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2022-10-11
第2の柱の法案を公表(英国)
ロイヤルティーと利子の損金算入に関する税制改正の動き(オーストラリア)
2022年7月20日、英国は、2022/23年度財政法案に盛り込むため、OECD第2の柱モデルルールの英国法への導入法案を公表した(注1、2)。本法案には、2023年12月31日以後開始会計期間に適用される所得合算ルール(IIR)(多国籍企業トップアップ税(Multinational Top-up Tax))が含まれている。また、英国政府は、軽課税利得ルール(UTPR)を導入する意向を示している(導入時期の最終決定は後日)。本法案の全体的なアプローチはモデルルールの意図に細部まで沿っているが、明確性の観点から、構成や法案をところどころ変更している。
第1回目の第2の柱のコンサルテーション(本誌2022年3月号参照)への回答の一部として、政府は、第2の柱から生じる英国での経済活動に係るトップアップ税を英国が確実に徴収するため、英国国内ミニマム税(DMT)の導入を支持する強い論拠があるとしている。政府は引き続きDMTの導入を検討するとしている。第2の柱のルールと同様、7億5千万ユーロを閾値とし、英国本拠グループと外国本拠グループの双方への適用を想定している。また、経済の歪みを防ぐため、完全な国内グループにも適用する場合のコストやメリットも検討する。
本法案では 、IIR適用に関しさらなる確実性をもたらしているが、政府はOECD 実施フレームワーク(IF)の一環として執行ガイダンスの中で対処されるべきいくつかの課題があるとしている。IFで取り組むべき課題として、例えば、グループ内資産移転に関する移行規定、ヘッジ手段に係る為替差損益の除外(モデルルールで除外されていない場合)、トップアップ税が赤字の期間に発生する可能性のある状況への対応や、特定の債務免除に係る除外が含まれる。
これらの課題を国際的なレベルで解決することで、実施国・地域間の一貫性を促進し、紛争や不確実性のリスクを軽減できよう。また、政府は、不均衡な意図しない結果を避けるため、共通アプローチに合わなかったり、財政リスクをもたらしたり、企業に二重課税のリスクを負わせたりしないことを条件に、いくつかの課題を国内で解決することに引き続き前向きに取り組むとしている。
本法案は、モデルルールの意図に細部まで沿っているが、特にモデルルールのコメンタリーと比較して、本法案には解釈が異なる部分がある。例えば、グループ内移転(コメンタリー第3章パラグラフ64に相当するものがない)、グループ内金融取決め(費用の除外について、税務上の属性がそうでなければ利用されなかったような状況に限定されない(Article 3.2.7、コメンタリー第3章パラグラフ127~関係))や制度移行に係る繰延税金資産(制度開始時に連結会計に反映される金額を参照)がある。
財務省は、IIRとGILTIの関係について、本法案の公表の一環として、前回のコンサルテーションに対する回答を示している。GILTIが改正されない場合、GILTIをCFCルールとして認識し、GILTIに基づく支払いは、GloBEの調整対象税額の一部として考慮する見込みである(ただ、依然として、GILTIに基づく米国税計算と構成事業体間の配分につき、重要な技術的論点あり)。
政府は、本法案に関する意見を募集している(2022年9月14日まで)。
(注1) 韓国の企画財政部は、2022年7月21日、グローバルミニマム税の国内法案の導入を公表した(2022年税制改正の一環)。本規定案(要約)は、OECD/G20が主導し、141カ国・地域の包摂的枠組みで合意済のOECDの第2の柱モデルルールに対応している(詳細法案は、2022年12月公表予定)。本規定案には、所得合算ルール(IIR)およびその補完規定(UTPR)が含まれている(いずれも、2024年1月1日以後開始課税年度からの実施を提案)。適格国内ミニマムトップアップ税制(QDMTT)は本規定案には含まれていないが、2022年12月に予定される詳細な法律に含まれる可能性がある。
