月刊国際税務 Worldwide Tax Summary 5月号

2022-06-07

2022年5月号Worldwide Tax Summaryトピックス

  1. バイデン大統領、2023年度予算で超富裕層へのミニマム税新設を提案~法人税率引上げなど増税案を改めて表明(米国)
  2. 2022年春季財政報告(英国)
  3. 第2の柱のコメンタリーを公表、実施フレームワークに関するパブリックコンサルテーションを開始(OECD(1))
  4. 第1の柱の適用範囲に関する国内法のモデルルール案のパブリックコンサルテーションを開始(OECD(2))
  5. EU財務相会議、第2の柱の指令案で全会一致に至らず(EU)

バイデン大統領、2023年度予算で超富裕層へのミニマム税新設を提案~法人税率引上げなど増税案を改めて表明(米国)

2022年3月28日、バイデン大統領は、特定の高所得者に適用される20%の新ミニマム税など新たな増税と、10年間で1兆ドルの連邦赤字削減のためのその他の措置を提案する5兆8千億ドルの2023年度(2022年10月~2023年9月)予算案を議会に提出した。新たな事業に係る増税案には、現行の税源浸食濫用防止税(BEAT)に代わる「軽課税利得ルール」(undertaxed profits rule)が含まれている。また、2022年度予算案に盛り込まれていた法人所得税率の28%への引上げその他の多くの税規定を再提案している。昨年11月に民主党票のみで下院を通過した「Build Back Better」調整法案(H.R.5376)を上院民主党が進めようとしている中、本予算案と120ページにおよぶ財務省の「政府の2023年度歳入案に関する一般説明」(Green Book)が公表された。H.R.5376は、法案の歳出規定等について、民主党の一上院議員の反対により、上院で停滞している。H.R.5376には、法人利得ミニマム税、法人株式の買い戻しにかかる付加税、国際税法改正、個人の調整総所得1千万ドル超に対する付加税、個人の純投資所得税拡大など、多くの増税案が含まれている。H.R.5376には、2017年税制改革法の規定により2022年から償却の対象となったSection 174の研究費の一時損金性を復活させる措置など、納税者に有利な規定も含まれている。企業や個人に影響を与える重要な税制案は、民主党が上院の全民主党員の一致した支持を得られれば、予算調整手続きの下で制定される可能性がある。本予算案では、新たな増税などを提案し、10年間で1兆ドルの連邦赤字を削減することを目的としている一方、国防およびそれ以外の裁量プログラムに対する全体的な歳出を増加させることを提案している。なお、議会民主党でH.R.5376が審議中であることを考慮し、特定政策間または歳入・歳出の内訳は示さず、「赤字中立予備費」(deficit neutral reserve fund)を計上し、企業・個人増税で相殺する形としている。

高所得者に対する新たな個人ミニマム税

財務省の試算によると、高所得者への20%のミニマム税により、10年間で3千6百億ドルの増税になる。この「超富裕層」に対する20%のミニマム税は、1億ドル超の純資産を有するすべての納税者に係る未実現キャピタルゲイン所得を含む総所得に対して適用される(2022年12月31日後開始課税年度から適用予定)。本提案では、納税者は、初年度のミニマム税額について、9回均等(翌年以降は5回均等)の年払いを選択できる。ミニマム税額の支払いは前払いとして扱われ、その後の実現キャピタルゲインに対する税額から控除できる(重複課税を回避)。なお、特定の非流動資産には特別規定が適用される。閾値を超える資産を持つ納税者は、毎年、資産区分ごとに、特定資産区分の資産の簿価総額と推定時価総額(課税年度の12月31日時点)、および負債総額のIRSへの報告が義務づけられる。

