会社法2013の改正

2017-02-27

2016年は、内部統制監査制度の適用開始、GST導入に向けて長年の懸案であった国会での憲法改正案の承認、日印社会保障協定の発効や突然の高額紙幣の使用停止など税務、会計の世界でも大きな変化のあった年でした。2017年には、GST導入開始、監査法人の強制ローテーション開始などが予定されており、今後も税務、会計に関する規制環境について注目していく必要があると思っています。

2013年会社法は2014年4月1日から施行されていますが、一部条項については未施行となっていました。今回、インド企業庁は、2013年会社法のうち合併、組織再編、会社清算などの規定について2016年12月15日から施行されることを発表しました。これにより企業結合や組織再編、会社清算などのプロセスに大きな影響を与えることが考えられますので、その内容について簡単にご紹介したいと思います。

まず、これらの事象を管轄する政府機関は、これまでの高等裁判所から会社法審判所(National Company Law Tribunal, NCLT)に移管されます。NCLTは会社法に関連する問題を専門に取り扱う機関として2016年6月に設置されたものです。

次に、今回施行された規定の中で日系企業に影響が大きいと思われる内容について下記にまとめています。

条文

主な内容

66条
減資

  • 会社が預かり金を返還していない場合、減資は認められない
  • 会社からの減資申請について、NCLTは中央政府、登記局、証券取引所、債権者に対して通知を行い、通知を受けたものは3カ月以内に陳情を行うことができる
  • 会計処理の適切性について会計監査人の証明が必要
  • NCLTは債権者などからの陳情解決を確認した上で承認する

230、231、232、239条
組織再編などへのNCLTの権限

  • NCLTは債権額の90%以上を有する債権者たちの合意に基づき、分配額を決定することができる
  • 会計処理の適切性について会計監査人の証明が必要
  • 直近の監査済財務諸表において10%以上の株主、負債額の5%以上を有する債権者のみが組織再編に対して異議を唱えることができる

233条
簡易合併

  • 小会社間、親会社と完全子会社間の合併について、簡易合併手続を新設
  • 会社は支払い能力があることの宣誓を行う必要あり
  • 株主、債権者、清算人および登記局からの承認を得た後に中央政府へ簡易合併の申請を行う

236条
少数株主からの株式買付

  • 少数株主からの株式買付制度を新設
  • 買付により会社の払込資本の90%以上を保有する場合、当該株主は残りの株式を買付けるか否かを会社に通知しなければならない
  • この場合の買付価格は評価レポートで算定された評価額に基づいて買付を行う必要がある

270条など
会社清算

  • 会社清算手続を行っている途中、またはNCLTによる承認が得られた後であっても会社法の規定に基づく調査は継続して行われる
  • 会社清算人はNCLTによる会社清算の承認を登記する責任がある
  • 手続に瑕疵がある場合、罰金の対象となる

上記の変更により、合併、組織再編、会社清算などの手続がより効率的になり、専門機関であるNCLTにより審議されることで、より迅速に実行されることが予想されます。

日系企業各社におかれましては、合併や組織再編などを検討する際に今回の規定変更についても考慮の上、規定に沿った適切な手続を踏むようご留意いただければと思います。

黒柳 康太郎(くろやなぎ こうたろう)

2002年中央青山監査法人名古屋事務所に入所、製造業を中心としたグローバル企業の会計監査および内部統制導入アドバイザリー業務などに従事。2006年あらた監査法人入所後、2009年より2年間PwC US(ピオリア事務所)へ赴任し、米国グローバル企業の会計監査業務に従事。2015年6月よりPwCインド(バンガロール事務所)に赴任。PwCインドにおいては南インドを中心に監査・税務・アドバイザリーを幅広く担当する。日本国公認会計士。なお、本文中の意見に係る部分は、全て筆者個人の私見である。