皆さんは「パラスポーツの花形」とも言われる「車いすバスケットボール」を知っていますか?実は、PwC Japanグループには「業務と両立しながら、パラスポーツで活躍する職員(チャレンジドアスリート=CA)」として、複数の車いすバスケ選手が所属しています。当グループは2024年12月21日、CAが中心となり、職員とそのご家族向けに、日本財団パラアリーナ(東京都品川区)で「車いすバスケファミリー体験会」を開催しました。今回は車いすバスケの知られざる魅力、白熱した紅白戦の様子などをご紹介します。
車いすバスケは第二次世界大戦後、米国・英国を中心に脊髄損傷者のリハビリなどとして誕生。パラリンピックでは、1960年の第1回大会から正式種目となっている、歴史あるスポーツです。
日本では、1964年の東京パラリンピックを機に、徐々に競技人口が拡大。東京2020大会で、男子日本代表が初めて銀メダルを獲得したことは、皆さんの記憶にも新しいところでしょう。車いすバスケのクラブチーム日本一決定戦「天皇杯」は、長く「障害のある男子選手」の大会でしたが、近年は、女子選手や健常者も出場可能になりました。
車いすバスケ選手は、障害の程度に応じて「持ち点」があり、コート上の選手の合計点には上限が設けられています(詳細は後述)。よって、障害が重い選手(低い点数)と、軽い選手・健常者(高い点数)が協力して役割を果たし、チームの総合力を高めることが重要のため「障害の有無や性別、年齢などにかかわらず、皆が特徴を活かし、一丸となって楽しめる競技」(CA湯浅剛)と人気が高まっています。
当グループでは、CAリード・及川晋平や湯浅らがグループ内外で車いすバスケ体験会などを行い、車いすバスケの理解や、プレーを通じた「挑戦・チームワークの大切さ」を広めています(及川、湯浅の略歴は後述)。
体験会は「競技用車いすと日常用車いすの違い」の説明からスタート。競技用車いすは軽量で、外に大きく開いた八の字タイヤで瞬時に加速・ターンしやすく、接触・転倒から選手を守るベルトやバンパーなどがある一方、ブレーキはありません。これらが、車いすバスケの醍醐味である「圧倒的なスピード」「アグレッシブなぶつかり合い」につながっていることや、全身を使ったディフェンス/オフェンス例なども紹介され、参加者たちは「車いすならではの戦い方」を真剣に聞き入っていました。
車いすの「タイヤの角度」の違いを説明する、CA森谷幸生(中央)
全身を使ったボールのカット例を見せる、CA朏秀雄(中央)
参加者の関心を特に集めたのは、車いすバスケ特有の「戦略」。前述のとおり、各選手には事前の車いす操作・プレー観察を経て、障害が重い順に0.5点刻みで1.0点〜4.5点の「持ち点」が付与され、各チームのコート上の選手5人の合計点は「14点以内」と決められています。よって、各チームは「選手の障害の程度×得意プレー」を基に出場選手を組み合わせ、それぞれの特徴を活かし、いかにチームとして効果的に連携するかを考える「頭脳戦」の面白さもあるのです。
※前述の天皇杯も持ち点は合計14点だが、女子選手1人につき、上限が1.5点UP(=1人だと計15.5点)。健常者の持ち点は4.5点
競技の概要を学んだ後は、いよいよ実践です。未就学児はミニコートで、鬼ごっこや車いす相撲、ミニバスケットゴールへのシュート練習などで、競技用車いすの操作を楽しく体験しました。
小学生以上は、一般コートで直線ラン、パス、ドリブル、シュートを練習。車いすバスケは「ダブルドリブルの反則なし」「ボールを持って車いすを3回漕ぐとトラべリング」などの特例はあるものの、ボールやコート、リングの高さ、競技時間、コート上の人数、各種時間制限などは、一般的なバスケと同じ。特に、車いすに座った状態で、高さ3mのリングへのシュートは至難の技!参加者たちの熱も高まっていきました。
