【フィールドサービスの業務変革】~業務のデジタル化と「ローカルヒーロー」としてのあるべき姿~

2020-02-01

※2020年2月に配信したニュースレターのバックナンバーです。エネルギートランスフォーメーション ニュースレターの配信をご希望の方は、ニュース配信の登録からご登録ください。

フィールドサービス業務のデジタル化

業務のデジタル化が進展しています。デジタル化という言葉ばかりが先行していますが、企業の業務プロセスに関わるデジタル化は大きく分けて2つに大別できます。1つは、従来の業務を置き換えて効率化すること。もう1つは新たに顧客/社会課題を解決し新規業務としての発展したデジタル化です。今回のテーマでは、なじみの深い従来の業務を置き換えて効率化し、顧客に新たな価値を提案するデジタル化の取り組みを取り上げます。

フィールドサービス業務

フィールドサービスとは、現場に赴いて機械設備の点検・修理・工事・配送などを行う業務のことです。電力・ガス業界でいえば、対顧客としては法人と家庭、業務としては計画業務と突発業務に大別されます。

顧客の区別を問わず、駆けつけ対応といった突発的な作業が発生する業務では、社内と現場担当者間でのスムーズな連携が重要なポイントとなります。

デジタル化の事例:「ローカルヒーロー」

フィールドサービスは、故障時や災害発生時に顧客対応を行うため、さながら地域のヒーローであるといえます。海外のユーティリティ企業であるCentrica(英国)では、地域のヒーローを束ねて適切な価格と品質を提供する「ローカルヒーロー」という仕組みをデジタルプラットフォームで提供しています。

「ローカルヒーロー」には、Centricaの認証を受けた第三者の修繕技術者が登録されており、利用者はオンラインにて依頼内容を登録すれば、ニーズにあった技術者が素早く簡単に割り当てられ、支払いまでを完了することができます。サービス提供後12カ月間の保障期間の設定もあり、高い顧客満足度を維持しているとともに、新規顧客接点・開拓にも貢献しています。(利用者の約6割がCentricaの既存顧客ではない新規顧客)

デジタル化の目指す3つのステップ

PwCは、ローカルヒーローのようなサービス業務を提供するには、デジタル化を活用した3つのステージが存在していると定義しています。

<Stage1:働き方改革とリソースの最適化>

  • 取り組み例:コア/ノンコア業務の切り分けとコア業務への注力化、コールセンターとフィールドサービスの密連携、情報一元化とナレッジ共有、リソース配置の最適化などが含まれます
  • 顧客視点:お客さまが安心して機器を使用できる環境の整備
  • 効果※:生産性30%向上、残業時間の75%削減、不要な訪問の20%削減、1回の訪問に要する移動距離40%減

<Stage2:先進的技術により顧客の期待を超える価値提供>

  • 取り組み例:セルフサービスによる自己解決率向上、IoTによるプロアクティブメンテナンス(故障予知)、訪問先完結型の変革などが含まれます
  • 顧客視点:他社と差別化されたサービス体験
  • 効果※:10‐20%顧客満足度の向上、「技術者は今どこ?」という内容の電話の50%削減

<Stage3:サービス売り上げの最大化>

  • 取り組み例:顧客視点でのサービスメニュー設計、部門間連携強化による、チーム営業で売上などによりコストセンターからプロフィットセンターへの転換が含まれます
  • 顧客視点:信頼関係の形成
  • 効果:顧客のリテンション率、収益率向上

フィールドサービス業務におけるデジタル化には、現場で使用している機器のデジタル化に加えて、AIを用いた作業時間や技術スタッフの最適配置、IoTによる故障予知、知見の蓄積、顧客満足度の見える化などが含まれます。

※定量効果はフィールドサービス業務のデジタル化で得られた海外事例の一例

デジタル化にあたっての課題

フィールドサービス業務の変革も3つのステージで進めていくことで実行できますが、実際に推進するにあたっては様々な課題に直面します。ここで実際のプロジェクト実施で得られた主要な3つの課題を紹介します。

  1. 移動/作業時間、作業内容など現状の実績データに不足や不備が多くAIエンジンによる解析が十分に行えない。正確な実績記録を行い、AIの精緻化が要求されます。
  2. AIによる業務効率化は、煩雑状態、突発業務発生時に合わせた最適化が行われてしまい、通常業務の日には余裕が出てしまう。単純なAI任せでない、人材の多機能化や繁閑対応の検討は人間で対応する必要があります。
  3. 事前に計画された作業・スケジュールを重視し、緊急対応を後から追加していき、極力スケジュールを変更しない方式では効率化の効果は限定的です。

まとめ:課題対処への有効策

AI、IoTといった「マジックワード」と合わせて、デジタル化によって簡単に業務効率化が進展するイメージで語られるケースがありますが、システムを導入すれば簡単に達成するものではなく、最小限の業務から導入し検証することが有効です。また、フィールドサービスは地域のヒーローですが、日本国内においては、海外のように収益事業という捉え方はまだ定着していません。そこで、業務変革の初期段階からサービス収益を再定義し、価値を可視化に取り組む必要があります。

PwCはサービス業務改革を単なるシステム導入にとどまらず、各種取り組みを段階的に推進し、顧客関係を熟成、市場/顧客ニーズの変化に対応できるフィールドサービスのあるべき姿の再定義に向けた支援を行っています。ぜひお問い合わせください。

執筆者

佐野 慎太郎

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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