新たな軽課税利得ルール

本予算案では、BEATを廃止し、OECDの第2の柱モデルルールで説明されているUTPRと整合性を持たせることを意図した新たな軽課税利得ルール(UTPR)に置き換えるとしている。他の国地域がUTPRを採用した場合において、米国の税収が、他国によるUTPRの適用から守られるよう、国内ミニマムトップアップ税(domestic minimum top-up tax)(税率15%)を本提案に含めている。これとは別に、本提案では、米国の納税者が、米国の雇用と投資を促進する米国の税額控除その他の税制優遇措置の恩恵を受け続けられるようにするための不特定のメカニズムが規定されよう。UTPRは、主に軽課税国地域で活動する外国籍の親会社を持つ多国籍企業に適用されよう。また、UTPRは、過去4年間のうち少なくとも2年間でグローバルの年間売上が8億5千万ドル以上の財務報告グループにのみ適用されよう。BEATを廃止し、UTPRに置き換える提案は、2023年12月31日後に開始する課税年度から適用されよう。財務省の試算によると、本新提案では、10年間で2,390億ドルの税収が見込まれる。

その他の増税案

本予算案には、法人所得税率の28%への引上げ(注1)および関連措置(注2)、ならびにその他の増税提案が含まれる(注3)。

(注1)2022年12月31日後開始課税年度から適用(2023年1月1日前開始、2022年12月31日後終了課税年度は、21%+(7%×2023年帰属分))。なお、GILTIについて、①国地域別に改正、②実効税率20%に引上げ(注2)
(注2)H.R.5376では21%の法人所得税率は変えず、Section 250の控除を28.5%(50%から)に削減(GILTI実効税率15%)となっていたところ、本予算案の法人所得税率の21%から28%への引上げにより、GILTI実効税率も、H.R.5376の15%から20%に引上げ
(注3)本予算案における企業および個人へのその他の追加増税案には、以下が含まれる。
米国への雇用回帰に係る税額控除(適格費用の10%)、国外への雇用移転に係る費用の損金不算入、パートナーシップを通じた関連者によるベーシス・シフトの防止/支配(Section 368(c))の定義を法人関連テスト(Section 1504(a)(2).)に整合/適格選択基金(QEF)の遡及的な選択の拡大/外国事業体の定義を拡大し課税対象ユニット(支店やdisregarded entity)を包含/無形掘削費の費用計上の廃止/石油・天然ガス田に関する特別償却(percentage depletion)の使用廃止/独立系生産者に係る地質学的・物理学的償却期間の延長/個人の最高限界税率を39.6%に引上げ/高所得者の資本所得に普通税率を適用/特定のグランター・トラストに関する所得税・遺産税・贈与税の規定改正/約束手形の一貫した評価の義務付け/信託と被相続人の遺産に関する税務管理の改善/世代間移転税の非課税期間の制限/キャリード(利得)インタレストに対する通常所得課税/私立財団の支払い要件を回避するためのファンド(donor advised funds)の利用制限/デジタル資産を含む各種規定の近代化/同種資産利益の課税繰延べ(Section 1031)の制限(年50万ドル。共同申告をする既婚納税者は1百万ドル)/特定の償却可能な不動産の減価償却費控除を通常所得としてリキャプチャー/脱漏所得1億ドル超の複雑事案(例;移転価格エコノミスト関与事案等)に係る税務調査時効の3年→6年への延長/事業用生命保険の支払利息の比例配分方式による不算入の拡大/2017年法における保険会社の課税に関する草案上の誤りの是正/特定の小規模保険会社に対する非課税所得勘定制度の創設

出典:US Department of the Treasury, General Explanations of the Administration’s
Fiscal Year 2023 Revenue Proposals / PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2022年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

2022年春季財政報告(英国)

2022年3月23日、財務相は、春季財政報告(Spring Statement)を公表した。以下を含め多くの税制に関する公表事項がある。

個人税、雇用、および国民保険料(NICs)

  • 国民保険の閾値 - 従業員・自営業者の国民保険の基礎所得額(Primary Threshold)と、所得下限額(Lower Profits Limit)を、それぞれ2022年7月より、9,880ポンドから12,570ポンド(所得税の課税最低限度額(personal allowance)と同額)に引上げ
  • 所得税の基本税率 - 2024年4月より、所得税の基本税率を20%から19%に引下げ
  • 雇用者控除(Employment Allowance) - 2022年4月より、4,000ポンドから5,000ポンドに引上げ(対象雇用主は、NICsの負担を年間最大5,000ポンド削減)
  • 職業実習賦課金(Apprenticeship Levy)の見直し – 本賦課金の運用を含む現行税制が、企業が適切な訓練に投資するインセンティブとして十分か調査

