生き残る種とは変化に最もよく適応したものである デジタル時代の人事に必要な六つの視点と、カギを握る四つの期待成果

2020-10-12

これまでの10年と、2030年に至るこれからの10年では、変化スピードが大きく変わる。ムーアの法則(半導体の集積密度がおよそ18カ月で倍増するという法則)が示唆した指数関数曲線が垂直的に立ち上がる時期に相当する。次の10年に勝ち残るには、どんな施策を打つかよりも、どんな成果を上げられるかという人事の機敏性が問われる。世界的には「Workforce of the future(将来の労働力)」や「The future of work(未来の働き方)」といった用語の検索数が数億回を超えて注目されているが、未来的志向に関して日本はまだまだ疎い面がある。人という経営資源のマネジメントが過去よりも圧倒的に創造力を必要とする方向へ変化しつつある潮流を理解しないと、価値は創出できない。

本稿では、デジタル時代の人事に必要な六つの視点と、カギを握る四つの期待成果を紹介することで、これからの荒波を乗り越えるための“人事の羅針盤”を提示する。

1 デジタル時代の人事に必要な六つの視点

[1]第1の視点:グローバルトレンド

今、人材マネジメントの慣習は大きな転換点に差し掛かっている。その背景には、労働力の在り方を根本的に変えてしまう三つのグローバルトレンドがある。

一つ目は、技術革新の速さ。人工知能とロボティクスに代表されるデジタルワークフォースが台頭し、自動化できる業務範囲の幅や質が変わり、人が将来担う仕事は再定義される。実際、経済協力開発機構(OECD)の調査によると、すべての仕事のうち46%は、50%の確率で失われるか、大幅に変更されると推定している。

二つ目は、世界的な人口動態の変化。少子高齢化や人口爆発など先進国と途上国によって直面する課題に違いはあるが、共通して「デジタルネイティブ」と呼ばれるミレニアル世代(1983~94年に生まれた世代)が世界の労働人口の過半を占めるようになり、今後、Z世代(1995~2002年に生まれた世代)の社会人も増えていく。求める働き方や就労観、動機づけ要因が大きく変わろうとしている。

三つ目は、雇用の変化。最近、日本では副業・兼業が推進されているように、世界的に「ギグエコノミー」や「ギグワーカー」という言葉に代表される労働人口に占めるフリーランスや個人事業主の割合が増えている。仕事の需要と人材の供給をマッチングするオンラインサービスを展開するスタートアップ企業の参入によって、独立への間口は確実に広がりつつある。雇用形態とキャリアモデルが多様化している。

また、SNSの発展とともに情報拡散のスピードが速まり、知のオープン化と無償化が加速する中でアクセスできるコンテンツも膨れ上がり、グローバルトレンドは世界へ伝播(でんぱ)しやすくなった。VUCA(Volatility〔変動性〕、Uncertainty〔不確実性〕、Complexity〔複雑性〕、Ambiguity〔曖昧(あいまい)性〕)といわれる不確実な時代、社会が変化する潮流を洞察する情報のアンテナをしっかりと立てておく必要がある。

[2]第2の視点:経営者の未来志向

PwCの「世界CEO意識調査」(2020年1月公表)によると、回答したCEOの5人中4人が、従業員の業務上必須スキルの不足と欠如こそが今後の企業成長を損ねる脅威になると指摘している。デジタル変革が広がるにつれ、新たな役割に必要なスキルセットも大きく変化する。先端技術がもたらす新たな世界に適応するために、人はかつてないほど新たなスキルを獲得し続ける必要性に迫られている。事実、CEOの46%は、自社のスキルギャップを解消する施策として外部採用等より従業員の再教育とアップスキリング(スキルの向上)が最善策だと答えている。

同意識調査において、将来的に重要度が増し、なおかつ獲得が困難になるスキルについて質問したところ、回答の上位に挙げられたのは、現在、人材獲得競争が激しくなっている先端技術の実用化を担う技術者や統計学的処理を扱ういわゆる理科学系スキルではなく、「問題解決能力」「適応力」「創造力・イノベーション」「リーダーシップ」といったヒューマンスキルであった[図表1]。

