【デジタル化対応としての税務業務改善】~2020年度電子帳簿保存法改正におけるポイントと対応策~

2020-09-01

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今回は、デジタル化に対応した税務業務改善のうち、エネルギー業界でも注目されている電子帳簿保存法への対応について、2020年度の税制改正で要件緩和のあった電子取引のデータ保存義務に焦点を当てて解説いたします。

コロナ禍におけるリモートワークの要請と電子帳簿保存法への対応

電子帳簿保存法に基づいた経理関係書類の電子化は、業務効率化や働き方改革への対応につながるだけでなく、感染症対策などでリモートワークが必要となる場面におけるBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)対策としても有効であることが注目されています。

また、紙関連のコスト削減、取引記録が電子データ化されることによる検証・分析の効率化・高度化、内部統制強化やコンプライアンス強化のためのツールとなりうるといったメリットもあります。

経理関係書類を電子帳簿保存法に基づいて電子的に保存しようとする場合には、その書類やデータの種類に応じて、国税関係書類のデータ保存制度、スキャナ保存制度、電子取引のデータ保存義務の適用関係を検討することになりますが、それぞれで充足すべき要件は異なりますので、電子帳簿保存法対応を行う書類の範囲、データ保存に使用するシステム、社内の経理処理ワークフローに応じて要件充足性の検討が必要となります。

以下では、これらのうち、電子取引のデータ保存義務について解説いたします。

2020年度電子帳簿保存法改正を踏まえた電子取引のデータ保存義務への対応

電子帳簿保存法は1998年の施行以来、複数回改正されてきた中で、2015年及び2016年にはスキャナ保存制度の要件が大幅に緩和され、スマートフォンなどで撮影された領収書や請求書などのデータ保存も可能となっています。2020年10月1日からの改正では、電子取引の場合の記録に関する要件が緩和されます。これにより、経理業務における更なる負担軽減が期待できます。

昨今の企業取引では、インターネット取引やEDI取引、クラウド型の電子契約などが広く利用されることになっていますが、これらは税務上電子取引に該当し、以下に説明するような電子帳簿保存法に規定する要件を充足した形で取引データの電子保存をしなければなりません。

(1) 保存上の措置

電子取引のデータ保存については、以下の保存上の措置のいずれかの充足が必要です。

① 受領者側でのタイムスタンプの付与による措置

取引情報の授受後遅滞なく、当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付与し、かつ、電磁的記録の保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくことにより認められる措置です。

② 事務処理規程の整備・運用による措置

電磁的記録の記録事項について、正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該事務処理規程に沿った運用を行い、当該事務処理規程の備付けを行うことにより認められる措置です。

③ 発行者側でのタイムスタンプの付与による措置

発行者側で電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付与した後、当該取引情報の授受を行うことにより認められる措置です。この措置は2020年度の税制改正で新たに追加されたもので、2020年10月1日以降より適用が可能となっています。

④ 訂正削除の履歴の詳細が確認できるシステムによる措置

電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができる電子計算機処理システムを使用して当該取引情報の授受及び当該電磁的記録の保存を行う、または、電磁的記録の記録事項について訂正または削除を行うことができない電子計算機処理システムを使用して当該取引情報の授受及び当該電磁的記録の保存を行うことにより認められる措置です。この措置も2020年度の税制改正で追加されたもので、2020年10月1日以降より適用が可能となっています。

(2) データの保存期間

電子取引のデータ保存については、そのデータの作成又は受領の日の属する事業年度終了の日の翌日から二月を経過した日から起算して7年間の保存が必要となります。なお、欠損金の繰越控除を行おうとする場合には、当該欠損事業年度に係る書類の保存義務が生じますので、この保存期間は起算日から最長10年となります。

(3) その他の保存要件

電子取引のデータ保存については、上記の他、見読可能性要件、関係書類等の備付け要件、検索機能の確保に係る要件などシステム面に関係する要件がありますので、電子帳簿保存法に対応したシステムを導入することが必要となります。

これらの要件はスキャナ保存制度を適用する場合に求められる要件とほぼ同じであるため、スキャナ保存用のシステムを利用して電子取引のデータ保存を行っていくことも一つの有効な対応策となります。

今後の展望

アフターコロナのニューノーマルの世界ではリモートワークが常態化することとなると考えられるため、サステナブルな事業活動を進めるには、どの企業においても早急な完全電子化による経理業務プロセスのデジタル化、オートメーション化、リモート化が必須であるということが広く認識されることになると考えられます。

このような経理分野のデジタルトランスフォーメーションを進めていくためには、今回の電子取引に係る電子帳簿保存法の改正も考慮して、企業取引を電子取引化して完全にペーパーレスでのオペレーションとしていくことも重要な施策の一つとなると考えられます。

PwCの電子帳簿保存法対応支援

PwC Japanグループではコンサルティングチームと税務チームが一体となってクライアントの電子帳簿保存法への対応の支援をさせていただく体制を整えています。特に、PwC税理士法人では、電子帳簿保存法に精通した十数名の専門家で構成された、業界で随一の電子帳簿保存法対応支援チームを擁しています。ぜひお問い合わせください。

執筆者

高野 公人

パートナー, PwC税理士法人

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