月刊国際税務 Worldwide Tax Summary 12月号

2020-12-05

2020年12月号Worldwide Tax Summaryトピックス

  1. 2021年予算案の税制措置(フランス)
  2. デジタルサービス税および金融取引税法の公表(スペイン)
  3. 連邦予算での重要な事業税制インセンティブの提案(オーストラリア)
  4. 国内および国際タックスプランニングの開示を求める広範な情報提供制度の採用(アルゼンチン)
  5. 第1の柱・第2の柱のブループリント、および経済分析のアップデート(OECD)

2021年予算案の税制措置(フランス)

2020年9月28日、政府は、2021年予算案を公表した。本予算案では、経済回復と雇用創出にフォーカスしている。特に、フランスの事業環境、および現地企業の競争力を向上させることを目的とした税制措置が含まれる。

生産税(production taxes)の軽減

本予算案では、競争力向上のため、国土経済拠出金(territorial economic contribution; 「CET」)にフォーカスした、生産に係る特定の主要税の軽減を目的とした規定が含まれる。

CETは、企業不動産負担金(companies’ land contribution; 「CFE」)と、企業付加価値負担金(companies’ added value contribution; 「CVAE」)という、2つの異なる税から構成される。CFE税は、地価税(land tax)の対象になる資産・財産(assets and properties)の賃貸価値(rental value)に基づく。CVAEは、企業生産の付加価値に基づく。企業の総収入に基づき、累進税率で計算される。CVAEの最高税率は、現在1.5%である。CET(CFE + CVAE)は、現在、企業の付加価値の3%が上限となっている。

本予算案によると、全ての関連する企業のCVAE税率は半減する。また、企業付加価値に基づくCETの最高税率は、3%から2%に軽減される。さらに、2021年より、産業用設備の賃貸価値は半減し、個々の地方議会(municipality council)の決定次第で、事業所(establishments)の設置または拡大により、3年間のCET(CVAEを含む)免除恩典を受けることとなろう。

これらの新規定は、2021年より、CET義務がある納税者に適用される。

自主的な資産再評価に適用される課税繰延べ

企業資本および財務能力向上のため、本予算案では、企業がすべての有形資産および金融資産について、フランスGAAPの公正市場価値に基づく自主的な再評価の選択を、暫定的に容認することを提案している。現在の規定では、このステップアップから生じる差異は、課税されよう。しかしながら、本予算案では、企業に資産の種類に応じた特定の課税繰延べ規定を認めることで、これらの資産再評価の税効果の「無効化(neutralize)」を提案している。本課税繰延べにより、償却固定資産に関する差異は、(資産の性質に応じて)5年または15年の期間にわたってステップアップされ、非償却資産に関するステップアップは、将来の移転時まで課税が繰り延べられよう。

この新規定は、2020年12月31日から2022年12月31日までに終了する課税年度に実現する最初の再評価プロセスに適用されよう。

法人所得税率の軽減

政府は、本予算案で、以前制定され、既に予定されている法人所得税軽減の改正を含めないことを決定した。その結果、本改正では、すべての企業に、2021年1月1日以後開始課税年度で予定されている26.5%および27.5%の税率、または2022年1月1日以後開始課税年度で予定されている25%の税率、への影響はない。

 

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」 2020年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

デジタルサービス税および金融取引税法の公表(スペイン)

2020年10月16日、デジタルサービス税および金融取引税法が、官報(Official Gazette)で公表された。いずれの法律も、2021年1月16日に発効する。

デジタルサービス税

スペインは、最近、デジタル経済への課税のためのユニラテラルの暫定措置(10月15日付法律4/2020)を可決した。EU(欧州連合)またはOECDがグローバル・コンセンサスに達するまで効力を有すると見込まれる。
スペインのデジタルサービス税は、ユーザーがスペインに所在する場合において、以下のデジタルサービスから生じる収入(VATを除く)に課される間接税として設計されている。

  • オンライン広告: ユーザー機器がスペインにある場合で、デジタルで対象を絞った公告(digital targeted advertising)。本税上、反証がない限り、全ての広告は、対象を絞った広告とみなされる。
  • デジタル仲介(digital intermediation): 取引に使用される機器がスペインにある場合で、特に仲介によりユーザー間の直接の物品/サービスの供給を容認/促進し、あるいは、他のユーザーを探して交流する場合における、ユーザー間の交流を促進するサービス。
  • データ移転(data transfer): 機器がスペインにあるデジタル・インターフェースユーザーから生成されるデータの販売/移転。

