ブロックチェーンを活用した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策ソリューションと戦略【後編】

1.健康証明プラットフォームアーキテクチャ構想

中編ではPwCが考える「安全・安心な情報を共有できる」世界観と、健康証明を活用したリスク管理やビジネスへの応用方法を紹介しました。

話を現実に戻すと、健康証明のプラットフォームは、既に国内外で政府や企業により提供されています。PwCコンサルティングもその一つです。緊急事態宣言直後から、従業員の安全と健康の確保および感染防止を最優先とした出社対応方針を打ち出すと共に出社管理システムを導入し、全従業員の日々の出社予定を管理していますが、この仕組みを拡張する形で、従業員の健康情報とブロックチェーンを活用したMinimum Viable Product(MVP)を開発し、一部で実証実験を進めています。これは、オフィスに出社予定の従業員が出社管理システム上で「出社予定あり」と申告すると、各々の健康情報を蓄積したデータベース(MVP)で従業員の状態を突合し(健康情報が登録されていない場合は登録を依頼)、出社の可否を判断します。そして出社当日、従業員から出社管理システムに提出された体温をもとに健康情報データベースが出社の安全性を再度確認し、通知するという仕組みです。

ただ前編で紹介した通り、こうした開発は各国独自で進められる傾向が強く群雄割拠の様相を呈しているため、今後、各国で登録された健康証明を入国手続きで使用したり、海外の健康証明を国内施設で利用したりするには、乱立した健康証明を相互利用するための標準方式を定める必要があります。そして、個人情報を除いた健康証明の発行記録を、第三者の信用を必要としないブロックチェーン基盤に載せることで、一定の信頼性を担保し、国をまたがった利用が可能になるのです。この基盤をベースに各国・各事業者が創意工夫をすることで、さらなる利便性向上が図れると考えます。

このように多方面にわたるステークホルダーが関わる中でブロックチェーン基盤を構築する場合、コンソーシアムの形成が最も効果的な手段です。今回のユースケースでは、利益享受者は世界中の人々、主要な参加者は国、運輸・輸送企業、人が集まる大型施設、医療機関などが想定されます。コンソーシアムの各参加者が、各自の領域で作成した管理データを共通プラットフォームに載せ、さらに他国データも取り込むことで、データ連携効果を最大化することができると考えられます。

主要メンバー

丸山 智浩

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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小川 博美

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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