人の頭脳になぞらえると、人工知能やロボティクスが代替できるのは、主に左脳的な処理である。つまり、論理的・数学的なスキルをさらに代替する可能性がある。計算処理や記憶、情報整理などが得意な人工知能に対し、人間には創造力や直感力、問題解決における意思決定といった優れた能力がある。置換できない人間らしいスキルであり、人工知能と協働するために必要なこうしたヒューマンスキルが注目されている。

[3]第3の視点:従業員の個別性

これからの時代、人がどのように変化する必要があるかを語る前に、人が期待する変化を知る必要がある。若手世代は、事業環境が変わり企業の序列が入れ替わるのを横目で見ながら、人生100年時代といわれる自分のキャリアプランを真剣に考えている。PwCがミレニアル世代を対象に行った調査からは、時間や場所に縛られない柔軟な働き方、ワーク・ライフ・バランスの確保、デジタルツールを用いた先進的な働き方、5社程度の会社を経験するキャリア形成など、この世代に特徴的な価値観が分かっている。先進企業ほど、将来のタレントがどのように働きたいかを認識し、ニーズに見合う柔軟な働き方を導入している。

つまり、人の多様性と個別性を重視する時代が来ている。組織の論理に合致させるよりも、一人ひとりのキャリアに対して、自社で働くことを意義づけることが大事になる。そのような考え方が、企業が従業員に提供できる価値(Employee Value Proposition)や、従業員の経験価値(Employee Experience)という形で発信されている。人は生活の中で体験するサービス経験に匹敵する使いやすさや魅力性を会社にも期待している。日常の顧客体験を通じて、従業員は自分の意見が大切だと感じている。組織は、この期待にどれだけうまく応えているかを顧客と同等に把握する必要がある。

[4]第4の視点:HRテクノロジーとデータアナリティクス

新しい働き方への移行は、強力なコミュニケーションとアナリティクスの活用を必要としている。今後の成長は、いかに人とテクノロジーを組み合わせるかにかかっている。デジタル時代に不足しないのはデータである。HRテックは、多くのスタートアップ企業が参入して革新が起きている。テクノロジーのさらなる活用やオフィスのIoT化に伴い、人に関して収集できるデータは膨れ上がる。しかし、多くの企業では、人事分野のアナリティクスの実用化が遅れている。

経営幹部は、データアナリティクスが顧客との関係構築にもたらす効果を認識しているにもかかわらず、従業員のエンゲージメントとなると、その価値を軽視している。雇用主のブランド、従業員のエンゲージメント、そして、従業員が組織に何を求めているのかを理解する上で、社内データと社外の情報源は豊富な示唆を得るための宝の山となり得る。

実際、人事分野のデータアナリティクスの適用範囲は年々広がり、人材のパフォーマンスやエンゲージメントに関する予兆分析によって、人事施策の精度を高められるようになっている。働き方のデータ分析によってテレワークの生産性の高さも検証できる。人事の意思決定にデータ活用が進まないのは、分析の基となるデータの質、正確性、完全性が最大の障壁となっているからだ。後進企業はデータ整備に着手して、データアナリティクス機能強化のロードマップを描くことが急務である。人事担当者のデータリテラシーとIT知識を大幅に改善しないと好転はない。

[5]第5の視点:デジタルワークフォース

人工知能とロボティクスは、「デジタルワークフォース」と称される新たな労働力となった。過去のテクノロジーは人の仕事を補完したが、今後10年のうちにデジタルワークフォースは自律した労働力となる。これを脅威と捉えずに機会として活用するには、デジタルワークフォースの価値とリスクを理解しておく必要がある。

PwCでは、人工知能の進化を大きく3段階に分類している。

第1段階は、AIアルゴリズムで、主に単純な計算タスクや構造化データの分析など人の作業をより速く簡単にできる支援知能として既に活用が進んでいる。

第2段階は、AI拡張で日常的な情報の伝達交換から、非構造化データの統計分析など人の意思決定を拡充する領域として2020年代に成熟する。

最後の第3段階は、AI自律の段階で、人からの補助を受けることなく、異なる状況に順応し自律的に行動する。手先の器用さを伴う作業や応答行動が必要とされる実世界での問題解決の自動化など、2030年代には経済規模で成熟するとみられている。

