{{item.title}}
{{item.text}}
{{item.text}}
2021-06-07
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響を受けて、税制および国税当局の執行の在り方も大きく変わろうとしています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を含め、税務環境の変化は納税者にどのような影響を及ぼすのでしょうか。また、アフターコロナの社会における税務行政への対応にあたり、企業側にはどのような備えが必要になるのでしょうか。こうした状況に対し、PwC税理士法人において、長年、移転価格税制に関連する企業課題の解決に取り組んできた移転価格グループのプロフェッショナル3名が、税務を通じた社会貢献を切り口に、移転価格税制の最新動向について考察します。
本鼎談記事は、パート1、パート2それぞれ前後編からなる全4回のシリーズで構成しています。パート1では前編に続き移転価格税務執行状況およびPwC税理士法人における取り組み、パート2では相互協議を巡る最新の動向を取り上げます。相互協議対応は、移転価格税制に係る企業の課題の中でも重要視される項目の一つであり、コロナ禍での対応にあたって変化が大きいとされる領域です。
PwC税理士法人 国際税務サービスグループ(移転価格)
パートナー 黒川 兼
ディレクター 城地 徳政
ディレクター 藤澤 徹
(左から)黒川、城地、藤澤
黒川:
税務調査体制の側面から、状況をお聞かせください。
藤澤:
一般調査では、何か不審な点がある場合、当局による現物確認調査が行われます。例えば、現金商売の小売店の調査では、現金出納帳の記載や売上金の管理方法に不審な点がある場合、機動的に、その時点での実際の現金残と現金出納帳に記載の残高が一致しているか確認します。不一致がある場合、売上除外といった不正計算につながる可能性があることから、重要な調査手法の一つとなっています。移転価格調査では、こういった機動的な調査展開ではなく、ローカルファイルの分析に基づいて資料の提出が依頼されます。また、質問状が出され、その回答を文書で提出したり、説明を受けたりという展開が中心です。
黒川:
私も、クライアントの移転価格調査に立ち会った経験を長年有します。事実関係の確認のみならず、意見交換の際に対面式で行うこともありましたが、資料や意見書といった書面を双方向でやり取りする形式にも注力してきたかと思います。よって、移転価格調査においては、アフターコロナでの対応にもスムーズに適応しやすい側面があるのではないかと感じています。
城地:
確かに移転価格調査には、一般調査のように、例えば午前10時に納税者を訪問してから同日夕方まで、会議室で対面調査を行うようなケースはあまりありません。週1、2回のペースで、所要時間としては1~2時間程度臨場するケースが多いのではないのでしょうか。どちらかといえば、書面のやり取り中心に進展していきます。そのヒアリング内容についても、一般調査に比べ、当局側・納税者側のどちらも、しっかりと議事録を作成していることが多い印象です。
藤澤:
はい、そのとおりです。事前確認審査でも同じです。特に最近の調査では、納税者が作成したローカルファイル(独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類)をもとに、調査官が資料提出依頼書や質問依頼書を作成し、調査を進めていきます。場合によっては、調査初日の臨場前に、ローカルファイルを納税者に手渡しして説明することもあります。よって、当局からは依頼書データを事前にEメール送付の上、オンライン会議の場で、当局側からその内容や趣旨について説明し、納税者側からは質問や要望を出すこととすれば、対面の必要がなくなると考えます。これが音声だけの電話会議の場合、多くの方が経験されている通り、資料のどこを指しているのか相手に伝わらず、円滑なコミュニケーションが難しい場合があり得ます。
黒川:
情報のやり取りに関して、Eメールでの誤送信を避けるためにも、クラウドベースの共有フォルダを使ったデータのやり取りは実現可能でしょうか。
藤澤:
移転価格調査の場合は、私の経験上、一般調査と比べると格段に収集する情報量が多いかと思います。また、比較対象企業の選定にあたっては、データベースの情報だけではなく、市販の企業情報や比較対象候補企業のウェブサイトからも情報収集するため、大容量データが必要となります。従って、Eメールによる送受信には大きな負荷がかかるので、クラウドの共有フォルダを活用して当局とやり取り可能な環境の整備を希望します。
城地:
PwC税理士法人では、「Engagement Center」というウェブベースのプラットフォームを、クライアントとの情報共有に活用しています。クライアント側でも、同様の独自システムを構築している場合があり、それを活用させいただくこともあります。納税者および私たちPwC税理士法人には、そうしたプラットフォーム運用ノウハウが蓄積されつつありますので、ぜひ、当局にもこうした運用が可能となる環境整備に期待したいと思います。
PwC税理士法人 ディレクター 藤澤 徹
PwC税理士法人 パートナー 黒川 兼
黒川:
次に、税務に関するコーポレートガバナンス(CG)のトピックに移ります。移転価格の分野において、当局は「移転価格に関する取組状況確認のためのチェックシート」を活用してきました。納税者自らが移転価格上の税務コンプライアンスの維持・向上に向けた取り組み状況を確認するという観点から、企業の経営層を巻き込むための効果的な施策だと思います。特に、移転価格課税を受けた際に二重課税が解消されないと、企業グループ全体の税負担増へとつながりかねないため、企業の税務担当者だけではなく、経営層のリーダーシップが問われます。
