現場のデジタルリテラシーを向上させるためにー研修を受けっぱなしで終わらせない組織体制を考える

2021-01-15

PwCあらた有限責任監査法人(以下、PwCあらた)は、「デジタル社会に信頼を築くリーディングファーム」となることをビジョンとして掲げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進と個々のデジタルスキル向上に取り組んでいます。

ここでは私たちの監査業務変革の取り組みや、デジタル化の成功事例や失敗を通じて得た知見を紹介します。これからデジタル化に取り組まれる企業やDX推進に行き詰まっている企業の課題解決にお役立ていただければ幸いです。

※法人名、部門名、役職、コラムの内容などは掲載当時のものです。

前回は「経営層、全ての職員が同じ内容を学ぶ意義」と題して、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進のために全員が同じ内容の研修を受講し、組織全体で共通の認識を持つことの重要性を取り上げました。では、各職員がデジタル研修で学んだことを実際に活用するためには何が必要となるでしょうか。今回は、監査現場におけるデジタル文化の醸成やデジタルツールの導入をリードするメンバー「デジタルチャンピオン/デジタルアンバサダー」を取り上げ、その役割ともたらした効果について考えます。

現場のDX推進は多様性のあるメンバーに任せる

PwCあらたは、現場にDXの取り組みを浸透させるため、人工知能(AI)やデジタルツールの開発・導入を行う監査業務変革専任者とは別に、監査実務を担当する全ての部門にデジタルチャンピオン/デジタルアンバサダーを配置しました。法人全体で約160名(2021年1月時点)が活動しています。メンバーの職階もさまざまであり、新入職員から10年以上の監査経験を持つ職員まで、多様なメンバーで成り立っています。

現場のDX推進は 多様性のあるメンバーに任せる
現場のDX推進をリードするメンバーが果たす 3つの役割

現場のDX推進をリードするメンバーが果たす3つの役割

現場のDX推進をリードするメンバーであるデジタルチャンピオン/デジタルアンバサダーが果たす役割は、主に3つ挙げられます。

1. デジタルツール導入に向けたチャレンジの支援

新しい物事に取り組む時、抵抗を覚え躊躇してしまうということは往々にしてあるものです。これまでに習得した慣れ親しんだ作業方法を踏襲したほうが心理的な負荷が少なく、新しいことに挑戦して失敗をする不安に駆られることもありません。

監査は被監査会社ごとに監査手続を組み立てて行われており、どの監査手続でデジタルツールを活用するのかは、現場ごとに検討する必要があります。

また、被監査会社のデータ形式に合わせてツールの設定をカスタマイズするのは、現場を熟知した監査人です。デジタルツールを広く現場に導入するためには、現場で生じた疑問や悩みを気軽に相談できる環境を整えることが重要となります。

デジタルチャンピオン/デジタルアンバサダーという相談窓口があることで、ちょっとした疑問や悩みをすぐに相談でき、現場が安心してツールの導入に取り組むことができるようになりました。

2. 横のつながりを強める架け橋に

デジタルチャンピオン/デジタルアンバサダーの大きな役割の一つとして、現場と現場をつなぎ、情報や知見を共有する架け橋になるということも期待されています。

デジタルツールの効果的な活用方法や現場で直面した課題解決の方法など、各現場で得た気付きや知見を部門全体に共有するため、デジタルチャンピオン/デジタルアンバサダーが中心となって勉強会を開催しています。また、現場が新しいツールを積極的に活用するモチベーションを高めるために部門独自の表彰制度を設けるなど、現場のDXを推進するための施策をデジタルチャンピオン/デジタルアンバサダーが企画し実行しています。

3. 経営者層と現場をつなぐ役割

AIやデジタルツールを導入した先にある将来像を描き、そこまでのロードマップを作成するのは経営者層の役割です。そうした経営者層の考えを、現場はどこまで理解できているでしょうか。どのような将来像を踏まえてDXを推進しているのか、経営者層の想いを代弁して現場へ浸透させるのもデジタルチャンピオン/デジタルアンバサダーの役割です。

一方で、デジタルチャンピオン/デジタルアンバサダーは、現場の課題やニーズを汲み取り、経営者層へのフィードバックも行います。デジタルチャンピオン/デジタルアンバサダーも被監査会社で監査業務を実施しているからこそ、現場が抱えている課題の背景を理解し、潜在ニーズも引き出せるのです。多様性のあるメンバーが、業務のデジタル化に対する現場の心理的な抵抗感を緩和し、業務のデジタル化に関する情報や知見を現場間で共有しつつ、現場と経営者層をつなぐ役割をも果たしているのです。

研修と実践のギャップを埋める存在の重要性

研修でツールの使い方を学んだとしても、学んだことを実践で生かそうとした場合、研修と実践との間に大きなギャップがあると感じることもあるのではないでしょうか。

例えば、自分が担当している業務のうちツールに置き換えられる業務はどれか、選定した業務に適したツールは何か、業務のやり方をツールを前提としたものに変化させるためにはどうしたらよいのかなど、現場のDXを推進するためには、研修で扱われる標準的な内容を自分の業務に当てはめて検討する必要があります。

研修と実践のギャップが大きければ大きいほど、研修で学んだことを実践で活かすことが難しくなります。

研修と実践のギャップを埋めるべく、業務内容を熟知している人間の中からDXを推進するメンバーを選出し、現場で生じた疑問や悩みに一つ一つ応えていくことで現場のデジタル化に対する意識が底上げされ、組織全体にDXの取り組みを広めていくことができると考えます。

研修と実践のギャップを 埋める存在の重要性

執筆者

久保田 正崇

代表, PwC Japanグループ

Email

近藤 仁

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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