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2023-05-11
2023年2月7日、バイデン大統領は、議会での一般教書演説(State of the Union address)の中で、富だけでなく労働にも報いる税制改革を含めた自身の経済政策方針への支持を呼びかけた。また、連邦法定債務の上限引き上げに向けた議会の責任ある行動を求める一方、連邦財政赤字削減のため共和・民主両党と個別協力の用意がある旨を表明した。大統領は、インフレ抑制法(IRA)の一環として2022年に施行された法人の自社株買いに対する消費税の1%から4%への引き上げを提示した。また、超富裕層へのミニマム税(“billionaire” minimum tax)やその他の法人・個人関係税制案の制定を議会に呼びかけた。大統領の税制案は、2024年度予算案の一部として議会に提出される(大統領の予算案と、財務省の歳入案に関する一般説明(Green Book)は、2023年3月9日公表)(注1)。なお、下院は共和党、上院は民主党支配のため、税制関連法案の成立には両院の超党派の支持が必要となる。今年の大半は、連邦債務上限および政府財源に関する議論が議会の主要な関心事になると思われるが、2017年税制改革法(TCJA)の規定により2022年に償却の対象となったSection 174研究費の支出・発生初年度控除の復活など、これまで超党派の支持を受けてきたいくつかの税制案が取り上げられる可能性がある。財務省と内国歳入庁(IRS)は、最近制定された法案(法人の自社株買いに対する消費税、法人AMT(代替ミニマム税)(CAMT)やその他のIRA税規定)に関するガイダンス(注2)に取り組んでいる。
(注1)2024年度予算案では、2023年度予算案にも含まれていた、純資産1億ドル超のすべての納税者に係る未実現キャピタルゲイン所得を含む総所得に対するミニマム税率(税率25%(2023年度予算案では20%))のほか、法人税率の28%への引き上げや、現行の税源浸食濫用防止税(BEAT)に代わる軽課税利得ルール(“undertaxed profits rule”)などの提案がある。また、昨年11月に下院で可決された「Build Back Better」調整法案のうち、国別のグローバル無形資産低課税所得(GILTI)制度など特定条項の制定や、法人税率引き上げに伴うGILTI税率の引き上げも想定されているほか、FDII(国外源泉無形資産関連所得)制度の廃止(研究開発支出の追加支援に充当)なども提案されている。
(注2)2022年12月27日、財務省・IRSは、CAMTに係る暫定ガイダンス(Notice 2023-7)、および自社株の買戻しに対する新たな消費税の適用に係る暫定ガイダンス(Notice 2023-2)を公表した(本誌2023年3月号参照)。また、2023年2月17日、CAMTによる保険業界への意図しない重大な悪影響の回避を意図した暫定ガイダンス(Notice 2023-20)を公表した(2023年4月3日までコメント募集)。Notice 2023-20では、財務諸表上時価評価される生命保険会社の特別勘定資産の取扱い、特定の共同保険契約から生じる組込デリバティブの取扱い、および特定の旧免税事業体(免税措置の廃止が有効になった際に保有資産の税務ベーシスを決定するための特別移行規定を議会が定めている)に関連して生じる税務上の取扱いなど、早急に対応が必要な論点を扱っている。
出典:Samil PwC Tax News Flash
「月刊 国際税務」2023年4月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2023年2月2日、OECDは、第2の柱・グローバル税源浸食防止規定(GloBEルール)に関する執行ガイダンス(Administrative Guidance)を公表した。本ガイダンスは、OECD/G20のBEPS包摂的枠組み(IF)により承認された(公開協議の対象外)。本ガイダンスでは、主にGloBEルールの下でこれまで対処されていなかった一定の分野に焦点を当てており、IFメンバーによる早急な明確化・簡素化が最も必要とされる広範な課題に対処している。本ガイダンスは、2022年3月公表のオリジナル版に代わり、今年後半に公表予定のコメンタリー・事例集の改訂版に組み込まれる見込みである。OECDは、本ガイダンスが、IFメンバーがGloBE実施フレームワークの一部として示すことをコミットしたGloBEルールに係る最終作業部分とする一方、GloBEルールが引き続き協調的に実施・適用されるよう、IFは追加ガイダンスを継続的に公表する予定であるとしている。なお、本ガイダンスの公表に先立ち、OECDは、2022年12月20日、第2の柱・適用免除基準(セーフハーバー)と罰則等の免除に関するガイダンスを公表している(本誌2023年2月号参照)。本ガイダンスでは、米国のミニマム税(GILTI)を、GloBEルール上のCFC税制と位置づけている。また、GILTIなどの(国別でない)CFC税制(Blended CFC Tax Regime)の機械的な(税額)配分方式を定めており、適格国内ミニマムトップアップ税(QDMTT)、(一部の)税額控除やインセンティブの取扱いに関するガイダンスを示している。