以下を含む特定取引は、明確に課税対象外となる。

  • プロバイダーが仲介者とならない場合の物品・サービスのオンライン販売
  • オンライン仲介サービスの範囲内でのユーザー間の物品・サービスの配送
  • 規制金融事業体(regulated financial entities)の規制を受ける金融サービスの提供
  • 規制金融事業体が行うデータ送信サービスの提供
  • 100%直接/間接所有企業間のデジタルサービス活動取引

本税は、前暦年に以下の2つの閾値を超える納税者に課される。

  1. 全世界収入が、7億5千万ユーロ以上
  2. スペイン源泉のデジタル活動収入が、3百万ユーロ超。グループの一部である事業体について、全世界収入は、CbCR(国別報告書)で申告した額に基づき、デジタルサービスのスペイン源泉収入は、グループ事業体間で提供されるデジタルサービスを消去せずに算定する。

3%のデジタルサービス税は、四半期(4月、7月、10月、12月)毎に自己申告する。

金融取引税

金融取引税は、以下の条件を満たすスペイン企業が発行する株式(shares)の取得によって課税が生じる(重要な例外あり)。

  • 株式が、スペイン又は欧州証券取引所(2014/65/EU指令による)、又は他の法域の同等市場(指令第25.4条による)に上場されていること。
  • 取得前年の12月1日時点でのスペイン企業の市場資本総額(market capitalization)が、10億ユーロ超。

取得プロセス、取得場所、参加者の居住地を問わず、取得価値(acquisition value)の0.2%の税率で課される。

法律(10月15日付法律5/2020)には、以下の取得を含む、複雑な免除項目リストが含まれる。

  • 株式発行
  • 投資家間での株式売り出しの初公募
  • 同一の商業グループ(mercantile group)の一部である事業体間
  • スペインの非課税制度(tax neutral regime)が適用可能な場合
  • 自社株/親会社株式


本法では、株式取得者が本税の課税対象になるが、取得を実行する投資/信用(credit)機関は、毎月本税を算定し、納税する義務がある。

 

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」 2020年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

連邦予算での重要な事業税制インセンティブの提案(オーストラリア)

2020年10月6日、2020-21年連邦予算が公表された。経済成長および雇用を促進するという目標に沿って、本予算では、事業投資を促すことを意図した税制措置が含まれる。多国籍企業に関連する措置には、以下が含まれる。

  • 特定資本支出の即時損金算入
  • 新たな暫定的欠損金繰戻し制度
  • 研究開発(R&D)税インセンティブの拡大
  • 従業員を雇用する事業者へのインセンティブ
  • 法人居住地規定の改正

収入が50億オーストラリアドル未満のグループへの事業税制インセンティブ

関連年度の総収入(グローバルグループの全世界収入に基づいて測定)が50億オーストラリアドル未満の納税者にインセンティブを与えることとなる、以下の2つの措置が含まれる。

  1. 特定資本支出に係る資産の即時損金算入
  2. 暫定的な税務欠損金の繰戻し

即時資産償却

即時資産償却措置により、適格事業者は、新規(注)の適格資本資産の取得費(資本的支出を含む)を税務上一括で損金算入することができる。2020年10月6日午後7時半(AEDT)後に取得し、2022年6月30日までに事業供用/設置することが条件となる。

(注)総収入が5千万オーストラリアドル未満の場合、新規だけでなく、中古資産も対象。

事業欠損金の繰戻し

暫定的な欠損金繰戻し制度は、大まかに、米国を含む他国の同様の制度に基づいている。

これにより、法人は、一定の要件を満たすことで、税務上の欠損金の繰戻しを選択し、前所得年度の納税額と相殺して税還付を受けることができる。2019、2020、2021所得年度で生じた欠損金について、2018所得年度以降の課税利得に対してのみ、繰戻し・相殺が可能となる。

R&D税インセンティブの拡大

本予算には、オーストラリアでの法人によるR&D活動への投資を促進する取り組みが含まれる。政府は、本予算を使い、R&D税インセンティブを改善する(「better target」)ため2018-19年連邦予算で最初に公表された最近の取り組みを修正する。

2011年の本政策の全面見直しを受け、R&D税インセンティブの控除率(offset rate)は、1億オーストラリアドルのR&D支出上限の導入を含め、その後の多くの改正で徐々に引き下げられてきた。最近の見直しでは、R&D税控除率を累進で法人税率に連動させ、大幅縮減となるよう、改正を模索している。さらに、4百万オーストラリアドルの年間還付上限も提案された。