(注2) マレーシア財務省は、2022年8月1日、「マレーシアにおけるGloBEルールの実施」と題する、2023 年予算案に係るパブリックコンサルテーション(公開協議)文書を公表した(2022 年 8 月 15 日までフィードバック募集)。本文書では、包摂的枠組み(IF) 合意と OECD モデルルールを要約し、マレーシアが適格国内ミニマムトップアップ税 (QDMTT) を導入すること(その適用をグローバル売上7億5千万ユーロ超のグループに限定するかを含め)や、現在のインセンティブスキームの在り方などについても意見を求めている。第1・第2の柱は2023年から実施される予定との記述があるが、マレーシアでの実施時期についての言及はなく、2023年がGloBEルール実施日として受入可能かについて意見を求めている。なお、マレーシアの会計基準(MFRS)は、GloBEルールで許容される財務会計基準として別途リストアップはされていないが、そのフレームワークはIFRSに完全に準拠しており、IFRSと同等であるため、MFRSはGloBEルール上、許容される会計基準になるとしている。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2022年9月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2022年7月8日、米国財務省は、1979年から施行されてきた米国・ハンガリー租税条約の終了をハンガリーに通知するという異例の措置をとった。ハンガリーの税制と条約自体に長年にわたる懸念があるほか、OECD第2の柱のグローバルミニマム税の提案を実施しようとしている他のEU加盟国と連携してこれらの懸念を改善するために十分な行動をとることを行っていないのがその理由とされる。本租税条約の終了は、2024年1月1日以後に支払われる米国源泉の配当、利子、ロイヤルティーに適用される。ハンガリーとの新たな租税条約(1979年の租税条約に代わる)は2010年に合意され、主に米国の伝統的な条約濫用防止規定(特典制限条項)が追加されたものの、ランド・ポール上院議員(共和党)の反対により、上院で批准されていない。財務省の広報担当者によると、2010年以降のハンガリーの法人税率の引下げ(現在9%)や2017年米国税制改革法を考慮して、バイデン政権は新条約を支持していない。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2022年9月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2022年7月11日、OECDは、第1の柱(利益A)の進捗報告(プログレスレポート)(注1)を公表した(8月19日までコメント募集、9月12日にパブリックコンサルテーション会合開催予定)。OECDはまた、FAQ、および利益Aの規定のハイレベルな概要とその適用手順を示したプロセスマップを含むファクトシートも公表した。
本進捗報告には、利益Aの新たな課税権に関連する様々な構成要素(ビルディングブロック)に係る「国内モデルルール」が含まれている。これらの規定には、マーケティング・販売活動利益に係るセーフハーバー(MDSH)(既存規定(移転価格等)との「二重計上」に係る論点に対処。減価償却費および給与費に対する利益率(RoDP)を考慮)、および二重課税の排除(救済国・地域(relieving jurisdictions)の課税ベースからの除去/除去利得(RoDPに応じてTier1、2、3Aおよび3Bに分け、Tier 1から順に二重課税排除))に関する提案が含まれている。また、以前のコンサルテーション(公開協議)に基づき、他の構成要素に関するルールの更新も含まれている。特に、本規定では、対象グループが簡略化されたレベニューソーシングルール(すなわち、配分キー)を使用するための3年間の移行期間を導入している(「取引毎」のレベニューソーシングを求める当初案は取り下げ)。なお、本協議文書には、利益Aの執行、税の安定性に係る関連規定、納税義務がある事業体の特定や、対象グループへの控除対象支払いに係る源泉税の取扱いに関する規定は含まれていない。これらは、10月に開催される包摂的枠組み(IF)会合までに公表見込みである。
本進捗報告には、IFで承認されたカバーノート(2021年10月の声明以来となる、第1の柱の合意文書)が含まれている。本カバーノートには、IFが、以下の通り、利益Aに関する作業の完了スケジュール見直しに合意したことが記載されている(注2)。
また、カバーノートには、MLCは「一定数」の国・地域の批准によってのみ発効すると記載されている。この「一定数」には、利益Aの課税対象となる相当多数の最終親事業体の居住地国・地域(すなわち、米国)と、利益Aの結果生じる二重課税を排除する義務がある追加的な主要国・地域が含まれる。
本MLCでは、利益Aの運用規定に加え、すべての法人に関する、既存のすべてのデジタルサービス税および関連する同様の措置の廃止を求めること、および今後そのような措置を取らないことにコミットする規定を含める予定である。
