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2022-04-08
2022年1月11日、英国は、第2の柱の実施に係るコンサルテーション文書(約70ページ)を公表した。本文書は、序文に続き、第1章(導入)、第2章(第2の柱の外観)、第3章(共通アプローチ)、第4章(対象範囲)、第5章(実効税率の計算)、第6章(トップアップ税の計算)、第7章(徴収メカニズム)、第8章(移行規定)、第9章(報告・納付)、第10章(簡素化)、第11章(OECDでの追加作業)、第12章(国内ミニマム税)、第13章(既存のBEPS措置とのより広範な相互作用)、第14章(影響度評価)で構成されており、各章毎の質問(合計37)は、最後にAnnex Aでまとめられている。
2021年10月、OECD包摂的枠組みの130超の国・地域が、デジタル化の課題に対応して国際課税の枠組みを改革するための2つの柱の解決策について、歴史的な合意に達した。これは画期的な多国間成果であり、2021年6月のG7、および7月のG20での交渉に基づいている。デジタル化とグローバル化の両方の出現により、世界中の企業の商業活動、および価値創出方法が再構築された。その理解のもと、本合意により、多国籍企業の利得が課税対象となる場所を決定するフレームワークが近代化される。本合意はまた、多国籍企業グループが自ら活動する各国・地域で最低レベルの税金(15%)を支払うことを求めることで、グローバルタックスプランニングのさまざまな機会に対処するBEPSプロジェクトの成果に基づいて構築される。130超の国・地域が国際的に政治的合意に達したため、OECDのプロセスは現在、10月に示された実施計画とスケジュールに沿った実施にフォーカスされている。このタイムラインは、2023年の施行に先立ち、2022年に各国・地域が、第2の柱の規定を国内法に導入することを目的としている。今回のコンサルテーションは、英国内でOECDが合意した第2の柱の枠組みを実施する上での次の重要なステップとなる。第2の柱の規定の方針、設計フレームワーク、および詳細規定が国際レベルですでに合意されているため、本コンサルテーションでは、本モデルルールの英国での適用および一連のより広範な実施に関する質問について、具体的に意見を求めるとしている。政府は、これらの改正が、多国籍企業にもたらす相当のプロセスとコンプライアンスへの影響を認識しており、したがって、影響を受けるすべてのビジネスに対してこのプロセスが可能な限りスムーズになるように、実施について協議するとしている。
英国のルールは、一般的にはOECDモデルルールに従う必要があるとしている(特定の法的要件を満たすために必要な場合にのみ乖離)。なお、英国はEUを離脱しているため、EU指令の適用は受けない。政府は、ほとんどの場合、英国グループの国外軽課税事業体に係るトップアップ税が、最終親事業体に独占的に課される(英国の税収になる)としている。つまり、英国に所得合算ルール(IIR)を導入することで、英国本拠のグループは、国外利得について軽課税支払いルール(UTPR)の対象とはならず、外国の中間親事業体が第三者に部分的に所有されているような、比較的限定された状況でのみ、この外国中間親事業体のレベルでIIRの対象となる。
英国のIIRは、OECDモデルルールの適用順序に従い、グループの特定状況に応じ、グループストラクチャーのいろいろな局面で適用される。英国のIIRは、年間連結売上が7億5千万ユーロ超の多国籍企業(MNEs)にのみ適用される。英国のIIRは、英国本拠のすべてのMNEsに適用され、グループの最終親事業体に課される。また、英国 IIRは、少数株主に20%超保有されている、または第2の柱を導入していない国・地域所在の親事業体に支配されている、外国本拠のグループの英国中間親事業体にも適用される。英国IIRは、MNEが、実効税率(ETR)15%未満の国・地域の国外子会社および支店に対する持分に基づき、英国親事業体にトップアップ税を課すことになる。
英国UTPRも、売上7億5千万ユーロ超のグループにのみ適用されよう。これは、英国外本拠のグループの英国事業体に限定されよう。また、以下のすべてを満たす場合にのみ、グループの国外利得に関して適用されよう。
なお、英国UTPRは、外国本拠のグループが親事業体となっている国・地域に軽課税の利得がある場合にも、適用される可能性がある。英国で納付されるトップアップ税額は、軽課税国・地域に係る課税対象トップアップの残余に、MNEの英国における有形資産および従業員の、UTPRのあるその他の国・地域のMNEの有形資産および従業員に対する比率を乗じて計算されよう。トップアップ税は、控除否認または同等の調整により行われる。
