再生可能エネルギー市場の将来を読むためのポイント(後編)

2018-12-05

サステナビリティ・コンサルタントコラム


本コラムでは、企業のサステナビリティ戦略を検討する上で重要度が増している再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)市場の将来について解説します。「再生可能エネルギー市場の将来を読むためのポイント(前編)」では、グローバルおよび国内の再エネ市場に関して、短期(~2020年頃)目線でのポイントを示しました。後編では、中長期(~2030年頃およびそれ以降)目線でのポイントを示します。

グローバル/中長期(~2030年頃およびそれ以降)

国際エネルギー機関(IEA)が発行するETP(Energy Technology Perspective)の2017年版では、再エネの将来見通しに関して、以下のように述べられています。

  • 2DS(2℃シナリオ)シナリオでは2060年までに、B2DS(2℃未満シナリオ)では2050年までに世界の発電は脱炭素化される(正味のCO2排出量がゼロとなる)。
  • 再エネがそのバックボーンであり、電力ミックスにおける再エネのシェアは、2014年の23%から2030年にはその倍程度、2060年には70%以上(2DSでは72%、B2DSでは74%)となる。
  • 陸上風力と太陽光発電が今後の再エネ導入促進をけん引し、2DS目標を達成する軌道に乗っている。

パリ協定(2015年)では、世界の平均気温上昇を2℃未満に抑えることが国際的に合意されたことからも、ETPが示すような再エネの拡大は、ほぼ間違いなく加速していくでしょう。

これからの再エネの拡大を捉える上で、以下2つの潮流を押さえることが重要と考えます。

(1)デジタル化(IoT、AI、ブロックチェーンなど):再エネは、発電量が天候など自然環境の影響を受けることから、発電量と電力需要の予測ができれば電力システム全体の経済性が高まります。また、発電設備ごとの発電電力量の計測・証明ができれば、P2P(Peer to Peer)での再エネ電力取引や、再エネ証書など環境価値の取引が行いやすくなり、そのような市場も活性化するかもしれません。デジタル化は再エネビジネスと高い親和性があり、ビジネスモデル構築上で不可欠なものとなるでしょう。

(2)SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標):SDGsとは、2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2030年までの国際目標です。SDGsは17の目標と169のターゲットで構成されます。再エネ拡大は、SDG7「すべての人に対する安価で信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセス確保」やSDGs13「気候変動対策」の達成に資するだけでなく、SDGs8「雇用と経済成長」、SDGs11「持続可能な都市開発」など幾つかの目標達成にも寄与します。複合的な社会課題の解決につながるような再エネビジネスの枠組み構築することで、そこから生み出される価値も多面的なものになるでしょう。

上記(1)、(2)を踏まえて、電気事業者としてのプレーヤーも大きく変わっていく可能性もあります。

まず、(1)の観点では、デジタルテクノロジー企業が電気事業者として台頭する可能性があります。これらの企業の中には、既に自社データセンターの電力を賄うための大規模再エネ発電プラントを稼働させ、自社のエネルギー調達をほぼ再エネ化している企業もあります。また、当該プラントからの余剰電力を他社に販売するために電気事業者資格を取得するような動き方もあります。これらの企業は、デジタルテクノロジーをフルに活用して、(従来の電気事業者よりも)高い経済性を有する再エネビジネスを構築できる可能性があります。

また、(2)の観点では、自治体などの公的機関が主要プレーヤーとなる可能性があります。例えば、ドイツには「シュタットベルゲ」と呼ばれる電力(主に再エネ)、ガスなどのエネルギー供給と水道や公共交通などの公共サービスを総合的に運営する公社が複数存在します。シュタットベルゲは、事業収益性の高い事業(エネルギー供給)で得た利益を、収益性の低い事業の運営に充てることで、公共サービス全体の質を担保するといったことが可能となります。公共サービスが維持されることで、当該地域の都市機能の持続可能性に資するとともに、地域に雇用も生み出されれば、まさにSDGsの複数目標の達成につながるものとなります。

上記(1)は再エネの「価格競争力」を追求していく動きであり、(2)は再エネの「社会的意義」を高めていく動きです。これらは排他的なものではないので、相互に作用しあいながら再エネビジネス拡大の原動力となっていくことでしょう。電力需要家も、目的に応じて再エネの「質」を選択していく時代がやってきます。

市場拡大の裏側で

再エネ市場の今後の拡大は間違いありません。また、従来の再エネビジネスから進化したさまざまなビジネスモデルが登場し、電力需要家も目的にあわせてサービスを選択していくことになるでしょう。

ただし、クリーンなイメージがある一方で、再エネであるからといって常に最善・最適である訳ではありません。設備導入時の環境アセスメントがなされても、運用時の事故発生時の対応や、設備廃棄などが適切に行われなければ、周辺環境へ悪影響を与えかねません。再エネはエネルギー密度が低く、大きな設備・設置面積が必要となるため、適切な運用がなされているか、管理が難しい面があります。自然災害の影響も受けやすいでしょう。また再エネビジネスは、電気そのものだけでなく「環境価値」の移譲がセットとなります。環境価値の評価・管理方法(デジタルシステムを含む)が不十分な場合も起こり得るかもしれません。

信頼が揺らげば、再エネビジネスの拡大を阻害する要因となります。新規のサービスや新規のプレーヤーが増えていくほど、そのようなリスクも増していくでしょう。再エネサービスの内容だけでなく、その背景にあるビジネスモデルの信頼性をいかに担保していくかが、再エネが最善・最適なエネルギー源として拡大していくためには不可欠と言えます。

執筆者

横田 智広

マネージャー, PwCあらた有限責任監査法人

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※ 法人名、役職、コラムの内容などは掲載当時のものです。

※ 2018年11月16日公開のコラム、「再生可能エネルギー市場の将来を読むためのポイント(前編)」は、こちらからご覧いただけます。

 

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