城地:
私も、国税庁の相互協議室勤務時代に企業側から聞く機会があったのですが、やはり、納税者として企業の役員クラスが関与している場合、国外関連者や事業部からの要望への対応も早く、移転価格リスクについて、グループ内の啓発が徹底されているなと感じました。税務調査の場面でも同様でしょうか。
藤澤:
はい。海外展開している企業において、国外事業部や営業担当の移転価格についての理解不足や、国際税務担当との連携不足があると感じられる場合には、税務調査の詳細把握を慎重に行うべきだ、との警告灯が調査官の中で作動するのではないでしょうか。特に、利益水準が国外関連者の機能リスクに見合っていないという点において、慎重にならざるを得ないことが多かったかと思います。
黒川:
経営層の関与を促すという観点からは、国別報告事項(CbCR)を有効に活用した移転価格リスク分析が有用な情報につながるかと思います。例えば、私たちPwC税理士法人ではクライアントに向けて、経営層視点を意識したバルーン分析と呼ぶデータを提供しています。
藤澤:
バルーン分析では、BEPS最終報告書でCbCRの導入が公表された時から、CBCRおよびその詳細情報を活用し、一目で移転価格リスクの所在が把握可能な分析を試みています。CbCRの情報をベースに、国ごとにバルーンを用い、縦軸を売上高、横軸を利益率(売上から税引前利益を除く)として表しています。バルーンの大きさは税引前利益を表します。つまり、グラフ右上にバルーンの位置があるほど、売上も利益率も大きいといえます。さらに、バルーンの大きさが利益の絶対額を表しています。クライアントの経営層の方々からも、分かり易い分析手法との評価をいただいいています。
城地:
これは、一目で移転価格のリスクを想定しやすいですね。日系企業の場合、バルーンの位置が右上にあればあるほど日本側リスク(例:海外への所得移転)、左にあればあるほど現地での課税リスク(例:日本本社による利益吸い上げ)の可能性を懸念して注目されるはずです。
藤澤:
はい。これを法人別に作成し、時系列に並べ、個々のバルーン(国ごとの利益)の動きを追うことで、より一層、動的なリスク評価が可能だと考えます。企業においては、事業年度開始前の予算の段階で、こうしたデータを作成してはいかがでしょうか。予算の段階で、将来どのような移転価格リスクが生じるかを予想することができます。
黒川:
この分析方法は、視覚に訴えやすいことから、クライアントからも好評価を得ています。さらに、この分析方法はデジタル課税(Tier 1、2)への対応が分析可能な「CbCRアナライザー」というPwCグローバル開発の分析ソフトへと進化しています。こうした分析について、AIを活用して実行可能となれば、より一層、クライアントに役立つ情報提供ができるのではないのでしょうか。移転価格リスク発生の可能性が低いうちに、早期対策を講じることができるかと思います。
藤澤:
バルーン分析の背景として、当局が国外関連者の利益水準に着眼し、調査選定や、移転価格の問題の有無を判断してきたことが挙げられます。さらに、取引単位営業利益法(TNMM)での課税を中心に執行してきたことも一因です。TNMM課税は、当局が公表しているデータベースから比較対象企業を選定して、具体的な課税額を算出するものです。比較対象企業の情報は、対象となる各企業が公表したもので、その情報量は膨大です。今後、こうした情報量はますます膨大化が見込まれるため、当局における情報収集、管理、選定、活用のプロセスのデジタル化は必須と言わざるを得ません。
黒川:
PwC税理士法人においては、過去のTNMM分析のノウハウをデジタル化して蓄積しており、こうした環境の変化にも対応しています。データの保管や選定・活用ノウハウも日々進化しつつ有効活用されており、クライアントに品質の高いTNMM分析を提供可能な状態にあるものと自負しています。
城地:
相互協議の交渉の中で、相手国との合意に至るプロセスを考えた時、やはり、比較対象企業の選定は大きな比重を占めるかと思います。一貫した選定方針はもちろん重要ですが、一定の合理性があるのであれば、それを糸口に合意に進めることも一つの選択肢だと思います。そうした解決策は、納税者や私たちPwC税理士法人側からも、当局に積極的に提案していくべきではないでしょうか。また、納税者やPwC税理士法人側におけるDXのノウハウは、まさにベストプラクティスとして、当局の参考になり得るものだと思いますので、私たちからも提言していきたいと考えています。
PwC税理士法人 ディレクター 城地 徳政
国税庁、東京国税局での30年間の勤務経験を持つ国際課税の専門家。2014年2月にPwC税理士法人の東京事務所に入社。東京国税局では、15年以上にわたって大企業、多国籍企業の移転価格調査の企画・実施、事前確認審査を担当。国際情報第一課の上席国際専門官として、移転価格調査事案のすべての管理および他国税局の移転価格調査事案のサポートを担当。国税庁での3年間の相互協議経験も有し(米国、オーストラリア、インド、スイスなど)、国税庁調査課国際係長3年間の在任中には、OECD租税委員会第6作業部会のメンバーとして、PE帰属所得ルールであるOECD承認アプローチ(AOA)のドラフトづくりにも関与。OECD会議、タイ駐在、相互協議、タイ・インドネシア・中国および発展途上国への知的支援を通じ、各国の国際課税担当者とは真摯に深い信頼関係を構築。
※法人名、役職、インタビューの内容などは掲載当時のものです。
{{item.text}}
{{item.text}}
{{item.text}}
{{item.text}}
{{item.text}}
{{item.text}}