デジタルワークフォースによって、労働市場や雇用の在り方は大きく変わるため、自動化が産業や自社に与えるインパクトを予測しておく意義は大きい。PwCの試算によると、短期的に第2段階の自動化までは金融業界、製造業、情報技術産業に大きなインパクトがある。一方、自律段階に及ぶ中長期的には、運輸・倉庫業、製造業、建設業へのインパクトが大きい。

人工知能の進化によって、個人は生涯にわたる学習に責任を持つことになる。企業は、自動化による生産性向上を享受する反面、顧客のデータプライバシーや従業員のスキル向上など、デジタルワークフォースの責任ある使い方を選ばないといけない。人事業務の自動化も進むが、デジタルワークフォースとヒューマンワークフォースの共存共栄は、人事が担う役割に多大な影響を与えることになる。

[6]第6の視点:組織変革のジレンマ

ビジネスモデルの変革期に組織をどう移行させるか。変革移行期には、二つの組織形態の両立がカギを握る。成熟したビジネスモデルは、ピラミッド型構造を用いてガバナンスとマネジメントを強化する。他方、新規事業を創出して拡張する組織は、タスクフォース型のフラット構造で機敏性を強化する。後者には、大きな変革がすぐに必要であるのに対して、前者は、しばらく現状維持が続く。前者が本業で利益を出してくれるからこそ、後者への投資が成り立つ相互依存関係にあるが、特徴は全く異なる[図表2]。

日本を代表する自動車産業がそうであったように、これまで多くの日本企業は成熟したビジネスモデルをピラミッド型マネジメントで守ることに長けてきた。それは否定されるものではない。実際、ユニコーン企業は事業が拡大してピラミッド型へ移行する逆の課題を抱える。それぞれの組織形態に最適な人材マネジメントは性質が異なる。片方の論理で他方を管理しようとすると、機能不全が起こる。今、多くの企業では、この二つの組織体の境界線が曖昧なため、さまざまな弊害が起きている。人事は事業の成熟度やポートフォリオを見極めて、相違性の線引きができないと本業も新規事業も停滞しかねない。全社画一的な施策は今後ますます通用しづらくなる。

2 人事に期待される四つの期待成果

PwCが79カ国・1200人超の経営幹部と人事責任者に行った調査では、今後備えるべき組織能力トップ10は、[図表3]のとおりとなった。上記の六つの視点を踏まえながら、ここからは人事に期待される重要な成果を四つに絞って紹介する。

[1]期待成果その1:スキルマッチング

経営者は、将来必要となるスキルをいち早く見極めて適時にスキルギャップを解消する術(すべ)を組織が持つことを望んでいる。また、従業員は不確実な時代に必要となるスキルをいち早く身に付けて、自分のキャリアを選択する道標(みちしるべ)を探している。直近、人事が達成しないといけないのは、スキルマッチングの状況を組織で広くオープンに可視化することだ。

これからの時代に必要な要員計画は、人々が持っているスキルと組織が必要とするスキルに焦点を当て、将来必要となるスキルに対して現時点でどれだけのギャップがあるかを明らかにするものでなければならない。このデータと戦略が採用や配置だけでなく、学習と育成・能力開発にも大きく左右する。

ビジネスは、これまで以上にネットワークを広げて、社内外のさまざまな関係者と協働・協創できないと差別化された価値を生み出せない。異なる価値観やアイデアを受け入れるインクルージョン(一体性)の行動原則が協創を支える原動力になる。そのような環境下、人が担う仕事は業界を超えて再定義される。過去の延長線上にその答えはなく、未来志向で将来像を設計する必要がある。一度定義された仕事やスキルの賞味期限はますます短くなる。将来要件を予測し続けるために、テクノロジーがもたらすデータとアナリティクスの洞察力は欠かせなくなる。

もはや中央集権的な組織変革では遅い。現場に権限を委譲して、将来必要な役割とスキルを各部門で設計していかないと間に合わない。運用を回すには、組織設計と人材活用のノウハウの再教育が必要になる。現場での変革を側面支援する機能が人事には一段と問われてくる。