2023年2月1日、米国財務会計基準審議会(FASB)のスタッフは、GloBEトップアップ税が、米国会計基準で規定する代替ミニマム税になるとの考えを示した。したがって、第2の柱の将来予想影響額に対して繰延税金は計上されず、トップアップ税額は発生期間で計上されることとなろう。このFASBスタッフの見解に先立ち、2023年1月9日、国際会計基準審議会(IASB)は、IAS第12号の改訂を提案する公開草案を公表した(2023年3月10日までコメント募集)。本改正案では、第2の柱のルール実施に伴う繰延税金について、一時的ではあるが強制的な例外処理を導入し、広範な開示要件を伴うとしている。(注)
(注)わが国の企業会計基準委員会(ASBJ)も、2023年2月8日、「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)」を公表した(2023年3月3日までコメント募集)。税効果会計の適用にあたり、原則的な取扱いの適用を認めず、特例的な取扱いを一律に適用する(グローバル・ミニマム課税制度の影響を反映しない)ことを提案している。
2021年12月公表のGloBEルールでは、QDMTTにはあまり言及されていなかった。本ガイダンスでは、QDMTTの採用を決定した国・地域のために、QDMTTの特徴を定めている。本ガイダンスによると、ミニマム税は、GloBEルールおよびコメンタリーで規定される結果と整合する方法で実施・管理される(かつ、当該法域において、当該ルールに関連するいかなる恩典も提供されない)場合に限り、QDMTTとして適格となる。一般的に、QDMTTの計算には、GloBEルールと同様のデータポイントが必要となる。しかしながら、本ガイダンスでは、各国・地域におけるQDMTTのある程度の独自性は想定されるとしており、ミニマム税とGloBEルールの差異により制度上より大きな税負担増となる場合(例えば、加算調整となるペナルティーの閾値の引き下げにより)には、その税がQDMTTとして扱われることを妨げないとして、制度設計の柔軟性を許容している。本ガイダンスによると、QDMTTでは、実体基準の適用除外やデミニマス所得の除外規定を設ける必要はないとし、設ける場合には、GloBEルールで認められているこれらの除外規定より拡張的なものであってはならないとしている。本ガイダンスでは、IFが、QDMTTに係る情報収集・報告要件についてさらなるガイダンスを示すことを検討するとしているほか、QDMTTのセーフハーバー措置および各国・地域のQDMTTの評価に係る多国間レビュープロセスに取り組むとしている(注1)。なお、QDMTTであるためには、国内の構成事業体(CE)は、自国・地域のCFC税制における外国CEの所得に係る支払・未払税額を除外しなければならない(さらに、外国CFC/ハイブリッド事業体に対して課すすべての税額を除外することもできる)。また、一般的にCFC税制の下でCE所有者が支払った国内CEに配分可能なクロスボーダーの税額や、QDMTT実施国・地域内にある恒久的施設に配分可能な本店(main entity)の支払税額を除外しなければならない(注2)。これらにより、CFC税額の配分に係る複雑な計算の必要性が排除されるであろうとしている。なお、QDMTTは、小規模な多国籍企業グループや純国内企業グループにも適用可能である。
(注1)多国間で合意されたグローバルミニマムトップアップ課税ルールの国内での採用を評価するピアレビューを2023年中に開始し、最終的にその結果を公表する予定としている(Source: OECD Tax Talks No. 20)。
(注2)QDMTTは、IIR、UTPRおよびCFC税制の適用に優先する。QDMTTに係る各国・地域の外国税額控除の取扱いなどにも留意が必要となろう。
本ガイダンスでは、米国GILTIを、GloBEルール上のCFC税制と位置づけており、GILTI を含む (国別でない)CFC税制に期間限定(2025年12月31日以前に開始する事業年度(2027年6月30日後に終了する事業年度は含まない))で適用される、簡易的なCFC税額配分方式(CFC税制で計算された所得、および国・地域のGloBE実効税率とCFC税制の適用低税率閾値との差を考慮して、CFC税額を配分)の概要を示している。