2020-21年連邦予算で公表された改正案では、これら最近の縮減案を変更し、本政策の恩典を拡大する。特に、政府は、以下の提案とともに、以前公表されたR&D税インセンティブの改正の適用開始を、2021年7月1日以後開始所得年度に延期することを公表した。

  • 総年間収入が2千万オーストラリアドル未満の法人について、還付可能なR&D税控除は、申請法人の税率に18.5%ポイント上乗せされ、年間4百万オーストラリアドルの還付上限は中断する。
  • 総年間収入が2千万オーストラリアドル以上の大法人は、累進区分(intensity tiers)を3から2に減らす。本累進区分では、還付不可のR&D税控除率は、法人の年間総費用に対するR&D支出割合に連動する。還付不可のR&D税控除は、申請法人の税率に、以下を加えたものとなる。
    • R&D支出割合が0-2%の場合は、8.5%ポイント
    • R&D支出割合が2%超の場合は、16.5%ポイント
R&D支出上限を年間1億オーストラリアドルから1.5億オーストラリアドルに引き上げることを含め、以前提案されたその他の措置の改正はない。

雇用インセンティブ

本予算には、事業者による雇用成長を促すことを意図した2つの措置、すなわち、従業員数を増加させた事業者の雇用税額控除(hiring credit)、および、実習生/研修生の雇用に係る直接助成金(direct subsidy)、も含まれる。

追加措置

本予算には、以下を含め、多国籍企業に関連する可能性がある広範な追加税・財政措置が含まれる。

  • オーストラリア以外で設立された法人がオーストラリア居住者として取り扱われる状況を制限するため、重要な管理活動(central management activities)、および、中核となる商業活動(core commercial activities)のいずれもが、オーストラリアで行われる必要があるとする、オーストラリアの法人居住地規定の改正提案。本措置(おおむね納税者有利)は、遡及して法制化される。
  • オーストラリアが情報交換する国のリストに数か国を追加。これにより、これらの法域の居住納税者が、投資信託スキーム(managed investment trust scheme)の軽減源泉税率の適用を受けられる。
  • 解雇後支援に係るものを含む、従業員再教育プログラムを行う雇用者のための一定の限定雇用税恩典
  • オーストラリアの租税条約ネットワークの近代化および拡大を行う意向の公表
これらの事業税制措置のほか、本予算では、需要刺激を意図した個人税の軽減、および小規模事業者の税恩典も拡大している。

 

出典:PwC, Tax Insights
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PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

国内および国際タックスプランニングの開示を求める広範な情報提供制度の採用(アルゼンチン)

2020年10月19日、税務当局(AFIP)は、BEPS行動12(義務的開示規定)に従った決議(Resolution 4838/2020)を発出した。10月20日発効の本決議では、国内および国際タックスプランニング戦略に関する情報制度を創設している。新たな報告要件が遡及適用される可能性がある。
多くのOECD法域で同様の開示規定が発効しているが、アルゼンチンの制度は、その範囲を国内のプランニングにも広げており、また、「アグレッシブプランニング」に限定していないようであり、対象範囲が広いとみられる。

 

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」 2020年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

第1の柱・第2の柱のブループリント、および経済分析のアップデート(OECD)

2020年10月12日、OECDは、OECD/G20の包摂的枠組み(IF)の継続作業に関する一連の文書を公表した。青写真(Blueprints)および関連文書の主要項目には、以下が含まれる。

  • IFは、2021年中頃までに政策的合意に達するよう、第1の柱(Pillar One)および第2の柱(Pillar Two)の検討を継続することに合意した。
  • 本青写真は、計画の中間設計への合意に係る技術的進捗があったことを示している。
  • 第1の柱のAmount Aの範囲、および再配分率、第2の柱のミニマム税率、およびみなし準拠税制(deemed compliant regimes)の「ホワイトリスト化」、といった、両柱の枠組みの重要な要素は未解決のままである。
  • アップデートされた経済影響分析によると、第1の柱による市場法域への再配分利得は、毎年1,000億米ドルに達する可能性があり、また、第2の柱での新たな歳入増(グローバル無形資産軽課税所得(GILTI)および第1の柱の効果を合わせて)は、年間600億から1,000億米ドルの範囲になる可能性がある。
  • 交渉での米国のポジションは定まっていない。大統領選を経て、2021年に米国がどのように進めるか、明確になると期待される。
  • 本青写真は、2020年10月12日から12月14日まで、パブリックコンサルテーションの対象となっており、バーチャルの公聴会は、2021年1月に開催予定である。

 

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」 2020年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

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