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2021-06-21
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響を受けて、税制および国税当局の執行の在り方も大きく変わろうとしています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を含め、税務環境の変化は納税者にどのような影響を及ぼすのでしょうか。また、アフターコロナの社会における税務行政への対応にあたり、企業側にはどのような備えが必要になるのでしょうか。こうした状況に対し、PwC税理士法人において、長年、移転価格税制に関連する企業課題の解決に取り組んできた移転価格グループのプロフェッショナル3名が、税務を通じた社会貢献を切り口に、移転価格税制の最新動向について考察します。
本鼎談のパート1では、2021年1月に国税庁が公表した「アフターコロナにおける税務行政の在り方に関する一考察」をベースに、PwC税理士法人の国際税務サービスグループのメンバーが税務を通じた社会貢献を切り口に意見交換しました。パート2では、前編に続き移転価格税制の重要課題の一つである相互協議をテーマに、その適切な対応方法について議論を深めていきます。
PwC税理士法人 国際税務サービスグループ(移転価格)
パートナー 黒川 兼
ディレクター 城地 徳政
ディレクター 藤澤 徹
(左から)黒川、城地、藤澤
黒川:
アジア諸国との相互協議における納税者の大きな関心事は、経済協力開発機構(OECD)加盟国には無い、固有のポリシーに基づく主張と、還付・減額調整に係る問題ではないでしょうか。
城地:
アジア諸国との協議、特に中国との協議を困難としている要因の一つとして、各国・地域固有のポリシーの存在があります。具体的には、ロケーションセービンやマーケットプレミアムといった固有の主張により、協議が平行線をたどったという事例があります。
特に中国においては、国家税務総局( STA:State Taxation Administration)の地方税務当局に対する独立性・権限の問題が存在しており、SATが相互協議の合意権限を有しているのか疑問です。納税後、地方税務当局の国庫に納められると、減額調整・還付は実質的にはなされないという問題があります。
黒川:
私自身、PwC中国への2度の出向経験を有していることから、中央政府と地方政府との関係性は熟知しています。
藤澤:
私の経験では、中央政府と地方政府とのそうした関係性は、OECD加盟国にもあると言えます。そうした関係性の背景が原因かどうかはわかりませんが、合意が難しい国のひとつとなっている印象を持っています。
PwC税理士法人 ディレクター 城地 徳政
PwC税理士法人 ディレクター 藤澤 徹
黒川:
アジア諸国におけるもう一つの課題として、 移転価格事前確認(APA)申請にあたっての正式受理に係る問題が挙げられます。この問題について、お聞かせください。
城地:
これまで言及した論点以外にも、アジア諸国との円滑かつ効率的な協議の進展を阻害する要因がいくつか存在します。その一つは、正式申請の前に、実質的な申請内容の分析・評価が行われるという点です。このため、分析・評価プロセスをクリアするために長期間を要する事案が散見され、相手国側での申請受理の遅滞が問題になっています。
黒川:
そのような事情を背景として、国税庁では事務運営指針を改正しました。二国間事前確認(BAPA)について、日本側の申出の提出期限の翌日から3年を経過しても相手国において申出が収受されない、または収受される見込みがない場合には、申出の取下げまたはユニラテラルAPAへの変更を勧めるという、いわゆる「3年ルール」が導入されましたね。
城地:
今後、この「3年ルール」に該当するケースが出てくるのではないかと考えられます。該当したからといって取り下げると、日本側での調査開始、さらには更正処分が予想されます。そもそも、APAそのものについて、相手国での受け入れが難しい状況の中、ましてや課税処分の相互協議の受け入れは、さらに困難なものといえます。
藤澤:
国内訴訟を前提とした対応になるのかもしれませんが、可能であれば、相手の国・地域の主張を相当加味した、ユニラテラルAPAの可能性もあり得るのではないでしょうか。バイラテラルAPAであれば、相手の主張も取り入れて合意を得られたとして、完全に二重課税排除とまではいかなくても、国内訴訟を選ばずに、部分合意を選択する納税者もいるのではないかと思います。
黒川:
OECD加盟国とアジア諸国とで、このような差が出てくるのは、いわゆる、「イコールフッティングの問題」があるからでしょうか。
城地:
アジア諸国との協議においては、投資国である日本と、その投資先であるアジア諸国、すなわち所得の源泉地国との課税権の対立があります。諸国との協議の場合は、特に中国のように巨大市場を有するケースにおいては、所得の源泉地国の立場としての源泉地国課税権の優先確保の姿勢が顕著です。また、投資のベクトルが日本から中国へ一方的または片務的であるため、イコールフッティングの協議ができる環境が整っていないというのが実情です。
黒川:
確かに、これが 米国あるいは欧州の先進国との協議の場合、投資のベクトルが双方向になります。協議対象の事案も、日系企業・外資系企業を問わず、同じ投資国の立場として、企業の投資・貿易を促進させるための国際協調としての二重課税排除を優先すべき、という共通認識が醸成されているということですね。
藤澤:
当局側には、欧州の先進国の協議とは異なる環境下の場合は、納税者に対してより柔軟な対応を期待したいと思います。先ほど少し述べたとおり、ユニラテラルAPAの場合でも、バイラテラルAPAで想定される議論を取り込むことはできるのではないでしょうか。一貫性のあるポリシーは、納税者に対し透明性を高めるという観点からも、国としての租税収入の確保という観点からも重要です。一方で、特に課税処分後の後続年度の申告を見据えた際に、予測可能性の確保のために、私たちにはどのような社会貢献ができるのか、ということを考えていくことも大切です。
黒川:
最後に、相互協議の分野において、私たちPwC税理士法人が社会に貢献できることは何か、そのアプローチを考えていく上で、総括をお願いします。
城地:
相互協議・紛争解決を困難にしている要素については、各国固有の執行やポリシーに係る主張など、さまざまな要因があります。相互協議を実効性のあるものにするためには、やはり、グローバルな共通ルールに基づいた議論が行われることが不可欠です。相互協議は二重課税を排除するための条約上の枠組みであると同時に、国家主権である課税権の対立や配分という側面をも有しています。よって、実効性ある紛争解決を阻害する要因を取り除くためには、多国間の国際的な枠組みにおいて各国がコミットし、合意事項を確実に実施していくことが重要であると考えます。
黒川:
ありがとうございます。今回、移転価格の中でも、最後の関門といわれる相互協議の課題を取り上げ、税務を通じた社会貢献という切り口で対談を行いました。このテーマはOECD公表レポートでも注目されている分野です。PwC税理士法人はクライアントの税務業務に役立つ情報として活用いただけるよう、今後とも引き続きさまざまな課題に対して検討を重ねて、有益な情報の発信を行っていきます。
PwC税理士法人 パートナー 黒川 兼
国税庁、東京国税局での30年間の勤務経験を持つ国際課税の専門家。2014年2月にPwC税理士法人の東京事務所に入社。東京国税局では、15年以上にわたって大企業、多国籍企業の移転価格調査の企画・実施、事前確認審査を担当。国際情報第一課の上席国際専門官として、移転価格調査事案のすべての管理および他国税局の移転価格調査事案のサポートを担当。国税庁での3年間の相互協議経験も有し(米国、オーストラリア、インド、スイスなど)、国税庁調査課国際係長3年間の在任中には、OECD租税委員会第6作業部会のメンバーとして、PE帰属所得ルールであるOECD承認アプローチ(AOA)のドラフトづくりにも関与。OECD会議、タイ駐在、相互協議、タイ・インドネシア・中国および発展途上国への知的支援を通じ、各国の国際課税担当者とは真摯に深い信頼関係を構築。
※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時のものです。
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