実効税率の計算に関連して、本文書では、英国の研究開発支出税額控除(RDEC)にも言及している。OECDモデルルールにおける税額控除の取扱いは、その還付可能性による。税額控除可能となった年から4年以内に納税者に還付可能な税額控除は、適格な還付可能税額控除として取り扱われる。これらの控除は補助金(grant)と同等とみなされ、IIRの適用上、構成事業体の所得に含まれる(構成事業体の税額からは控除されない)。一方、還付不可の税額控除/4年経過後にのみ還付が行われる税額控除は、還付税と取り扱われ、控除額が対象税額から控除される(所得には含まれない)。これらの規定は、関連する会計処理に厳密に従い、還付不可の税額控除の場合、控除額は事業体の税務ポジションによる一方、事業体の収益性に関係なく支払われる還付可能な税額控除は、補助金と同等の取扱いとなる。これらの規則により、英国RDECは、ETR計算上、税額から控除されない(所得に含まれる)ことになる。また、OECDモデルルールでは、繰延税金資産および負債は、ミニマム税率と、適用税率のいずれか低い方で評価する必要がある。これにより、繰延税金負債を計上し、その年の他の所得の軽課税を埋め合わせることはできなくなる。なお、例えば、各国・地域が特定所得を免税したり、税務上の追加控除(super deduction)を規定したりしている場合にも税務上の欠損金が生じ得るが、これにより、当該欠損金に係る繰延税金資産を取り崩す年分の分子の税額が増え、その年の免税所得/追加控除といった永久差異に係る所得の実効税率が引き上げられるのは不適切であるとしている。このような永久差異に係る欠損金に対しては、欠損金発生の年に、トップアップ税を課すことになる。これにより、MNEは、経済的損失および一時差異によって生じたものについて、GloBE(IIRおよびUTPR)上適切な救済を受けることができ、また、永久差異から損失が発生した場合の過度の救済を防ぐことができるとしている。また、非課税国・地域で、MNEが繰延税金に基づく制度の恩恵を受けられない場合における選択もある。本選択により、MNEは、当該非課税国・地域のGloBE上の欠損金に、ミニマム税率を乗じた額の繰延税金資産の計上が認められる。このほか、外国税額控除方式の場合の支店ルールの取扱い(支店欠損金の本店への帰属)や、投資事業体、JVおよび少数持ち分(30%未満)の構成事業体に係る特別規定(ETRおよびトップアップ税を個別計算)、また、分割所有規定等についても意見を求めている。
UTPR(undertaxed profits rule)に係るトップアップ税の英国内での課税方法(構成事業体による支払額の損金否認(軽課税国・地域の関連者への支払いに限定せず、軽課税所得の性質との関連性も問わない等)か、構成事業体の支払額を限度とする新たな課税の創設か)や、構成事業体への配分方法(利益率の高い法人から優先配分等)なども、コメントが求められている。また、グループが第2の柱の適用対象である旨の報告プロセス(政府は、会計年度終了後6~9か月以内でのHMRC(英国税務当局)への登録を検討中)、第2の柱に係る納税回数(四半期/年次)、納期限等についても意見を求めている。なお、政府は、英国の構成事業体に課されるIIRおよびUTPR債務について、連帯責任を課す予定である。簡素化に関しては、国別報告(CBCR)ベースのセーフハーバーの設計方法などや、CBCRセーフハーバーでの一時差異への対処などについても、意見を求めている。
英国は、早ければ2024年4月から、国内ミニマム税(Domestic minimum tax; DMT)を導入予定である。本DMT案では、外国でなく、英国でトップアップ税を納付することになる。本DMTのポイントは、1. 税収確保と、2. 簡素化、である。簡素化について、たとえば、英国利得にUTPRが適用されると、その影響が複数国に及び、税務紛争やコンプライアンスコストが増大する可能性があるとしている。英国が目指しているのは、GloBEルールに基づいた適格DMT(トップアップ税から直接控除)である(適格DMTでない場合、トップアップ税は、ETR計算上の対象税額に含まれ、実体ベースのカーブアウトが無効化される可能性がある)(注)。英国本拠のMNEsのみDMTの対象とするか、GloBEルールの対象となる全てのグループに適用するかも論点である。たとえば、外資系MNEsの本国で適格IIRにならずUTPRが適用される場合、本DMTにより、企業のコンプライアンスコストが減る可能性があるとしている。DMTの懸念点の一つとして、国内法人税法上よりもGloBEルール上のグループの定義の方が広いことから、英国法人の少数株主にも不均衡な負担が及んでしまう可能性があることを挙げている。
