自動車部品メーカーの開発イノベーション15のポイントおよび定着化7カ条

  • 2023-06-30

CASE(Connected:コネクテッド、Autonomous/Automated:自動運転、Shared:シェアリング、Electric:電動化)へ突き進む自動車・モビリティ産業において、内燃機関系の部品をこれまで事業の主軸にしてきた部品メーカーは、急いで次の事業の柱を構築する必要に迫られています。既存事業が先細りする前に、自社が培ってきた強い技術を活用して新規事業を立ち上げなくてはなりません。

その際にカギとなるのは、コア技術をつかさどっている開発関連の部門(研究、開発、設計、生産技術)です。ところが部品メーカーの開発部門の現場には、新規事業の立ち上げや次世代技術の開発を妨げる以下のような課題が見受けられます。

  1. 手戻りバタバタ開発が改善されない
  2. 悪魔のスパイラルを断ち切れない
  3. 本来かけるべき業務に工数が投入できていない
  4. 「忙しくて変革どころではない」という開発現場の実情
  5. 業務改革を手掛けるスタッフ部門の機能不全

開発部門を改革し、これらの問題が起こらないようにしていくのが開発イノベーションです。その取り組みは、例えば大手の完成車メーカーに見られるものをそのまま展開することが必ずしも十分ではなく、部品メーカーが置かれた状況に即したものでなければなりません。

さらに、部品メーカーによって置かれた状況や経営方針、開発イノベーションの具体的な方法はそれぞれ異なります。とはいえ、部品メーカー同士で共有できる知見は少なく、筆者らの経験から今回紹介する15個が代表的なテーマだと考えています。本レポートでは、この15個の代表的なテーマについて解説しています。

また、これらのどのテーマを重点として取り組むかは、企業の状況や改革の進展に応じて変わりますが、改革活動を推進する上ではテーマに関係なく押さえておくべき共通の7つの指針があります。

  1. 開発アセスメントでは「結果系」と「原因系」の両データを紐づける
  2. 開発工数削減には「効率」と「規模」の両面を見る
  3. 工数削減効果は先に刈り取らないと出ない
  4. 改革活動で最も重要なのは「定着化」
  5. 「2:6:2の法則」⸺改革は前向き2割をまず巻き込む
  6. 改革否定論者に対して、やむを得ない場合はしかるべき対策を講じる
  7. 「動員力」を持つキーパーソンを押さえる

以上のように、本レポートでは自動車部品メーカーの開発イノベーション実現に向けて、15の改革テーマと定着化の7カ条を解説しています。CASEの急激な進展に伴う荒波の中、生き残りのために懸命に努力を重ねる自動車部品メーカー各社にとって、本レポートが参考になれば、筆者として幸いです。

目次

  1. トラブル対応に忙殺され、CASE時代に対応できない部品メーカー開発部門
    部品メーカーの開発部門が置かれている状況
  2. 開発マネジメントを高める努力で業績もQCDも向上する
    開発マネジメントの理想像と、調査で見る実態と利益向上のポイント
  3. 開発設計のイノベーションを進める15の取り組みテーマ
    抜本的改革の重点に応じて選ぶ具体的施策
  4. 開発イノベーション活動の失敗要因を排除し効果を定着させる7カ条
    改革推進のベースとなるリーダーの心得

自動車部品メーカーの開発イノベーション15のポイントおよび定着化7カ条  ※登録が必要です

執筆者

入江 玲欧

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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寺島 克也

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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渡辺 智宏

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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嶋田 充宏

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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水田 大哉

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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