間接税・VAT(付加価値税)

  • 燃料税の一時的な引下げ - ガソリンと軽油に係る税を12ヶ月間、1リットルあたり5ペンス引下げ(3月23日から英国全土で実施)
  • 省エネ材料(ESM)へのVAT軽減 - 2022年4月より、ESMの設置に対する時限的なゼロ税率を導入。さらに、風力および水力タービンをESMのリストに追加し、複雑な適用要件を撤廃。

事業に係る税

R&D税制の改正 - R&D税制を改正し、一部のクラウドとデータコストを含め、英国で行われるR&Dに支援を集中させることを確認。前回の公表の延長で、(i)ストレージを含むR&Dに関連する全てのクラウド・コンピューティング・コストを減税対象、(ii)一定の国外R&D活動費用を減税対象、および(iii)R&Dの定義を拡大し、純粋数学を適格コストに包含(次の財政法案に含まれ、2023年4月施行見込み)

設備投資減税 - 政府は、2023年4月の追加控除(super-deduction)終了(法人税率は19%→25%に引上げ)後の将来の企業投資に対する減税方法を検討中(企業と協議予定。2022年秋の予算で公表予定)

税制改正

タックスプランでは、以下のテーマを挙げている。

  • 家庭の生活費負担を軽減
  • 民間主導の成長のための条件整備(資本、人材、アイデアにフォーカス)
  • 成長による収益の分配(所得税の引下げ案(2024年4月から所得税の基本税率を20%から19%に引下げなど)

また、政府は税制の改革と簡素化にも取り組む。特に、1,000を超える減免措置や控除(allowance)があり、それが制度の複雑さに拍車をかけていることに注目している(2024年までに見直し、公表予定)

参考)2022年2月28日、財務省は、「online sales tax (OST)」のコンサルテーション(5月20日まで)を公表した。これにより、小売業者のビジネスレート(固定資産税)引下げ財源の埋め合わせを考えている(実施および詳細設計は未定)。税率は、売上の1~2%(10~16億ポンドの税収)を想定している(なお、ビジネスレートの税収は、年250億ポンド超(うち、小売業分約75億ポンド))。OSTは、OECD包摂的枠組で検討中の第1の柱の実施に伴い廃止されるデジタルサービス税(DST)とは異なる。OSTは、少ない物的設備で成長するオンライン小売業者ではなく、より価値ある物的設備を有する小売業者に不均衡なビジネスレートの負担がかかることを懸念する利害関係者により提案されている

出典:GOV.UK website / PwC UK
「月刊 国際税務」2022年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

第2の柱のコメンタリーを公表、実施フレームワークに関するパブリックコンサルテーションを開始(OECD(1))

2022年3月14日、OECDは、第2の柱のモデルルールのコメンタリーと事例集を公表した(注)。本コメンタリーは、モデルルールの解釈と適用に関するガイダンスを示し、モデルルールの一貫した解釈を促し、税務当局と多国籍企業グループ双方にとって協調的な結果を促進することを意図している。

(注)本コメンタリーは包摂的枠組み(IF)で承認されているが、事例集はOECD事務局による公表であり、コメンタリーの一部を構成しないとしている(将来、追加事例の作成・公表の可能性)