多くの構成要素は技術的な観点から明確な設計がなされていると思われるが、特に重要なのは、これらの規定案がまだOECD事務局の作業に過ぎないということである。IFはまだこの規定案を承認しておらず、本協議プロセスとは無関係に変更される可能性がある。
(注1) 2022年7月15日・16日のG20財務大臣会合(インドネシア、バリ)に向けたOECD事務総長税務報告の付属文書にも含まれている
(注2) 利益Bの作業も進んでおり、2022年末までに公表見込みとしている
出典:PwC, Tax Policy Bulletin
「月刊 国際税務」2022年9月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2022年7月、議会予算局(PBO)は、労働党(ALP)の新政権が提案する税制措置が予算に与える影響に関する試算を公表した。この2022年選挙公約レポート(概ね、2022年4月公表の公約と整合)は、新政権の選挙公約に基づいて作成され(政府の正式な政策や法案ではないが、政党の説明責任を果たすことが目的)、次の内容が含まれる。
FIRB手数料の引上げは早期に適用される可能性がある。一方、ロイヤルティーと過少資本税制の変更は2023年7月1日から適用される可能性がある。
なお、本レポートには、グローバル15%ミニマム税の支持、国別税務情報の公開(注6)、最終受益所有権の公開登録、タックスヘイブンのエクスポージャーの株主への報告義務(注6)、政府入札者に住所地国の開示義務付け(注6)、といった措置も含まれている。
(注6) 2022年8月5日、政府は、これらに関するパブリックコンサルテーション(公開協議)文書を公表した(2022年9月2日までコメント募集)
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2022年9月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
政府は、香港オフショアの受動的所得に対する免除措置から生じる二重非課税の可能性に対する欧州連合の懸念に対応し、香港の受動的所得に係る外国源泉所得免除(FSIE)制度の修正提案に関するコンサルテーションを行った(2022年7月15日まで)。
提案されている修正FSIE制度では、4種類のオフショア受動的所得(利子、知的財産(IP)所得、配当、株式・持分の処分益)(対象オフショア受動的所得)は、特定の状況下で、香港源泉とみなされ、利得税が課されよう(注)(二重課税防止や所要のコンプライアンス要件も規定されよう)。本提案での修正FSIE制度は 2023 年 1 月 1 日に発効する見込みで、祖父条項はない。
(注) 香港で受領した一定の対象オフショア所得について、一定の要件を満たすことによって、引き続き利得税免除になる可能性がある。すなわち、IP所得以外についての経済的実体要件(持株会社の形態に応じ、適切な従業員数とその関連活動に係る香港での営業支出(香港内での一定の外注も可)(ミニマム閾値の提示はない)が求められよう)、IP所得についてのOECD・BEPS行動5準拠のネクサス・アプローチ(特許権および特許権と同等機能のIP資産(商標権・著作権等は含まず)、ならびに配当および株式・持分の処分益についての資本参加免税(投資先法人(受動的所得50%以下)を5%以上保有。なお、一定の濫用防止規定(具体的には、免除制度から外税控除制度へのスイッチオーバー規定(処分益や投資先の利得(配当の場合)への外国課税が15%(基本税率)未満)、主要目的規定、およびハイブリッドミスマッチ防止規定)の対象になろう)による場合である。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2022年9月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2022年7月1日、政府は、包括的な税制改革法案を議会に提出した。税制改革は、ガブリエル・ボリック大統領が掲げる重要なアジェンダの一つである。具体的には、所得税、富裕税、および株主課税の一部事項の改正を提案している。また、租税回避・脱税の防止に重点を置いた新たな措置を盛り込み、税免除の数の削減が行われよう。政府は、本税制改革法案に加え、現在上院で審議中の鉱業税法案の修正案を議会に提出した。これは、大規模鉱山会社に適用される新税を導入し、現在施行されている鉱業税を廃止しようとするものである。一般に、税制改革法案の規定は、特に断りのない限り、官報に掲載された翌月から施行される。本法案には、いくつかの条項と経過規定について、具体的な施行日が含まれている。さらに、税制改革法案を提示した政府の書簡では、ほとんどの改正が、2026年までに完全に採用される見込みであることが示されている。なお、なおボリック大統領支持者は議会で過半数を占めていないため、立法審議の過程で法案の修正案が提出される可能性が高い。さらに、9月には新憲法の投票が予定されており、大統領府の閣僚によると、これが税制改革を含む大統領のアジェンダを実現する鍵になる。
