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2021-12-14
PwC Japanグループは「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」というPurpose(存在意義)の実践を目的として、プロボノ活動を実施しています。このPurposeのもと、私たちがアプローチする事例をご紹介します。
左からPwC 安達、中山氏、荒畦氏、小林氏
対談者
文部科学省 官民協働海外留学創出プロジェクト トビタテ!留学JAPAN
プロジェクトマネジャー 荒畦(あらうね) 悟氏
文部科学省 官民協働海外留学創出プロジェクト オフィサー 中山 智雄氏
文部科学省 官民協働海外留学創出プロジェクト オフィサー 小林 大輔氏
PwCコンサルティング合同会社 マネージャー 安達 裕一
意欲と能力ある日本の若者の海外留学を促進するキャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」。本キャンペーンでは、2013年から2020年までに大学生は6万人から12万人へ、高校生3万人から6万人へ留学者数を倍増する計画を掲げていました(その後、ターゲットイヤーを2022年に延期)が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で2020年以降、海外へ渡航しにくい状況が続いています。
環境の変化に伴い、留学そのものの在り方が変容する中、留学の価値やその必要性について、本キャンペーンのフラッグシッププログラムである「トビタテ!留学JAPAN」日本代表プログラムを運営する、文部科学省の官民協働海外留学創出プロジェクト(以下、トビタテPT)でプロジェクトマネジャーを務める荒畦悟氏、オフィサーの中山智雄氏と小林 大輔氏にPwCコンサルティング合同会社マネージャーの安達 裕一がお話を伺いました。
「トビタテ!留学JAPAN」日本代表プログラムとは
官民協働で取り組む留学促進キャンペーンのフラッグシッププログラムとして2014年にスタート。日本を代表する約250社の企業・団体や個人からの支援のもと、これまでに高校生や大学生など9,000名を超える若者の多様な留学を支援している。
2021年度から活動の転換期を迎えるにあたり、トビタテPTではVMV(ビジョン・ミッション・バリュー)を作成。PwCコンサルティング合同会社では、プロボノ活動の一環としてその支援を行っている。
安達:
COVID-19の拡大は、留学にも大きな影響を与えています。コロナ禍において、留学の概念や見方が大きく変化する中で、留学そのものの在り方や必要性が改めて問われていると思いますが、トビタテ!留学JAPANの現状と今後についてお話ください。
荒畦氏:
ポストコロナの社会やビジネスがどうなるのか、また、そういった世界において「求められる人材、留学の価値とは」ということを支援企業の皆様にヒアリングして、トビタテPTとしても改めて留学の価値についてまとめているところではありますが、引き続き海外でのリアルな体験がもたらす価値というのは存在すると考えています。コロナ禍において海外留学が難しくなった今、実際にその場に行かないとできないことはどういったことなのかがより浮き彫りになり、若者たちは改めて留学の価値の大きさについて痛感しているようです。
一方で、私たちはオンラインでの学修自体を認めていないわけではありません。むしろ、オンラインで海外とつながる機会が増えることはとても良いことであり、広げていきたいとも思うのですが、現状のテクノロジーでは、そこで得られるものは知識や情報的といったものを越えられていません。
例えば、オンラインで言語を学習することはできますが、現実に友人と出会う、食事をする、現地の空気を感じるといった体験はできませんよね。五感で感じることは、現状のオンラインでは得ることが難しいものだと思います。
また、リアルな留学ならではの価値として「マイノリティ体験」があります。留学した若者に話を聞くと、必ずと言っていいほど「現地でまったく注目されなかった」「言語や文化の壁があり、なかなか現地コミュニティに馴染めなかった」という体験談を語ってくれます。このように自らマイノリティを体験することで、帰国後、日本国内で目を向けられていない、あるいはマイノリティで苦しんでいる人たちや社会課題に対して気持ちを寄せられるような成長が期待できます。
トビタテPTプロジェクトディレクターの船橋力は、留学する若者に「大人を信用するな」と言っています。それは大人を尊敬するなということではなくて、親や先生、メディアのアドバイスを鵜呑みにすることなく議論や反論ができるような「自分の軸」を持ってほしいという意味です。そのためには、一度日本の外へ出て、日本特有の意見や価値観を現地のそれと相対的に見て、新しい価値観を模索する能力を身につける必要があると思います。
新しい価値観を持った人材を育てるためには、海外を見据えた若者をどんどん増やしていくことがとても大切です。また、そうした若者が増えることが社会を変える原動力につながるのだという想いで、私たちは若者を海外に送り出しています。もちろん、COVID-19の影響を考慮し、できる限り安全を確保することは必要ですが、リアルな留学の価値は引き続き変わらないと考えています。
