IFRSを開示で読み解く(第12回)リース(2)-新リース会計基準の動向

2015-09-04

PwCあらた監査法人
IFRSプロジェクト室
赤野 滋友

前回に引き続きリース(第2回)では、IASBにおけるこれまでの新リース会計基準設定に向けた検討を踏まえ、IFRSにおける新リース会計基準の開示への影響を考察します。

ここでは、IFRSにおける新リース会計基準の動向について説明したいと思います。IASBは現行のリース会計基準について、「借手のオペレーティング・リース取引が貸借対照表に計上されておらず、企業のレバレッジ(負債比率)や事業に用いる資産に関する情報が正しく報告されていない」という問題意識のもと、2009年3月の討議資料の公表を皮切りに2015年3月までFASBとともに新リース会計基準に関する議論を重ねてきました。(これまでの経緯については下図1を参照)

 

図1:IFRSにおける新リース会計基準検討の経緯

2015年3月にIASBとFASBは審議を完了し、2015年下期に新基準を公表する予定です。新基準の内容については現時点では確定していませんが、2013年5月の再公開草案およびその後の再審議の内容が反映されると考えられます。
現行のリース会計基準と新基準案の最も大きな差異は、従前は貸借対照表に計上されていなかったオペレーティング・リース取引がオンバランス処理されるという点です。また、開示についても現行基準より多くの情報量の開示が要求されることになると想定されます。具体的には、再審議の際に使用された下表1の討議資料が参考になるものと考えられます。

IASB再審議における借手のリースの開示案

(2015年1月IASB/FASBリースプロジェクト再審議Staff Paper P.6-7(注1)をベースに、IASBの審議における仮決定を反映、数値はサンプル例)

定性的情報の開示

財務諸表利用者がリースから生じるキャッシュ・フローの金額、時期および不確実性を理解できるようにするための十分な追加的情報を開示

定量的情報の開示

リース費用

20XX年

使用権資産の償却費

1,006

リース負債の支払利息

364

1,370

使用権資産の償却費の種類別内訳:

‐ 不動産

745

‐ その他の種類の原資産

261

1,006

短期リース費用(リース期間が1カ月未満のリースにかかる費用を除く)

30

少額資産のリース費用

10

変動リース費用

6

転リースから生じる収益

(8)

リース費用合計

1,408

その他の情報

 

リースにかかるキャッシュ・アウト・フロー合計

1,571

使用権資産の増加

320

セール・アンド・リースバック取引から生じた利息/(損失)

94

‐ 不動産の使用権資産の簿価

6,101

‐ その他の使用権資産の簿価

925

使用権資産の合計額

7,026

(表形式以外でも開示は可能だが、他の様式が適切となる場合を除き、表形式で開示)

リース負債の満期分析

 

20XX年

1年以内

2,274

1年超5年以内

6,006

5年超

121

上記の表から見てとれるように、現行のリース会計基準(IAS17号)の開示要求事項にはなかったリース費用の内訳や短期リース費用、少額資産のリース費用(日本基準の少額リース資産とは定義が異なる)、リースにかかるキャッシュ・アウト・フロー総額などといった大幅な開示事項の増加が想定されます。上記はあくまで仮決定のものであるため、2015年下期に公表予定の新リース会計基準を待って実務上の対応を進めていく必要があると考えられますがIFRSにおける今回のリース会計基準の改訂が実務に与える影響は決して小さいものではないと想定されます。

(注1): IASBホームページ Maojr Projects “Leases” Board discussion and papers Staff Paper January 2015 Agenda Paper 3B: Leases: Lessee Disclosure Requirements - IASB P.6 - P.7

※法人名、部署、内容などは掲載当時のものです。

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