本コメンタリーでは、以下を含む、モデルルールで未解決の問題を扱っている。

  • UTPR(軽課税利得ルール)トップアップ税額を徴収する構成事業体/国地域と、トップアップ税額が生じる軽課税構成事業体/国地域の間に、関連性や取引(例えば、控除可能対象支払い)がなくてもよい(税額徴収に係る調整方法はUTPR適用国地域の国内法に委ねられる)という立場を補強
    参考)モデルルール第2.5.3条に関し、IIR(所得合算ルール)が軽課税構成事業体(LTCE)に係るトップアップ税の一部に適用されることとなる場合に、UTPRはトップアップ税総額から当該IIR税を控除した額に適用されることから、結果として少数株主持分もUTPR対象になる可能性(簡素化の観点。例示2.5.3–1参照)
  • トップアップ税率への繰延税金調整総額の切下げ(第4.4.1条)、所得がない年のトップアップ税の可能性(第4.1.5条)の規定に変更なし(注)
    (注)本コメンタリーでは、第1の柱で課税ベースについて提案されているような、GloBEルール導入前に生じた欠損金の利用期限は規定されていない。なお、移行規定(第9.1.3条 – 第2の柱回避防止規定)について、例えば買収後のグループ内統合プロセス等、2021年11月30日後、移行年度(ある国・地域において、多国籍企業グループがその国・地域のGloBEルールの適用範囲に入った最初の事業年度)開始前について、第2の柱の目的上、資産(棚卸資産を除く)は簿価移転となる
  • 適格IIRとみなされない条件として、IIRで支払った税金の一部に相当する税額控除を他の税金に充当することを具体的に例示
  • 実施フレームワーク(年内に策定予定)には、各国が適格IIRを導入したかどうかを税務当局(注)が判断するのを支援するプロセスの実施が含まれることに言及(これらの事後判断の結果は公表見込み)
    (注)EUミニマム課税指令案では、各国地域の税制が適格IIRとなるかどうかの判定権限を欧州委員会または欧州理事会(全会一致)に付託することを検討中
  • 適格還付可能税額控除の定義を拡大し、適格税額控除と非適格税額控除の扱いの違いを明確化(非適格の税制優遇措置や税額控除の利用により、対象税額が減少し、最終的に最終親事業体の本国での実効税率が15%未満となり、UTPR適用のきっかけとなる可能性がある)

また、2022年3月14日には、GloBE(IIRおよびUTPR)実施フレームワークに関するパブリックコンサルテーションが開始された。モデルルールの執行(追加執行ガイダンス)、運用(申告、報告制度を含む情報収集、記録保存)、コンプライアンスコスト削減(簡素化・セーフハーバー(実効税率等の計算免除 - 例:適格国内ミニマムトップアップ税の対象国の場合)、ルール調整(税の安定性、二重課税回避)に関する様々な問題について、利害関係者の意見が求められている(提出期限は、2022年4月11日。4月25日にパブリックコンサルテーション)。

出典:Tax Policy Bulletin
「月刊 国際税務」2022年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

第1の柱の適用範囲に関する国内法のモデルルール案のパブリックコンサルテーションを開始(OECD(2))

2022年4月4日、OECDは、第1の柱の利益Aの適用範囲に関する国内法のモデルルール案を公表した(2022年4月20日までコメント募集)。これは、第1の柱(利益A)に関する一連のコンサルテーションの第3回である(第1回はレベニューソーシングとネクサス、第2回は課税ベースの算定、(いずれも、本誌4月号参照))。本適用範囲に関するルールでは、グループが、利益Aの適用範囲となる場合についての判定がなされる(採掘業・規制対象金融サービスの適用範囲除外、および開示セグメントに対する利益A適用のルールについては、後日公表)。なお、現時点で、包摂的枠組み(IF)では、これらのルール案に同意しておらず、OECD事務局の作業となっている(協議プロセスと関係なく、変更の可能性あり)。本協議文書では、デジタル経済に関するタスクフォース(TFDE)が調査中のいくつかの未解決問題を具体的に特定し、利害関係者からの意見を募集している(第2回の課税ベースの算定に関するルール案の公表以降に修正された、いくつかの用語定義も確認)。

本協議文書では、TFDEが、4つの個別に関連する正式文書(多国間協定(MLC)とその説明文書、および国内法モデルルールと関連コメンタリー)を作成中としている。適用範囲に関するモデルルール(スコープルール)案では、事業者が利益Aの適用範囲となるかどうかを判定するため、2つの閾値テストを導入する。

