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2020-04-02
令和2年度税制改正において連結納税制度が見直され、グループ通算制度へ移行する税制改正法(「所得税法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第8号))(以下、「改正法人税法」という)が2020年3月27日(以下、「改正法人税法の成立日」という)に国会で成立しました。これにより、従来の連結納税制度が見直され、2022年4月1日以後開始する事業年度からグループ通算制度に移行することとされました。
企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下、「税効果適用指針」という)第44項では、繰延税金資産および繰延税金負債の額は、決算日において国会で成立している税法に規定されている方法に基づき、将来の会計期間における減額税金または増額税金の見積額を計算するとされています。このため、2022年4月1日以後グループ通算制度を適用する企業については、改正法人税法の成立日以後に終了する事業年度の決算(四半期決算を含む)において、グループ通算制度の適用を前提とした税効果会計の適用を行う必要があります。
しかしながら、グループ通算制度における税効果会計の適用については繰延税金資産の回収可能性の判断に関する考え方が整理されておらず、当該判断を行うことについて実務上対応が困難であるとの意見が聞かれたことから、必要と考えられる取扱いを示すこととされていました。
本実務対応報告は、2020年2月に公表した実務対応報告公開草案第58号「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い(案)」に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、公表するに至ったものです。
本実務対応報告は、グループ通算制度について、改正法人税法の成立日以後に終了する事業年度の決算(四半期決算を含む。)に係る税効果会計の適用に関して必要と考えられる取扱いを示すことを目的としています。
本実務対応報告は、以下の企業を対象としています。
なお、これらの企業は、税務署長に対して届出書を提出しない限り、2022年4月1日以後開始する事業年度からグループ通算制度の適用対象となります。
グループ通算制度の適用を前提とした税効果会計の適用に関しては、実務対応報告第5号等に関する必要な改廃が行われるまでの間、以下の項目について、税効果適用指針第44項の定めを適用せず、改正前の税法の規定に基づくことができるものとしています。
本実務対応報告に基づき特例的な取扱いを適用した場合、原則的な方法による場合と見積りの基礎が異なることから、繰延税金資産及び繰延税金負債の額について、本実務対応報告の取扱いにより改正前の税法の規定に基づいて計算している旨を注記することとされています。
本実務対応報告は、公表日以後適用されます。
連結納税制度について、適用実態やグループ経営の実態を踏まえ、損益通算の基本的な枠組みは維持しつつ、企業の事務負担の軽減等の観点から簡素化等の見直しを行い、グループ通算制度に移行する予定です。
令和2年度税制改正におけるグループ通算制度の記載 3.(2)所得金額及び法人税額の計算(抜粋):
①損益通算
イ 欠損法人の欠損金額の合計額(所得法人の所得の金額の合計額を限度)を、所得法人の所得の金額の比で配分し、所得法人において損金算入する。この損金算入された金額の合計額を欠損法人の欠損金額の比で配分し、欠損法人において益金算入する。
ロ グループ通算制度の適用法人又は通算グループ内の他の法人の所得の金額又は欠損金額が期限内申告書に記載された所得の金額又は欠損金額と異なる場合には、期限内申告書に記載された所得の金額又は欠損金額を上記イの所得の金額又は欠損金額とみなして上記イの損金算入又は益金算入の計算をする。
②欠損金の通算
イ 欠損金の繰越控除額の計算は、基本的に連結納税制度と同様とする。
ロ 通算グループ内の他の法人の当期の所得の金額又は過年度の欠損金額が期限内申告書に記載された当期の所得の金額又は過年度の欠損金額と異なる場合には、期限内申告書に記載された当期の所得の金額又は過年度の欠損金額を当期の所得の金額又は過年度の欠損金額とみなす。
ハ グループ通算制度の適用法人の当期の所得の金額又は過年度の欠損金額が期限内申告書に記載された当期の所得の金額又は過年度の欠損金額と異なる場合には、欠損金額及び中小法人等以外の控除限度額(欠損金の繰越控除前の所得の金額の50%相当額をいう。)で期限内申告において通算グループ内の他の法人との間で授受した金額を固定する調整をした上で、その適用法人のみで欠損金の繰越控除額を再計算する。
グループ通算制度に基づいた繰延税金資産の回収可能性の判断についての考え方の整理を行う場合、例えば、次のような点を明らかにする必要があるとされています。
論点 |
連結納税制度 |
グループ通算制度 |
個別財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断 |
連結納税制度において算定される連結法人税の個別帰属額等について、将来の支出または収入を減少または増加させる効果を有するかどうかで判断する |
左記のような既存の定めに関して、グループ通算制度においてはどのように取り扱うべきかという点について、検討を行う必要がある |
個別財務諸表における繰延税金資産の回収可能性を判断するための企業の分類 |
個別企業の分類のみではなく、連結納税主体の分類も考慮して、繰延税金資産の回収可能性を判断する |
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連結財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断 |
単一主体概念に基づく処理を行うことが適当であるとされ、個別財務諸表における繰延税金資産の計上額を単に合計するのではなく、連結納税主体として回収可能性を見直す |
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連結財務諸表における繰延税金資産の回収可能性を判断するための企業の分類 |
連結納税主体としての企業の分類を行い、繰延税金資産の回収可能性を判断する |
グループ通算制度への移行にあわせた単体納税制度の見直しは、グループ通算制度を適用しない企業も対象となりますが、グループ通算制度への移行にあわせて設けられたものです。そのため、本実務対応報告において特例的な取扱いとする項目に含められました。
グループ通算制度への移行にあわせた単体納税制度の見直しが行われた項目は以下のとおりです。
(1)受取配当等の益金不算入制度
(2)寄附金の損金不算入制度
(3)貸倒引当金
(4)資産の譲渡に係る特別控除額の特例
このニュースレターは、概略的な内容を説明する目的で作成しています。この情報が個々のケースにそのまま適用できるとは限りません。したがいまして、具体的な決定を下される前に、PwCあらた有限責任監査法人の担当者にご確認されることをお勧めします。