月刊国際税務 Worldwide Tax Summary 1月号

2022-02-07

2022年1月号Worldwide Tax Summaryトピックス

  1. 2022年の重要な法人税の改正(ポーランド)
  2. 新税法(HPP)案に大統領が署名(インドネシア)
  3. 税支援措置に関する決議(Resolution 406)の実施に係る法令(Decree 92/2021)(ベトナム)
  4. EUクロスボーダーのグループリリーフの廃止(英国)
  5. 公開国別報告(PCbCR)指令の発効(EU)

2022年の重要な法人税の改正(ポーランド)

2021年11月15日、大統領は、法律(「Polish Deal」)に署名した。本法律には、ポーランドでの投資と事業活動への課税に影響すると見込まれる規定が含まれる。これには、法人に対する10%のミニマム税、源泉税規則の改正、被支配外国事業体とポーランドの税務上の居住者の定義の拡大、および「移転所得(shifted income)」課税の導入、が含まれる。本新規定のほとんどは、2022年1月1日の発効が見込まれる。これまでの経緯として、まず、7月26日、政府は本法を公表し、多くの税制改正案を提示した。パブリックコンサルテーションを経て、9月8日、財務省は、税制改正パッケージの最終改訂版を公表した。10月29日、議会は本法案を可決し、11月15日に大統領が本法案に署名した。主要な改正項目には、以下が含まれる。

ミニマム法人所得税

課税所得が収入(キャピタルゲイン以外)の1%未満であるか、特定の課税年度のキャピタルゲイン以外の収入から生じる課税損失がある事業体には、新たに10%の税金が課される。減価償却費は、税務上の損失、または収入に占める所得の割合の計算上、無視される。事業体がミニマム税の対象となる場合(つまり、事業体の課税所得が収入の1%未満である場合)、ミニマム税は、以下の合計の10%として計算される。

  • キャピタルゲイン以外の収入の4%
  • 税務EBITDAの30%を超えるグループ内資金調達コスト
  • 税務EBITDAの5%+3百万ズロチ(PLN)を超えるグループ内サービスコスト
  • 課税ベースを減らす可能性のある特定の免税カテゴリーの所得または控除の調整

活動開始後3年以内の新法人、または年次収入が30%以上減少した法人を含め、ミニマム税制の免税がある。支払いミニマム税額は、同じ年に支払われる通常の法人所得税と相殺されるか、その後の3課税年度に繰り越されて使用が可能である。なお、本税とは別途、不動産法人に対して、不動産価値に基づいて毎月課されるミニマム法人所得税がある。

源泉税規則

2019年に導入された源泉税の徴収・還付メカニズム(「pay and refund」)は、2022年まで停止される。本法律では、年間2百万PLNを超える関連事業体に対する受動的支払い(つまり、配当、利子、ライセンス料)に係る支払・還付メカニズムの使用について規定されている。なお、特定の無形資産サービスの支払い、および非関連者への利子またはロイヤルティーの支払いは、本新メカニズムの対象範囲に含まれない。関連者に対する受動的または年間2百万PLN超の支払いは、納税者が以下のいずれかの要件を満たせば、源泉税の減免を受けることができる。

  • 減免の適用に関するルーリング(拘束力のある意見書)を取得
  • 指定された書面の提出で完了する認証プロセスの実行

納税者は、以下のいずれかの場合に税金を徴収する必要がある。

  • 1課税年度に1の納税者に支払われる受取勘定の合計額が2百万PLN超
  • 正当な経済的理由のない取引が受動的支払いとして分類されていない(たとえば、支払いが人為的にサービスとして分類されている)

本法律では、源泉税免税の適用に関する意見(事前認可)の適用範囲を、租税条約上の減免の恩典を受ける支払いに拡大している。以前は、拘束力のあるルーリングは、関連するEU指令に基づき免除の恩典を受ける支払いのみを対象としていた。本法律ではまた、受益者の定義を明確にしている。