この文脈で、人事が重点的に拡張させないといけない機能はポジション管理である。将来必要なスキルは理想像ではない。新たな事業戦略の実現に必要なポジション要件としてスキルセットが決まる。そして、現状とのギャップを把握して機敏に次の一手を打つ。

これから最も重要な戦略的意思決定は、人材とスキルを中心に行われる。競争力を維持するために必要な能力はどのようなものか、そのスキルは外部から調達するのか、既存従業員に習得可能なのか、何を自動化あるいはアウトソースしなければならないのか、アライアンスによって必要な人材を共有できるかなど、こうしたスキルマッチングの機敏な判断が競争力の差となってくる。

[2]期待成果その2:アップスキリング(スキル向上)

社会が将来必要な人材を送り出すのを、企業は待っていられない。アップスキリングは企業が先導する事項になる。スキルギャップを埋められる能力開発の明確な戦略の重要度が増し、教育機関との密接な連携もカギになる。この問題解決に企業が重要な役割を担うことが、社会から期待されている。新たな時代に適応する力を付けるアップスキリングの目的は、労働市場での個人の雇用可能性を高める点にある。一企業の問題というより、社会全体の底上げを図る社会課題なのだ[図表4]。

従業員に育成投資しても転職されてしまうから無駄だと言い訳する企業に将来はない。知見の共有や学習機会は革新的なクラウド技術と通信チャネルを用いてオープン化と無償化が進み、学習の在り方が根本的に変わりつつある。新しい働き方へ移行するためには“学び方改革”が避けて通れない。人工知能との協働やデジタルツールの活用は当たり前となり、先端技術を使いこなす従業員のデジタルリテラシーを評価して高められない企業は時代に取り残される。

開発すべきは、学習の機敏性である。企業は新しいスキルをいち早く習得する機会を設け、従業員は機敏に学習する習慣を培うことが、変化への適応力の高さにつながる。技術革新に伴い、スキルの陳腐化も早まるため、教育方法は変わらざるを得ない。知識を身に付けるインプット型研修はeラーニングに代替され、従業員の空き時間に随時独学でアップデートする。個人向けにカスタマイズできる多様な学習形式によって、従業員の学習意欲を飽きさせない。オンラインシミュレーションやゲーミフィケーションの活用範囲も広がる。逆に集合研修は、人と人との接点で起こる“化学反応”を狙って、お互いの実体験を共有すること、フィードバックし合うこと、失敗や成功に共感し、想像力と創造力とをかき立てるアイデアを紡ぐ場に変わる。

つまり、人工知能の機械学習や深層学習の進化に伴い、機敏な学び方が確立し、人ならではの強みを伸ばす時代が到来する。PwCは将来的に人間が担う重要な役割を以下の三つに定義している。

一つ目は、創造力や発想力を発揮してアイデアや企画を練る役割。

二つ目は、協創力や共感力、異質性や多様性を受け入れる心構えを持って、人の経験を英知として結集する役割。

最後の三つ目は、実世界で人を将来へ導く変革リーダーシップの役割――である。

いずれもヒューマンスキルが肝要となる。

[3]期待成果その3:デジタル時代の組織文化

情報のオープン化が進む社会では、従業員との信頼関係を強化する上で透明性の確保が大前提となる。スキルギャップの可視化は、社内の透明性の観点からも重要な意味を持つ。また、アップスキリングには組織文化を好転させる力もある。事実、前出の「世界CEO意識調査」によれば、アップスキリングプログラムの効果について、41%のCEOが企業文化と従業員エンゲージメントの強化に非常に有効だったと回答している。とりわけ、アップスキリングに大規模な投資をしたCEOの60%が、その大きな効果を認めている。

これからはどう従業員を変革に巻き込むかが重要になる。そのためには、自社が進む将来像に興奮するような感情的なコミットメントを引き出す必要がある。特にデジタル世代は、社会課題解決など壮大な目的に対して、自社や自身の活動がどう関わるのか説明を求める。従業員は会社が目指す目的を信じ、その社会的使命を認識し、その一部であることを誇りにするからだ。

