複雑化する社会課題に挑む 新型コロナワクチン接種業務支援を振り返って 連載第2回:デジタルツールによる可視化と情報共有で、現場が求めるソリューションを実現

2022-08-30

垣根を越えた連携で新しい常識を作る

――今回はプロジェクトのコンサルティングだけではなく、課題解決の具体的なツールも開発、提供しました。支援を振り返って最も印象に残っていることは何ですか。

井村:今回のプロジェクトは「走りながら対処する」という形で、さまざまな「To Do」に対応してきました。特に現場では、これまで扱った経験のない量と種類の情報を即座に把握して次の一手を考えることが求められました。

しかし、「走りながら対処する」というアプローチは再現性が乏しく、将来同じような課題に直面した際にも、同じことの繰り返しになってしまいます。「To Do」の裏に隠れている根本的な課題や変化を捉え、先回りして課題の元凶を取り除いたり、発生し得る問題は何かを議論したりできる環境を構築するには、課題整理と現状の可視化、そしてサイロ化している作業をつなぐ役割が必要です。

そのような「現場のリアル」に対し、現場の声を聞きながらアジャイルで開発したソリューションを提供できたことは、私たちにとっても大きな学びとなりました。

井村:PwCはプロジェクト管理のノウハウやコンサルティングに加え、テクノロジーやデジタル、データ分析に特化したプロフェッショナル人材を擁しています。また、自らのパーパスに「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」ことを掲げています。今回のような社会課題に対しては、社員全員が「自分に貢献できることは何か」を考え、自律的に行動するマインドを持っているのです。

さらに今回は、高いデジタル技術を持つPwCアライアンスパートナー(Tableau)のテクノロジーを活用することができました。これも支援の大きな力になったと自負しています。

山本:冒頭に申し上げたとおり、私は医療やパブリックサービスとは全く関係のない領域を担当しています。今回はPwCが推進する「デジタルアクセラレーター」(※1)の仕組みを使ってプロジェクトに参加したのですが、この経験は自分にとっても糧になりました。クライアントとなる自治体の方々に「デジタルドリブンでアクションを起こす」というイメージを持ってもらえたことが、何よりも嬉しい経験でした。

※1 PwC Japanグループを担うリーダーの育成を目的としたトレーニングプログラム

いちばん印象に残っているのは、Pythonを使った自動化プログラムの開発です。データの変更がリアルタイムでグラフに反映される様子に感動してくださった自治体の方々のお顔は忘れられません。「自分のスキルがこんな形で社会課題解決につながるのか……」と私も感動しました。

――今回のプロジェクトは、今後の業務にどのようなインパクトを与えると思いますか。

木村:今回の経験は、私が日常業務として行っているDX推進支援に通じるものがあります。

私が考えるDXの定義は、「今ある常識を壊して新しい常識を作っていく」です。私はデジタルの力を信じています。違ったバックグラウンドを持った人たちが集まってコラボレーションすると、さまざまな支援や考え方に接することができます。そうすると、1人では到底たどり着かないアウトプットに到達できるのです。チームの枠を超えて連携し、課題解決を進める重要性を感じました。こうしたプロジェクトができるのは、PwCがパーパスを軸にしたプロフェッショナル集団だからであり、それがPwCの強みの一つであると改めて実感しました。

山本:今回の支援を通し、自治体が課題解決に取り組むうえでの得意・不得意や職員の方々がどのようなポイントで悩むのかを理解できました。自治体の方々の汗と涙の結晶は、必ず次の“有事”に活かさなければなりません。先に井村さんが紹介したとおり、今回のプロジェクトはまさにPwCのパーパスを具現化したものだと言えるでしょう。

できれば起きてほしくはないのですが、同様のパンデミックは今後も発生する可能性があります。その際には今回のプロジェクトで得た経験をグローバルに発信していきたいと考えています。「大規模なロックダウンは難しいがパンデミックは抑制する。同時に自治体ではなるべく予算をかけず効率的にワクチンを接種できるソリューションを構築する」という取り組みを、ベストプラクティスの1つとして幅広く活用してもらえれば、こんなに嬉しいことはありません。

もう1つ今回心強かったのは、会社が全面的に支援してくれたことです。これまで経験したことのないような案件に対し、「行ってこい、やってこい」と人的リソースを割いてくれただけでなく、投資もしてもらいました。こうした会社の姿勢はとてもありがたかったですし、励みになりました。そうした環境があってこそ、私たちは新しい物語の続きを紡ぐことができると確信しています。

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