本ガイダンスでは、GloBEルールの適用範囲に関して明確化を行っている。金額の閾値の再設定について、本ガイダンスでは、GloBEルールに含まれるユーロ建ての閾値が、他の通貨で現地法に制定されている場合、毎年再設定すべきであると規定している(注)。使用するレートは、対象となる事業年度開始の日を含む暦年の前年12月の平均値であり、一般的には、欧州中央銀行のレートを適用する。
(注)令和5年度税制改正に係る法律案では、「特定多国籍企業グループ等」(法人税法第82条①四)の判定に係る閾値は、「七億五千万ユーロ…を財務省令で定めるところにより本邦通貨表示の金額に換算した金額」としている(なお、「特定多国籍企業グループ」(租税特別措置法第66条の4の4④三)の判定に係る閾値は、「千億円」を使用している)。
以上のほか、連結財務諸表の作成が要求されていない場合のみなし連結テスト(承認された財務会計基準の選択等)について、非公開企業や投資事業体に関するいくつかの設例を示しつつ、明確化している。また、多国籍企業グループのCEの個別財務諸表に繰延税金費用が計上されていない場合(企業内の会計実務や財務会計基準によるものを含む)、連結財務諸表上のCEに係る繰延税金費用が代わりに取り込まれるとしている。このほか、除外事業体の定義の明確化もある。モデルルール第1.5.2条(a)(事業活動テスト)について、事業体が行うすべての活動が除外事業体の定義の範囲内にある場合には、除外事業体と扱われるとしている。また、資金の借入れおよび資産の直接取得は、資産の保有または資金の投資とされ、事業活動テスト上、付随的と扱われないとしている。
本ガイダンスには、コストベースで会計処理されるグループ内取引への独立企業間価格の適用(モデルルール第6.3.1条関連)、投資ヘッジに係る除外資本損益・金融商品に係る除外配当・債務免除益・発生年金費用(モデルルール第3.2.1条関連)、欠損事業年度に係るトップアップ税の繰越控除(選択制)およびマイナスの調整後対象租税がある所得年度に係るトップアップ税額の繰越控除(モデルルール第4.1.5条・第5.2.1条関連)(注)、CFCの親会社で欠損の場合の代替的(例外的)な繰越外国税額控除/欠損のリキャプチャーによる外国税額控除(モデルルール第4.4.1条(e)関連)、資本損益を除外しない旨の国・地域別選択(5年間の有効期間中、所有者持分に係る損失をGloBE上取り込んでいた場合、当該所有者持分については取り消し不可)および適格所有者持分に係る適格フロースルー税恩典(持分法投資に関連する特定の税額控除に係る特別規定(一定の要件を満たすタックスエクイティストラクチャーに関しては、GloBE所得・損失および調整後対象租税には含めず、税額控除は調整後対象租税に加算する等))の導入(モデルルール第3.2.1条(c)関連)など、が含まれる。
(注)令和5年度税制改正案にも反映されている。
保険会社に関連して、GloBEルール第7章に係る多くのアップデートがある。モデルルール第7.5.条(投資事業体の税の透明性に関する選択)および第7.6.条(分配時課税制度の選択)に関連して、第7.6条が保険投資事業体にも投資事業体同様に適用され得るとしている。このほか、第7.5.条の選択には相互保険会社が保有する保険投資事業体も含まれる旨、制限付きTier1資本はその他Tier1資本同様それらに係る分配が費用処理になる旨、Unit-Linked型保険事業などに係る除外配当・除外資本損益に対応する責任準備金の控除否認、(短期に限定しない)ポートフォリオ持分に係る除外配当の適用選択(簡素化の観点)、中間親事業体・部分的被保有親事業体(POPE)に保険投資事業体が含まれない旨などの明確化がある。
税額控除(モデルルール第9.1.1条関連)-本ガイダンスでは、移行年度前に発生した税額控除に係るGloBEルール上の取り扱いについてさらなる詳細を示しており、外国税額控除の繰越しなどの税額控除に関連する繰延税金は、(会計上認識されていなくても)GloBEルールの調整後対象租税の計算上考慮される可能性があることを明確にしている。これらの繰越税額控除は、最低税率と当該税額控除に係る税率のうち、低い方の税率で再計算しなければならない(繰越税額控除を再計算するための簡便な計算式はガイダンスに記載)。15%未満の税率で計上された繰延税金資産は、GloBE上変更されない。また、移行年度前に発生した還付可能な税額控除の還付等は、適格還付税額控除か非適格還付税額控除かに関わらず、調整後対象租税を減少させないとしている。
