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幸せなイノベーティブ人材・組織への変革に向けたブランディングの方法

2021-10-12

幸福度マーケティングでは、企業と顧客の間だけでなく、企業と従業員の間で「幸せ、ウェルビーイング」を起点とした関係性を築くことを提唱しています。なぜなら、幸福度の高い従業員は生産性や創造性が高く、結果として顧客の幸福度も高まると考えているからです。

一方、変化の激しい時代にあって、企業の変革を推進するイノベーティブ人材がどの業界でも求められています。このことから、「幸せなイノベーティブ人材」を獲得・育成することが、企業の今後を左右する重要なアジェンダであるとも考えています。

これを実現するためには、従業員に対して「幸せ志向」「マーケティング志向」で向き合うことが肝となります。その第一歩の例として、従業員に向けた幸福度調査を実施して、クラスタリングなどを組み合わせて従業員を「幸せ志向」「マーケティング志向」の切り口で理解することが挙げられます。PwCコンサルティング合同会社(以下、PwC)も2021年から従業員の幸福度調査を開始し、調査・分析を行いました。詳しくは近日中に公開予定のプレスリリースをご参照ください。

本稿では、これからの人材獲得・育成になぜ「幸せ志向」「マーケティング志向」が必要なのかを考察すると共に、イノベーティブ人材育成のアプローチとしてインターナルブランディングによる意識変革を紹介します。

時代の変化が求める「ニュータイプ」なイノベーティブ人材

2021年のダボス会議のテーマが「グレート・リセット」であることをはじめ、急速な変容に対応するためのリセット、トランスフォームは、あらゆるビジネス活動に共通するテーマとなっています。

資本主義、株主主義といった価値観からの抜本的な転換が起こる中、新たな社会を支える人材にもまた、変革が求められています。ある書籍では、予測思考で生産性が高く、ルールに則して行動する、従来「優秀」とされていた「オールドタイプ」に対し、これからの時代に必要とされる「ニュータイプ」の人材は、その真逆である、と語られています*1。具体的には、予測ではなく「自ら構想する」、生産性に左右されず「遊びを盛り込む」、ルールではなく「自分が持つ道徳観に従う」、一つの組織に留まらず「組織間を超越する」、綿密に計画を立てるのではなく「とりあえず試す」、奪い独占するのではなく「与え、共有する」というのが、ニュータイプ人材の特徴とのことです。新時代の人材には、既存のフィールドで戦って価値を見出す規定演技ではなく、自らがフィールドを定義し、その中で楽しみながら挑戦し、周囲と共に創造していく自由演技が求められているのです。

ニュータイプ人材の核となる要素。それは「ウェルビーイング(幸せ)」であると私たちは考えています。ウェルビーイングが保たれている状態、つまり人が幸せな状態になるには、前野隆司氏(慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授)によると、大きく分けて4つの因子があると言われています。

  1. 「やってみよう!」因子:自己実現と成長の因子
  2. 「ありがとう!」因子:つながりと感謝の因子
  3. 「なんとかなる!」因子:前向きと楽観の因子
  4. 「ありのままに!」因子:独立と自分らしさの因子

上記を見ると、自ら構想しながら組織間を超越し、とりあえず試しながら他者に与え、共有していくニュータイプ人材像と重なるところが多いことが分かるのではないでしょうか。自らが幸せな状態を維持できる人材こそ、急速に変容する社会に対応し、自身が価値視する領域を見出しながら、周囲と協働し、挑戦し続けることができると筆者は考えます。

企業が新時代に生き、これからの社会を引き続き支えていくには、こういったニュータイプかつウェルビーイングなイノベーティブ人材の獲得・育成が、大きなチャレンジとなるでしょう。ではイノベーティブ人材はどのようにして育まれるのか、これから論じていきたいと思います。

イノベーティブ人材化に向けては人材の「幸せ」がキーワード

イノベーティブ人材の育成ならびにアップデートにおいては、人材を育む教育の現場、そして人材を獲得・育成する企業それぞれにおいて、環境・仕組みを再設計することが求められます。

まず、教育の視点から見てみましょう。「日本人の自信を高めて幸福度向上につなげるための教育の在り方」で論じましたが、日本の教育現場におけるイノベーティブ人材育成に向けた重要なポイントは「自信の向上」です。幸福度と自信は密接に関係していますが、日本人は自信よりもコンプレックス(ここでは劣等感の意)のほうが強い、という調査結果が出ています。

図表1 自分自身に満足している人の割合

ハイコンテクストであるがゆえ、協調性が重視され、かつ著しく発達した日本においては、無意識のうちに自身を過小評価し、それによって自信喪失を招いてしまっている事象が少なくないように見受けられます。

図表2 コミュニケーションの異文化間の違い

自信につながる「やってみよう!」因子と「ありのままに!」因子を生み出す方法としては、自分の考えを発信し、相手の意見から学び、学習理解を深めていく過程を繰り返す「アクティブラーニング」の導入が方策の一つとして考えられます。

次に、企業視点ではどうでしょうか。「イノベーティブ人材獲得の要となるウェルビーイングの視点」でも論じましたが、既存の人材をイノベーティブ人材へと育成していく必要がある企業にとっては、従業員や採用候補者を「幸せ」を起点に長期的な関係性を築くべき対象であると捉え、「マーケティング志向」で獲得したい人材要件を明確化し、彼らにとっていかに魅力的な職場を作るかを考えた上で、従業員の幸せにつながるような施策を打ち出すことが、企業を内側から変革する上での近道と筆者は考えます。例えば、自社の従業員層に応じて、勤務時間のいくらかを、従業員がやりたいことに当てられるようにする、ギフト券や商品と交換できる独自ポイントを「ありがとう」のメッセージと共に贈り合う、チャレンジを賞賛する制度・カルチャーを構築する、といった施策が考えられます。