「移転所得」への課税

本法律では、いわゆる移転所得に19%の新税を導入する。この移転所得は、無形資産サービス、ライセンス料、または債務融資費用に関して、関連者のために、直接・間接に発生した費用の額による。特定の費用が、すべての税務上控除可能な費用の合計の3%以上となる場合、「移転」したとみなされる。このような支払いを行う納税者は、特定の条件下で、追加の税金支払いが必要となる可能性がある、なお、本法律では、当該関連者が、EUまたは欧州経済領域(EEA)で設立され、その国で実体のある(真正な)経済活動を行っている場合の特定の免除を規定している。

持株会社制度の導入

本法律では、持株会社制度を創設しており、持株会社は、一定の要件のもと、子会社(不動産会社以外)の株式を非関連事業体に売却することによるキャピタルゲイン税の免除と、子会社から支払われる配当額の95%の源泉税免除を受けることになる。さらに、持株会社の優遇課税には一定の制限がある。事業体は、実体のある(真正な)経済活動を行う必要があり、経済特区に基づく免除または新規投資の支援に関する決定の恩典を受けられない可能性や、配当に対する個別の源泉税の免除の恩典を受けられない可能性がある。

「隠れた配当(Hidden dividend)」

関連者への特定支払い(便益)は、税務上控除可能な費用から除外される。本除外は、一般に、便益が市場条件で付与されない、または便益が財務結果に影響を与える状況に関係する(つまり、この便益の履行がなければ、当該納税者が利得を得るような場合)。本規定の発効日は、2023年1月1日に延期されている。なお、本規定のさらなる改正も見込まれる。

税務上の居住者

ポーランドで納税義務のある事業体の対象範囲は、ポーランドで活動を行う外国事業体を含むように拡大される。ポーランドに登録事務所を持たない納税者の場合、外国の納税者を構成/管理する統括(control)機関のメンバーである個人/事業体が、ポーランドに居住地/登録事務所/管理者を有する場合、または実際に直接、またはポーランドにある他の事業体を介して現在の業務を行っている場合、その事業体はポーランドに実質的管理の場所を有することになる。

債務融資の制限

3百万PLN超、またはEBITDAの30%超(いずれか高い方)の債務融資費用は、税務上控除が否認される。本法律ではまた、株式またはジェネラルパートナーシップのすべての権利・義務の購入、追加の支払い、償還のための株式の買い取りなどを含む取引(equity transactions)に(直接/間接に)使用するため、関連事業体から取得する債務融資費用の税務上の控除制限を導入している。なお、現在の解釈(行政裁判所の判決によって裏付けられている)では、控除の閾値は、EBITDAの30%に3百万PLNを加えたものとして計算されるとされていた。

その他の改正事項

以上のほか、被支配外国事業体(CFC)税制の適用拡大、関連者に支払われる無形資産サービスの損金算入性、非課税組織再編取引の制限(クロスボーダー再編の出国税を含む)、移転価格の簡素/明確化、ポーランドへの新規投資の計画/開始の税務上の影響に係る投資家と税務当局間の投資協定制度の導入、税務当局に年次法人所得税申告書とともに会計帳簿を提出する義務を追加、といった改正もある。

また、イノベーションに係る減税措置として、以下が含まれる。

  • R&D減税の拡大 - 従業員のコストの最大200%、およびその他の適格コストの最大100%の追加控除。また、事業体がR&Dセンターのステータスを持っている場合、原則としてすべての適格なコストの最大200%まで容認
  • プロトタイプ(試作品)減税 - 新製品の試用生産とそれらの市場投入の合計コストの30%を課税ベースから追加控除
  • IPO減税 - 目論見書の作成費用の150%および、新規株式公開の一環として株式を発行する予定のポーランドの税務上の居住者向けのコンサルティングサービス費用の50%の控除
  • 革新的従業員減税 - 革新的な(R&D)従業員に関連する費用の控除
  • IPボックスとR&D減税 - R&D減税とIPボックススキームの同時使用
  • ロボット化減税 - ロボット化への投資にかかる費用の50%の追加控除
  • 売上収益拡大減税 - 製品販売による収益増加に関連して、最大百万PLNのマーケティング費用の価値の追加控除
  • CSR減税 - 科学、文化、またはスポーツ活動にかかる費用の50%控除

以上のほか、付加価値税(VAT)規定の改正(VATグループ関連)もある。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」 2022年1月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

新税法(HPP)案に大統領が署名(インドネシア)

