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2023-06-14
2023年3月9日、バイデン大統領の2024年度予算案と、財務省の歳入案に関する一般説明(Green Book)が公表された。本予算案に含まれる事業関連の税制案には、以下が含まれる。(注)
(注) 共和党が下院を支配していることから、増税案は、当面、進まないとみられる。上下両院の共和党では、政権によるOECD・第1の柱および第2の柱の支持に反対している(本税制案により、中国などに対し米国が競争上不利な立場になることに懸念を示している)。
デジタル資産関係、保険関係の改正や、その他の税制案(キャリードインタレストに対する通常所得課税、特定不動産の減価償却費を通常所得として処分時にリキャプチャー、同種資産交換利益の課税繰り延べ(Section 1031)の制限、デジタル資産マイニングに係るエネルギー消費税の賦課など)がある。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2023年3月15日、財務相は、以下を含む予算案を公表した(注)。
法人税率 - 2023年4月1日より、法人税率が19%から25%に引き上げられる。
資本控除(Capital Allowances) - 特別控除(super-deduction)制度は2023年3月31日に終了し、2023年4月1日より、適格プラントおよび機械に係る100%の資本控除制度に置き換えられる。2026年3月31日までの3年間であるが、政府はこれを恒久化する意向を示している。また、政府は、耐用年数が長い資産を含む一定のプラントおよび機械に係る50%の初年度控除を導入する。本規定は、法人税にのみ適用される(所得税上は、年間百万ポンドの投資控除の閾値を下回らない限り適用されない)。さらに、政府は、電気自動車用充電ポイント設備への適格支出に係る100%の初年度控除を、法人税は2025年3月31日まで、所得税は2025年4月5日まで延長することを決定した。
研究開発 - 2023年4月1日より、赤字の研究開発集約型中小企業(SME)に対する優遇的な救済措置が導入される。適格研究開発費が支出全体の40%以上を占めるSMEは、適格研究開発費の27%相当の税額控除を受けられる。なお、政府は、研究開発支出税額控除(RDEC)とSME制度の統合に関するコンサルテーションへのコメントを検討中である(夏頃のコンサルテーションで法律案を公表予定)。一方、先に公表された一定の国外支出に係る研究開発税額控除の制限の適用は、2024年4月1日まで1年間延期される。また、適格研究開発費として、データライセンスとクラウドコンピューティングサービスの2つのカテゴリーが新たに設けられる。なお、2023年8月1日以降に提出される研究開発費の申請は、会計期間に関係なく、新しいデジタルフォームを使用して提出する必要があるとしている。
投資区域 - 政府は、英国全土に12の投資区域を公表した。ウェストミッドランド、グレーターマンチェスター、北東部、サウスヨークシャー、ウェストヨークシャー、イーストミッドランド、ティースサイド、リバプールなどが含まれる。各投資区域は、フリーポートに匹敵する5年間の税制優遇措置(資本控除、構築物・建物に係る控除の拡大、および、土地印紙税(SDLT)、ビジネスレート、雇用者国民保険拠出金の軽減)を含め、5年間で8千万ポンドを利用できるほか、地域の生産性障壁に対処するための助成金を受けられる。政府は、イングランド8地域の関係者を招き、投資区域の導入に向けた協議を開始している。政府は、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドにおける投資区域の導入支援のため、各地方当局と協力する。
移転価格の文書化 – コンサルテーションを受け、英国で活動する大規模な多国籍企業は、OECDの移転価格ガイドラインに規定するマスターファイルおよびローカルファイルを、所定の標準化された様式で保存する必要がある。HMRC(内国歳入庁)は、Summary Audit Trail(ローカルファイル作成時の主な作業を詳述した短い質問票)の導入について、引き続き検討している。
その他
以上のほか、クリエイティブ産業に係る税恩典の改正等がある。また、英国居住者である投資マネージャーは、他の法域での二重課税救済措置を受けるタイミングと合わせるため、納税を早める選択が可能になる。