グループ内資産移転(モデルルール第9.1.3条関連)-グループ内資産移転について明確化している。一般的には、処分を行うCEが課税される場合において、取得したCEで原価(すなわち、公正価格)で計上された取引について、15%の税率または売却を行った国・地域の適用税率のうちいずれか低い方に基づく繰延税金資産を考慮できると規定している。公正価格で計上された取引の場合、公正価格と簿価の差額に最低税率を乗じた額の繰延税金資産を認識できるような場合に限り、計上された価格(すなわち、公正価格)を使用できるとしている。本ガイダンスでは、7つの設例を掲載している。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年4月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2023年2月1日、財務相は、2023-24年度連邦予算(2023年度予算)を公表した。議会両院での可決、および大統領の承認により発効する。外国投資家や多国籍企業に影響がある改正には、以下が含まれる。なお、BEPS第2の柱の実施に係る特段の公表はない。
法人、有限責任パートナーシップ、ファーム(firms)の税率 – これらに係る 所得税率(課徴金および健康教育目的税を含む)は、最低代替税および代替ミニマム税率を含め、変更はない。
非居住者株主への株式発行に関する濫用防止規定 – 現行税法上、民間企業が株式の発行に際してインド居住者から受領する金額が時価を超える場合に課税する旨の濫用防止規定がある。本予算案では、この規定の適用範囲を拡大し、非居住者に発行された株式も含めることを提案している。これにより、インド法人は、非居住者が時価を超える資本注入を行った場合、通常の法人所得税率で課税されることになる。
非居住者への支払利子に係る軽減源泉税率の適用期間の終了 – 現在の源泉税規定では、貸付契約が2023年7月1日前に締結された場合、国外からの貸付に係る利払いに5.46%の軽減源泉税率が適用されている。本予算では、さらなる延長は規定されていない。
無形固定資産の取得価額 – 現行税法上、取得時に対価が支払われていない無形資産や権利(知的財産等)の場合の取得・改良費用を具体的に定めておらず、キャピタルゲイン課税について複数の争訟が発生している。本予算では、取得時に対価が支払われない無形資産やその他の権利の取得・改良費用は、零として扱う旨の明確化を提案している。
税の不服申立手続きの簡素化 – 不服申立の未処理件数残高を減らすため、若手税務調査官による調査に対する不服申立を処理するための新たな代替機関を設けることが提案されている。
発生ベースの源泉所得税の還付 – 本予算では、過年度に発生ベースで源泉所得税が課されている(その後、支払ベースで源泉徴収)場合、納税者が、源泉税の還付を請求できる新規定の導入を提案している。
スタートアップ企業への恩典の拡大 – 現行税法上、「スタートアップ」として認められるのは、2023年3月31日までに設立された法人のみである。本予算では、2024年3月31日までに設立されたスタートアップ企業に対しても、これらの規定の恩典を拡大することが提案されている。さらに、持株比率の大幅な変更(49%超)があった場合のスタートアップ企業の欠損金の繰越し期間が、設立から10年(従前は7年)に延長される。
非銀行系金融会社(NBFC)に係る利子制限規定 – 現在、インドの銀行・保険会社が国外関連者に支払う利子に対して、利子制限規定(EBITDA30%制限)は適用されていない。本予算では、その恩典をNBFCに拡大することが提案されている。
インフラ投資信託/不動産投資信託の分配金に対する課税 – インフラ投資信託や不動産投資信託について、投資先の負債の返済を原資とした投資家への支払いは、投資家レベルで他の源泉からの所得として課税されることになろう。投資口の償還による払い出しの場合、償還された投資口の原価は控除が認められよう。
市場連動債への課税 – 本予算では、市場連動債の譲渡によるキャピタルゲインを、通常の所得税率で課税される短期キャピタルゲインに分類することを提案している。さらに、上場債券に係る利子は、10%の源泉税(および課徴金・健康教育目的税)の対象とすることが提案されている。
移転価格文書の提出期限 – 本予算では、税務当局からの求めがあった場合の移転価格文書の提出期限を、現行の30日から10日に短縮することが提案されている。
税務調査の完了期限 – 本予算では、2021-2022年度以後の税務調査の完了期限を、年度末から24か月(従前は21か月)に延長することを提案している。
