
米国の船舶および港湾のサイバーセキュリティ法規制最新動向
グローバルでは近年、船舶サイバーセキュリティに関する統一規則(IACS UR E26/E27)の発行を筆頭に、海事分野におけるサイバーセキュリティの機運が高まっています。船舶・港湾分野におけるサイバーセキュリティの動向を理解し、発生しうる規制対応リスクについて解説します。
テクノロジーの発達が、消費者の購買行動のオンライン化をここ数年で世界的に加速させました。しかし日本においては、実店舗での購買体験に重きを置く消費者が他国に比べて多いのが特徴でした。「世界の消費者意識調査2019」*1によると、日本において買い物体験を最も改善させるものは「取扱商品について深い知識を持った店舗スタッフがいること」と「店舗のデザインや雰囲気が楽しいこと」(いずれも42%)が同率で1位であり、3位には「店内で商品をスピーディーかつ便利に探せること」(37%)が続きました。デジタルによる便利な体験よりも店舗体験を豊かにする内容が上位に来ていることが、日本においては直接的なコミュニケーションや空間での体験を伴った店舗での購買ニーズの高いことを示していたのです。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が消費者の購買行動を大きく替えました。消費行動の急激なデジタルシフトは我が国も例外ではなく、日本企業においては「伝統的なサービスに代替する良好な顧客体験(CX: Customer Experience)を、いかにしてデジタル空間で提供するか」が、今後ますます重要になると考えられます。
これは単にECサイトの使い勝手を向上するというような単純なことには留まりません。先の「世界の消費者意識調査2019」によると、ソーシャルメディアが消費者の購入決断に影響しているという結果がグローバル規模で出ています。日本においては「高評価レビューに影響を受けた」という回答が26%であり、企業と顧客の接点はもはや自社サイトのみならず、ソーシャルメディアやその他のECサイトなど多岐にわたることが分かります。たった一つの悪い体験が顧客と企業の関係を断ち、さらにその内容が拡散すれば、他の顧客との関係悪化までをもたらすかもしれない――。企業は「販売すれば終わり」という考え方から脱却し、顧客と自社商品のあらゆる接点において良質なCXを提供することで、ブランドの価値を高めていく必要があるのです。
デジタル空間において優れたCXを提供するには、複数の顧客接点において、消費者(ユーザー)を一意に識別することから始まります。ユーザーが興味を示したサービス、あるいは実際に購入した商品を認識し、消費者の嗜好やブランドとの過去の関係に応じたパーソナライズされた体験を提供することが、CXの強化につながります。例えば、興味を示したまま購入には至らなかった商品のバーゲンセールを案内したり、過去に購入した商品と組み合わせて使える新商品を先行して案内したりすることなどが考えられます。
ユーザーを一意に識別する手段として広く活用されてきたのがサードパーティクッキー(Cookie)です。しかし、ユーザーが気付かない間にその行動をトラッキングすることに対するプライバシー上の懸念が広がり、webブラウザを提供する複数の企業がサードパーティCookieに関する取り扱い方針を変更したり、サポートを廃止する発表をしたりといった対応を行っています。こうした時代の流れの中、企業はCXの維持・向上のために、サードパーティCookieによって気付かれないままユーザーを特定するやり方から、ユーザーIDを活用して自社で収集した情報(ファーストパーティデータ)や、協業先が収集した情報(セカンドパーティデータ)を活用するやり方へとシフトしていく必要があります。
ユーザーIDを利用して、さまざまな個人情報を本人特定・識別の上で関連付けて活用することで、より高精度なレコメンデーションをはじめ、CXのさらなる向上が見込まれます。これを実際に行うには、本人同意とさまざまな法人間での個人情報の提供・共有が不可欠です。
一方で、ユーザー本人から見た時に、複数の企業がさまざまな形で自身の情報を流通・保有することは、あまり気持ちのよいものではありません。商品やサービスの選定や利用に当たっては、優れたCXのみならず、個人情報を適切に取り扱う相手と契約したいというのが消費者の自然な発想でしょう。一企業の信頼性が重要であることは言うまでもありませんが、今後は複数企業での取り扱いについて、どのように顧客との信頼関係を醸成するのかがポイントとなります。一企業の情報資産保護に留まらない、データエコシステム全体を通じたプライバシーリスクの管理やセキュリティ対策の実施に加えて、サービスにおける顧客体験を通じて個人データの利用方法が顧客ファーストかつ公明正大であることが伝わる必要があります。そうして初めて、購買体験の便利さに留まらない、包括的で快適なCXを提供することができるようになるでしょう。
ひと昔前までは、個人情報の利用にあたっては、サービスの利用開始前にプライバシーポリシーを提示し、同意したことをチェックしてもらうことを「同意」として捉え、本人から許諾を得たと認識するのが一般的でした。しかしながら、利用規約や、そこからリンクして提示されるさまざまな文書をサービスの利用前に熟読・理解することは非現実的ですし、登録されたメールアドレスなどの連絡先にプライバシーポリシー改定がひっそり通知されることを、上質なCXと呼ぶことはできません。少なくとも、データ活用の概要について、そのメリットとリスクを動画やイラストなどを用いて説明するといった、ユーザーが理解しやすい内容で知らせるべきですし、データエコシステム内における個人情報の利用状況・管理状況が可視化されていることも望ましいです。また、実際にどんな場面で個人情報が利用されているか、データを直接取得していない第三者がどういった用途で利用しているのかも、ユーザーのサービスの利用のプロセスを通じて直感的に理解してもらえるような工夫がなされるべきでしょう。
プライバシー対応を、法規制へ対応するための「守り」の施策であると消極的に見る向きが存在するのは確かです。しかし、現在のビジネス環境においてCXが企業の競争力の源泉となることに鑑みると、優れたCX提供の前提となるプライバシー対応は、むしろ積極的に取り組むべき「攻め」の施策として認識されるべきです。
ここで気を付けなければならないのは、プライバシーの意味を正確に理解することです。個人情報を取り扱うこと自体にリスクや抵抗を感じてしまいがちですが、プライバシーとは、他者から望まない干渉や侵害を受けない権利です。ユーザーの意思と同意のもとに、ユーザー自身が望む情報やサービスを提供することはプライバシー侵害とはなりません。重要なことは、ユーザーが望ましいと感じる体験を提供し、ユーザーの信頼を獲得し、ユーザー自身の意思と同意に基づいてデータを活用し、さらに望ましい体験を提供するというサイクルを回すことで、顧客となったユーザーと長期的かつ強固な関係を構築することです。
サードパーティCookieのような仕組みに対する制限が強化されていく中、目先のテクニカルなワークアラウンドを模索することは本質的な解決策とはなりません。よりよいCXを提供し、顧客との信頼に基づいた長期的な関係を構築するために、プライバシーの本質を理解し、積極的に対策を提示し、プライバシーとデータの取り扱いに関する公明正大な姿勢を示していくことこそが、企業が今取り組むべき重要な施策と言えます。
グローバルでは近年、船舶サイバーセキュリティに関する統一規則(IACS UR E26/E27)の発行を筆頭に、海事分野におけるサイバーセキュリティの機運が高まっています。船舶・港湾分野におけるサイバーセキュリティの動向を理解し、発生しうる規制対応リスクについて解説します。
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