(注) その後、2023年3月23日、2023年度春季財政法案(Finance (No.2) Bill 2023)が公表された。ここでは、OECD包摂的枠組(IF)の第2の柱における多国籍企業・国内トップアップ税の提案も含まれている。本法案の第3部(第121~264項およびSchedule 14~17)および第4部(第265~277項およびSchedule 18)では、OECD通じて国際的に合意したアプローチに沿った所得合算ルール(IIR)(multinational top-up tax)、および選択性の適格国内トップアップ税(QDMTT)に言及している。IIRは、多国籍企業の2023年12月31日以後開始会計期間に適用される(2026年12月31日までは、財務省が多国間の整合性を確保するために必要と考える場合、税制改正や追加規定の創設が可能)。なお、以前2022年7月には、英国多国籍企業トップアップ税制の草案が公表されている。今回改訂された法案では、前回の草案では保留とされていた追加の条項と、2023年2月にOECDが公表した執行ガイダンス(AG)を取り入れるための新条項が含まれている。AGに含まれている(今回の改訂法案にも反映されている)主な項目には、(所得・税額のブレンディングがなされる)CFC税制(米国GILTI税制など)の取扱い、債務免除の取扱い、繰延税金資産とグループ内移転に関する経過措置の改訂が含まれる。国内トップアップ税は、2023年12月31日以後開始会計期間について、多国籍企業グループの英国メンバー、英国企業のメンバー、および英国内のみで活動する一定の英国企業に適用される。なお、英国は、当該税制がQDMTTであることを目指している(IFのピアレビューおよびモニタリングの対象)。なお、IIR、国内ミニマム税ともに、経過的なセーフハーバーが適用されよう(当初3年間)。セーフハーバー規定の適用には、適格財務諸表に基づくものなど、一定の要件が求められる。本法律案の実質的な制定は、2023年6月か7月(議会の夏季休会前)になる可能性がある。
所得税の税率・閾値 - 以前公表された個人所得税および国民保険料税率・閾値に変更はない。
年金税制 - 以下の改正が公表されている。
その他の措置
以上のほか、燃料税の凍結(1リットル当たり5ペンス引き下げ)の1年追加延長、アルコール税関係の改正(2023年8月1日より、RPIインフレ連動での税率引き上げ、およびドラフト救済(Draught Relief)率引き上げ)、エネルギー価格支援(家庭向けのエネルギー価格保証を2023年6月まで現行料金で継続(追加で3か月延長)し、典型的な家庭のエネルギー代を年間2,500ポンドに制限)など、慈善活動に係る税恩典(投資税額控除)を英国での慈善活動に限定(EU・EEAでの慈善活動については、2023年3月15日より税恩典が受けられない(2024年4月まで経過措置あり)など)、トン数税制関連(2023年6月より、トン数税制の再選択を容認)などがある。
出典:PwC UK / PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2023年3月20日、連邦財務省(MoF)は、EUにおける多国籍グループおよび国内の大規模グループに対するグローバルミニマム課税を実現する第2の柱指令の実施に係る法律案(ミニマム税指令実施法 - MinBestRL-UmsG)を公表した。これは、2022年12月15日、EU理事会で第2の柱が正式採択されたことを受けたものである。本討議草案は、EU指令、OECDモデルGloBEルールや、セーフハーバールールなど他のOECD文書におおむね準拠している。EUミニマム税指令の実施は、別の法律であるミニマム税法(MinStG)により規定される。本討議草案は、合計89パラグラフで構成され、11のパートに分かれている。
OECDモデルルールやEU指令と同様に、MinStGの適用範囲には、最終親事業体の直近4つの連結財務諸表のうち少なくとも2つにおいて、年間収入が7億5千万ユーロ以上の閾値に達しているグループが含まれることになろう。本討議草案では、EU指令に沿って、MNEグループだけでなく、当該収入閾値を満たす純粋にドイツで活動するグループに対しても追加課税を行うことを規定している。MinStGの対象となるグループには、法的形態に関係なく、連結財務諸表に完全に(または部分的に)連結されているすべての事業体と、その各恒久的施設(構成事業体)が含まれよう。なお、EU指令の追加規定として、本討議草案には、ミニマムタックスグループに関する規則が規定されている(MinStG Section 3)。ミニマムタックスグループは、MinStGに基づきドイツで課税される構成事業体と国内グループ親会社で構成される。追加税額はグループリーダーに割り当てられ、グループリーダーは税務当局に対して唯一の納税義務者となり、構成事業体は連帯責任を負うことになる。
トップアップ税額は、3つの異なるメカニズムで課税される可能性がある。
