2018年度コンプライアンス調査のご紹介

2018-09-21

2018年度の「第7回コンプライアンス調査」では、コンプライアンスにおけるテクノロジーの活用をテーマとしています。当報告書の内容と日本企業への示唆を紹介します。

本報告書は、世界各国のリスクおよびコンプライアンス担当役員825名を対象に行った「第7回コンプライアンス調査」の結果をまとめたものです。今回の調査では、コンプライアンスの有効性を高めるために、テクノロジーをどのように活用したらよいかについて考察しています。

ソーシャルメディアによる悪評の拡散、規制当局や第三者機関におけるテクノロジーの活用、内部告発や活動家による監視の強化など、テクノロジーの普及により企業の評判を大きく傷つける事例も増しています。また、品質問題やコンダクトリスクが多発する中で従来のコントロールが必ずしも有効でない状況も多く見られます。このような中、コンプライアンス部門は、これまで以上にリスクがどこにあるのかを動的に見極め、より迅速で効果的なコンプライアンスプログラムへと進化させることが求められています。

有効なコンプライアンスプログラムを持つ企業の取り組みから共通して見えてくるのは、テクノロジーによるメリットをより多く引き出しているということです。このような企業では、「リアルタイムなモニタリングを実施し、方針・行動規範・手続きを最新に保つ仕組み」や「従業員の関心を引くような最新の動向に焦点を当てたコンプライアンス研修」などにデータやテクノロジーを活用しています。

また、先進的なコンプライアンスプログラムを持つ企業は、強力なリスクカルチャーを持ち、3つのディフェンスラインが有効なリスク管理に寄与していることが、今回の調査で明らかとなりました。これは経営者が単なる法令などの遵守にとどまらず、企業倫理とリスクカルチャーにコミットし、コンプライアンス、戦略、その他のリスク管理機能を統合的に捉え、ガバナンスとして整備することで成し遂げられるものです。さらに有効なコンプライアンスプログラムを構築するためには、ビジネス、テクノロジーを理解する人材も必要です。グローバル展開の進む日本企業は、このような経営基盤としてのコンプライアンス強化を図る必要性が増しています。

加藤 美保子

PwCあらた有限責任監査法人 シニアアソシエイト

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