本文書では、英国の既存の租税回避防止規定にも言及しているが、政府は、現時点で大幅な改正の必要性を見込んでいない(本コンサルテーションを受け、あるいは第2の柱実施後に見直しの可能性はある)。また、本文書には、影響度評価も含まれている。第2の柱で国際租税の枠組みが大幅に変更されるものの、マクロ経済への影響は限定的とみられている。
今後の第2の柱関連制度の実施予定について、IIRは、2022-23年度財政法案に含まれ(今夏に政府法案公表見込み)、2023年4月からの発効が見込まれる。また、UTPRおよびDMTは、早ければ2024年4月からの導入が見込まれる。本コンサルテーションは、2022年4月4日まで実施される。なお、租税条約特典否認ルール(STTR)については、別途OECDで検討中(2022年3月にモデル規定案、コメンタリーおよび多国間協定文書を公表予定)であり、本コンサルテーションの対象外である。
(注)スペインでは、2022年予算法で15%のミニマム法人所得税(CIT)率(一般法人の法人税率は25%)を導入する(金融・エネルギー会社(法人税率30%)のミニマム税率は18%、新設事業体(15%の軽減税率)のミニマム税率は10%)。2022年1月1日以後開始課税期間より、売上2千万ユーロ超の大法人、またはスペインの納税グループに属する事業体(売上のレベルに拘らない)に適用される。実務上、R&D税額控除等により本ミニマム税率の適用となる可能性もあろう。OECDモデルルールと異なり、国内の事業体毎の適用となる。なお、香港も、第2の柱に対応したミニマム税の導入を検討中である。
UAEでは、2022年1月31日、財務省が、広範な連邦レベルの法人税の導入を公表している(2023年6月1日以後開始年度より適用。一定の個人事業も対象)。税率は、AED 375,000までの課税所得→0%、AED 375,000超→9%(STTRの最低税率と同じ)、第2の柱基準での大規模多国籍企業→別途の税率(15%のミニマム法人税/適格国内ミニマムトップアップ税の採用が見込まれる)である。適用年度以後発生NOLsの繰越控除や、グループ税制/Fiscal unity(選択制)、適格グループ内取引・再編や資本参加免税等、OECD準拠の移転価格規定・文書化要件もある。なお、現在、国外銀行のUAE支店に課されているEmirateレベルでの20%の法人税の取扱いは未公表である。天然資源採掘事業は、従前どおり、Emirateレベルで最大55%の法人税課税となる(連邦法人税は課されない)。Free Zoneでの事業についても申告等が必要となるが、一定の要件を満たしてUAE本土(mainland)と事業を行わない場合には、引き続き税恩典(5-50年)は残ると見込まれる。なお、配当、利子、ロイヤルティーの源泉税は、従前どおり課されない。なお、他の中東諸国について、バーレーンには現在、広範な法人税制がない。エジプト、ヨルダン、クウェート、レバノン、オマーン、サウジアラビア、カタールは、10%から35%の範囲で法人税を課している(Source: PwC, EU Tax News / PwC HK, International Tax News Flash / UAE Ministry of Finance / PwC UAE)
出典:HM Treasury / HM Revenue & Customs
「月刊 国際税務」 2022年3月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2022年1月12日、連邦参事会は、憲法改正によるOECD・G20合意の一定企業に対するミニマム税率実施を決定した。本決定に基づき、暫定条令として、ミニマム税率が2024年1月1日に発効することになる(法律はその後通常の方法で制定)。売上7億5千万ユーロ以上の多国籍企業に対する15%のミニマム税率は、137か国・地域で合意されている。ある国がより低い税率を維持している場合、他の国はそれらの軽課税企業に追加税を課すことができる。スイス法にミニマム税率を組み込むことで、大企業が外国での税務手続に関与することがなくなる。さらに、スイスは、権利を付与されているいかなる税収も放棄する必要はないとしている。スイス国内で事業を行っている一定企業は、将来、より高い税負担は避けられない。ミニマム税率に達していないスイス企業は、スイスで追加税を支払う必要がある。追加税は、海外ではなく、スイスの税収となる。
ミニマム税額は、連邦主義を十分に考慮して、的を絞った方法で徴収する必要がある。なお、純粋に国内にフォーカスした企業や中小企業(SMEs)には影響がない。連邦参事会は、以下の基準を採用している。
