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本シリーズは、企業の成長促進や収益性向上の中心的手法であるディール(M&A、事業売却など)と海外資本市場への参入(新規上場、国際的な資金調達など)を大きなテーマにしています。CFOをはじめとする企業の経営層が検討すべきトピックを経営戦略と財務報告のそれぞれの側面から概説し、企業の成長のためにヒントとなるような情報をシリーズを通じてお届けします。
今回は「経営戦略トピック」より、企業買収・合併(M&A)について、成功の秘訣やスキーム別のメリット・デメリットなどを解説します。
M&Aの実行に際しては、いくつものステークホルダーと同時に連携しながら、さまざまな検討ポイントをスピーディかつタイムリーに解決していくことが成功の秘訣となります。そのためにはM&Aを「プレディール」「エグゼキューション」「ポストディール」と段階的に捉え、それぞれにあったアプローチを選択することが重要です。
2021年に世界のM&Aの件数と金額はいずれも過去最高となり、それまでの記録を大幅に塗り替えました。2021年に公表されたディール金額は全世界で5兆1,000億米ドルに達し、このうち1兆米ドルをアジア・太平洋圏のディールが占めました。
2021年に成立したディールのうち約40%にプライベート・エクイティ(PE)ファンドが関与しており、その割合は2016年から25%近く上昇しました。
今後もデジタルを活用することで新たなビジネスモデルへの戦略的転換を目指す企業が、M&Aを後押しし続けると予想されますが、同時に、長期的な成長と収益の確保のためにポートフォリオのバランス調整を行い、事業売却に焦点を置く動きも出てきています。
PwC, 2022.「世界のM&A 業界別動向:2022年見通し」
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/dealsinsights/deals-trends2022-outlook.html
M&Aチームは内外の非常に広範な関係者によって構成されます。一般的には、内部リソースとしては経営企画部、財務経理部、法務部、IR部などの関与が必要となります。また外部リソースとしては証券会社、投資銀行、監査法人、弁護士、税理士などの関与が必要となり、フィナンシャルアドバイザー(FA)がプロジェクト全体をリードし、取りまとめの役割を担います。関係者が多岐にわたるため、社内外の連携および情報管理が重要です。以下の図で外部リソースを紹介します。
M&Aにはさまざまな形態・スキームがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。例えば、「株式取得」は法的な手続きが比較的シンプルですが、買収資金を準備する必要があります。他方、「株式移転」や「株式交換」は対価として取得企業の株式を交付するため買収資金は不要ですが、法的な手続きが複雑です。「合併」は対象会社の権利・義務を承継し、取得企業の規模を直接的に拡大する効果がありますが、その分、ディール後の統合作業(PMI)もより直接的に発生します。
プレディール、エグゼキューション、ポストディールの3段階のうち、特にポストディールに会計・財務の検討事項が多く存在しています。
例えば、M&Aで新規取得した企業・事業に関するGAAPコンバージョンを含む会計方針の統一や、取得企業の決算プロセスに組み込むための財務報告プロセスの構築などが必要です。
また、個別の論点として、連結の範囲やのれんの減損の検討が必要となるケースも考えられます。
さらに、新規取得した企業・事業についての監査対応も必要となります。
これらの事項についてディール後に検討を始めると、混乱が生じるだけでなく余分なコストや日常業務の遅延が発生してしまうリスクがあります。あらかじめリソースやスケジュールを調整し、プレディール段階から準備を進めておくことでディールを効率的かつ効果的に完遂することが可能となります。
01 アジア市場の拡大に伴う現地企業の買収増加(IN-OUT)
アジア市場の拡大と国内市場の将来的な縮小を見据え、アジア各国の現地企業を買収するケースが増加しています。
02 カーボンニュートラルへの取り組み(IN-IN & IN-OUT)
高度な環境技術を有する企業を買収するケースが増加傾向にあります。特に、高炉に比べてCO2の排出量が大幅に少ない電炉メーカーや、高炉の水素還元やCCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage)などの高度な環境技術を有する企業の買収は国内外を問わず今後も増加すると考えられます。
03 中国系の製鉄会社の著しい台頭に伴う国内再編の加速(IN-IN)
国内メーカーの国際的な競争力を強化するため、国内メーカー同士の合併などの再編が加速しています。
01 少子高齢化による人材不足に伴う国内再編の加速(IN-IN)
即戦力人材の確保を目的として、2010年代後半より国内メーカー同士のM&Aが増加傾向にあります。
02 コロナ禍における中小事業者の業績悪化(IN-IN & IN-OUT)
コロナ禍で業績が悪化した中小規模の人材派遣企業同士の合併や、大手の人材派遣企業による買収など、今後もM&Aの増加傾向は継続するものと考えられます。
03 欧米企業の買収(IN-OUT)
先進国の人材派遣企業による業績拡大を目的とした買収のほか、ノウハウ獲得を目的とした欧米企業の買収が増加傾向にあります。
01 世界的な脱炭素の流れによる新技術の獲得(IN-IN & IN-OUT)
アジア市場の拡大と国内市場の将来的な縮小を見据え、アジア各国の現地企業を買収するケースが増加しています。国内外の完成品メーカーで従来のガソリン車から電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の開発・販売の促進が加速しています。ガソリン車に比べ、EVやFCVといった新技術の研究開発および生産コストは割高であり、国内外を問わず完成品メーカー同士で資本提携するケースが近年増加傾向にあります。
02 異業種との協業体制の拡大(IN-IN & IN-OUT)
自動車は単なる移動手段ではなく、インターネットに接続し通信可能な「つながる車」へ進化しつつあります。従前は異業種であった大手通信会社などとの資本提携による緩やかな協業体制に加えて、今後は異業種の技術を獲得するためのM&Aが増加すると考えられます。
01 世界的な脱炭素の流れによる新分野への投資(IN-OUT)
世界的な脱炭素の流れを受け、石油や化学に関連する事業の見直しが進んでいます。化石燃料に関わる事業を売却し、そこで得られた資金を再生可能エネルギーや水素といった新分野に投じるM&Aが増加傾向にあります。
02 垂直統合型の再編(IN-IN & IN-OUT)
化学素材を製造・販売する会社が、部品や最終製品を製造する会社を譲り受け、バリューチェーンの上流から下流まで一貫して関与できるようにするM&A事例が増加しています。
03 国内市場の縮小や原材料の高騰などによる収益の伸び悩み(IN-OUT)
低収益事業から高収益事業への選択と集中、技術・ノウハウの獲得による成長促進、海外市場への参入による収益拡大などを目的としたM&Aが増加しています。
M&Aは企業のその後の成長を左右する重要なトランザクションです。プレディールからポストディールまでの各段階で生じる論点や、多くの関係者をリードし、ハンドルしていく推進力や交渉力が重要です。CFOは適切な経営資源の投入とタイムリーな意思決定がなされるよう、的確に舵取りを行うことが求められます。
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パートナー, PwC Japan有限責任監査法人
厨子 君太朗
ディレクター, PwC Japan有限責任監査法人