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2020-03-13
米国の銀行・証券業界における2019年通年の公表済み取引金額は前年比76%増の872億米ドルとなった。また、第4四半期の取引金額は前年同期比で5倍以上増加し、374億米ドルとなった。
2019年はBB&TとSunTrust Banks Inc.の合併発表により好調な出だしとなった。第4四半期にはCharles Schwab Corp.によるTD Ameritrade Holding Corp.の買収合意が発表され、堅調に2019年を終えた。
2020年も業界内における取引が活発になることが予想される。この背景には、潤沢な手元資金、決済業界のイノベーションや統合の他、地方銀行の間で、有力な同業他社との合併が競争力の強化に有効であるとの認識が広がりつつあることがある。
「2019年、取引金額が公表された取引の件数は減少したが、取引金額は著しく増加した。現在のマーケットで重要なのはスケールであり、米国の銀行システムの統合が、競争力の維持には必要である」
2019年の公表済み取引金額の合計は、前年比76%増の872億米ドルとなった。Schwab/TDの大型案件が取引金額を大きく押し上げたほか、第1四半期のTruistの取引など、20億~40億米ドル規模の取引が数件発表された。
平均P/TBV倍率は、2019年第3四半期比で7%上昇したが、2018年第4四半期比では20%低下した。第4四半期における最も高いP/TBV倍率となったのは、United Bankshares, Inc.が発表したCarolina Financial Corp.の買収であり、1.9倍であった。
なお、TD Ameritradeの取引はP/TBV倍率の四半期平均(右グラフ)から除外している。統合後の組織は銀行業と資産運用業の両方を行うため、この取引のインプライドP/TBV倍率は、より純粋な銀行案件との比較上、有意義ではないという考えによるものである。
高額な案件で魅力的なリターンを確保するには、通常、シナジーと成長へのアグレッシブな目標が必要となる。金融機関がこういった目標達成の問題に直面することは少なくない。現在、より達成しやすいベンチマークを設定し、企業が明確な利点を得られる新たなディールのトレンドが浮上している。つまり、「対等合併」により、効率性の向上を求める銀行の統合が行われている。2019年第1四半期には、BB&TとSunTrustが280億米ドルの合併を発表し、Chemical Financial Corp.とTCF Financial Corp.が36億米ドルの統合を発表した。これら2つの案件は、全てのステークホルダーが恩恵を受けることができると考えられる純資産倍率と目標を設定して組成された。そのTBV倍率は約1.7倍、シナジー目標は20%~30%と、通常、達成可能な水準である。「対等合併」のトレンドはその後も続き、第4四半期にはIBERIABANKとFirst Horizonの提携が発表された。この統合のP/TBV倍率は1.37倍、予想コストシナジーは合計1億7,000万米ドルであり、これはIBERIABANKの営業費用の25%、統合後の費用水準の9%に相当する。地方銀行が引き続き比較的低いTBV倍率で、シナジー目標を達成することが可能な合併機会を見いだそうとする限り、2020年も「対等合併」が増加するものと予想される。
決済業界の取引が大幅に伸び、2019年には3件の大型案件が発表された。
決済会社は統合を通じて規模を拡大し、効率性を高め、顧客基盤を拡大しようとしている。その一方で、「ビッグテック」企業は自社の大規模な利用者基盤において決済のエコシステムを構築しつつある(例:Google Pay、Apple Pay、Amazon Pay)。金融機関とテクノロジー会社の間で、重複する事業が増えていることから、業界関係者がこうした専門能力を獲得しようと、新たなM&Aを追求する可能性は高いと思われる。
2020年、事業投資に利用可能な資金は、その量と多様さにおいて、前例のないものとなるかもしれない。米国企業は約2.2兆米ドルの現金を調達可能である。プライベート・エクイティは2.4兆米ドルを保有し、その資金はエクイティファイナンスにとどまらず、ハイブリッドファンドやデットなど別の資産クラスに向かっている。マーケットの減速がM&Aをある程度妨げる可能性は考えられるものの、現在の潤沢な資金が2007~2009年の金融危機の頃のように引いていくことはないだろう。通常、経済が減速すると、企業のバリュエーションは低下し、M&Aのターゲットとしての魅力は高まる。豊富な手元資金を持つ買い手の存在が、バリュエーションを安定させる可能性がある。
選挙年には常に、規制または経済政策が変更された場合の潜在的影響が懸念される。企業は2020年上半期中に取引を完了させようとするかもしれない。11月の選挙の数カ月前には規制や政策の変更の見通しがより明らかになり、その頃にはM&Aの動きが減速する可能性がある。投票の結果にかかわらず、反トラスト法の大改革よりも、データプライバシー関連の規制がさらに強化される可能性の方が高いと思われる。急速な技術革新に後れを取ることがないよう、サイバーセキュリティやマネーロンダリング防止にも議員や規制当局の大きな注目が集まるだろう。これらの分野において規制への動きが出てくるという見込みから、コンプライアンスのコストと影響を評価したいと考える買い手は活動を抑制することになるかもしれない。
本レポートにおけるM&A取引の定義は、ターゲットが米国を本拠とする銀行・証券業界関連(BCM)の会社であり、かつ買収者が米国または海外の買い手である合併・買収としています。当社の見解は、業界で認知された情報源から提供されたデータに基づいています。本レポートで使用した金額および件数は、2019年12月31日現在でCapital IQにより提供された、取引額公表済み取引の発表日に基づいており、これに当社の追加的調査を加え、補完したものです。
過去の期間に関係する情報は、過去に完了しているもののデータセットには反映されていなかった取引についてCapital IQが収集した新データに基づき、定期的に更新しています。取引情報はCapital IQを出所とし、買い手またはターゲットがBCM業界のサブセクターに該当する取引が含まれています。BCM業界のサブセクターには、商業銀行・リテール銀行、消費者金融、総合金融サービス、ノンバンク、投資銀行、証券会社が該当します。データ情報源では金融サービスに分類されていても、当社ではテクノロジーやその他のセクターに分類する(またはその逆の)取引があるため、情報に一定の調整を加えています。
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