Part 5では、実効税率(ETR)とトップアップ税額の算定を規定している。トップアップ税額は、ETR が最低税率15%より低い課税管轄国・地域に所在する構成事業体に関して生じる。ETRは、GloBE所得・損失の総額に対する調整後対象租税の総額の割合であり、国・地域ごとに算定される。
Part 3では、GloBE所得・損失の算定を規定している。GloBE所得・損失の計算の出発点は、最終親事業体の連結財務諸表作成に適用される会計基準に基づき、当該会計年度において算定された構成事業体ごとの会計上の利益または損失であり、多くの加減算調整が必要である。
Part 4では、調整後対象租税を規定している。調整後対象租税は、各構成事業体の会計上認識される当期税金と繰延税金からなり、一定の加減算調整を行う必要がある。ETRと最低税率の差は、実質基準の適用除外調整後の当該国・地域GloBE所得・損失の総額に適用されるトップアップ税額となる。その結果、国・地域ごとのトップアップ税額が算定される。
Part 6およびPart 7には、特別規定が含まれている。これらは、特に、グループへの参加・離脱に関連する規定、ジョイントベンチャーに関する規定、特定の最終親事業体に関する特別規定、および投資事業体に関する規定が含まれる。
MinStG草案では、MNEグループが満たすべき様々な執行上の要件が規定されている。原則として、MinStGの下で課税対象となる各構成事業体は、その事業年度のグローブ情報申告書(GIR)を連邦中央税務庁(BZSt)に提出しなければならない。ただし、特定の状況下では、特定の構成事業体が他の構成事業体に代わってGIRを提出することができる。GIRは、事業年度終了後15か月(初年度は18か月)以内にBZStに提出しなければならない。意図的にGIRを提出しなかったり、期限内に提出しなかったり、すべてを提出しなかったりした場合は、行政処分の対象になる(罰金の額は未定)。本討議草案では、GIRに加え、各国内課税構成事業体による所轄税務署への税務申告書の提出を規定している(国内ミニマムタックスグループが存在する場合、グループリーダーのみがグループの税務申告書提出を行う)。事業年度のトップアップ税額は、その事業年度が終了する暦年の末日に生じる。本討議草案の説明文書によると、申告書の提出については、一般財政法(GFC Section 149)の一般規定が適用される。納税の期限は、申告書の提出から1か月後である。本討議草案には、国別報告(CbCR)に基づく経過的セーフハーバールールなど、OECDのセーフハーバールールが含まれている。セーフハーバーの要件を満たせば、トップアップ税額は零となるが、この場合でも、MinStGに基づくGIRおよび申告義務は影響を受けない。さらに、本討議草案では、GloBE収入、GloBE所得・損失、重要性の低い事業体の調整後対象租税の算定を簡素化するためのさらなる選択規定、およびQDMTTを通じてミニマム税がすでに課税されている場合の救済を規定している。また、MNEグループが従属的な国際活動しか行っていない場合、最初の5年間はトップアップ税が免除される。さらに、本討議草案には、移行年度以降のETRの算定に関する規定、2021年11月30日後の繰延税金や構成事業体間の資産移転の取扱いに関する規定も含まれている。
MinStGは、2023年12月30日後に開始する事業年度から適用される。UTPR規則は、2024年12月30日以後に開始する事業年度から適用される。(注)
(注) 他国の状況として、たとえば、韓国では、2022年12月23日、国会で第2の柱の法案(本誌2022年9月号参照)が可決された。IIRとUTPRを2024年1月1日以降開始事業年度から適用(QDMTTは含まれていない)し、2023年2月公表予定の大統領令および施行規則で制度の詳細が明らかになる予定であった(本誌2023年2月号参照)が、2023年3月16日、企画財政部は、他国の第2の柱ルールの制定状況をモニタリングした結果、大統領令の公表を2023年2月の予定から2023年後半または2024年2月に延期することを決定した。大統領令および施行規則は、厳密には韓国の第2の柱ルールが発効する前に発効する必要はないが、他のIF(包摂的枠組)参加国での導入状況によっては、韓国での第2の柱ルールが1年遅れる(2024年からではなく、2025年から発効する)可能性もある。
