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今日からできる決算効率化ー連結財務諸表作成へのデジタルツール活用の事例
2020-12-21
PwCあらた有限責任監査法人（以下、PwCあらた）は、「デジタル社会に信頼を築くリーディングファーム」となることをビジョンとして掲げ、デジタルトランスフォーメーション（DX）の推進と個々のデジタルスキル向上に取り組んでいます。
ここでは私たちの監査業務変革の取り組みや、デジタル化の成功事例や失敗を通じて得た知見を紹介します。これからデジタル化に取り組まれる企業やDX推進に行き詰まっている企業の課題解決にお役立ていただければ幸いです。
※法人名、部門名、役職、コラムの内容などは掲載当時のものです。
PwCあらたの製造・流通・サービス 財務報告アドバイザリー部は、IFRS導入、PMIサポート、決算高度化といった分野で幅広い会計アドバイザリーサービスを提供しています。また、社会のDX推進の流れを受け、サービス提供においてはデジタルツール（DXツール）の活用を積極的に進めています。
人工知能（AI）の活用やDXツールの有効性は理解しつつも、コストの問題や導入による効果が測定できないといった点を理由に、DX推進が上手く進まないという会社は少なくありません。そこで今回は、大規模なシステム改修やプロセス変更を伴わなくても実施可能なツール活用事例の1つとして、PwCあらたがサポートした連結財務諸表作成作業の効率化を紹介します。従来型の表計算ソフトベースの手作業による決算作業のどの領域でDXツールを活用でき、どの程度の効果が発揮されたのか、今後のDX推進に向けた情報としてお役立てください。
従来型の連結決算作業における課題
従来型の連結決算作業における代表的な課題としては、以下が挙げられます。
- 連結システムは導入しているが、システム外でマニュアルで表計算ソフトを使用する作業が多く、非効率
- マニュアル作業であるため、ミスが生じやすい
- 数値がアップデートされるたびに表計算ソフト上での修正も必要となり、工数がさらに増加する
- アップデートのたびにシステム上にファイルが作成されるため、管理が煩雑になりがち
- 誤って古いバージョンのファイルを使用することで、誤った仕訳が作成されてしまう
働き方改革による残業の削減や新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の影響によるリモートワーク推進などの影響もあり、こういった作業にかかる時間をできるだけ削減したいと考える企業は少なくないのではないでしょうか。一方で、大がかりなシステム改修に関しては、コスト面の課題からなかなか実現に踏み切れないというお悩みもあると推察します。
連結決算作業のDXで70時間を削減
筆者がアドバイザリー提供する企業の一つも、同じ悩みを抱えていました。この問題を迅速に解決できる方法は何か――。検討した結果、連結決算作業の特定領域に関してはDXツール導入の効果が期待できる見込みが高い、との結論に達し、開発を開始しました。
なお、ツールを活用できる作業対象領域の選定においては、以下を考慮しました。
- ルーティンワークである（＝定型化されているためツール導入が容易）
- パッケージの差し替えなど、数値のアップデートが多い（＝特に工数削減効果が見込める）
- 監査資料を作成しなければならない（＝定型化されたアウトプットが可能）
上記を踏まえて、ツールを活用した具体的な連結決算業務の例は以下の通りです（「各種注記作成」に関する今回の改善を図表1で解説しています）。
- 個別／連結分析
- 剰余金分析
- 内部取引相殺
- 各種調整仕訳作成（投資、リースなど）
- 各種注記作成（有価証券、税効果など）
これらをツールで自動化した結果、記事冒頭に記載した問題を解決しつつ、以下の通り、毎期決算ごとに70時間分の作業時間を削減できました。
- 開発時間：80時間（アップデート／メンテナンス込み）
- 削減時間：70時間×今後の決算回数
ツールを導入して分かった5つのこと
ツール導入の最大の魅力は、一度作成すると毎決算で継続して活用できるため、長期的かつ安定的にコスト削減効果を発揮してくれる（最低限のアップデートが必要な場合あり）点だと筆者は感じています。
ツール導入後の振り返りでその効果を分析し、5つのポイントを導き出すことができました。
- 開発から導入までの期間が短い
- ルーティンかつ定型化している業務とは非常に相性がよい
- 数値のアップデートがあっても対応が容易（追加工数はデータの読み取りのみ）
- 効率化した時間を重点領域の検討に充当することができる（ツール化が難しい領域に十分な時間を確保）
- 監査の効率化につながる（監査業務に求められる形でアウトプットを作成できるため）
DXツールの効果的な活用による決算プロセスの高度化を、今後もサポートしていきたいと思います。
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