FinTech‐金融サービスを変える破壊の震源地

2016-07-25

FinTechは、金融サービスを大きく変える可能性を秘めています。PwCのGlobal FinTech Reportによれば、今後5年間で最も破壊的イノベーションが進む金融サービスセクターとして、「個人向け銀行業」と「資金振替・決済サービス」が挙げられています。一方、FinTechがもたらす新しい金融サービスが世の中に浸透するためには、クライアントが信頼し安心して利用できるような枠組みを構築していく必要があります。

FinTechとは

昨今、金融ビジネスに関する会話においてFinTechという言葉が出ないことはありません。FinTechとは、Finance(金融)とTechnology(テクノロジー)の造語であり、一般的にはテクノロジーを活用した金融サービスといったものを総称しています。

もともと、金融ビジネスではヒト、モノ、カネ、情報といった経営資源の中で、目に見えるモノを売っているわけではないことから、テクノロジーによる変革を受けやすい性質があります。これまでも、インターネットというテクノロジーの登場により、店舗に行かずとも金融サービスを享受することが可能となっていました。それがここにきて、ブロックチェーンという新たなテクノロジーの登場により、ビットコインと呼ばれる仮想通貨が誕生し、現物の『おカネ』の世界にもテクノロジーが浸食してきています。FinTechによるイノベーションによって実際の個人の生活においては、年々、現金を持つ必要性がなくなってきています。

また、ロボットやAIの進化により、トレーディングや資産運用においては、テクノロジーが、従来、ヒトが主体であったエリアにまでどんどん入り込んできています。

イノベーションが進む金融サービス

PwCが2016年3月に発表したGlobal FinTech Reportによれば、今後5年間で最も破壊的イノベーションが進む金融サービスセクターとして、「個人向け銀行業」と「資金振替・決済サービス」が挙げられており、その他のあらゆる金融サービス分野においてもイノベーションが大きな影響を与えると予測されています(図表参照)。

 

特に、近年登場した新たなテクノロジーであるブロックチェーンは、インターネットに続くIT革命を引き起こす可能性があります。ブロックチェーンは、第三者による検証や照合なしに、複数の参加者間でデータベースを維持するために、いくつかの数学的、暗号学的要素および経済原則を組み合わせた新たしい技術です。このブロックチェーン技術の応用として、仮想通貨のような新規のビジネスが生み出されるのみならず、既存の金融サービスに関連する各種業務オペレーションにいたるまで、つまりフロントからミドル・バックまでの広範囲にわたって破壊的イノベーションが起こる可能性があると言われています。まさにFinTechが金融サービスを外側から変えていく震源地となるのです。

 

図表 フィンテックによる破壊の領域 

新しい金融サービスへの信頼獲得に向けて

一方、仮想通貨をはじめとする新しい金融サービスが世の中に広まっていく上では、先駆的な消費者だけでなく、より多くの一般消費者から一定の信頼を得る必要があります。私どものような会計監査をはじめとする各種保証業務を行う監査法人としては、FinTechが金融ビジネスの変革をもたらすなかにおいて、クライアントが安心して、新たな金融サービスを享受できるように、いかにしてクライアントの信頼を獲得し、広く利用されるような仕組みの構築に貢献するかが、社会的にも重要な責務であると考えています。この点については、現在、日本公認会計士協会において仮想通貨対応専門部会が立ち上がり、公認会計士業務としての信頼付与への検討を開始しているところです。

PwCではFinTechチームをグローバルベースで立ち上げ、先行する金融ビジネスへの取り組みに対して、プロセス、システムといった導入支援から内部統制の構築、新しいビジネスモデルにおける金融規制・会計・税務・法務に関する助言から会計監査まで、幅広い業務に取り組んでいます。この新しいテクノロジーの進化が、社会に変革とより高い付加価値をもたらすことを願うとともにその推進に貢献していきたいと考えています。

FinTechに関連するサービス例

  • オペレーション変更・新規オペレーション導入支援
  • システム変更・新システム導入支援
  • コンプライアンス遵守態勢構築アドバイザリー
  • 財務報告、システム、業務プロセスに関する診断
  • 新サービス提供に係るセキュリティ要件レビュー
  • プライバシー情報管理態勢の整備、構築
  • サイバーセキュリティー高度化支援

PwCあらた有限責任監査法人
第一金融事業部統括部長
伊藤 嘉昭