経済特区(SEZ)内のユニットに対するタックスホリデーの申請要件 – 本予算では、タックスホリデーの申請に係るSEZユニットによる輸出売上の実現の期限を、年度末から6か月(またはインド連邦銀行による延長期限)とすることを提案している。
オンライン情報データアクセス・検索サービス(OIDAR)に関するGST適用範囲の拡大 – 非居住事業体が国外からGST未登録ユーザー(インド国内の個人消費者など)に提供するOIDARサービス(クラウドサービス、オンラインデジタルコンテンツ、オンラインゲーム、オンライン広告など)について、非居住者のサービス提供者は、GSTの課税対象になる。本法律は、サービスが完全に自動化されている場合にのみ課税されると解釈されていたが、本予算では、サービスが自動化されているか、人の介在があるかどうかに関係なく、GST の課税対象とすることを提案している。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年4月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2023年2月14日、ローレンス・ウォン副首相兼財務大臣は、2023年度予算を国会に提示した。2025年1月1日以後開始会計年度から、対象事業者に対して、GloBEルールおよび国内ミニマムトップアップ税(DTT)を実施する予定であるとしている(注)。一方で、イノベーションを促進するための適格な活動に取り組む企業に対する追加所得控除を強化する新たな企業革新スキーム(EIS)の導入などもある。2024賦課年度(YA)以降(2028賦課年度まで)、研究開発(R&D)、イノベーション、能力開発活動に取り組む企業は、適格活動に係る5つのカテゴリーの費用/支出(1. シンガポールで実施される適格R&Dプロジェクトに係る人件費・消耗品費、2. 知的財産権登録に係る適格費用、3. 知的財産権の取得・ライセンス関連、4. 適格訓練費、5. ポリテクニック、技術教育研究所その他の適格なパートナーとともに実施するイノベーションプロジェクト関連)に対して、最大400%(現在は100%/250%)の所得控除を受けられるようになる(現金による受領のオプションもあり)。
(注)第2の柱導入の動きはその他の国・地域でもみられている。例えば、香港では、2023年2月22日公表の2023/24年度予算の中で、2025年から15%のグローバルミニマム税および国内ミニマムトップアップ税を実施(コンサルテーションも開催)予定としている(年間約150億ドルの税収見込み)。南アフリカでは、2023年2月22日公表予算の中で、第2の柱を2025年から実施(2023年にコンサルテーションを開催、2024年に税法改正案を提出)予定としている。また、カタールでは、2023年2月2日、2018年所得税法第24号のいくつかの条項を改正する2022年法律第11号を官報掲載し(2023年2月2日から適用)、そのなかで、グローバルミニマム税の導入に取り組んでいることを強調している(詳細は、税法に係る施行規則でカバーされる)。バミューダでは、2023年2月17日公表の予算案の中で、2023年第2四半期に第2の柱の提案を行う予定としている。なお、バミューダには、2035年まで所得税が免除される免税法人が8千社あるとしている。
出典:PwC, Tax Insights
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PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2023年2月14日、ECOFIN理事会は、税務上の非協力的な国・地域の最新リストを承認した。ロシア、イギリス領ヴァージン諸島、コスタリカ、マーシャル諸島の4つの国・地域がAnnex I(ブラックリスト)に追加された(前回のリスト(2022年10月公表)から削除された国はない)(注1)。Annex II(グレーリスト)も更新され、アルバニア、アルバ、キュラソーが追加され、北マケドニア、バルバドス、ジャマイカ、ウルグアイは削除された(注2)。
(注1)アメリカ領サモア、アンティグア、バハマ、イギリス領ヴァージン諸島、コスタリカ、フィジー、グアム、マーシャル諸島、パラオ、パナマ、ロシア、サモア、トリニダード・トバゴ、タークス・カイコス諸島、アメリカ領ヴァージン諸島、バヌアツが含まれる。Annex Iに掲載された国・地域については、源泉税の引き上げ、ブラックリスト掲載国・地域への支払控除否認、CFC税制での合算、株主配当に係る資本参加免除の制限などの対象になる可能性がある(各EU加盟国の税制による)。