カナダでは、2023年3月28日公表の2023年度予算案の中で、デジタルサービス税(DST)、第1の柱および第2の柱の計画を示している。DSTについて、政府は、国会に修正法案を提出する前に、パブリックコメントを求める予定である。第2の柱について、政府は、IIRと国内ミニマム税(QDMTTとして認められることを目指す)の法案を今後数か月の間に公表予定であり、UTPRの法案はその後に公表予定である。IIRと国内ミニマムトップアップ税は、2023年12月31日以後に開始する多国籍企業の会計年度に適用されよう。UTPRは、2024年12月31日以後に開始する会計年度に適用されよう。なお、実施法の草案は、第2の柱に関するパブリックコンサルテーション(2022年7月7日期限)で寄せられたコメントを考慮するとしている。詳細なモデルルール、コメンタリー、およびIFで合意された執行ガイダンス(セーフハーバーを含む)に従うことになる。英国や日本と同様、カナダもUTPR実施法案の公表を当面見送るとしている。
アイルランドでは、財務省が、2023年3月31日に、GloBEルールの実施に関する文書(法律案を含む)を公表し、国内トップアップ税を含むGloBEルールの実施に関するフィードバックを募集している(2023年5月8日まで)。QDTT(Qualified Domestic Top-up Tax)、登録、自己査定、申告、納税、記録保存などの執行上の要件に関して取り得るアプローチなど、いくつかの特定の質問も含まれている。これは、2段階の公開協議の第1弾であり、第2弾は夏に公表予定である(最終規定は、2023年10月の財政法案で公表見込み)。財務省は、別途、利害関係者を含むフォーラムを開催している。
ベルギーでは、2023年3月3日、財務大臣が、第2の柱の制定を第1フェーズとする段階的な税制改革を公表している(第2の柱の実施により、3年間で20億ユーロ(2024年に6億3,400万ユーロ、2025年に7億1,400万ユーロ、2026年に7億4,800万ユーロ)の財源確保の見込み)。政府は、連邦予算の中で、第2の柱の導入に係る基本原則を決定している。国内トップアップ税(QDMTT)を導入し、既存の税予納スケジュールに第2の柱を含めるなどとしている。納税義務は一のグループ事業体で生じ、他のグループ事業体は連帯納税義務を負うことになる。研究開発税額控除は、第2の柱の要件(適格還付税額控除)に合わせるために改正されよう(払い戻しの期限が、5年から4年に短縮)。
スペインでは、EU内の多国籍企業グループおよび国内の大規模グループに対するグローバルミニマムレベル課税の確保に関する2022年12月14日付け理事会指令(EU)2022/2523の国内法への取り込みに関するパブリックコンサルテーション(2023年3月6日から3月26日まで)を開催した。
ケニアでは、大統領が、2023年3月30日、DSTを廃止し、第1および第2の柱の合意に参加する旨を表明している。ケニアは、2021年10月のIF合意を、ナイジェリア、パキスタン、スリランカとともに保留していた。また、ケニアは以前、2022年の財政法案で、DSTを1.5%から3%に引き上げることを提案していたが、その提案は取り下げられた。
一方、国連(UN)租税委員会では、2023年3月28日、国連版モデルSTTR条約規定およびコメンタリーの草案テキストに関する報告書が承認された。本規定の適用は、利子やロイヤルティーなどの税源浸食性のある支払いや、関連者間取引に伴う所得に限定されず、ミニマム税率(IF合意では9%)の記載はない(交渉当事者に委ねられる)。なお、IFでは、合意したSTTRモデル条約条項を今夏に最終決定し、公表する予定となっている。
なお、オーストラリアでは、2022年10月25日の連邦予算で公表された、低税率または無税(税率15%未満)の国・地域で保有する無形資産に係るクロスボーダー特定支払いの損金算入制限(本誌2022年12月号参照)に関して、2023年3月31日、連邦財務省が関連法案および説明文書を公表し、パブリックコメントを募集した(2023年4月28日まで)。本措置は、大規模(連結会計収入10億豪ドル)グローバル企業のメンバーである特定事業体(Australian Significant Global Entity: SGE)に対し、その関連者への直接および間接の支払いに適用される見込みである(2023年7月1日以後の支払い等に適用)。本措置において低税率国・地域の判定は(実効税率ではなく)法定法人税率で行うが、本説明文書によると、(州税、地方税等は含まず)国税のみでの判定となる。本法案によると、法定法人税率を決定する際に複雑な点もある。また、十分な経済実体を伴わない優遇パテントボックス税制を有すると関係大臣が認める場合、立法措置で当該国・地域を本措置における低税率国・地域と認定する条項も含まれている。本討議草案では、具体的な対象国・地域は示されていないが、OECD のガイダンスが判断要素となることが示されている。また、無形資産の定義などについても追加的な見解を示している。一方、本措置とCFCルールや第2の柱(IIR・QDMTT)との関係を含め、依然として多くの不確定要素があり、留意が必要となろう。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2023年3月7日、第2の柱・グローバルミニマム税制の導入に係る措置が閣議決定され、関係政府機関が取るべき措置が、以下のとおり公表された。
