月刊国際税務 Worldwide Tax Summary 4月号

2018-04-05

2018年4月号Worldwide Tax Summaryトピックス

  1. 法人税改正(ベルギー)
  2. 2018年度予算案 - デジタル経済とクロスボーダー課税の重要規定(インド)
  3. 包括的税制改正(アルゼンチン)
  4. BEPS関連法の公表(香港)

法人税改正(ベルギー)

2017年12月22日、議会は、7月に公表された主要な法人税改正を可決した。新法のほとんどの規定は、2018年1月1日に発効している。

法人所得税率の引き下げ
新法では、33%の標準法人所得税率が、2018年に29%、2020年に25%に引き下げられる。更に、2018年、中小企業の軽減累進税率が、10万ユーロの課税利得まで一律20%になる。現在3%の臨時税(crisis tax)は、2018年に2%に引き下げられ、2020年に廃止される(33.99%の統合法人所得税率は、2018年に29.58%、2020年に25%に引き下げられる)。

2018年の措置
ミニマム税
課税ベース拡大のため、新法では、税控除制度を改正する。一定の控除(例えば、受取配当益金不算入、イノベーション所得控除や投資控除)は制限がない。その他の控除について、百万ユーロ超は課税金額の70%のみ相殺可能である。これらの控除には、増加みなし利子控除、及び、受取配当益金不算入・イノベーション所得控除・税務欠損金・みなし利子控除の繰越が含まれる。残り30%は、新税率で課税される。

増加みなし利子控除
今後、みなし利子控除は、法人の適格資本の合計額ではなく、5年間の資本の増加に基づいて計算される。増加資本は、通常、課税期間末と5課税期間前のプラスの差異の1/5である。

資本参加免税
旧法では、その投資が課税対象要件(subject-to-tax conditions)を満たし、1年以上継続して全株保有であれば、株式に係るキャピタルゲインは免税になるが、大企業について、別途、0.412%のキャピタルゲイン税(相殺不可)が適用される。2018年から、この0.412%のキャピタルゲイン税は廃止されるが、キャピタルゲイン全額免税が適用されるためには、納税者は、追加的なミニマム資本参加閾値(10%の株式保有か、2.5百万ユーロ以上の取得価値)を満たさなければならない。

適格配当の資本参加免税は、95%から100%に拡大する。100%資本参加免税の結果、株主が10%未満の資本参加で、取得価値が2.5百万ユーロ以上の場合には、配当源泉税の免除が認められる(現在の源泉税率は、1.6995%)。欧州の判例法(Tate & Lyle事件)に従って、非居住者株主への分配配当に係る源泉税は、資本参加免税が適用できる居住法人の税負担と整合することになる。

その他の措置として、減資(capital reductions)に係るみなし配当源泉税の計算、リスク等引当額(provision for risks and charges)の取扱い、前払費用の損金算入時期、一定の役員報酬に係る追加課税(「distinct taxation」)、税務調査による一定額以上の追徴税の取扱い、延滞税の計算等がある。なお、Fairness taxの廃止は新法に含まれていないが、別の法律で2018年1月1日以後開始事業年度からの廃止が見込まれる。

2019年の措置
グループ貢献制度(Group contribution system)
本制度により、ベルギーの親会社、子会社、兄弟会社又はこれらの恒久的施設(PE)は、所定期間の課税利得を欠損法人/PEに移転することができる。このようなグループ内移転額は、利得がある法人で全額損金算入される。直前5年間において90%以上の株式直接保有が要件となる。移転可能な課税利得は、移転先法人/PEの関連する課税期間の損失に限定される。移転先法人/PEは、税務欠損の減少に係る報酬を、移転元法人/PEから受領する。本報酬は、移転先法人/PEで益金不算入、移転元法人/PEで損金不算入となる。関係する法人は、正式な契約を締結しなければならない。本制度に関係する各法人/PEは、個別の申告書を提出しなければならない(連結納税はない)。

租税回避防止指令(ATAD)Ⅰ及びⅡ
政府は、濫用防止措置として、CFC(被支配外国法人)ルールを導入する。CFCルールは、ベルギー法人が、外国事業体の資本、議決権又は利得の50%超の資本参加を直接/間接に有しており、その外国事業体がその居住地国の適用規定で課税されないか、ベルギーの規定で計算される法人所得税の50%未満の所得税が課される場合に適用される。本措置は、主として税目的の取決めからの未分配所得を狙っている。税務当局は、経済実質の観点から、このような取決めが真正(genuine)とは言えない性質のものであるかを評価する。

ベルギーは、ハイブリッドミスマッチを是正する措置も広範に実施する。また、税務上の居住地の移転とPEからの資産の引き上げがある場合に適用される出国税について、EU指令に従って、ベルギー本店から外国PEへの資産の移転もカバーするようその範囲を拡大する。本指令では、PE事業の資産と税務上の居住地がEU加盟国に移転する場合のステップアップも規定している。