イノベーションの文化を育むには、大胆な権限委譲が必要になる。変革に積極的な従業員は、参画意欲が高く、オーナーシップを求める。顧客に近い最前線の従業員は、今、会社にどのような修正が必要か具体的な方法を理解している。そのためにも、イノベーションを起こす従業員間の草の根の努力を奨励すること、個人のアイデアを試行するように奨励することが重要となる。また、最近よくいわれるのが、失敗から学ぶ重要性である。これまで日本企業では、失敗から学ばずに葬り去ることが多々あった。従業員の多様な経験から、新たな組織知が形成される。スクラム(チームで仕事を進めるためのフレームワーク)を応用した積極的に試行錯誤できる職務機会がデジタル時代に必要な行動とマインドセットを育む。

[4]期待成果その4:人材のエコシステム

デジタル化への適応に成功しつつある組織は、データアナリティクスと先端技術で支えられた意思決定に秀で、多様な経験とスキルを持った従業員を擁する。デジタル時代に対する考え方やビジョンとリーダーシップ像が明示され、失敗から学ぶ文化と機敏な働き方が定着している。必要なスキルを持つ人材獲得のために大学や専門学校と共同で人材育成プログラムを実行して人材供給チャネルを多様化させている。従業員へのリアルタイムのフィードバックを与えるコーチングや自己投資時間の確保など、パフォーマンス強化メカニズムも確立しており、総じて高い従業員体験が提供されている。

10年後のビジネスや労働力の在り方がデジタル化の波によって想像を超えるスピードで大きく変化する近未来を洞察すれば、ビジネスを支えるために必要な労働力とスキルをいち早く判断して供給することが、人事の重要な使命になることが分かる。そのような機能を実現する人材のエコシステムは、社内だけでなく外部人材まで手を伸ばさないと意味がない。フリーランス、デジタル業界特化のエージェンシーや人材派遣会社からの出向者、オンデマンド労働力の新たなプラットフォームやアライアンス企業との共有従業員など、これまでの枠組みを超える発想をしないと実現できない[図表5]。

尖(とが)った優秀人材を自社だけで抱え込むことに躍起になるより、自社の経験を他社の変革の糧にしてもらうこと、他社との戦略的アライアンスのきっかけになってもらうこと、また、自社でも再雇用がストレスなく実現できる環境やネットワーキングに力を入れるなど、人材の流動性を前向きに受け入れるシェアリングエコノミー的発想が重要な改革コンセプトになる。

3 おわりに

本稿では、人事の専門的な方法論はあえて紹介していない。人事担当者が技術的な専門性に傾倒することが人事の異質性を高める一因になるからだ。ジョブ型の議論も、WhatとHowを追求する前に、経営者や従業員がなぜそのような要素を求めるのか、Whyの本質を理解しなければ意味がない。

新規事業モデル創出やデジタル変革といった経営課題に対して、日本企業の致命的な足かせは過去にとらわれた従業員のマインドセットにある。マインドセットと組織文化を時代に合う形へ移行させることが急務だ。グローバル化の時代には、人事の国際化が一番遅れていると揶揄(やゆ)された。デジタル化の現在、人事のデジタル化はどうなるだろうか。

今後、多くの職務がロボットに置き換わってなくなるかもしれないが、人の重要性は増す。職務と人は必ずしもイコールで結ばれない。職務はなくなろうとも、人は守らなければならない。従業員を中心に考えて戦略を立てること、すなわち、人という経営資源の最適化よりも、人が持つ価値を最大化する発想に立脚した戦略を打ち出してほしい。

『労政時報』第4001号(20.10.9)[労務行政刊]

執筆者

佐々木 亮輔

佐々木 亮輔

組織人事・チェンジマネジメント パートナー
PwCコンサルティング合同会社

約20年にわたり組織変革コンサルティングを専門に従事。組織の統廃合、業務改革、働き方改革、ワークフォース戦略、人財イノベーション、アジャイル組織、ワークプレイス変革、組織文化改革など、さまざまな変革プロジェクトをリード。ニューヨークとシンガポールをはじめ海外勤務経験も長く、日本だけでなく海外のベストプラクティスにも精通している。働き方改革やデジタル変革に関する講演や寄稿多数。

※法人名、役職などは掲載当時のものです。

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