第1のテストは、グローバル売上テストで、事業者は、(グループ最終親事業体(UPE)の連結財務諸表の)対象期間のグループの総売上が2百億ユーロ(12か月未満の場合は比例配分)超かを判定する(TFDEが通貨変動に関連する調整問題を調査中)。なお、総売上は、適格財務会計基準(QFAS)に従って作成されたグループの連結財務諸表で報告された売上に、配当、資本損益、修正再表示、および除外事業体の売上の調整を加え、持分法の合弁事業(JV)売上のグループ持分を加えて調整する必要がある(なお、QFASの利用について、明らかに閾値未満となるグループに不均衡な実務負担とならないよう、重要性の閾値を提案、利害関係者の意見を募集)。本協議文書によると、TFDEは、10%超の収益性テスト(後述)同様の平均化メカニズムと前期間テストを、本グローバル売上テストにも導入するか検討している。なお、2021年10月のIFの声明では、利益Aに係る税の安定性を含む実施の成功を条件に、売上の閾値を1百億ユーロに引き下げる予定である(協定発効7年後にレビュー開始、1年以内に完了)。

第2のテストは、3つの収益性テストであり、事業者が、総売上に対し、一貫して10%超の収益性(税引前利益率)を稼得しているかどうかを判定するよう設計されている。本スコープルールでは、グループの収益性は、現在の期間(期間テスト)だけでなく、前4期間のうち少なくとも2期間(前期間テスト)、また、それら4期間と現在の期間の平均(平均テスト)でも、10%の閾値を超えている必要がある(中立性と安定性の観点)。この前期間テストと平均テストは、毎年継続的に適用されることを求めている一方、これをエントリーテストとしてのみ適用し、一度満たされると後続期間には適用されなくなくなる(特別損失の複数期間への影響を排除する観点)こともTFDEで議論中であり、意見を求めている。このほか、本スコープルールには、グループの合併/分割が行われた場合の前期間テストと平均テストの適用に係る規定(財務データの遡及的再計算を求めず、既存の連結財務諸表の財務データを利用するように設計)が含まれている。

本スコープルールは、利益Aの一般的な設計に従って、グループレベルでの適用を目的としている。グループの概念は、財務会計基準に従って連結財務諸表を通常作成するUPEを参照して定義される。このグループの定義は、第2の柱のGloBEルールの目的で使用される定義よりも狭いと思われる(GloBEの場合、グループには、特定状況で連結財務諸表から除外される事業体も含まれる)。本スコープルールには、UPEを定義するための標準化されたアプローチを保証するため、特定事業体をUPEにすることはできないという少数の例外が含まれる。本ルールはまた、除外事業体、投資ファンド、または不動産投資ビークル所有のグループUPEが、スコープルール(グローバル売上テスト)回避のリストラクチャリングを行うことを防止するため、濫用(細分化)防止規定(主要目的テスト)を導入する(TFDEで、様々な要件(執行を含め)を議論中。コメンタリーで解説予定。祖父条項の適用期限は、早ければ本協議文書の公表日となる可能性)。

本スコープルールには、グループの連結財務諸表で報告される開示セグメントに適用される例外的スコーピングルールのプレースホルダーが含まれる。これらのルールは、グループ全体では上述の売上および収益性の閾値を満たさないが、開示セグメント単独でこれらの閾値を満たすような、限られた状況で、利益Aの対象範囲になる。

2021年10月のIFの声明に合わせ、本スコープルールには、採掘業と規制対象金融サービスの除外が含まれているが、これらの詳細は、今後のモデルルールで明確にされる。本除外は、除外活動から生じる売上と利得に適用される。グローバル売上テストと収益性テストは、これらを除いて適用する必要があり、除外後の両テストにおいていずれかの閾値を下回った場合、利益Aの範囲対象とはならない。なお、本スコープルールでは、採掘業・規制対象金融サービスに加え、特定の事業体を利益Aから除外する。特に、グループおよびグループ事業体の定義は、政府機関、国際組織、非営利組織、年金基金、特定の投資および不動産投資ファンド、およびその価値の95%以上がこれら除外事業体の1つにより所有されている事業体を含み、除外事業体を明確に除外している(第2の柱GloBEルールで採用されているアプローチと一致)。

出典:Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2022年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

EU財務相会議、第2の柱の指令案で全会一致に至らず(EU)

2022年3月15日、EU財務相会議が開催され、EU加盟国によるミニマム税導入に関する妥協案の議論・投票が行われた。本妥協案について、広範な支持は得られたものの、全会一致には至らなかった(注)。本妥協案では、加盟国が指令の内容を国内法に取り込んで発効させる期日が、2023年1月1日から2023年12月31日に変更されている(また、UTPRは、2024年12月31日に延期)。エストニア、マルタ、ポーランド、スウェーデンが留保した(注)。本指令案は、特別立法手続きに基づき、全会一致の合意が必要である。