2020年の措置
恒久的施設(PE)
PE欠損のベルギー本店レベルでの損金算入は、EEA(欧州経済地域)内の「最終欠損(final losses)」のみに認められる。そのために、PEの活動は終了させる必要がある。更に、将来も含め、PE欠損をPE所在地国のその他の所得と相殺することもあり得ない。また、当該欠損金は、同国内で活動する関連事業体への移転もできない。本店が3年の期間内に同国で活動を再開する場合、最終欠損は、ベルギーのレベルで取り戻される。

BEPS行動7の措置の一部を実施することで、PEの定義は拡大し、コミッショネアも含まれるようになる。

ATADⅠ及びⅡ
会計上のEBITDA(利子・税金・償却費控除前利益)の30%を超える純借入費用は、損金不算入となる。過大借入費用とEBITDAは、内部取引を考慮せず、それぞれの事業体で分けて計算する。3百万ユーロのデミニマス規定は、連結ベースで適用される。過大利子は、EBITDAの余裕がある(前述のグループ貢献制度同様に報酬を支払う)グループの事業体に移転できる。残りの過大借入費用・損金不算入利子は、無期限に繰越できる。

以上のほか、以下の措置も含まれる。

  • 罰課金の損金不算入、電気自動車の120%損金算入から100%損金算入への改正等、事業上の税軽減措置の要件(business relief conditions)が厳格化される。
  • 加速度償却(double-declining depreciation)法が廃止され、中小企業(SMEs)も大企業の現在の規定同様、比例(pro rata)償却の適用が強制される。
  • 2021年、2022年(賦課年度)について、一定の非課税準備金(exempted reserves)を15%又は10%の軽減税率で課税準備金(taxed reserves)に転換できる。


出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」 2018年4月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編

2018年度予算案 - デジタル経済とクロスボーダー課税の重要規定(インド)

2018年2月1日、財務相は、2018年度予算案を提示した。本予算案は、両議院で可決後、大統領の承認を得て発効となる見込みである。

国内法人税率の軽減
2015年度予算で、政府は、法人税率の25%への段階的軽減を公表した。これを受け、2017年度予算では、総収入額が5億インドルピー以下の一定の国内法人の2015-16課税年度の法人税率が25%に軽減された。2018年度予算では、25%の法人税率が、総収入額25億インドルピー以下の国内法人の2016-17課税年度に拡大されるであろう。支店と恒久的施設(PEs)を含む外国法人の法人税率は、40%で変更ないであろう。本予算では、現在の3%の教育目的税が、4%の健康教育目的税(Health and Education Tax)に取って代わられるであろう。なお、上述の税率は、付加税等は含まない。

キャピタルゲイン課税
本予算では、上場株式の譲渡に係る長期キャピタルゲインの免税が終了となろう。現在は、資本資産(上場株式や一定のファンド・信託のユニット等)の譲渡に関して証券取引税(STT)が支払われる場合、その譲渡から生じる長期キャピタルゲインは、所得税が免税となる。本予算では、この免税を終了させ、10万インドルピー超の長期キャピタルゲインは10%(物価スライド/為替差益なし)で課税されよう。STTは引き続き取引に課される。なお、2018年1月31日前の未収分は、祖父条項により、時価までの資産価値の増加について、2018年1月31日まで長期キャピタルゲインが免税となろう。本予算では、時価の計算方法を規定している。

(注) 本予算では、外国ポートフォリオ投資家(FPIs)のこのような長期キャピタルゲインは課税されよう。

みなし配当に係る配当分配税(DDT)
現在、内国法人の分配配当については、分配法人にDDTが課される。しかしながら、株主又は特定の者への前払い又は貸付は、みなし配当とされ、受領者側で課税される。このようなみなし配当に係るDDTの提案では、法人にグロスアップなしで30%と付加税等が課され、受領者側では免税となろう。

BEPS関連
「事業上の関連(business connection)」の概念
現在の国内法の「事業上の関連(business connection)」の定義は、条約のPEの概念に近いが、BEPS行動7の勧告に従って、代理人PEの範囲が拡大されるであろう。本改正提案は、多国間協定(MLI)で修正された代理人PE規定の拡大と整合するであろう。MLIは昨年、インドを含む多くの国が署名している。本予算では、非居住者の「重要な経済的プレゼンス(significant economic presence)」は、インドでの事業上の関連を構成するであろうと提案されている。重要な経済的プレゼンスとは以下のいずれかである。

  • 非居住者が行う、インドでのデータ/ソフトウェアダウンロードを含む物品/サービス/財産取引(課税年度中の取引の総支払額が一定額超の場合)
  • インドでのデジタル手段を通じた組織的・継続的な事業活動の勧誘、又は規定数のユーザーとの交流への従事

これは、主にデジタルプラットフォームによる新たなビジネスモデルへの対応としての新ネクサスルールに基づく課税とみられる。

本予算では、重要な経済的プレゼンスの判断に当たり、上述の要素と合わせて、収入要素が使用されるであろうことを明確にしている。

ミニマム代替税(MAT)
本予算では、MAT規定は遡及適用されず、推定/みなし課税を選択する外国法人にみなし適用はされないであろうことを明確にしている。

以上のほか、一定額以上の財務取引を行う事業体の税登録番号の取得要件、無申告法人の訴追、一定損金に係る期限内申告要件、e-audits(納税者と当局の面談なし)の提案等がある。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」 2018年4月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編

