に大きな影響力を及ぼし、商業的利益のベースを拡大することができます。

選択したモデルに関係なく、ブロックチェーンの参加者数を決定する際には、小さく始めることが必須です。例えば製薬業界では、最終顧客にサービスを提供する製造業者、卸売業者、小売業者の間で薬価情報が共有されていないため、重要なリベートやチャージバックがしばしば行われています。それは複雑な環境であり、かなりの量の維持すべきデータ(契約価格の詳細、リベート情報、会員資格など)があります。このことは、製造業者、卸売業者、小売業者にとって、取引時間とコストを削減し、透明性を高めるために、価格設定と契約プロセスを管理するためにブロックチェーンを利用する説得力のあるビジネスケースを提示しています。

進展することを目指し、初期の業界の取り組みは、単一の製造業者と少数の流通業者によって始められています。このパイロットグループは、ブロックチェーンの運営ルールを定義し、将来の参加者のためのインセンティブをどのように開発するかを検討します。それは、エコシステムの構想と創造にかかわり、後から参加する仲間に影響を与えることでメリットを享受するプレーヤーとともに、小さく始めるという発想です。

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