2022年3月12日、EU議長国であるフランスは、EU域内の多国籍グループに対するグローバルなミニマムレベル課税の確保に関する理事会指令案の修正文を提案した。当初の指令案は、2021年12月22日に欧州委員会により提案されていた(本誌2022年2月号参照)。これは、EU加盟27か国が、OECDの包括的枠組みが提案する第2の柱のGloBEルールを実施するための枠組みを規定するものである。3月12日の指令案では、以下の通り、いくつかの注目すべき変更点があった。

  1. 加盟国が本指令の内容を国内法に取り込んで発効させなければならない期日が、2023年1月1日から2023年12月31日に変更された。また、本妥協案では、UTPRは2024年12月31日に延期される
  2. 第47条aでは、加盟国における、対象となる多国籍企業グループの最終親事業体(UPE)が10社(注)以下(売上高7億5千万ユーロ以上)の場合は、上述の例外が設けられている。このような加盟国は、2023年12月31日から2025年12月31日(注)までに開始する会計期間について、IIRおよびUTPRを適用しない選択ができる。一方、そのような選択をしない(または、対象UPEが数多くあることから、非適格となる)加盟国は、当該非選択・非適格加盟国の構成事業体が、2023年12月31日開始会計期間において、その加盟国に割り当てられたUTPRトップアップ税額の対象になるようにしなければならない
  3. 第15条では、純税額(net taxes expense)の定義に、繰延税金が含まれる
  4. 本妥協案の第51条では、EU域外国が、適格IIR(QIIR)を有しているか判断する際、欧州委員会が、同等制度の実施法を提案し、EU理事会がこの実施法について(欧州委員会の決定ではなく)投票することを定めている。この実施法の批准には、理事会の全会一致が必要である(注)

妥協案に関する欧州財務相理事会の決定

EU加盟国の財務相が本妥協案についてコメントしたところでは、加盟国は、本提案、議長国フランスによる指令案の推進、およびOECDの包摂的枠組みによるこれまでの作業について、大筋で支持を表明したものの、以下の国々からは、留保がつけられた。

  1. ポーランド:第1の柱と第2の柱はパッケージとして考えるべきであり、第2の柱の策定を先行して進めるべきでない
  2. マルタ:IIRとUTPR適用除外の利用に関し、加盟国における対象UPEの数を増やすとともに、ルール実施に関する追加延長が必要
  3. スウェーデン:全般的な支持を表明する一方、第2の柱の実施に関する追加作業なしに指令の一般的なアプローチに合意するのは時期尚早
  4. エストニア: 追加の技術的な作業が必要であることを指摘し、多国籍企業に対するルールの不均衡な影響を防ぐ必要性に言及

本提案について、今後数週間のうちにこれらの懸念に対処し、2022年4月5日予定の次のECOFIN会合で、全会一致を目指すとしていた。
(注)2022年4月5日のECOFIN会合でも全会一致に至らなかった(ポーランドが留保)。なお、3月28日の修正妥協案では、IIR・UTPRの適用延期特例(第47条a)について、1.加盟国の対象多国籍企業グループのUPE10社以下→12社以下、2.2023年12月31日から2025年12月31日まで→2029年12月31日まで(6年間)、とし、また、EU域外国の適格IIR(QIIR)判定(第51条)について、理事会の投票(全会一致)をはずし、欧州委員会での決定のみに戻している

参考)

  1. 欧州議会では、フランスのAurore Lalucq氏より、EU指令案を修正し、第2の柱の最低税率を15%から21%に引き上げる提案もなされている(最初の意見交換では合意に至らず)(Source: PwC US, Tax Readiness)
  2. 2022年3月17日の欧州議会(税制小委員会)公聴会で、EUのタックスヘイブンブラックリスト(租税回避を促進する法律や政策を持つ非EU加盟国の特定に用いられるソフトローツール)について、「第2の柱」をその基準に加えることも提案されている(Source: PwC, Latest digital tax byte)

出典: European Council website / PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2022年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

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