(注2)トルコ、アルバ、ベリーズ、キュラソー、イスラエル、ボツワナ、ドミニカ、セイシェル、カタール、香港、マレーシア、ヨルダン(アカバ経済特区)、アルバニア(産業インセンティブ)、アルメニア(自由経済区と情報技術プロジェクト)、エスワティニ(経済特区)、モントセラト、タイ、ベトナムが含まれる。なお、今後、EU加盟国において、公開国別報告(CbCR)指令の国内法への導入が進むとみられるが、グレーリストに2年間掲載された国・地域については、国別の開示が必要になる(本誌2023年1月号参照)。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年3月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
欧州の判例法では、法人は、設立の自由の適用により、EEA(欧州経済地域)域内のクロスボーダー合併、分割およびコンバージョンを税務上中立的に行うことができるとされている。しかしながら、クロスボーダーのコンバージョンや分割に関する統一的な法的枠組みがないため、法的分断や法的不確実性が生じていた。欧州連合司法裁判所による多くの判決後、クロスボーダー合併に適用される現行の枠組みをさらに最適化し、EEA全体でクロスボーダーのコンバージョンや分割に関する調和のとれた新規定を創設する必要性が生じていた。そこで、EU指令2017/1132など、これまで採用されていた規則を補完する形で、EU指令2019/2121(新指令)が公表された。本新指令は、2023年1月31日までに国内法に導入されることが定められていた(注)。本新指令により、新規定が導入され、スウェーデンの有限責任法人は、クロスボーダーのコンバージョンにより、他のEEA国に住所地(domicile)を変更できるようになった。また、クロスボーダー合併や分割に関する規定も更新される。
クロスボーダー合併とは、一方の加盟国の有限法人が、他方の加盟国の1以上の同等の法的事業体と合併し、その結果、一方の事業体が、他方の事業体の資産および負債を引き継ぐというものである。現在でも、スウェーデンの有限法人は、他のEEA加盟国の同等の法的事業体と合併できる。しかしながら、新規則では、以下を含む、一定の改正が加えられている。
クロスボーダー分割とは、有限会社の全部または一部を、分割により設立された複数の新会社に分割する新しい手続きであり、そのうちの1以上の法人は、異なる加盟国に設立されるというものである。クロスボーダー分割は、EU合併指令(税法)により認められ、それに従って国内税法が施行された。しかしながら、すべてのEU加盟国の国内会社法は、必ずしもクロスボーダー分割などを認めていなかった。このため、税法と会社法の間に矛盾が生じていたが、新指令が全加盟国で発効すれば、この矛盾は解消され、加盟国間の調和が図られることになる。
クロスボーダーのコンバージョンは、一方の加盟国に居住する有限法人を、他方の加盟国の同等の法的事業体に転換することができる新しい手続きである。コンバージョン後、法人は、他方の加盟国の法律に従うことになる。コンバージョンでは、法人が、本社や事業活動を新加盟国に移転する必要はないが、移転する場合には、居住地(residency)の変更に係る税務上の論点(出国税など)を検討する必要がある。クロスボーダーのコンバージョンでは、新たな法人は設立されず、法人の解散もない(同一法人が、他方のEEA加盟国で形を変えて存在し続けることになる)。コンバージョンの条件を盛り込んだ計画の作成、株主の承認、会社の債権者への通知、計画実行の許可など、相当程度、クロスボーダー合併や分割と同様の規定が適用される。
なお、このスウェーデンの法律には経過措置規定がない。旧規定の下で開始され、2023年1月31日の発効日までに完了しなかったクロスボーダー合併については、新指令に従って、スウェーデンで合併手続き全体をやり直すことになる。
(注)本新指令を2023年1月31日の期限までに国内法に導入していない国として、ベルギー、ドイツ、ルクセンブルグ、オランダ、スペインおよびルーマニアが含まれるとみられる。なお、ベルギーでは、会社法(Code of Companies and Associations)を改正する法律が、2023年4月末に官報に掲載される見込みである。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年3月号収録 Worldwide Tax Summary
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PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
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