新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で変わる監査の現場 分業の推進は人財育成モデルすら変える?

2020-06-12

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大は、仕事のあり方を見直す大きな転機の一つになったのではないでしょうか。今までできていたことも行うのが容易ではなくなり、するのが当たり前と思っていたことに対しても「本当に必要なのか」と自問することが増えたと思います。そして、この問いを繰り返すことで、どの業務が価値を生み出す源泉となるのかが見えてくると感じています。

PwCあらたは、より高品質な監査を効率的に実現するため、品質管理部門のメンバーも交えて監査業務の見直しを監査チームごとに行います。その際、「本当に必要な監査手続か」だけでなく「本当に監査人が行うのが最適か」という視点を落とさないように心がけています。なぜなら、テクニカル・コンピテンシー・センター(TCC)の存在があるからです。

TCCが監査チームから切り出した業務を標準的な方法で集中的に行うことにより、効率的かつ正確に業務を遂行することができます。TCCの存在は、監査人の業務内容を変えるだけでなく、育成モデルにも変化をもたらしています。

TCCの役割と意義

TCCは、業務の標準化を視野に入れて立ち上げた組織です。監査業務は被監査会社ごとにチーム単位で実施されるため、チェックマーク一つとってもチームごとに違うものを使用していました。そのため、TCCではテンプレートやマニュアルを整備し、反復して運用することで業務の標準化を行っています。

2020年5月末時点で、10数名の公認会計士に加え、オーディットアシスタント(AA)約130名とテクニカルスペシャリスト(TS)約60名が、TCCに在籍しています。AAは、公認会計士などの資格を有しない業務補助者です。TSは、主にITスキルを有する技術者であり、テクノロジーを活用したデータ分析や監査業務でのツールの実装などを中心に担当します。AAやTSが実施した業務をTCCに在籍する公認会計士がレビューすることで、成果物の品質を担保できる体制になっています。

TCCが請け負う業務は、監査の受入れ段階から始まり、監査計画の立案、監査の実施、監査報告書の提出まで広く対象にしています。監査チームは、TCCへ依頼する業務をリクエストシステムを通じて事前に連絡し、作業担当者やスケジュールの相談をします。この相談は全てオンラインで行えており、現在のリモートワーク環境下でも業務が途絶えることはありません。このプロセスが入ることで、前倒しできる業務をTCCと連携して早い時期に実施するという意識が監査現場に芽生えるようになりました。

さらに、TCCは、監査手続をほぼ全ての被監査会社で同じやり方で行う勘定科目について担当する専門のスタッフを配置するため、準備を進めています。例えば、現金及び預金や借入金、純資産などの勘定科目です。これらの勘定科目は、長らく1年目の監査人が担当するものとされてきました。

監査人の育成モデルの変化

このような変革は、監査人の育成モデルに変化をもたらしています。この変化とは、数年の監査経験を積んでから担当すると考えられていた勘定科目を1年目の監査人が担当するようになるというだけではありません。監査人は、1年目であっても、業務の進め方を指示し、スケジュール管理やTCCの作業担当者から来る質問に適切に答える必要があります。また、TCCの成果物をレビューし、必要に応じて被監査会社の担当者と議論した上で監査人として判断する力が求められます。

従来の監査人にも同じような力は求められていました。ただ、早い段階で高い水準のことが求められるようになってきたということです。より複雑でリスクの高い領域を早い段階から経験することで、監査人としてのキャリア構築が早期化していくことも十分に考えられます。

監査人が行っていた業務をTCCが行うようになることで、監査人にはよりプロフェッショナルとしての業務遂行が求められる――。COVID-19感染拡大に伴ってリモートワークという新しい働き方が広まった昨今、監査業務の在り方を見直すことを通じて、前述のような時代が早々に来るのではないかと予測しています。監査の全過程を通じて職業的専門家として懐疑心を発揮し、被監査会社と十分なコミュニケーションを取りながら適切な判断をする力が監査人に求められていることに変わりはありません。問題は、その力をいかに伸ばしていくかです。現在の状況は、監査業務の変革のみならず、監査人の育成モデルを変化させる強い引き金になり得ると感じています。

執筆者

久保田 正崇

執行役副代表, PwCあらた有限責任監査法人

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尻引 善博

パートナー, PwCあらた有限責任監査法人

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※ 法人名、役職、コラムの内容などは掲載当時のものです。

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