ローカルファイル作成時の見逃してはならないポイント

2020-09-08

移転価格ニュース
2020年9月8日

 

2020年8月6日に配信したTax Insight「重要性の増すローカルファイルの作成・提出」でご案内のとおり、新規調査の着手連絡は引き続き保留されているようです。新規着手連絡の保留解除は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の状況にもよりますが、いざ、調査開始となった場合、ローカルファイルは最初にまず提出依頼を受けるものと考えられます。

わが国では、ローカルファイルは、「独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類」として、租税特別措置法第22条の10にて、原則同時文書化が規定されています。一般調査であっても、国外関連取引があれば、取引規模(同時文書化の免除基準)に関わらず、ローカルファイルの提出を依頼される場合があります。一般調査の過程で提出された場合、ローカルファイルは、移転価格調査のベテランチームによって検討されます。特に問題が無い場合には、次回調査の参考資料として保管されます。問題がありそうな場合、一般調査に併せて調査されることが多いようです。

ところで、実務的(特にコスト的)には、国外関連者が現地で作成したローカルファイルを、日本法令上のローカルファイル(日本版ローカルファイル)として転用しているケースが多いものと想定されます。日本の当局は、移転価格事務運営要領(事務運営指針)2-4(1)(2)および「移転価格税制に係る文書化制度(FAQ)問77」のなかで、このような転用を認めています。

ただし、「現地のローカルファイル=日本法令上のローカルファイル」と認めているわけではありませんので、転用する場合には注意が必要です。あくまでも、ローカルファイルファイル作成の原則として、法人税申告書を提出する際に利用可能である最新の情報であることを要求しています。

つまり、現地版のローカルファイルは、最新の情報であることが必要です。同上FAQ問77でも、「例えば、日本親会社(3月決算)の令和2年3月期のローカルファイルとして、国外関連者(12月決算)が作成する令和元年12月期のローカルファイルに相当する書類を利用することができます。」として、現地作成のローカルファイルが申告時での最新のものであることを求めています。現地法令の作成/提出期限や実務上、上記の例の場合、日本親会社の申告期限時点(2020年(令和2年)6月30日)で、2018年(平成30年)12月期のローカルファイルしか入手できない場合には、比較対象企業の数値データの更新という対応なども必要になると想定されます。

最近の移転価格調査では、ローカルファイルの内容が、調査の方向性や更正処分内容に大きな影響を与えるといっても過言ではありません。提出のタイミングも重要です。実務的に、国外関連者のローカルファイルを転用するケースは増えてくるものと想定されますので、その際に注意すべきポイントを以下に列挙しました。ご参考になりましたら幸いです。

  • 現地法令で作成義務のある国外関連者の最新のローカルファイルを入手していますか?
  • 日本の法令(措置法規則第22条の10)で記載を要求している項目や添付資料が漏れていませんか?
  • 日本の法令では規定されていない現地固有の記載事項の取扱いは検討しましたか?
  • 取引単位営業利益法(TNMM)の検証対象の実績値は独立企業間利益率レンジの上限を上回っていませんか?
  • 独立企業間価格かどうかの検証は、正しい実績値(日本側もチェック済み)で行われていますか?
  • 別表17(4)との記載内容や取引金額と一致していますか?
  • 日本以外の国外関連者との取引も分析対象となっている場合、どのように取り扱われていますか?
  • 事業や取引の実態が変わってないケースにおいて、移転価格分析手法は過去年度と整合性が取れていますか?
  • 類似する機能リスクの国外関連者が複数ある場合、移転価格算定手法や比較対象取引の選定は整合性が取れていますか?
  • 特殊要因分析の内容は検討しましたか?
  • マスターファイルの記載内容やCbCRの実績との整合性は取れていますか?

これ以外にも、注意すべきポイントはありますので、気になる点や、ご不明な点がありましたら、ご遠慮なく当法人までご相談ください。

次回のご案内では、情報公開請求で入手した当局内の文書を基に、今後の移転価格がどのように行われるのか、対応における留意点の解説を予定しています。

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