2021年10月29日、大統領が新税法(Harmonisasi Peraturan Perpajakan/HPP)案に署名し、法律第7/2021号として制定された。本法律では、自主開示(VDP)プログラムおよび炭素税に関する新たな税法セクションを追加する一方で、税法(KUP、所得税、付加価値税(VAT)、および消費(Excise)税)の既存セクションに多くの改正がある。特にいくつかの新たな改正分野については、今後の施行規則の制定を待つ必要がある。本法には、重要なポリシー変更と、既存規定の法的根拠を強調・強化するための規定が含まれている。本法の重要な改正には、以下が含まれる。

KUP法の改正

KUP法の改正は、行政処分、納税者の権利・義務、および税務紛争解決プロセスの特定の分野に関連している。雇用創出法に従い、納税者の不正行為に対する行政処分の改正は、一般的に納税者にとって有利となる(納税者の確実性も高まる可能性)。

行政処分の改正

No.

条項

過少納税に係る行政処分

KUP法

HPP法

1

過少納税に係る行政処分

無申告、無効なVAT補償(compensation)/0%VATの無効使用、または帳簿要件不順守に関する査定書(SKPKB)の発行

 

 

 

a.     各年度の未納/過少納付所得税

50%追加

(MIR*+20%)/12(最大24か月)

 

b.     所得税の源泉徴収漏れ/過少徴収

100%追加

(MIR*+20%)/12(最大24か月)

 

c.     源泉徴収所得税の未納/過少納付

75%追加

 

d.     VATの未納/過少納付

100%追加

75%追加

2

納税者の異議申し立てが却下/部分的に認められた場合のペナルティー

50%

30%

3

納税者の控訴が却下/部分的に認められた場合のペナルティー

100%

60%

* MIR:財務省(MoF)の金利


以上のほか、納税者の権利・義務に関する改正として、居住者番号を個人納税者の納税者番号(NPWP)として使用、納税者代理人の要件(一定親族の能力要件を不要化)、自主的開示(納税者は、税務調査開始後、税務査定書(SKP)発行前でなく、税務調査結果発行前に、税務総局(DGT)に自主的開示)、およびDGTによる他の源泉徴収義務者(取引に直接関連/ファシリテーターとして行動する者)の指定(電子システムの主催者は、アクセス切断(警告後)の可能性もあり)、といった改正がある。また、税務紛争解決プロセス(司法審査プロセス規定/相互協議手続き(MAP))の改正もある。

所得税法(ITL)の改正

法人および個人の所得税率のほか、現物給付(BIK)、移転価格税制等の改正もある(2022会計年度発効見込み)。

所得税率の改正

1. 個人所得税率 - 本法で、以下の区分・税率となる。

課税所得

税率(政府規則(GR)で改正可)

 

6千万(従前は5千万)ルピア以下

5%

 

6千万ルピア超、2億5千万ルピア以下

15%

 

2億5千万ルピア超、5億ルピア以下

25%

 

5億ルピア超、50億ルピア以下

30%

 

50億ルピア超(新区分)

35%

 

2. 法人所得税(CIT)率 - 本法では、CIT率は2022会計年度から20%に引き下げられず、22%のままとなる(2020年法律第2号第5条(1)(b)の規定の取り消し)。

以上のほか、移転価格税制の改正(政府による納税者の租税回避行為(たとえば、実際条件に基づかず経済実態原則に沿っていない取引の実行、同業他社の財務実績に比し低すぎる利得の申告、商業活動5年超で不合理な損失を申告)を防止)、関連者取引価格と独立企業間価格の差はみなし配当になる旨を強調等)、最終(源泉)税対象の個人納税者の非課税の閾値(5億ルピアの総収入)、最終(源泉)税対象となる一定金融商品の利子の範囲を一定の短期証券利子等に拡大、およびBIKに関する新規定がある。また、税務上の控除に関する改正(金融サービス法人の貸倒引当金の要件、恒久的建物・無形資産の耐用年数(20年超)に係る償却方法、利子控除の制限方法の拡大(従前の負債資本比率に加え、EBITDAに基づく方法を容認))がある。VATに関して、税率(現在10%)の改正(2022年4月1日から11%、2025年1月1日から12%)、非課税対象の改正等がある(新VAT規定は、2022年4月1日発効)。また、自主開示プログラム(以前の税恩典プログラムの拡大・延長)、炭素税(2022年4月1日発効、最低30ルピア/kg CO2e)導入や消費税の改正もある。