包括的税制改正(アルゼンチン)

2017年12月27日、議会は、税制改正案を可決し、2018年1月1日に発効した。2018年1月1日以後に開始する2課税年度の法人所得税率を35%から30%に即時的・暫定的に引き下げる等、いくつかの重要な改正がある。2020年1月1日以後開始課税年度について、法人所得税率は、25%に引き下げられる。税務上の資産再評価への一時課税も含まれる。


法人所得税率の引き下げ
2段階の法人税率の引き下げは、配当分配と支店利得送金に係る源泉税(適用法人所得税率30%のときは7%、25%のときは13%)で相殺される。配当と支店利得に係る源泉税は、条約で軽減される可能性がある。条約がなければ、配当と利得分配に係る統合実効税率は、当初は34.9%、25%の法人所得税率のときには34.75%になる。

本税制改正では、2018年1月1日以後開始課税年度に発生した利得に係るいわゆる均等税(equalization tax)も廃止された。均等税は、税務上の利得(tax earnings)を超える配当分配に係る35%の税率で課される源泉税である。2018年1月1日前までの留保利得で、関連分配前の年度末の税務上の利得を超える配当と支店利得分配には、引き続き均等税が適用される。


アルゼンチン株式の譲渡
本税制改正では、非居住者間の譲渡を含む、2013年9月23日後のアルゼンチン株式の譲渡は課税される旨、確認された。しかしながら、非居住者が、証券取引所を通じて行う株式・米国預託証券(ADRs)の売却は課税されない。

税制改正前は、購入者にキャピタルゲインの源泉徴収を求める規定であった。しかしながら、実務上は、法的な仕組みの欠如から、非居住者間の売買の源泉徴収は行われていなかった。2017年7月、税務当局は、決議4094-E号(Resolution No. 4094-E)を公表し、非居住者がキャピタルゲイン税を納税する仕組みを規定した(2013年9月23日以後に発生する取引に遡って適用)。本決議に伴う混乱により、税務当局はその後、従前の決議を180日間停止する決議4095-E号(Resolution No. 4095-E)を公表した。2018年1月11日、税制改正成立後、税務当局は、決議4094-E号と4095-E号を廃止する決議4190-E号(Resolution No. 4190-E)を再度公表した。本税制改正では、購入者ではなく、売却者が源泉徴収義務者になる。

本税制改正では、アルゼンチンの資産(株式を含む)の間接譲渡は、(ⅰ)アルゼンチンの資産価値が総取引価値の30%超で、(ⅱ)外国事業体の売却資本持分が10%超の場合に課税される。売却前12か月間でこれらの要件を満たす場合に課税される。2018年1月1日以後の取得資産に適用されるが、一定の要件を満たす同一経済グループ内での間接譲渡は課税されない。


その他の改正
OECDモデル租税条約に沿って、恒久的施設とみなされない活動類型を限定するために補助的・準備的の概念が制限される。また、過少資本規定(2:1の負債資本比率)をBEPS基本ルールに置き換え、国内・国外関連者に係る利子・為替差損の損金算入が、納税者の利子・為替差損・償却費前の課税所得の30%に制限される(限度超過利子は5年、未使用控除枠は3年間繰越可能)。その他、外国仲介者とのコモディティー取引を含む場合の移転価格分析に係るいわゆる第6番目の算定方法の緩和、CFCルールの改正、一定のインフラと資本財投資に係る付加価値税(VAT)の還付促進措置、非居住事業体がアルゼンチンの顧客に提供するデジタル取引へのVATの課税(税率21%)や、税務上の資産再評価への一時課税等がある。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」 2018年4月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編

BEPS関連法の公表(香港)

2017年12月29日、改正内国歳入法(第6号)案が公表された。本法では、移転価格規制制度と義務的な移転価格文書化要件を導入し、OECD・BEPS行動計画のミニマムスタンダードを実施し、アドバンスルーリング申請の手数料を改定しようとしている。移転価格規制制度と文書化以外では、本法の主要なBEPS関連規定には以下のようなものがある。

  • 条約の相互協議手続き(MAP)又は仲裁手続きによる効果的・効率的な法定紛争解決の仕組みの導入
  • 条約の有無に応じて可能な二重課税救済の明確化
  • 未使用の外国税額控除の使用期限を、関連賦課年度の終了後2年から6年に延長
  • 既存のコーポレートトレジャリーセンター(CTCs)、再保険事業、キャプティブ保険事業の優遇税制の囲い込み的(ring-fencing)特性の除去(航空機リース制度の優遇取扱いを受ける納税者への支払いの損金算入制限と同様の制限をこれら事業に拡大)
  • 既存の優遇税制に関し、香港で利益創出活動が行われているかの閾値要件(例えば、香港でのフルタイムの従業員数と支出額)の規定権限を内国歳入庁長官に付与

 

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」 2018年4月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編

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