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2020-10-21
ビジネスとサステナビリティの関係についての考え方は日々進化しています。優れたESG(環境、社会、ガバナンス)パフォーマンスが財務パフォーマンスを向上させるとの理解が広まり、多くの企業はサステナビリティへのアプローチを従来のCSR(企業の社会的責任)から進化させ、戦略的にサステナビリティをビジネスモデルに統合するようになっています。ESGを考慮することは企業コミュニケーションやリスク軽減の観点からの対応ではなく、イノベーションと価値創造を追求するためのアプローチへと進化しています。このアプローチは同時に、よりサステナブルなビジネスモデルへの進化に貢献しますが、この進化は地理、産業、個別企業において、意識と行動に著しい相違があることから、一様に起こっているわけではありません。
欧州企業の日本法人とESGについて議論する際、欧州企業と日本企業の間にESGの認識と行動に関するギャップがあることが繰り返し話題となります。一般的に、欧州企業と比較して、日本企業のESGの統合は遅れていると考えられています。日本で事業を展開する欧州企業にとって、こうしたギャップがある中、本社の目的に沿ったESGイニシアチブをいかに日本で実践するかは、重要な課題です。これは、シニアエグゼクティブだけの課題ではなく、サステナブルファイナンスに関するEUタクソノミー確立に向けた欧州委員会の動きにも示されているように、資金調達プロセスと意思決定においてコーポレートファイナンス部門が重要な役割を担っています。
【EUタクソノミー】
EUタクソノミーとは*1、ファイナンスがサステナビリティに貢献するものかどうかを規定する分類基準で、投資家、企業、債券発行体、プロジェクト推進者が低炭素で回復力のある資源効率の高い経済への移行を進めるにあたって手助けとなるツールです。EUタクソノミーは、サステナブルファイナンスにおける最も重要な進展のひとつであり、EU内外で働く投資家や発行体にとって幅広い意味を持ちます。
そして、リーディング企業はESGの責任の所在をコーポレートファイナンス部門に移行するようになってきていますが、その理由はなぜでしょうか。欧州企業にとって、サステナブルファイナンスを促進する欧州委員会の目標は、例えば、サステナブルな投資に資本の流れを向かわせることを通じ、ESGと金融の明確なつながりを確立するものです。EUタクソノミーは非EU企業を拘束するものではないが、欧州企業の海外子会社がローカル市場で本社のESG目標を達成しようと対応することで、金融セクターにおいてサステナブルな新しい金融商品が発行され、結果として世界中への波及効果が期待されています。
金融の観点からは、ESGパフォーマンスが資本コストに与える影響をCFO(最高財務責任者)が認識して、コーポレートファイナンス機能にESGを組み込んでいることを示す多くの証拠があります。MSCIワールドインデックスにおける資本コストとESGスコアに関する最近の分析では、ESGスコアが最も高い企業の平均資本コストが6.16%であるのに対し、ESGスコアが最も低い企業の平均資本コストは6.55%と報告されています。また、MSCIエマージングマーケットインデックスの分析では、より大きな資本コストのギャップが報告されています。*2
金融サービス市場の変化、とりわけサステナブル金融商品に対する需給の変化は、この変化にさらに拍車をかけています。需要の原動力の一例として気候ファイナンスを取り上げると、欧州委員会は、欧州レベルでの気候適応のため2021年から2030年までの間に、年間1,800億ユーロの追加投資が必要であると見積もっています。*3これに対して金融セクターはすでに需要の変化に対応しており、例えば国際資本市場協会(ICMA)*4は、グリーンボンド原則とサステナブルボンドガイドラインを含む、サステナブルファイナンスに関連する原則とフレームワークを確立しています。また、いくつかの日本の大手銀行は、サステナブルな金融商品を市場に投入することを目的としたビジネスユニットを設立しています。これらの銀行は、サステナブルな金融融資の目標を達成することにコミットしています。
従来は保守的と考えられてきた日本の大手銀行によるサステナブル金融商品の市場への導入の動きは、サステナブルファイナンスが将来的に注目すべきものではなく、今日のビジネスに関連していることを明確に示しています。日本において、コーポレートファイナンス部門においてESGの認識と専門知識が十分に確立されていない場合、この動きにどう対応するかが課題となります。
コーポレートファイナンス部門が果たす機能は、従来は主に財務実績の管理でした。しかし、現在の役割はそこから大幅に拡大・進化しています。最近のPwC調査では、企業のPurpose(存在意義)に対するパフォーマンスを評価するためのデータ分析において、コーポレートファイナンス部門がますます重要なパートナーになると結論付けています。現在起こっている変化は、従来のコーポレートファイナンスチームになかった機能を求めており、ESGをコーポレート機能に統合することは、下表が示すようにコーポレートファイナンスチームの多様な階層に影響をもたらします。サステナブルファイナンス、統合報告、ESG基準設定などのESGの取り組み課題に対し効果的に対応するには、ビジネスオペレーションに関連するESG課題においてコーポレートファイナンスチームのスキルアップが求められます。
ポジション |
コーポレートファイナンスチームにおけるESG責任 |
CFO |
利益パフォーマンスの改善とサステナブルなビジネスモデルの実現に貢献するESG関連戦略を作成し、CEOと取締役会に提示する |
ファイナンシャルプランナー |
ESG要素を戦略的計画・投資に統合し、企業報告のダッシュボードにESG KPIを組み込むよう支援する |
コントローラー |
ESGのKPIとリスクを財務報告書に統合し、ESG報告プロセスを簡素化する |
財務部長 |
サステナブルファイナンスの事業投資戦略への統合に責任を持つ |
コーポレートファイナンスプロセスの革新は、「既存の財務プロセスは進化するESGの環境に適合しているか」という問いに向き合うことで進んでいます。多くの場合、ESGイニシアチブは、他の投資機会に比べる、期待収益率を達成するためにより多くの時間を必要とするという点が課題となっています。一部の企業では、ESGの投資機会を増やすため、企業のサステナブルファイナンスの展開に指針を与えるポリシーとフレームワークを構築しています。他のケースでは、「グリーンCAPEX」イニシアチブを資本支出予算編成プロセスに実装することで、ESG関連投資に対する内部収益率(IRR)の要件を定義し、ESG投資機会を確保するための専用の資金プログラムを設定しています。
企業がESGの目標を達成しようとするとするにつれ、ESGをコーポレートファイナンス部門に統合する動きが高まると予想されます。コーポレートファイナンスチームの役割は、価値創造プロセスをサポートし、サステナブルなビジネスモデルを実現する上で中心的な役割を果たすことにあります。環境が刻々と変化する現代において、政府主導の基準と規制に従って受け身で対応コーポレートファイナンスチームより、新しい機会に対して自発的に対応する先見の明のあるチームの方がより多くの利益を得ることができるのです。
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