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2023年12月6日、地政学的リスク分析を専門とするユーラシア・グループが主催する「GZERO SUMMIT Japan 2023」が開催されました。第1回の2018年から同サミットに協賛してきたPwC Japanグループは、本年もスポンサーとして開催を支援したほか、PwCコンサルティング合同会社代表執行役CEOの大竹伸明と、サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス リード・パートナーの磯貝友紀がセッションに登壇し、各界のリーダーたちとともにそれぞれ生成AI、サーキュラーエコノミーにおける知見を共有しました。
写真提供:Eurasia Group
大竹は「インテリジェント・フロンティア:生成AIと新たなテクノロジーは世界経済をどう変えるか?」と題するパネルディスカッションにおいて、民間企業とアカデミアを代表するパネリストによる議論が行われた後半のセッションに登壇。日本マイクロソフト株式会社 執行役員 政策渉外・法務本部長 大島葉子氏、シナモンAI 代表取締役社長 平野未来氏、コロンビア大学ロースクール国際法・国際機構論教授アニュ・ブラッドフォード氏とともに、生成AI活用がもたらす機会と今後の規制環境について議論しました。
モデレーターを務めたユーラシア・グループ ディレクター コーポレート部門副責任者ケイトリン・ディーン氏がまず生成AIをどんな機会を生み出すものと見ているかを聞くと、大島氏はこれを「持続的な経済成長のためのツール」と位置づけ、少子高齢化や人口減少といった課題を解決するユースケースを紹介したうえで、日本発のイノベーションを生み出す可能性を強調しました。
大竹はコンサルティングファームとしてさまざまなクライアントの生成AI活用を支援する立場から、ここ1年で技術や事業機会に関するスタディやアセスメント、PoCが数多く行われ、現在は実際に社内外での利用を推進していくフェーズに移行しつつあると解説。通信やテクノロジー、ヘルスケア、自動車といった業界では自社のサービスや商品に生成AIの機能を盛り込むことで差別化を図る取り組みが進んできていることを紹介しました。
ブラッドフォード氏は大島氏や大竹が述べたような世界的に共通のゴールがある一方で、国ごとに異なる方向性での活用も見られるとし、米国では軍事利用を含む国家安全保障目的での活用、中国では国内の政治的な統制への活用に焦点が当てられているほか、グローバルサウスでは生成AIへのアクセスに格差があることが課題になると指摘しました。
平野氏は汎用AIと特化型AIの組み合わせによって今後もAIにできることが格段に増えていくとともに、テキスト情報だけでなく画像や音声などマルチモーダルなAIへと進化していくことで、世界を変えていくようなバーチャルアシスタントが今後数年のうちに実現するとの期待を述べました。
一方、本イベントに先立つ12月1日にG7が合意した「広島AIプロセス」を踏まえ、AIに対する規制の在り方について議論が及ぶと、大竹はこれを「大きな一歩」と評価。多くの企業が投資・実行フェーズに入っていくにあたってガバナンスの重要性が増していることを指摘した上で、先進的な企業が自ら情報を収集しながら各社独自のガイドラインを作ろうとしている中、国際的な合意事項が明確になったことで情報収集の省力化やグローバルへのアラインが可能になるとしました。とはいえこうした規制はいずれもソフトローの段階であり、ハードローができるまではまだ時間がかかるため、グローバル企業は引き続き各地域や各産業での規制状況を注視していかなければならないことも強調しました。
これを受けてブラッドフォード氏が企業による自主規制が中心となってきた米国、積極的な規制を進める中国、AI規制法の制定に向けて動くEUの状況を解説したほか、大島氏はガバナンス体制と技術の双方で責任あるAIを実現する取り組みについて、平野氏は現在懸念されている生成AIによる偽情報の先にある「悪意あるAI利用」を見据えた認可制度の必要性について、それぞれ見解を示しました。
活用と規制に対するこうした議論を経て、大竹は「産官学の全ての関係者が、ガイドラインの策定やリテラシーの向上、人材育成などの課題に自分ごととして取り組んでいく必要がある」と提起し、各パネリストも適切な規制によりバランスをとりながら生成AIの可能性を最大化していくことへの想いを語りました。
写真左から、ユーラシア・グループ ディレクター コーポレート部門副責任者 ケイトリン・ ディーン氏、PwCコンサルティング合同会社 代表執行役CEO 大竹伸明、日本マイクロソフト株式会社 執行役員 政策渉外・法務本部長 大島葉子氏、シナモンAI 代表取締役社長 平野未来氏、コロンビア大学ロースクール 国際法・国際機構論教授 アニュ・ ブラッドフォード氏
「インテリジェント・フロンティア:生成AIと新たなテクノロジーは世界経済をどう変えるか?」セッションの動画は以下のリンク先よりご覧いただけます。
磯貝は「アジアの企業や政府は、どうすれば気候変動との闘いをリードできるか?」と題するセッションでモデレーターを務め、みずほリース株式会社 代表取締役社長 中村昭氏、イケア・ジャパン株式会社 代表取締役社長 兼 Chief Sustainability Officer ペトラ・ファーレ氏、ユニゾン・キャピタル インベストメント・ディレクター/Ideation3x 会長兼創業者 マノジ・ジャイン氏と、アジアにおけるサーキュラーエコノミーの実現について議論しました。
