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2020-08-26
本稿ではデジタル化する社会において存在するプライバシーに関するリスクと、プライバシーをテーマにした議論の動向、さらにはリスクを管理する上で有用なフレームワークを紹介します。後編では、AIネットワーク社会推進会議が公表した「AI利活用ガイドライン~AI利活用のためのプラクティカルリファレンス~」1からプライバシーに関する原則および具体的方策を取り上げ、概観していきます。さらに、企業や組織がプライバシーリスク管理を実現する際に参考になると思われるフレームワークなどを紹介します。なお、各フレームワークなどの詳細については、本シリーズで法的観点と共に解説していきます。
「AI利活用ガイドライン~AI利活用のためのプラクティカルリファレンス~」において、プライバシーの原則は「利用者及びデータ提供者は、AIシステム又はAIサービスの利活用において、他者又は自己のプライバシーが侵害されないよう配慮する」と定義されています。また、その前提として、日本においては個人情報保護法の遵守が必要であるとされています。その上で、主な論点が3つ提示され、次のように解説されています。
(1)で言及されている「プライバシーを侵害した場合に講ずるべき措置」とは、どのような措置が想定されているのでしょうか。パーソナルデータを利用するさまざまなシーンでのプライバシーの尊重や流出の防止は当然のこととして、次の2つが例示されています2。
プライバシーを侵害された被害者の救済のためにも必要かつ重要な措置であることに異論はないと筆者は考えます。その一方、システム管理者などの立場からすると、当該情報の「消去」は実務上、とても大きな困難を伴うことも事実です。「消去」を当該情報の物理的な削除と想定すると、当該情報の消去によってシステム内でデータの不整合が発生し、最悪の場合、システムが停止する恐れがあるからです。また、バックアップデータなどを含めて当該情報を網羅的に洗い出し、「消去」するためには、相応の労力が必要になります。そのため、データ利活用を含むサービスや製品においては、データ主体の消去・訂正・開示請求に応じる場面を含めプライバシーに関わる情報を取り扱うあらゆる側面で適切な対応ができるよう、その設計段階から、プライバシー保護のために必要となる措置をあらかじめ考慮しておくプライバシー・バイ・デザインの考え方が、今後ますます重要になると考えられます。
企業や組織がプライバシーリスクを適切に管理しながらデータを利活用するためには、具体的にどのような取り組みが求められるのでしょうか。多くの企業や組織では、従来の情報セキュリティや個人情報保護法などへのコンプライアンスを主管する部門が中心となり、情報システム部門といった関係部門と連携しながらプライバシーリスク管理を実施しているものと思われます。関係者間の利害や立場の違いを超えて、企業や組織として適切にプライバシーリスクを管理しデータの利活用を推進できるよう、参考になると思われるフレームワークなどを紹介して、本稿を締めくくります。なお、各フレームワークなどの詳細は、リンク先のインサイトをご参照ください。
NISTが2020年1月にVersion 1.0を公開したこのフレームワークは、プライバシー保護のために企業や組織が遵守すべきベースラインとして、次の3つを目的に策定されています。
セキュリティ領域におけるデファクトスタンダードとなっている「NIST Cyber Security Framework」の姉妹版ということもあって、日本でも普及が想定されるフレームワークの1つです。
この規格は情報通信技術(ICT)システムにおける個人識別可能情報(PII)の保護のためのフレームワークであり、企業や組織がICT環境におけるPIIに関連するプライバシー安全対策要件を定義するための一助となることを目的として,プライバシー安全対策要件の説明などを提供しています3。
また、2019年8月に発行されたISO/IEC27701:2019 Security techniques – Extension to ISO/IEC 27001 and ISO/IEC27002 for privacy information management – Requirements and guidelinesも本規格と整合して策定されていることから、既存のISMSに基づいてプライバシー情報マネジメントを確立したい企業や組織にとっては、本規格の理解が有用です。
プライバシーに関連する主な国際規格を図表2に示します。
製品やサービスの企画・設計段階から、プライバシーに関連する情報を取り扱うことが想定されるビジネスプロセス全般においてプライバシー保護の施策を事前的・予防的に組み込んでおこうというコンセプトで、次の7つの原則が示されています4。
このコンセプト自体は1990年代の半ばに提唱されたものですが、データの利活用に伴うプライバシー保護が企業や組織にとって喫緊の課題となりつつある今、あらためて注目されている考え方です。
上述のプライバシー・バイ・デザインの考え方に基づき、製品やサービスの企画・設計段階でプライバシーへの影響を事前に分析・評価するリスク管理手法として、プライバシー影響評価が知られています。国際標準規格としては、ISO/IEC 29134:2017 Guidelines for privacy impact assessmentが2017年6月に発行されています。本規格は、プライバシー影響評価の実施プロセスとその報告書の構成と内容についてのガイドラインを提供しています。
企業や組織が製品やサービスの企画・設計段階でプライバシー影響評価を実施することで、プライバシーリスクを適切に管理することができるのはもちろんのこと、その実施や結果をステークホルダーに対して積極的に開示し、自らのプライバシー保護への取り組みに対する説明と対話を行うことで、ステークホルダーからの信頼を得るリスクコミュニケーションツールとして用いることも考えられます。
1AI利活用ガイドライン~AI利活用のためのプラクティカルリファレンス~ AIネットワーク社会推進会議 令和元年8月9日[PDF 1,415KB]
2AI利活用原則の各論点に対する詳細 AIネットワーク社会推進会議 令和元年8月9日[PDF 1,394KB]
3JIS X 9250:2017 情報技術―セキュリティ技術―プライバシーフレームワーク(プライバシー保護の枠組み及び原則)
Information technology -- Security techniques -- Privacy framework
4堀部政男、一般財団法人日本情報経済社会推進協会編(2012)プライバシー・バイ・デザイン プライバシー情報を守るための世界的新潮流
大井 哲也
TMI総合法律事務所/TMIプライバシー&セキュリティコンサルティング株式会社 パートナー 弁護士
平岩 久人
PwCあらた有限責任監査法人 パートナー
森田 成祐
PwCあらた有限責任監査法人 ディレクター
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