EV充電エコシステム構築に向けた事業創造支援

CO2などの温室効果ガスを実質ゼロとする脱炭素社会の実現にむけて、自動車産業においては、ガソリン車から走行中にCO2を排出しないEV*1への転換、すなわち「EVシフト」が欧米中などの地域より広がっています。日本国内においても、日系自動車OEM各社によるEVラインナップの拡充方針や、販売および生産台数の具体的な目標の発表がなされ、EVの普及に向けた動きが一層加速していくものと考えられます。

EVの普及に欠かせない重要な要素の1つが、充電インフラの拡充であり、関連する充電領域の飛躍的なマーケット拡大にも期待が高まっています。

PwCは、EV先進国である欧米中において多数の支援実績・ネットワークを有しており、それらを活用することでEV充電エコシステム構築に向けた事業創造を包括的にサポートします。

EVシフトの概況

2022年の新車販売に占めるEV台数比率は、中国が29%、欧州は21%、米国は8%となっている中、日本は2%程度と、ハイブリッド車などを除いた純粋なEV普及の観点では限定的な水準となっています。

日本は自動車産業の雇用環境やエネルギー環境など、解決に長期間を要する構造的課題を有するため、EV台数比率は欧米中と比較すると急激な伸びは期待できず、今後緩やかに伸びていくと予測されていました。

しかし、日系OEMによるEV車両投入のみならず欧米中のOEMによる日本市場への進出の動きもあり、2035年にはEVの新車販売台数が年間約150万台を超えると予測されており、日本国内においても過去にないEVシフトの本格化が期待されています。

EV充電インフラの概況

EVシフトに不可欠なEV充電インフラについて、ここでは公共充電ステーションの推移予測を概観します。

世界の主要各国では、産業の成り立ちやエネルギー環境等の個別事情により温度差はあるものの、EVシフトを受けた充電インフラの整備促進に向け、政府による方針や助成の仕組みが打ち出されています。

日本においても、政府は2030年までに普通充電器12万基、急速充電基3万基の設置方針が掲げています。また、経済産業省は「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金」として、2023年度執行分として約175億円*2の予算を計上しており、2022年度の約65億円からも増額されています。PwCでは、急速充電器・普通充電器を合わせて2035年には約20万基にまで拡充されると予測しています。

EV普及に向けては車両とインフラの両面での課題対応が必要ですが、インフラの面においては充電器の設置促進につながる制度設計、急速充電器の高出力・複数口化などを通じた充電時間の短縮、電力供給源の確保や配電系統への過負荷回避などへの対応の重要性が高まっています。

EV充電領域の事業構造

日本国内のEV充電領域においては、充電ステーションオーナーを中心に、主に以下8つの事業領域が展開されています。

① エネルギー・電力供給
② 充電設備の製造・販売
③ 充電設備の設置・メンテナンス
④ 充電ソフトウェアの開発・運用
⑤ 充電ステーション・充電設備の所有
⑥ 認証・課金サービスの提供
⑦ 充電サービスの提供
⑧ 自動車OEM

各事業領域では、今後の拡大が見込まれる充電需要に対応するため、十分な供給体制およびネットワークの構築や各種機能の高度化、付加価値サービスの提供など、多様な取り組みが推進され始めています。

国内における EV普及に向けた課題と対応状況

充電エコシステムを構築する主要プレイヤーの動向と課題

充電関連の事業領域には、電力会社や自動車OEMのみならず、商社や物流会社、不動産・小売業者、IT会社などのあらゆる業種から市場参入がなされています。各プレイヤーは既存事業のリソースを有効活用する形で、事業展開・多角化を進め、早期のエコシステム構築と競合優位性の確立を目指した動きが活発化しています。

充電領域での事業創造に向けた取り組みを進める上での論点

EV充電市場の発展フェーズを「導入期」「拡大期」「普及期」の3段階で捉えると、日本は現在「導入期」のフェーズであり、「拡大期」を迎えつつある状況と考えられます。

今後の国内充電領域の取り組みを進める上での論点を考察するにあたっては、EV先進国における充電事業者の取組みが参考となります。
特にノルウェーでは、国内電力需要の9割以上を水力発電で賄うなどEVの普及しやすいエネルギー環境もあり、新車販売に占めるEV比率は2023年現在8~9割程度に到達。充電インフラも全国の主要道路で拡充が一巡するなど世界の主要各国よりも大幅に先に進んでいます。

EV先進国における充電事業者の取り組み状況を踏まえると、充電領域での事業創造には、主に以下の5つの論点があると想定されます。

  1. 既存ステークホルダーやリソースを活用した好立地での基盤構築
  2. 将来需要を見据え、適切な能力を持つ充電設備の導入、大量調達などによるコスト削減
  3. カスタマーセントリックなインフラやサービス・課金モデルの設計と構築
  4. 稼働率向上に資する、発展性を伴うハード・ソフト双方でのアライアンス構築
  5. 継続的な収入をもたらすデータ活用や広告などの付加価値施策の展開

PwCのソリューション

充電領域での事業を展開するにあたり、PwCは事業の構想段階から、幅広い業種・企業とのリレーション構築(エコシステム構築)、事業実証・事業化に至るまで、一連のコンサルティングサービスを提供しています。またEV先進国である欧米中において多数の支援実績・ネットワークを有しており、それらを活用することでEV充電領域における事業創造・革新の実現を包括的にサポートします。
加えて、個々の企業の状況に応じて、ご支援内容をカスタマイズすることも可能です。

  • EV・EV充電領域への幅広い知見
    • EV・EV充電領域における各種エコシステムプレイヤーとの豊富な支援実績に基づく、バリューチェーンの上流から下流まで幅広い知見を保有
    • CASEおよび/MaaSの領域で活躍する専門組織の知見に基づく質の高い分析
  • 多様な業種・企業とのリレーション
    • 政府機関、自治体、OEM、部品サプライヤ、電力会社、商社、通信会社、小売事業者などの多様な顧客候補、パートナー候補とのリレーションを有し、連携アレンジメントが可能
    • 多様なテーマでのエコシステム構築の支援ノウハウを蓄積
  • 事業構想から事業化まで多数の支援実績
    • 構想段階からの事業の立ち上げ、運営まで総合的に支援するための一連の方法論を体系化
    • 各国で市場参入戦略の策定、インフラ設計、オペレーション設計などを支援した実績および経験に基づくノウハウを提供
    • 監査、税務などPwC Japanグループの総合力を活用したサポートが可能

充電事業領域の取り組みやPwCの具体的な支援事例の詳細については、下記のリンク先よりPDFファイルをダウンロードください。

*1 本稿では、特に断りのない限り、「EV」とはバッテリー電気自動車「BEV」を指すものとします。

*2 2022年度補正予算・2023年度当初予算の総額。水素ステーション整備の補助やV2H機器、外部給電器の導入に対する補助は含まれません。

※本稿は2023年7月時点の公開情報をもとに作成しております。

EV充電エコシステム構築に向けた事業創造支援

主要メンバー

藤田 裕二

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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横田 悠貴

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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村松 哲郎

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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伊藤 誠悟

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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西河 智也

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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