冒頭で磯貝はサーキュラリティが環境汚染や温室効果ガス排出といったサステナビリティ上の課題を解決する上でも、また地政学リスクによる原材料調達などの不安定さを解消するためにも、重要なテーマであることを強調。とりわけ、生産拠点が集中する「世界の工場」であると同時に廃棄物処理を担う「世界のごみ箱」でもあるアジア諸国は、循環の輪を閉じることでサーキュラーエコノミーを実現する大きな役割を果たすことになる、と議論の糸口を示しました。
これに対し、各パネリストが自社におけるサーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みを解説。中村氏は、リース事業を主力とする多様な事業ポートフォリオを持つみずほリースが、金融の枠を超えた価値共創パートナーとして、製品を製造する動脈企業と廃棄物のリサイクル・再資源化などを行う静脈企業とをつないでサーキュラリティを実現するためのプラットフォームづくりに注力していることを紹介しました。イケアでは、2030年までに使用する素材の100%を再生可能素材・リサイクル素材にするという非常に高い目標を掲げて全方位で取り組みを加速させているほか、引っ越しを経ても使い続けられるよう家具の解体を容易にしたり、イケアの家具を買い取って販売したりすることで製品寿命を延ばすという、ビジネスモデルの変更も含めた取り組みも進めているとファーレ氏。特にサーキュラリティには抜本的なコラボレーションが不可欠であることを強調しました。環境を汚染する現在の消費行動や産業活動への危機感からIdeation3xを創業したジャイン氏は、インドにおいてプラスチックをはじめとする廃棄物をクリーンな燃料や再生資材へ加工する同社の事業を紹介した。Ideation3xは、「循環性」を重視し、廃棄物の中から再利用可能なものを分別することで、生産、消費、廃棄から再利用して非化石燃料を生成する循環を実現している。また、ユニゾン・キャピタルと協力し、日本の技術と資本を橋渡しし、喫緊の課題となっている汚染と気候変動を解決していくと述べました。
次に磯貝は、日本では他のアジア諸国と比べてサステナビリティに対する意識が低いというPwCの調査※結果に見られた課題を提起し、実際に環境汚染などの被害を直接的に被っているグローバルサウスの国々がサーキュラリティの推進力になりうる可能性を示唆しました。その上で、サーキュラーエコノミーをビジネスモデルとして成り立たせることは難しいことを指摘し、各パネリストに現在直面しているチャレンジについて聞きました。
中村氏は動脈企業と静脈企業をつなぐという立場から、大手企業からなる動脈産業に対して規模の小さい静脈産業を強化すること、双方の連携によって回収の仕組みや再生製品の品質管理を効率化することを課題に挙げました。また、バージン材が選好される市場においてリサイクル材の価値を明確化する必要性も指摘しました。ファーレ氏は他の企業や行政とも連携しながら、リサイクルや廃棄物処理などに対するファクトに基づいた共通認識を形成することが重要だと述べたほか、ロールモデルとなる企業の存在によって取り組みが促進されうることを強調。ジャイン氏は、課題はあるにせよ、サーキュラリティは実際には「宝の山だ」として会場を沸かせ、新たなビジネスが次々と生まれている現状への期待を示しました。
こうした議論を受け磯貝は、サーキュラーエコノミーはカーボンニュートラルと同時に取り組むべき最重要課題であるとともに、大きなビジネスチャンスをもたらすものでもあるとし、セッションを締めくくりました。
※PwC Japanグループ『新たな価値を目指して サステナビリティに関する消費者調査2022』
写真左から、PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス リード・パートナー 磯貝友紀、みずほリース株式会社 代表取締役社長 中村昭氏、イケア・ジャパン株式会社 代表取締役社長 兼 Chief Sustainability Officer ペトラ ・ ファーレ氏、ユニゾン・キャピタル インベストメント・ディレクター/Ideation3x 会長兼創業者 マノジ・ ジャイン氏
「アジアの企業や政府は、どうすれば気候変動との闘いをリードできるか?」セッションの動画は以下のリンク先よりご覧いただけます。
外資コンサルティング会社および外資IT系コンサルティング会社を経て、現職。
自動車メーカーおよび自動車部品メーカーを中心とする製造業や総合商社を得意分野とし、戦略策定支援から業務変革(バックオフィス、フロントオフィス系業務)、IT実装(ERP導入経験を多数、クラウド導入)、PMO案件まで、さまざまなプロジェクトに従事。会計管理領域、販売管理領域、設計開発領域に強みを持ち、海外案件、クロスボーダー案件など、国際色の強いプロジェクトの経験を多く有する。
2003年より民間企業や政府機関、国際機関にて東欧、アジア、アフリカにおける民間部門開発、日本企業の投資促進を手がける。2011年より現職。日本企業のサステナビリティビジョン・戦略策定、サステナビリティ・ビジネス・トランスフォーメーションの推進、サステナビリティリスク管理の仕組み構築などを多数支援。著書に『SXの時代 究極の生き残り戦略としてのサステナビリティ経営』『2030年のSX戦略 課題解決と利益を両立させる次世代サステナビリティ経営の要諦』(共著、日経BP)がある。
※ 法人名、役職、本文の内容などは掲載当時のものです。