本閣議決定によると、第2の柱ルールの草案は2023年に導入されることを意図しており、2025年に発効の可能性がある。現段階では、ルールの詳細は公表されていない。
出典:PwC Thailand
「月刊 国際税務」2023年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2023年3月10日、IRSの首席法律顧問官室は、内部文書(Advice Memorandum(AM)2023-002)を公表した。本文書では、ある課税年度におけるCFC株式簿価(ベーシス)の調整(サブパートF所得、Section 956およびGILTI(グローバル無形資産低課税所得)合算課税に伴う)と、同一課税年度の最終日前に行われる課税済利得(previously taxed earnings and profits: PTEP)の期中分配との関連を取り上げている。この問題は、現行Section 961におけるベーシス増減調整のタイミングが明確でないことに起因している。本文書では、あるCFC課税年度に生じるベーシス増加(Section 961(a))について、当該CFC課税年度におけるPTEP分配に係る利益の算定(Section 961(b)(2))上、考慮されると結論付けている(当年度中のCFC株式ベーシスの増加を認め、当該分配に伴う利益認識リスクを軽減)。なお、2023年1月27日公表のプライベート・レター・ルーリング(PLR)202304008)でも、本文書と同様の論点が取り上げられており、いずれも納税者有利の見解となっている。いずれも拘束力のあるガイダンスではないが、本文書については、IRS副法律顧問官(国際担当)(Associate Chief Counsel(International))が署名しており、IRSによる税務調査の際、参照されることになる。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2023年3月15日、メキシコは、BEPS防止措置実施条約(MLI)の批准書をOECDに寄託した(2022年10月12日に上院可決、2022年11月22日に官報掲載)。MLIは、2023年7月1日に発効し、全てのメキシコ税務目的上は、2024年1月1日に発効する。メキシコは、MLI原署名国であり、2017年7月7日の調印式に参加している。MLIには、いくつかのミニマムスタンダードがあり、第6条(対象租税協定の目的)や、第7条(条約の濫用の防止)(いずれも、BEPS行動6(租税条約の濫用防止)関連)も含まれる。これらの規定のほとんどは、条約の前文、および主要目的テスト(PPT)の規定の修正により取り込まれる。源泉税(利子、使用料、配当)およびその他の税(譲渡所得、恒久的施設)に係る対象租税協定の全条項について、2024年1月1日以後、すでに批准・寄託している締約国との間でその影響が及ぶことになる。55の対象租税協定(注1)のうち、48(日本を含む)はすでに批准・寄託されており、2024年1月1日よりMLIが適用される。(注2)
(注1) アルゼンチン、コロンビア、イタリア、ジャマイカ、クウェート、ペルー、トルコとの条約については、まだMLIの批准・寄託手続きが完了していない。
(注2) メキシコには、一般的租税回避防止規定(GAAR)もあり、納税者が合理的に期待される経済的恩典よりも大きな税務上の恩典(軽減、除去、繰延)を得る場合、税務当局は事業上の目的を伴わない取引を再構成することができる。合理的に期待される経済的恩典は、納税者の取引が、所得稼得、コスト削減、資産価値向上、市場での地位向上等を意図している場合に存在する。さらに、より少ないステップで同様の経済的恩典を達成できるものの、課税額がより多くなっていたとみられる場合、税務当局は、事業上の理由の欠如を主張できる。なお、現時点では、PPTおよびGAARに関する判例や、これらの明確/補足的な定義はほとんどないとされる。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年5月号収録 Worldwide Tax Summary
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PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
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