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PwCコンサルティング合同会社は、6月17日(火)に表題イベントを対面で開催します。
2020-11-30
※2020年11月に配信したニュースレターのバックナンバーです。エネルギートランスフォーメーション ニュースレターの配信をご希望の方は、ニュース配信の登録からご登録ください。
2020年は多くの企業にとって生き残りをかけた非常に大きな変革の年になっています。コロナ禍を経て、社会環境、顧客のニーズも大きく変化しており、その変化に対応できるかが重要なカギを握っています。
エネルギー企業の事業環境も、近年の市場の自由化、デジタル化などと合わせて、変化は待ったなしの状況となっています。特に海外では、一足早くディスラプターと呼ばれる企業が、顧客のニーズの変化を捉えて、業界に大きなインパクトをもたらし始めており、大手さえも飲み込まれる事態に発展しています。
例えば、英国では、長らく続いたBig 6による寡占市場が崩れ、OVO、Bulb、Octopusといった企業が急速にシェアを伸ばしており、OVOに至ってはBig 6の一角を担っていたSSE社を買収するに至っています。
こうした企業は、SNSなどを活用したバイラルマーケティング(デジタルメディア等による口コミを利用し、低コストで顧客の獲得を図るマーケティング手法)の展開、エネルギー以外のサービスの拡張、IFTTT(IF This Then That:トリガーが条件等を設定してサービス同士を連携することができるWebサービス)のロジックを活用した30分変動メニューを導入するなど、顧客の変化を捉えてエネルギー企業の提供価値を大きく変化させています。
今後、ますます混迷を極める社会環境の中で、エネルギー企業がどのように変化し得るのか、また顧客のニーズにどのように対応していくのかについて考察します。
前述の通り、2019年末に突如広まり、今なお世界中で猛威を振るっているコロナの影響により、人々の行動や移動が制限され、企業の経済活動にも大きな影響を及ぼしています。結果として、およそすべての業界、企業がこれまでの活動様式、価値観を180度転換しなければいけないほどの影響を受け、その変化に対応しようともがいています。この変化は、少なからずエネルギー業界にも影響を及ぼしており、World Economic Forum(※1)及びIEA 2020によれば主に以下の三つの変化が見られます。
これらの変化は、これまでの常識が常識でなくなるので、エネルギー企業のこれまでの活動方針や事業運営の方向性を見直し、一変させるほど大きなインパクトとなっています。
同時に、企業・顧客のニーズも急速に変化し始めています。例えば、スマートフォン、ウェアラブル、ホームオートメーション、IoT機器、センサー、ドローンなど様々な領域がデジタル機器に置き換わり始め、そこから生成されるデータを活用した個別化サービスへのニーズが高まっています。
実際に、様々な業界でデジタルディスラプターと呼ばれる企業が、長らく変化していなかった業界に変化を突き付けて、これまでの画一的なサービス展開から、顧客一人一人に合わせてサービスやエクスペリエンスの提供へと変化してきました。
例えばAmazonの出現で書店の在り方が変化し、eコマース企業の出現で小売事業者も提供価値を変化させています。より近年ではホテル業界 vs Airbnb、タクシー業界 vs Uber、クレジットカード vs キャッシュレスサービスなど、社会や個別の顧客の価値観やニーズの変化を的確にとらえて、商品やサービスを提供している例を挙げれば枚挙にいとまがありません。特にこのコロナ禍では、リモート医療、リモートワーク、キャッシュレスの浸透などと重なり、その動きが更に活発化しています。
エネルギー業界でも、近年デジタルディスラプターと呼ばれる企業が業界に変化を突き付けています。テック業界からエネルギー業界に参入し、顧客と一緒に商品開発を実施したり、スマートフォンの活用、ウェアラブル端末との連携などIoTやAIといった機器を使った多様なサービスの提供へとつなげています。これまでの安定かつユニバーサルなエネルギーの供給から変化し、単に住宅や建物と繋がっているだけでなく、顧客と直接つながり、顧客の生活に入り込み、パーソナライズされた体験を提供することで、シェアを拡大し始めています。
図: デジタルディスラプターによる顧客提供価値の変化
日本では2016年以降電力・ガスの小売自由化を経て、これまで特定のエネルギーを販売してきた企業にも変化が起こり始めており、生活総合サービスを打ち出したり、多様な企業とコラボレーションを行い、エネルギー以外の商品・サービスを提供し始めたりと、変化の兆しが見えています。それでもコアなビジネスモデルは、電力やガスをkWhや㎥といった単位で販売する方法から大きな変化はありません。
一方で、電力を系統から買わない顧客(企業、個人)が出始め、アセット管理とエネルギーの購入をセットとして選ぶ顧客も増えています。例えば、太陽光発電設備と電力をセットで購入するケース、年間の一定量の充電容量が無料でついてくるような電気自動車(EV)もあります。更には、所有権そのものも取得せずに、距離や時間といった形に置き換えたサービスでEVと電気を利用するケースもあります。
エネルギー自体の需要がなくなるわけではありませんが、顧客ニーズは電力・ガスという商品そのものではなく、エネルギーで動く製品や派生したサービスを起点としたものへと変化しており、エネルギー企業がそういったニーズに応えなければ、エネルギー供給そのもののシェアを失ってしまうことになります。
そのため、エネルギー企業がエネルギー企業ではなくなる日は、企業や個人の顧客が自身の経済活動や快適な生活を送るための手段の提供へと変貌し、より身近で高い付加価値を提供する「あなたの生活を豊かにする会社」になることが重要になっていきます。
PwCでは、既存の価値観にとらわれない2040年や2050年ネットゼロ社会に対して「未来創造型」の手法を用いて、将来シナリオを策定することで多様な業界の企業変革を支援しています。
さらにご興味のある方は、下記のサイトもご覧のうえ、是非お問い合わせください。
詳細はこちら
(※1) World Economic Forum: These 3 charts show what COVID-19 has done to global energy demand
内藤 陽
シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社
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