文部科学省 官民協働海外留学創出プロジェクト トビタテ!留学JAPAN プロジェクトマネジャー 荒畦(あらうね) 悟氏
中山氏:
私もそう思います。私の中で留学について考えている点が3つあります。
まず、留学の価値についてです。1カ国での経験しかなければ物事は「点」のままですが、2カ国に行くとそれが「線」になり、3カ国以上行けば「面」になりますよね。いろいろな国での生活を経験すればするほど物事を客観視できるようになれますし、素早くパラダイムシフトできるような人材が育つと思います。留学の一番の価値は、こうした感覚を身につけられるところにあると感じます。
2つ目は、表層的に見えているものと見えていないものについてです。前者は行動様式や人の発言、服装など一見して分かるものを指し、オンラインでもある程度感じることができるものです。一方で後者は、その国の背後にある世界観や、何百年、何千年とかけて培われた独自の文化性などを指すのですが、こちらは現地へ行って、その土地の人たちが動いている空間を見ないと分かりません。リアルな留学を通してこうした感覚を肌で感じることで、さまざまな価値観の中から的確な解決策をピンポイントで引き出す能力が身につくのだと思います。
そして3つ目は、オンラインとオフラインの使い分けについてです。オンラインは目的がある学習に対してはとても有効な手段です。しかし、そうではないもの、例えばまったく予期せぬ出会いやトラブルなどはオフラインならではの体験であり、それを乗り越えたときにだけ得られる学びがあることも事実です。コロナ禍においてオンラインで接する機会が増大した今だからこそ、オフラインの役割や価値を理解している人が評価される時代になっていると思います。オンラインとオフラインのそれぞれを上手に使いこなすことで、よりグローバルな人材が育ちやすくなるのではないでしょうか。
文部科学省 官民協働海外留学創出プロジェクト オフィサー 中山 智雄氏
PwCコンサルティング合同会社 マネージャー 安達 裕一
安達:
「トビタテ!留学JAPAN」は2013年のPT設立から日本代表プログラムという留学支援プログラムを実施されてきましたが、なぜ今のタイミングでVMV(ビジョン・ミッション・バリュー)をつくられたのでしょうか。
荒畦氏:
トビタテPTの第1フェーズの終了を控え、第2フェーズを迎えることが大きな理由です。第1フェーズでは留学に行く若者の支援がメインでしたが、第2フェーズでは帰国後のコミュニティを活かし、社会に価値を還元していくような事業も立ち上げたいと思っています。そうなると、活動範囲が広がり、関わるメンバーの数も増えることになるのですが、出身母体の異なる人材が集まるトビタテPTでは、自分たちが何者なのかが分かりづらくなってしまうのではないかという懸念がありました。私たちが1つのチームとしてまとまるためには、まず存在意義を明らかにし、ゴールを共有しておくことが重要だと考えたんです。
それから、トビタテ!留学JAPANのプロジェクトディレクターである船橋から、私がリーダーを引き継いだことも大きな理由の1つです。今までは、船橋の発する言葉がニアリーイコールVMVになっていたのですが、それを私ができるかというとそうではありません。だからこそ第2フェーズでは、自分が語れる言葉をみんなでつくった上で発信していきたいと思いました。
加えて、官民協働の力をさらに強固なものにするため、ということが挙げられます。プロスポーツに例えるなら、今までのトビタテPTは「オールスターチーム」でした。メンバーそれぞれが自分の出身チームのユニホームを着たまま、その日の試合を戦うイメージです。しかし、これからの私たちが目指すのは「日本代表チーム」です。日本代表選手は全員が同じユニホームを着て、チームにとって何が最善かを考えて戦いますよね。私たちもそうなるために、共通言語としてのVMVが必要だと考えました。
安達:
VMVでは、トビタテPTにとって最も重要なことや、日本の若者に期待する将来像などについても定義されていますが、作成にあたって、どんなことを意識しましたか。
荒畦氏:
最も大切にしたのは、たくさんの人の意見を聞くことです。まずメンバー全員にヒアリングを行い、そこで出た意見を集約してメッセージを作成していきました。その後、できたあがったものをさまざまな立場の人に見てもらい、客観的な意見を取り入れていったんです。事務局だけでなく、トビタテの学生、過去にコミュニティの代表を務めた歴代のトビタテ生、支援企業の担当者、トビタテのことを知らない私の友人や家族にも話を聞いて、VMVとして表現する言葉を明確にしていきました。
安達:
VMVを作成されて、新たな気づきなどはありましたか。
小林氏:
VMVをつくりながら思ったのは、リーダーシップの在り方についてです。第1フェーズは創業者という象徴がいて、とても分かりやすさがありました。第2フェーズを迎えるトビタテPTは、老舗企業の事業承継に近いものがあります。また、外部からの出向者がメインの組織であるため、何をもって束ねるかはとても大きな課題です。日々何となく、トビタテPTのメンバー一人一人が考えていることを具体的な言葉に落とし込むこと、そして、メンバーそれぞれに想いや言いたいことがある中で、それを冷静に整理できたことは大きな意味があったと思います。