どういった施策を打つべきかを考える上では、自社の従業員の特徴を前もって理解することが求められます。冒頭でご紹介したPwCにおける従業員の幸福度調査では、幸福度や幸せの4因子に加えて心理特性や性格を分析した結果、日本の平均像と比較して特徴的と言える発見があっただけでなく、「チャレンジ精神旺盛な人材」「安定感抜群にやり抜く人材」などの8つのクラスターに分解することで、より詳細な特徴を見て取ることができました。

イノベーティブ人材化への意識改革を促す「インターナルブランディング」

カネ(キャピタル)からヒト(タレント)へと、経済全体の主体がシフトする中、人に基軸を置いた経営が、企業にはこれまで以上に求められています。そうした中にあっては人材がますます競争優位性と紐付くことになり、イノベーティブ人材の獲得・育成という変革が企業にとってますます重要なアジェンダとなることは明らかです。そこで大きな役割を果たすのが、社会・顧客が企業に持つイメージ、いわゆる企業ブランドです。「イノベーティブ人材が生きる企業」というイメージが確立されることで、イノベーティブ人材が自ずとその企業に関心を持ち、企業も獲得がしやすくなると考えられるためです。

一方で、既存人材をイノベーティブ人材へと変革することに際しては、環境・仕組みを再設計した後、変革の必要性を従業員が認識し、企業の変革を自ら担っていくというマインドを醸成することが必須となります。そうした従業員のマインドセット変革の肝となるのが、インターナルブランディングによるチェンジカルチャーです。

そもそも、企業ブランドを確立するにあたっては、まずブランドの核となるブランドバリュー、コンセプトを定義することが最初のステップとなります。企業が目指すブランドは、企業が獲得・育成を目指す人材像の素地にもなるものです。自社の強みや経営理念、トップの思い、企業文化・風土、歴史・背景など、各企業が持つストーリーを昇華し、ブランドバリューやコンセプトを形作ることが重要です。

ブランドの核が定まった後は、それをいかに社内に浸透させ、従業員の理解を促して巻き込んでいくかが重要となります。インターナルブランディングでは、ブランドを体現していく従業員のマインドチェンジを促し、それによって企業全体のチェンジカルチャーをドライブしていくことが必要です。最終的に従業員がブランドを理解し、それがサービスなどの形で対外的に発信されることで、ブランドが確立されていくのです。

インターナルブランディングの手法としては、例えばウェブサイトや社内報、ポスターなどのPRツールを活用したブランド周知や理解の醸成、VI(Visual Identity)ツール開発によるブランドのトーン&マナー浸透などが挙げられます。ブランドを可視化したツールを活用することで、ブランドへの一律の理解を醸成し、組織の末端にまで浸透させていくのです。

ここで、人材が肝となるプロフェッショナルサービス業界を例に、インターナルブランディングの取り組みを紹介します。PwCグローバルネットワークは、時代の変容に合わせ、自社が提供できる価値を経営ビジョンとして定義し、その価値提供のために求められる人材像を明確に発信することを心掛けています。「The New Equation」を新たな経営ビジョンとし、クライアントが今後直面する可能性がある2つのニーズに焦点を当てています。1つ目が、持続的な成長の礎となる信頼の構築を表す「Trust」、2つ目が、顧客やステークホルダーからの期待やリスクが高まる中でも持続的な成果を生み出し続けていく「Sustained Outcomes」の実現です。そして、クライアントやステークホルダーの『Trust』と『Sustained Outcomes』を、優秀な人材と革新的なテクノロジーの融合によって実現していくとのメッセージを、背景の思想・ストーリーと共にリーダーズメッセージといった形で積極的に社内外に発信しています。特にグループ内に向けた施策としては、コミュニケーションプラットフォームとして「The New Equation」のインターナルサイトを開設し、対外的なメッセージをグループ内向けに変換したり、一人ひとりに求められることにスポットを当てたりしたリーダーメッセージを発信しています。また、経営ビジョンに関するブランドガイドラインやFAQを作成して同サイトに集約して、そうした情報を体現した新規コンテンツを継続的に発信すること(マテリアルの可視化)によって、自分たちは複雑かつ重要な課題を解決するための集合体であるとの意識の浸透と変革を図っています。

インターナルブランディングによるチェンジマネジメントは、人材変革の達成における肝となります。既存人材を変革することで組織そのものが変革し、新たなイノベーティブ人材を獲得できる素地となる、というサイクルが構築されるのです。時代が激しく変容し、今までの価値観すらも揺らぐこの時代において、そこに生きる私たちにも、今までとは違ったケイパビリティ、素養が求められています。イノベーティブ人材は急速に変容する環境の中で、企業、そしてその先にある社会においても価値を創出し続けることができる新たな人材像と筆者は考えています。その育成・獲得に向け、学術機関、そして企業にも今こそイノベーションが求められるのではないでしょうか。

*1:山口 周, 2019. 『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』(ダイヤモンド社)

執筆者

髙木 健一

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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「幸福」や「ウェルビーイング(Well-being)」が世界的アジェンダになりつつある現在、企業は顧客をはじめとするステークホルダーと、「幸せ」を起点とした長期的かつサステナブルな関係性構築を求められています。

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