ミニコートで、初めて乗る競技用車いすに興奮する子供たち(NO EXCUSE提供)
CAたちにコツを教わり、ボールを思いっきり投げるも「届かない~!」と苦戦する参加者
続いて、小学生以上はチームに分かれ、目玉企画「ミニゲーム」を体験。30分の練習を経て、車いすの操作に慣れてきた参加者たちは、開始早々から車いすで激走!声をかけ合ってパスを回したり、コントロールに苦戦しながらもドリブルに挑戦したり、上半身をめいっぱい伸ばして相手の攻撃を阻んだり、果敢にシュートを打ったりと、どのチームも大熱戦を繰り広げました。観覧席からも「行け行けー!」「ナイスファイト!」と声援が惜しみなく送られ、会場一体で盛り上がりを見せました。
ディフェンスの隙を突き、パスを出す福井泰光・PwC Japan合同会社ヒューマンキャピタルリーダー(NO EXCUSE提供)
リバウンドしたボールをめぐり、激しい攻防を繰り広げる参加者たち(NO EXCUSE提供)
最後を飾ったのは、PwCのCAたち vs CAリード・及川が立ち上げた車いすバスケクラブチーム「NO EXCUSE」の紅白戦です。熟練選手同士の戦いとあり、高速ターン・ダッシュでタイヤがこすれる甲高い音、激しいぶつかり合い、高難度プレーの連続に、観覧席からは歓声と拍手の嵐!転倒者も出る白熱ぶりでしたが、解説のCAリード・及川の「試合中に転倒しても、選手は原則、自力で起き上がらないといけません!」というアナウンスに、観覧席からは驚きの声が上がりました。
片輪を上げて高さを出す、最難関の技「ティルティング」でシュートするCA森谷
華麗なプレーに盛り上がる、梅木典子・当グループダイバーシティ推進責任者(左)たち(NO EXCUSE提供)
体験会後、参加者からは「パラスポーツは『レクリエーション要素が強そう』と誤解していた。こんなに戦略的で迫力満点とは、印象が180度変わった」「車いすバスケは足に障害がある人だけの競技だと思っていたが、皆で楽しめて面白かった!」などの声が聞かれ、既存の価値観が大きく変わった方も多いようです。
PwC Japanグループは多様性を尊重するインクルーシブな組織として、多様な専門家がスクラムを組むことで社会の重要な課題を解決することを目指します。
(NO EXCUSE提供)
及川 晋平(おいかわ しんぺい)
16歳で骨肉腫となり、右足を切断。22歳で車いすバスケ選手としてのキャリアをスタートし、シドニー2000パラリンピック競技大会など、数々の大会で男子日本代表を務めた。その後パラリンピックでは、ロンドン2012大会で男子日本代表アシスタントコーチ、リオ2016大会で同ヘッドコーチを務め、東京2020大会では同監督として初の銀メダルを獲得。現在は、車いすバスケクラブチーム「NO EXCUSE」のヘッドコーチとして後進の育成に力を入れる他、PwC JapanグループのCAリードとして、I&Dに係る取り組みを推進している。
湯浅 剛(ゆあさ つよし)
大学時代にスキーで怪我を負い、車いす生活となる。日本車いすバスケットボール連盟 2019年度男子強化指定選手。日本代表として第14回北九州チャンピオンズカップ国際車椅子バスケットボール大会、アジアドリームカップ2019 国際車いすバスケットボール大会に出場し、優勝などの経験を持つ。現在は車いすバスケクラブチーム「NO EXCUSE」所属。近年は車いすボディビルにも挑戦し、2024年車いす男子ボディビルオープン大会優勝、IFBB男子ワールドカップ車いすボディビル優勝。PwC JapanグループではI&D推進の取り組みとして、車いすバスケ体験会などをリードしている。