ドローン活用の事業構想・オペレーション設計のカギ

2021-10-26

ドローンの活用による業務オペレーション変革

作業効率や安全性の向上を実現させるドローンの活用に向けては、ドローンを使用しない現行の業務プロセスを大きく見直す必要が生じます。業務プロセスの見直しにあたっては、まず現行の業務プロセスの中でドローンが代替すべきプロセスを特定し、そこにドローンの活用プロセスを当て込んだ業務オペレーションを設計することになります。その際には、以下のチェックポイントを確認しながら、ドローンを活用した新たな業務オペレーションを完遂できるかを見極めることが重要です。オペレーション設計を、飛行前(PoC実施準備)、飛行中(PoCまたはサービス中)、飛行後(撤収後・次回の準備)のそれぞれのフェーズで行うことで、ドローン活用オペレーションを実装する際の実現性を担保しつつ、必要となるリソースの見積りが可能となります。

飛行前 (PoC実施準備)
飛行前 (PoC実施準備)
  • ドローン飛行に係る申請要否確認と申請手順の整理
  • 該当場所での飛行に際してオペレーションを実施するにあたり、航空法などの規制の確認
  • パイロットや補助員などの人的リソースの確認(自社のリソースでどこまでのオペレーションをカバー可能か、外部への委託が必要か)
  • 該当場所での飛行計画策定、関係者との調整や情報共有
    など
飛行中 (PoCまたはサービス中)
飛行中 (PoCまたはサービス中)
  • 関係者(提供先自治体や住民など)との綿密なコミュニケーションの実施
  • 飛行スケジュールなどオペレーションの確認や再調整
  • 必要となるツール・システムの稼働確認
    など
飛行後 (撤収後・次回の準備)
飛行後 (撤収後・次回の準備)
  • 次回PoCでも活用可能なノウハウの取り纏めやスキームの見直し

  • 機体の耐久性確認、メンテナンスの実行
    など

採算性確保のポイント

ドローンを活用した業務オペレーションを実際に設計することで、実装に向けた課題が明確になってきます。物流のように、将来的にドローンの活用が本格化すると見込まれている領域においては、監視要員の人件費など、オペレーションに関わるコストによる採算性の課題が顕在化します。このようなケースでは特にオペレーション設計の結果をフローとして可視化することで、コストを圧迫する要因を特定し、個々の対応策の導出と優先付けを行うことが必要です。

採算性の確保に向けては、安全性を毀損しない範囲で、オペレーション要員の稼働率やオペレーションスコープの最大化を意識し、最適なオペレーションを模索することがカギとなります。特にPoCにおいては、ドローンの活用範囲も自ずと限定的となるため、PoCと同等範囲のスモールスタート、クイックウィンのオペレーションに固執してしまうと、採算性確保の手立てが見えなくなる恐れがあるので注意が必要です。

さらに、オペレーション最適化によるコスト削減だけでなく、ドローンの活用ニーズに対して、継続的な価値提供の可否を判断することも重要です。事前のユーザーヒアリングやPoCを通じて、ユーザーニーズと価値提供の関係性を明らかにしておくことも必要です。

オペレーションスコープ の最大化

オペレーション要員の稼働率

  • 専任の要員を確保する必要があるレベルの業務量の確保が困難な場合、パートタイム要員の割り当てを検討する
オペレーションスコープ の最大化

オペレーションスコープの最大化

  • 飛行するドローンの最大ペイロードに合わせた取り扱い業務量の設定、複数の航路でサービスを同時に展開するなど
ニーズに対する 継続的な価値提供

ニーズに対する継続的な価値提供

  • 自治体や住民、活用を検討する事業会社にとって長期的に見ても有益なものか判定する
  • 導入サービスにより利用者にとってどのような価値(利便性など)が創出されるか見通しを立てる

ドローンの活用を実現するには、「採算性」と「活用により創出される価値」の両面からゴールを設定することが求められ、またPoC以降の取り組みを推進するには、達成に向けた道筋を立てることが極めて重要となります。採算性などの課題に対応したドローン活用のオペレーションを設計し、それに基づく収支シミュレーション、リソース確保などの計画を策定することで、PoCから次の段階に進めないという、いわゆる「PoC貧乏」な状況から脱却することができます。ドローンの活用に向けては、採算性の確保と活用による価値創出の観点から、ゴールと達成までのステップがしっかり整理されているか、あらためて確認することが重要と考えます。

執筆者

佐々木 智広
シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

西村 剛
シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

※法人名、役職などは掲載当時のものです。


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