出典: PwC Indonesia, TaxFlash
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PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

税支援措置に関する決議(Resolution 406)の実施に係る法令(Decree 92/2021)(ベトナム)

2021年10月19日付の決議(Resolution 406: COVID 19の影響を受けた納税者の支援措置)を受け、政府は本決議の実施に係る法令((Decree 92/2021)を発布した。

1. 2021年に30%の法人税(CIT)減額

本決議では、2021年の総収入が2千億ドン以下で、2019年の収入以下(新設法人や2020年または2021年に合併/分割した法人等一定の場合は適用されない)の場合に、2021年のCITの30%減額の適用を規定している。本法令では、さらに以下を規定している。

  • 収入の閾値は、法人とその従属ユニット/事業所の事業活動から生じる収入で構成される。ただし、収入の減額、財務収入、またはその他の収入は含まれない。
  • 2021年のCIT減額は、キャピタルゲインや不動産の譲渡などによる利得を含む、法人の総課税利得に基づいて計算される。
  • 法人は、暫定的なCITの支払い額を計算し、年次確定CIT作成の際、CIT減額の適格性を自己評価する(CIT減額用の所定フォームあり)。法人が誤って減額を主張したと将来の税務調査で判断された場合、延滞利息とペナルティーが適用される。
  • 本減額は、条件を満たせば、税務調査での追加CITにも適用可能である。

2. 事業者世帯および事業者の免税

2021年にCOVID19の影響を受けた場所で事業を行う事業者世帯および事業者に対して、2021年の第3四半期および第4四半期に発生するPIT(個人所得税)およびVAT(付加価値税)およびその他の税金が免除(特定のセクターを除く)される。省/市が影響を受けた場所を決定する。
本法令では、さらに以下を規定している。

  • 免税の対象となるその他の税金には、特別売上税、天然資源税、環境保護税が含まれる。
  • 免税額は、税務当局発行の税務通知または納税者の自己申告納税債務に基づき計算される。
  • 納税済みの場合、将来の未払い税金と相殺/還付が可能である。

3. VAT債務の減額

2021年11月1日から2021年12月31日までの期間に特定のセクターで事業を行っている法人に適用されるVAT率/みなしVAT率が、30%引き下げられる。本法令では、さらに、別表(対象物品・サービスのリスト)、請求書上での減額の反映・調整方法や、申告方法を規定している。

4. 2020年および2021年に発生した延滞利子の免除

2020年に損失を被った法人(従属ユニット、事業所を含む)の2020年および2021年に発生した納税義務、土地使用料および土地賃貸料の延滞利子が免除される(延滞利子が支払い済みの場合適用なし)。本法では、さらに以下を規定している。

  • 税務当局は、税務行政システムからデータを抽出して、2020年と2021年に発生した延滞利子を計算し、納税者に免税決定を通知する。
  • 法人は、税務当局に免税を要請する所定のフォームを提出する必要がある。税務当局は、15営業日以内に、要請を受け入れるか否か回答しなければならない。
  • 法人が依然として税務上損失の状況である場合、税務調査中に査定された追加税金についても、延滞利子は免除される。

出典:PwC Vietnam, NewsBrief
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PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

EUクロスボーダーのグループリリーフの廃止(英国)

英国のEUクロスボーダーのグループリリーフ規則は、2021年10月27日から廃止された。CJEU(欧州司法裁判所)事件C-446/03(Marks&Spencer)で納税者が部分的に勝訴した後、2006年4月から、EU加盟国の居住者である子会社その他のグループメンバー法人の最終損失について、法的救済が非常に限定的に(非常に厳格な要件で)英国で利用可能となった。本規則では、損失が発生した会計期間の終了直後の事実関係に基づいて、納税者がMarks&Spencerにおける「可能性がない旨のテスト(no possibilities test)」(つまり、過去、現在、または将来の利得に対して国内で損失を使用できない)の充足を示せる場合にのみ救済を認めている。実際のところ、EU子会社は取引を停止し、損失期間の直後に清算しなければならないということであった。本規則は、欧州委員会によって過度に制限的であるとして異議を申し立てられたが、CJEU事件C-172/13(委員会vs.英国)ではその異議申し立ては受け入れられなかった。いわゆる「Marks&Spencerの例外」は、TFEU(EU機能条約)第49条に基づく設立の自由の適用であり、EUからの離脱後は英国には適用されなくなる。さらに、英国の規制(設立の自由とサービスの自由な移動(EU離脱)規則2019、SI 2019/1401)により、英国への設立の自由の適用は廃止され、2020年12月31日のBrexit実施期間の終了から発効した。これを受け、英国政府は、2021年の財政法案の中で、英国のクロスボーダーのグループリリーフを廃止した。2021年10月26日後の期間に発生した、EU居住者グループメンバーの英国以外の損失に対する救済は利用できなくなる。