本税制改革法案には以下が含まれる。
現在の統合制度では、現地法人が支払ったチリ法人税について、非居住者株主への配当に適用される35%の非居住者源泉税からの控除が認められている(控除できる法人税の割合は、条約締約国の居住者は100%、それ以外は65%)。今回の税制改革法案では、チリの法的事業体や支店からの配当や回収(withdrawals)に対し、22%の税率で適用される資本所得税が新たに提案されている(また、法人所得税は株主課税の控除対象から外れよう)。なお、チリと租税条約を締結している国の納税義務者である株主に支払われる配当金は、本新制度の対象外であり、引き続き現行の統合制度の対象となる見込みである(インド、オランダ、UAE、米国等との条約は署名済であるが未発効であり、条約締結国に該当するかどうかは不明確。ただし、米国については、2026年まで配当課税目的上は国内法で条約締結国とみなされており、条約批准まではこのルールが延長されるとみられる)。
本税制改革法案では、法人所得税の税率を27%から25%に引き下げる。さらに、2%の賦課金(Development Levy)を新たに導入する。
本税制改革法案では、未送金利益に対して適用される1.8%の新税を創設する予定である。これは、配当、利子(金融機関を除く)、不動産リースなどの受動的な源泉から50%超の所得を得ている法人にのみ適用される。能動的な事業活動に投資している事業法人は、本税の対象にならない見込みである。
本税制改革法案では、新所得税制施行後の経過措置として、留保利益に適用される代替税も盛り込まれている。本税の税率は、暦年で2023年、2024年、2025年は10%、2026年、2027年は12%である。2022年4月まで適用される30%の代替税と異なり、留保金に対する法人所得税の支払いは、本税制改革法案で新たに提案された代替税から控除できない可能性がある。本代替税の納付後は、その対象となる所得は所得税が免除され、株主への送金にも追加課税されない。
2025年(暦年)時点では、繰越欠損金は課税所得の50%までしか控除できない。本税制改革法案によると、NOLsは引き続き無期限に繰り越すことができる。2024年(暦年)では、経過的に75%制限が適用される。
チリのビークル(法的事業体、投資ファンド、チリ支店など)を、(a)10%超保有、(b)その大多数の取締役または執行者を直接・間接に指名できる、または(c)実質的に管理する、といった個人の登録を提案している。
新鉱業税は、非再生可能資源から得られる所得の再分配を図るとともに、鉱業部門への投資と開発を維持することを目的としている。新鉱業税は、特定の閾値を満たすことを条件に、鉱物の採掘に従事する法的事業体または個人に適用される。新鉱業税は、(a)1%から7%の実効税率の売上高(従価)税の要素と、(b)2%から36%の税率の鉱業所得に係る追加課税の要素を組み合わせたハイブリッドな性格を持っている。本法案には、適用税額計算のための具体的な計算ルールが含まれている。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2022年9月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2022年7月6日から7日にかけて、最高裁判所の税務部門(税務事案に関するイタリアの最終裁判所)は、イタリア上場法人からドイツの投資ファンド(ドイツの保険会社がオープン型投資ファンドを100%保有)と米国の6つの投資ファンドに分配された配当(ドイツは2003年、米国は2007、2008、2009および2010年)に課されたイタリアの源泉税(非居住投資ファンドに係る27%課税、本件事案では条約上の15%軽減税率課税)は、EU法、特にTFEU(EU機能条約)63条の資本移動の自由違反であるとする重要判決(7件)を下した(原告の請求を支持することにより、欧州司法裁判所(CJEU)への付託も不要としている)。すなわち、イタリアの投資ファンド(イタリア法上、オープンエンド型投資ファンドは複数の投資家が必要とされるものの、機関投資家による単独投資との比較可能性への影響はないとされた)の場合には、源泉徴収の対象ではなく、各暦年末のファンドの純資産価値と同年初の資産価値の差に基づいて計算された各課税期間に発生する純所得に対して12.5%(特定の状況下では5%または0%に引き下げ可能)が課税される(注)のみであり、したがって外国ファンドに対して差別的であった。なお、外国投資ファンドに関するイアリアの配当課税制度は、すでに、EU居住投資ファンドに係る差別的な税制として欧州委員会で調査されており(EU PILOT 8105/15/TAXU)、その結果、EU適格投資ファンドの配当源泉税は廃止された(2021年から適用)。今回、いずれの判決でも資本移動の自由の違反となり、ドイツ投資ファンドは全額、米国投資ファンドは15%と12.5%との差額の還付の判決が下された。
