「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」(改正実務対応報告第18号)等の公表

2018-09-18

日本基準のトピックス 第361号

主旨

  • 2018年9月14日、企業会計基準委員会(ASBJ)は、改正実務対応報告第18号「連結財務諸表における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」(以下、「改正実務対応報告第18号」)および改正実務対応報告第24号「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」(以下、合わせて「本改正実務対応報告」)を公表しました。
  • 本改正実務対応報告は、在外子会社等が国際財務報告基準(IFRS)第9号「金融商品」を適用し、資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合の組替調整に関する取扱いを明らかにしています。
  • 本改正実務対応報告は、2019年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用されます。ただし、早期適用を含む複数の適用方法が認められています。

原文については、ASBJのウェブサイトをご覧ください。

https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/practical_solution/y2018/2018-0914.html

経緯

実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」では、IFRSまたは米国会計基準に準拠して作成されている財務諸表を、当面の間、連結決算手続上利用することができるとしつつも、一定の項目については会計処理を修正することを要求しています。

ASBJは、2006年の実務対応報告第18号公表から本改正実務対応報告の検討時点までの間に、新規に公表または改正されたIFRSおよび米国会計基準を対象に、修正項目として追加する項目の有無について、我が国の会計基準に共通する考え方と乖離するか否かの観点や実務上の実行可能性の観点に加えて、子会社における取引の発生可能性や子会社において発生する取引の連結財務諸表全体に与える重要性の観点等から検討を行ってきました。

その結果、本改正実務対応報告では、以下の項目を修正項目として追加しています。

IFRSに関する項目

  • IFRS第9号「金融商品」
    • 資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合の組替調整

改正の内容

本改正実務対応報告で追加された修正項目の内容は以下の通りです。

  • 資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合の組替調整に関する取扱い

IFRSに基づく会計処理

本改正実務対応報告に基づく修正

  • 在外子会社等の財務諸表においてIFRS第9号「金融商品」を適用し、資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合、当該資本性金融商品については売却時に損益が計上されず、また、減損処理も行われない。
  • 連結決算手続上、当該資本性金融商品の売却損益相当額を当期の損益として修正する。
  • また、当該資本性金融商品について、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」の定めまたは国際会計基準(IAS)第39号「金融商品:認識及び測定」の定め(※1)に従って減損処理の検討を行い、減損処理が必要と判断される場合には、連結決算手続上、評価差額を当期の損失として計上するよう修正する。
  • 在外持分法適用関連会社に関しても、上記と同様の修正を行う。

修正対象とならなかった項目

同様に検討が行われたものの、修正項目として追加すべき項目はないとされ、今回の改正に含められなかった主な項目は次のとおりです。

IFRSに関する項目
  • IFRS第9号「金融商品」
    • 相場価格のない資本性金融商品への投資に関する公正価値測定
    • 金融負債の公正価値オプションにおける組替調整 など
  • IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」

米国会計基準に関する項目

  • ASU第2016-01号「金融商品―総論(サブトピック825-10):金融資産及び金融負債の認識及び測定」
    • 株式の公正価値測定による差額を当期純利益に計上する処理 など
  • ASU第2014-09号「顧客との契約から生じる収益(トピック606)」
  • ASU第2016-13号「金融商品―信用損失(トピック326):金融商品に係る信用損失の測定」

(注)ASUは米国財務会計基準審議会(FASB)が公表している「会計基準更新書」

なお、IFRS第16号「リース」、IFRS第17号「保険契約」、およびASU第2016-02号「リース」については、今回の検討対象に含まれていません。

適用時期等

(1)適用時期

本改正実務対応報告の適用時期は、次のとおりです。

a)適用時期

2019年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用する。

b)早期適用

本改正実務対応報告の公表日以後最初に終了する連結会計年度および四半期連結会計期間において適用することができる。(※2)

c)容認

次のいずれかから適用を開始することもできる。ただし、その場合は、2019年4月1日以後開始する連結会計年度以降の各連結会計年度において、本改正実務対応報告を適用していない場合、その旨の注記が必要。
  • 2020年4月1日以後開始する連結会計年度の期首
  • 在外子会社等が初めてIFRS第9号「金融商品」を適用する連結会計年度の翌連結会計年度の期首

(2)適用初年度の取扱い

適用初年度の取扱いは、次のとおりです。

基本的な取扱い

本改正実務対応報告の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。すなわち、原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する。

容認される取扱い

会計方針の変更による累積的影響額を当該適用初年度の期首時点の利益剰余金に計上することができる。(※3)

(※1)2009年のIFRS第9号の公表により、IAS第39号の金融資産の減損の定めは削除されていますが、ここでは削除前の定めを意味します。

(※2)本改正実務対応報告の公表日以後最初に終了する四半期連結会計期間に早期適用し、会計方針の変更による累積的影響額を適用初年度の利益剰余金に計上する場合、当該累積的影響額を、早期適用した四半期連結会計期間の期首ではなく連結会計年度の期首時点の利益剰余金に計上することとされています。

(※3)会計方針の変更による累積的影響額を当該適用初年度の期首時点の利益剰余金に計上する場合で、在外子会社等においてIFRS第9号「金融商品」を早期適用しているときには、遡及適用した場合の累積的影響額の算定にあたり、資本性金融商品の減損判定を、本改正実務対応報告の適用初年度の期首時点で行う(それより前には行わない)ことができるとされています。

このニュースレターは、概略的な内容を説明する目的で作成しています。この情報が個々のケースにそのまま適用できるとは限りません。したがいまして、具体的な決定を下される前に、PwCあらた有限責任監査法人の担当者にご確認されることをお勧めします。