もう1つ大事なことは、このVMVは決してゴールではなく、見直していくべきものだということです。時代が変われば人は変わるし、抱く感情も変わっていきます。フラットな目線からメンバー全員の声を聞いて集約していく作業は、私たちだけの力ではこだわりが強すぎてできなかったのではないでしょうか。今回、PwCコンサルティングにご支援いただき、整理学を駆使して客観的にまとめていただけたことは、とても効率的だったと思います。
安達:
ありがとうございます。PwC Japanグループでは、「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」というPurpose(存在意義)を体現するために、社会のさまざまな課題解決に取り組む自治体や非営利団体などに対して、無償でコンサルティングを提供するプロボノ活動を展開しています。
今回もその一環としてお手伝いさせていただきましたが、プロボノ活動だからこそ、私を含めてトビタテPTをご支援したいという人間が集まりましたし、過去に「トビタテ!留学JAPAN」で留学したメンバーも参加させていただくことができました。本質的なところからトビタテPTの現状を拝見し、みなさんのご意見をお伺いしてVMVの作成につなげていけたことは、とてもよい取り組みだったと感じています。
多様な人材が集まる組織が新たなフェーズを迎えるにあたり、全員が同じ方向を向いて歩くことがいかに難しいのか。そういったことについて、身をもって知ることができたのは、私たちにとっても貴重な経験になりましたし、改めて、コンサルティングを実施するうえで重要であると感じました。
安達:
VMVを作成し、第2フェーズを迎えるトビタテPTの今後の方向性、新たな取り組みについてお聞かせください。
荒畦氏:
まずは留学機運のさらなる醸成ですね。コロナ禍で停滞した機運を再び高めていくために、大学生はもちろん、高校生の留学にもいっそう注力していく方針です。それに合わせて、経済格差、情報格差、意識格差という3つの格差をなくしていこうと考えています。
経済格差は奨学金で解決することができますが、情報格差、意識格差は学生たちの住んでいる環境によって大きく事情が変わります。やはり地方の学生のほうが、情報が届かなかったり、情報が届いたとしても受け取れなかったり、もしくは情報に基づいて行動することが抑制されたりします。こうした状況を変えていかないと、高校生の留学は増えていきません。また、高校生は大人からの影響を強く受けやすい存在でもあります。学校の先生や保護者が納得しないと海外に行けないことを考えると、親や大人への啓発活動も強化していく必要があります。
加えて、今後は留学経験者コミュニティを活用して、社会にインパクトを与えていくことも考えています。1つの組織や1つの国では解決できないような社会課題を、つながりを使って解決していくような、そんなプロジェクトにしていきたいと考えています。
小林氏:
トビタテPTが始まるときのスローガンは、「内向き志向の若者を海外に送る」でした。プロジェクトに7年間携わって分かったのは、若者は私たち大人が思っているほど内向き志向ではないということです。彼ら彼女らはちゃんと考えていて、やりたいことがあるけれども自分の所属している環境ではそれが実現できないから、海外を目指します。内向きなのは、むしろ若い人を取り巻く大人たちだと感じることが多いです。
最近の若者たちはよく「社会課題を解決したい」と言います。そんな若者たちに大人がすべきことは、過去の成功体験に基づいてアドバイスするのではなく、彼ら彼女らの想いに寄り添い、やりたいことの実現を阻害する要素を取り除いてあげることなのではないでしょうか。そのためには、私たちトビタテPT含め、若者に接する大人たちの多様化が必要だと感じています。
中山氏:
私自身、高校3年間を米国で過ごしたのですが、その経験からしても、高校時代が留学にとってベストな時期だと思っています。ある程度アイデンティティを確立しながら、その上に、もう1つ別の自己を載せるような発達ができるからです。
一方で気をつけたいのは、1回の留学を神格化しすぎないことです。一度の海外旅行や留学はもはや当たり前の時代ですから、何回も行かせてあげられるようなプログラムの作成を検討していく必要があると思っています。
加えて、留学をサファリパーク化したくないという想いがあります。サファリパークというのは、生きている動物たちを檻の中から見学する安全な施設ですよね。動物とは触れ合えないので、結果的に仲良くなることもできません。同じような現象が留学でも起こりやすいのですが、そうなってしまうとそれは教育ツアーに過ぎません。留学を終えたとき、自分が困ったときに助けてくれるような友人ができているかどうか。それは日本人でも、海外の人でも良いです。国境の概念を取り払って、信頼できる関係を構築できるかどうかです。そのためには、海外との距離を加速度的に縮めるようなプログラムを提供することも、トビタテPTのミッションなのだと考えています。
安達:
若い世代の留学機運を高めていくことは、私個人としてもとてもいいことだと思います。今後もトビタテPTの活動を支援させていただける機会があれば、今回のつながりを通じて、さまざまな形で取り組んでいきたいと思います。本日はありがとうございました。
以上
文部科学省 官民協働海外留学創出プロジェクト オフィサー 小林 大輔氏
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