イタリアでは、適格EU投資ファンドに対する配当源泉税を廃止したものの、適用は2021年1月1日からであり、またEU域外投資ファンドには適用されない。適格EU域外投資ファンド(および2021年1月1日前のEUファンド)に対する配当源泉税の課税は、本最高裁判決で確認されているとおり、EU法違反の状況である。したがって、EUおよびEU域外の投資ファンドは、時効になっていない期間(2018年9月以降の支払い配当)について、還付請求を検討する必要がある。
(注) 2011年7月1日以後、イタリアの投資ファンドは課税されていない
出典:PwC, EUDTG Newsalert
「月刊 国際税務」2022年9月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2022年7月27日、シューマー上院院内総務とマンチン上院議員は、予算調整法案(2022年インフレ抑制法)で合意したと公表した。上院民主党が公表したファクトシートによると、同法案には、企業や個人の増税、および連邦処方薬の価格政策の変更により、10年間で7,390億ドルの歳入と歳出を相殺することが盛り込まれている。また、エネルギー・気候変動対策やAffordable Care Act(医療保険法)の医療給付拡大継続(2025年まで3年延長)のための支出・税制優遇が4,330億ドル、残りの約3000億ドルは赤字削減に充てるとされている。
増税条項には、利得10億ドル超(過去3課税年度平均)の法人(Sコーポレーション、規制投資会社、または不動産投資信託を除く。年間約150の納税者を想定)に対する、調整後会計所得ベース(注1)の15%代替ミニマム税(book minimum tax)案(BMT上の繰越欠損金・外国税額控除や、BMTの繰越控除あり)(注2)(2022年12月31日後開始課税年度から適用)などが含まれている。また、本合意では、IRSの税務執行資金の800億ドル増加が規定されている。本法案では、州税および地方税の連邦個人項目別控除額の上限(10,000ドル)の改正はない。本合意は、2021年11月に下院で可決されたBuild Back Better調整法案(H.R. 5376)とは大きく異なるが、バイデン大統領は支持を表明している(注3)。
(注1) 2021年11月に下院で可決されたBuild Back Better調整法案と異なり、(1)確定給付年金制度に関する帳簿上の収入、費用、経費を無視し、(2)確定給付年金制度に関する課税所得の計算に含まれる所得または控除項目を含めている(2021年12月11日に上院財政委員会のロン・ワイデン委員長が公表した財政修正法案(本誌2022年2月号参照)と同様)
(注2) OECD第2の柱の適格国内ミニマム税(Qualified Domestic Minimum Top-up Tax)とはみなされないとみられる
(注3) 2022年8月7日、上院は、修正「インフレ抑制法」予算調整法案を可決した。修正版の主な改正点として、15%会計所得代替ミニマム税(BMT)案の修正(償却費を税務ベースで認識する等)、および「キャリード・インタレスト」に対する改正案の取り下げがある。さらに、米国上場企業が自社株を買い戻す場合、その価値に対して1%の消費税(excise tax)を課す規定が追加された(2022年12月31日後の自社株買い戻しに適用)。同様の規定は、2021年11月に下院で可決されたBuild Back Better調整法案にも盛り込まれている(本誌2021年12月号も参照)。なお、本インフレ抑制法案は、2022年8月12日に下院でも採決・可決され、2022年8月16日にバイデン大統領の署名を経て法律として成立した
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2022年9月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
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