各カントンは、独自に有利な措置を決定することになるが、ミニマム税率を下回る税負担を規定している場合、会社の税負担はミニマム税率のレベルまで引き上げられる(なお、スイスの連邦税率は、税引後利得の8.5%/税引前利得の7.83%であり、州税等を合わせた実効税率は、11.9%-21.6%とされる)。
出典:Federal Department of Finance / PwC, Worldwide Tax Summaries
「月刊 国際税務」 2022年3月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2021年12月28日、米国財務省とIRSは、外国税額控除制度に係る最終規則(2021年最終規則)を公表した(2022年1月4日連邦官報掲載、2022年3月7日発効)。これは、2017年税制改革法(TCJA)を受けた本制度の主要規定に関し公表された3番目の最終規則となる。本規則により、2020年9月29日公表の規則案(2020年規則案)の一部が最終化された。本規則では、以下について、ガイダンスを示している。
本規則には、国外源泉無形資産関連所得(FDII)に関する明確化規定も含まれている。本規則は、外国所得税の税額控除または損金算入を行う、またはFDIIの控除を行う納税者に影響がある。なお、2020年規則案の特定の規定は、本規則では最終化されず、財務省とIRSが引き続き検討している。
本規則により、Section 901および903の税額控除対象外国税額の定義がかわる。本規則には、Section 245A(外国子会社配当控除制度)に係る外国税額控除/損金算入の否認(Section 1.245A(d)-1 - 2019年12月31日以後に開始し、2020年11月2日以後に終了する課税年度から適用)のほか、外国所得税の定義の改正として、帰属要件の純利益(net gain)要件への追加(Section 1.901-2 - 2021年12月28日以後開始課税年度から適用)等も含まれており、いわゆるデジタルサービス税(DST)等は、外国税額控除の対象にならないこととなる。なお、今後、米国がOECDの第1の柱/第2の柱を採用した場合、本要件の再検討が必要となる可能性がある。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」 2022年3月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2022年1月4日、IRSと財務省は、Section 860A、860G、1001、1271、1275、および7701(1)に係る最終規則を連邦官報で公表した。これらの規則は、2023年6月30日廃止予定のIBOR(ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)など。)を適格代替レートに置き換える、またはフォールバック代替レート条項を提示する債券類、デリバティブ契約、およびその他の契約の改変に関する税務ガイダンスを規定している。本最終規則は、2019年10月9日に公表された規則案(REG-118784-18)(本誌2019年12月号参照)を概ね採用しているが、財務省とIRSが受領したパブリックコメントを受け、いくつかの変更が加えられている。規則案同様、本最終規制では、一般に、金融商品の参考レートの同一通貨建ての適格レート(SOFR(米国)、SONIA(英国)、TONA(日本)、SARON(スイス)や€STR等)への変更を、課税対象交換(Section 1001)とみなさない旨規定している。ただし、本最終規則では、実務上適用困難な場合が多いとされていた、修正後の金融商品が、実質的に修正前の金融商品の公正市場価値に同等するものとならなければならない、という要件の削除を含め、規則案のさまざまな技術的修正がある。規則案の本要件に代わり、本最終規則では、本救済の対象とならない除外修正項目(契約上キャッシュフローの金額/タイミングを変更する一定目的の改変)のリストに置き換えられており、その対象範囲について、納税者の一定の判断が求められることになる。本最終規則は、2022年3月7日以後に発生する商品の改変に適用される(納税者およびその関連者が、同日前に規則案を継続適用することを条件に、同日前に発生する改変に本最終規則を適用できることも規定)。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」 2022年3月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
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