本法案ではまた、非居住法人の英国の恒久的施設(PE)のPE/支店損失に対するグループリリーフ関連規則を強化する。2012年9月6日のCJEU事件C-18/11(Philips Electronics)を受け、EU加盟国居住法人の英国PE損失について、英国の規則が改正され、英国以外の税務上、損失の一部が英国以外の利得と相殺できる場合の救済を除外することとする制限が緩和された。2021年10月26日後は、この緩和は適用されなくなり、EU居住法人の英国PEの損失に関する規定は、EU域外の外国居住法人の英国PEの損失に関する規定と同じになる。

出典:PwC UK, EU Tax News
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PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

公開国別報告(PCbCR)指令の発効(EU)

指令2013/34/EUを改訂するPCbCR指令(本誌2021年7月号および8月号参照)は、2021年12月1日にEU官報に掲載された。公開後20日目に発効となる(注1)。加盟国は、遅くとも2023年6月22日までに、本指令を国内法に置き換えなければならない。最初のPCbCRは、遅くとも2024年6月22日以後に開始する最初の会計年度に行う必要がある。なお、加盟国は、本指令をより早く取り込み、最初の報告年が早まる可能性がある。

なお、グローバルレポーティングイニシアチブ(GRI)の(自主的)スタンダードに従って報告する企業が増えている。2019年12月、GRIは、税務に関する報告スタンダード(GRI-207)(注2)を採用し、2021年1月1日に発効した。本スタンダードを適用しても、法人はPCbCR要件が免除されないとされている。

セーフガード条項と「重大な不利益(seriously prejudicial)」の意味

本指令では、企業は、国内法の規定がある場合に、報告上で理由を説明し延期を明示することを条件に、特定情報の開示を限られた年数、延期することができる。本提案の当初バージョンと異なり、企業の開示延期を認めるのは必須ではなく、加盟国は、国内法に置き換える際、このセーフガードを認めるかどうか選択する余地がある。延期は、1以上の特定項目に適用可能性がある。この点に関して、加盟国は、延期項目を制限する可能性がある(官報掲載時点で、EU会計指令の除外に関する分析/ガイダンスは見当たらない)。各国の実施状況に一貫性がないと、加盟国間で報告要件が不均一になり、他の国で実際に二次的な開示要件が生じる可能性がある。延期は、競合他社が開示された情報から現在の活動について重要な結論を引き出す可能性があるため、必要な情報の公開が事業の商業的地位を著しく損なう可能性がある場合にのみ可能となろう。事業者は、情報の開示が、関連する事業の商業的立場に「重大な不利益をもたらす」ことを実証するための準備が必要となろう。この不記載については、合理的な説明を報告に含めなければならない。

(注1) 2021年11月11日、PCbCR指令は、欧州議会で過半数の支持を得た。会計指令として、過半数(Article 50(1) of the TFEU(EU機能条約))で足りるとされているが、税務(fiscal provisions)関連であるとして、全会一致(Article 115 TFEU)を求めている国もある。

(注2) 国別報告を開示している日系企業はまだ少ないが、GRIスタンダードは日系企業も多く採用しており、居住地国等、収入金額、税引前当期利益(損失)額、納付税額、発生税額、従業員数、構成会社等および主要な事業活動を開示している例や、国別納税額を開示している例(GRI 207-4 国別の報告)もある。

出典:PwC, Tax Policy Alert / PwC Belgium, Tax News
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PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

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