トランプ政権税制改革アウトラインと今後の課題

2017-04-28

4月26日(米国時間)にトランプ政権が発表した税制改革アウトラインは、従来のトランプ氏の選挙時案をベースにテリトリアル課税の導入という共和党の従来からの提案項目が加わったもので、経済成長を指向した大胆な税制改革の実現が政権にとっての重要課題であることを示しています。 他方、議会における具体的な税制改正法案の提出、両院の通過までには、複数の課題を乗り越える必要があります。

1.財源問題
税制改革アウトラインは減税による歳入減の見積額を示していません。 先述の通り税制改革が予算調整措置を通じて行われることを前提とすると、税制改正が10年経過後に財政赤字を拡大させる場合には原則として失効することから、税制改正による景気拡大効果を含めた今後10年の予算見積(ダイナミックスコアリング)が重要な意味を持ちます。 上院で60票が得られる場合このような制限はありませんが、民主党は今回の税制改革アウトラインは高所得者優遇であると批判しており、マコネル上院議長(共和党)も民主党からの協力の可能性については懐疑的な見方を示しています。

2.オバマケア改革
トランプ氏は現在もオバマケア改革を今年実現させる意向を示しています。 オバマケア改革が実現すれば、オバマケア財源として立法された特別税(個人に対する投資所得付加税(3.8%)など)の廃止による減税を行うことができ、更に赤字削減効果を通じて上記の予算見積に好影響を与えることができます。 他方、オバマケア改革を今年度の予算措置として行うことにより税制改革のタイムラインに影響が生じる可能性もあります。

3.共和党および上院との関係
ライアン下院議長やブレイディ下院歳入委員会長ら共和党幹部は共和党ブループリントを土台とした法案作成を目指してきたことから、下院で提出される税制改正法案において今回の税制改革アウトラインとどのような摺合せが行われるかが注目されます。 特に国境調整については、ムニューチン財務長官が共和党ブループリントそのままの形では採用しえないと発言した一方、ライアン氏も、導入による深刻な影響が生じないように修正を行う必要があると発言しており、今後も政権と共和党との間で協議が続くものとみられています。 さらに、上院共和党においても、ハッチ租税委員会長を中心とした改正案の作成が続いており、税制改正法案が下院を通過したとしても上院との修正作業が必要となります。

今後のタイムライン
税制改革アウトラインによると、トランプ政権は5月を通じて利害関係者からのインプットを受け、議会との協働を通じて両院を通過しうる法案の詳細を詰めることとしています。 4月28日に2017年度暫定予算期限切れを迎えるため、政府閉鎖を回避するために2017年度予算決議を通過させることが米国議会における今週の最優先課題ですが、来週以降は下院歳入委員会において税制改革に関する公聴会が計画されており、5月末のメモリアルデー休暇を一つの目標に下院において改正法案の詳細を作成する作業が続くとみられています。