
Technology Day 2025
PwCコンサルティング合同会社は、6月17日(火)に表題イベントを対面で開催します。
2020-07-01
※2020年7月に配信したニュースレターのバックナンバーです。エネルギートランスフォーメーション ニュースレターの配信をご希望の方は、ニュース配信の登録からご登録ください。
電力・ガス業界では、小売全面自由化からシステム改革の最終フェーズとなる規制部門の分離が進行するタイミングに迫っています。私たちがご支援する多くのクライアントも本制度に喫緊の課題として対応している企業が多く、経営管理に関しては、自由化以前の管理から大きく変革できていないという相談も少なくありません。 さらに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、今後はレジリエンスの強化や脱炭素化のトレンドが加速する局面において、配電ライセンス制の導入など、さらなる規制対応を受けた経営管理の高度化は、各企業の注力課題となることが想定されます。
上記背景において、PwCでは大きく3つを課題と捉えています。
まず第1に、意思決定や事業リスクへの迅速な対応が難しい点です。制度会計を中心に事業管理を行ってきた企業では、分析や財務数値作りの精度に時間をかけてしまう傾向が強く、意思決定やその後のアクションが遅くなり、事業リスクへの対応が後手になってしまうという悩みを聞く機会がとても多くあります。
2点目は、儲けの管理が徹底されていないという点です。経常利益やROEなどの全社目標に対し、事業別の業績管理への連動が弱く、また、予算制度と管理会計の運用も一体化されておらず、規制料金下での収益管理が依然として残ってしまっており、利益を管理する仕組みが整っていないという課題が多くあります。
3点目は、経営資源配分先の選定が難しくなっていく点です。新規事業などの多角化が進み、事業領域が多岐にわたると、それぞれの事業特性を踏まえた資源配分先の選定や変わりゆく事業環境を考慮したタイムリーな判断が難しくなります。
これらの課題に対し、以下の段階的な高度化ステップを想定しています。
規制環境下においては、料金原価で前提とした当初計画の確実な遂行が重要でした。しかし、不確性の高まるVUCA時代*では、いち早く環境変化を捉え、計画を機動的に変更し、先手を打つ経営スタイルへ変革しなくてはなりません。経営の重視する情報は、過去実績から将来予測へと移り変わってきており、予兆管理を実現する仕組みの整備が急務です。
取り組みのポイントとしては、以下3点を挙げます。
将来予測を行うためには、財務の結果指標だけでなく、フロント側の各種運用計画や非財務先行指標と連動したシミュレーションモデルの構築が必須となります。モデル化することで、複数シナリオでのシミュレーションが可能となり、予測値の蓋然性や変動幅といった情報の提供も可能になります。しかし、予測においては、数値の精緻さにこだわるのではなく、主要項目に限定し適時迅速に概観を伝えることが重要である点を忘れてはいけません。先行する他業界ではAIやDashboardなどのデジタルソリューションも積極的に活用しています。
* VUCA(ブーカ):
Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭文字をとった言葉で、取り巻く社会環境の複雑性が増し、次々と想定外の出来事が起こり、将来予測が困難な時代であることを示します。
「費用+利益=売上」という総括原価方式の考えから、自由化後は「売上−利益=費用」という構造に変化した。売上は市場競争により変動するため、費用枠もそれに応じて機動的に変更しなければ、当然利益は確保できません。従前の厳格・硬直的な費目別予算統制制度を見直し、事業利益の管理に力点を移した仕組みの設計や意識転換が必要です。
例えば、ある企業では、管理会計において社内取引を認識し各組織をプロフィットセンター化しました。その上で、予算制度は廃止し、目標利益を達成するための最適費用構成は、各本部長判断で期中であっても柔軟に見直せるよう権限を委譲しました。一方で、本部長に対し一部成果報酬制度を導入し、目標利益に対するコミットは強化しています。
これまでは機能別組織体制による電力事業一体もしくはガス事業一体での収支管理がメインでした。しかし、業界の壁を越えて参入してくる新たな競合に打ち勝つためには、燃料調達・発電/ガス製造・送配電/導管・小売といったバリューチェーンごとにも、利益を管理し即座に打ち手が取れる仕組みが有用です。
限りある経営資源の最適配分を行うためには、事業ポートフォリオ管理が欠かせません。そのためには、事業や設備投資案件ごとに、利益などのフロー指標に加え、ROICなどの生産性指標やリスクなど、多面的な情報を管理し、事業特性を踏まえた適正な評価ができる仕組み作りが必要です。
また、昨今、SDGsの浸透やサステナブル志向の高まりを受け、ESG投資が活発化し、社会・環境価値に重きを置く企業のブランド価値が向上する傾向にあります。ステークホルダーからは企業の社会的意義が問いただされており、従来の利益追求の観点だけでなく、今まで別物としてとらえてきた社会・環境価値も定量化し、経営資源配分の判断軸として経営管理に織り込むことが求められます。
市場競争の激化や不確実性の高まりにより、これら経営スタイルの転換は待ったなしで進めなくてはなりません。電力・ガスシステム改革が一段落する今こそ、あるべき経営管理の要件を再考すべきときではないでしょうか。
PwC Japanグループでは、海外プレイヤーなどとのベンチマークによるコスト削減・業務効率化余地の測定、バリューチェーンの事業特性に応じたあるべき経営管理の制度設計、投資意思決定に資するESGイニシアティブの定量化、経営管理に関する成熟度のQuick診断などにおいて豊富な実績があります。ぜひお問い合わせください。
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